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<概要>
 昭和59年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は18件で、前年度の27件に比べて 9件の減少となった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和59年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は18件で、昭和58年度の27件に比べて 9件の減少であった。
 このため、一基あたりの年平均事故件数(報告件数を基数で割ったもの)は0.6 件(前年度1.0 件)であった。 表1 に事故・トラブル等報告件数(法律対象)を、 表2 に内容別報告件数を、 表3原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。18件の内訳は運転中(営業運転中及び調整運転中、以下同じ)に自動停止したもの 4件(前年度11件)、運転中に手動停止したもの 3件(前年度 5件)、その他のもの(運転中に発生したが運転に影響のなかったもの) 1件、定期検査中(調整運転中は除く、以下同じ)に発見されたもの10件(前年度11件)となっており、前年度に比べて運転中に自動停止したケースが非常に少なくなっている。事故・故障等の主な原因を管理要素別に分類すると、設計管理が不適切であったもの 1件、製作管理が不適切であったもの 4件、施工管理が不適切であったもの 2件、保守管理が不適切であったもの 9件、その他のもの 2件であった。
 なお、以上のいずれの事故・故障についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
 このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣(現経済産業大臣)通達に基づき報告された軽微な故障が28件( 前年度45件) あった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)
発生年月日発電所名概要
59. 4.26関西電力大発電所飯 2号機定期検査中、余熱除去ポンプ(A)主軸の液体浸透探傷検査の結果、羽根車取付け部に損傷を発見。
59. 5. 5東京電力福島第二原子力発電所 1号機定格出力運転中、主発電機界磁喪失により主発電機がトリップし、これにより原子炉自動停止。
59. 5.22関西電力大飯発電所電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部及び管板拡管境界部に、有意な信号を発見。
59. 5.25関西電力高浜発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板部、管支持板部及び小径 U字状曲がり部に、有意な信号を発見。
59. 6.30関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、一次冷却材系統の漏洩検査前の点検で、原子炉容器上蓋の炉内温度計測用ハウジングのキャノピシール部に、にじみを発見。
59. 7.24関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管境界部に、有意な信号を発見。
59. 8.24関西電力大飯発電所 2号機定格出力運転中、原子炉格納容器内床ドレンサンプ水位に漸増傾向が見られたので、点検のため原子炉手動停止。
59. 9.22日本原子力発電東海発電所燃料取替作業中、「荷重なし」等の警報が発信し、燃料取換機が燃料を保持したまま自動停止。点検のため原子炉手動停止。
59.10. 4日本原子力発電東海第二発電所定格出力運転中、原子炉給水制御装置端子部の接触不良のため給水流量が減少し、「原子炉水位低」により原子炉自動停止。
59.10.17東京電力福島第一原子力発電所 2号機定期検査中、高圧注水系手動起動試験の際、復水貯蔵タンク遮蔽壁内側の高圧注水系戻り弁より漏洩が発生。漏洩水は、遮蔽壁の雨水口を通じて遮蔽壁外へ漏出。
59.11. 6関西電力高浜発電所 3号機試運転中、負荷減少試験の際、給水制御系リレーの不具合により給水流量が減少し、「蒸気発生器水位低と蒸気/給水流量不一致」により、原子炉自動停止。
59.11. 7日本原子力発電東海発電所定常出力運転中、液体廃棄物処理建屋内の再生廃液蒸発器再循環系配管より漏洩が発生。漏洩液処理のため当該区域の立入制限を実施。
59.11. 8東京電力福島第二原子力発電所 1号機定期検査中、原子炉再循環ポンプ調整運転の際、ポンプ(A)内部に異音が発生。点検の結果、ポンプ水中軸受リングの損傷を発見。
59.11.19関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に、有意な信号を発見。
60. 2.18関西電力高浜発電所 2号機調整運転中、復水器空気抽出器ガスモニタの指示値が上昇、蒸気発生器器内水を分析した結果、蒸気発生器伝熱管からの漏洩と判断。調査、補修のため原子炉手動停止。
60. 2.26日本原子力発電東海第二発電所定期検査中、原子炉建屋機器搬入口の内扉及び外扉に損傷発生。
60. 3. 6関西電力美浜発電所 2号機定格検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板クレビス部及び管板拡管部に有意な信号を発見。
60. 3.27九州電力玄海原子力発電所 1号機定格出力運転中、所内電源母線の電圧低下のため、一次冷却材ポンプの回転数が低下し、「一次冷却材流量低」により原子炉自動停止。

<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和59年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-05)
昭和59年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-05)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1985):昭和59年度の原子力発電所における事故・故障等の概要、昭和60年版原子力安全白書、304-309.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1985): 事故・故障の状況、昭和59年度版原子力発電所運転管理年報、171-263.
(3)科学技術庁原子力安全局(1986): 昭和59年度の原子力発電所における事故・故障等について、原子力安全委員会月報 6月号、通巻第81号、36-37.
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