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<概要>
 昭和58年度においては、原子力発電所の時間稼働率は73.2%、設備利用率は71.5%であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和58年度においては、原子力発電所の時間稼働率は 73.2%であった。また、設備利用率は、各プラントとも順調に稼動し 71.5%(営業運転中の全発電所(総出力1827.7万kW、25基)平均)と、初めて70%台の大台に乗った。
 昭和50年度前後までは、初期トラブル対応等のため、設備利用率は40〜50% 程度と低迷した。その後、我が国独自の技術改良等を進め、昭和55年度以降は順調に設備利用率が推移し、 60%台に乗るとともに、その後も信頼性の向上が図られ、昭和57年度には67.6% に達した。これに引き続き昭和58年度には71.5%( 表1 参照)と原子力発電先進国の中でも極めて良好な稼動実績を示したことは、軽水炉技術が我が国独自の技術として定着化した結果といえる。
 また、昭和58年度の原子力発電の発電電力量は約1,130 億kWh に達し、電力供給の約20% を占めるに至っている。
 このように昭和58年度において原子力発電は、電力供給の主役を担うに相応しいものとして、電力供給さらには電力コストの安定化に大きく寄与した。
 設備利用率が着実に向上した要因としては、以下の点が挙げられる。
1.定期検査期間における補修作業の減少
 運転の初期に経験した各種トラブル(例えば SCC応力腐食割れ))の対策として定期検査時を利用して実施されてきた計画改修工事が過去に比し大幅に減ってきたこと、定期検査時の作業工程、作業体制等の改善による定期検査の効率的実施が図られてきたこと、一部作業に被曝低減化の観点から自動化・遠隔化装置が導入され作業の効率化が図られてきたこと等により定期検査の円滑化及び効率的実施が図られ、定期検査期間が過去に比し、短縮された。
2.連続運転期間の長期化(長期サイクル運転)
 設備・機器の改良、品質管理の徹底等による信頼性の一層の向上及び燃料設計(濃縮度 2.5〜3.0%程度→ 3.0〜3.5%程度)の変更により連続運転が 8〜10ヵ月程度から10〜12ヵ月程度(中には13ヵ月程度)まで可能となり、そのような運転が行われるプラントが多くなった。
3.運転中のトラブルの減少(信頼性の一層の向上) 以下の理由により信頼性の向上が図られ、運転中のトラブルの発生が減少してきた。
 (1) 定期検査の実施等によるきめ細かい点検・保修等の我が国独自の徹底した品質管理、さらには内外の事故・故障等に関する情報の活用等による事故・故障の未然防止対策の徹底が図られてきたこと。
 (2) 米国からの導入技術を我が国に定着させる過程で軽水炉改良標準化計画に代表される各種の技術改良が加えられ、設備そのものの信頼性の向上が図られてきたこと。
 (3) 運転員及び保修員に対する訓練センター等における教育訓練の充実強化等により資質の維持向上が図られてきたこと。
 (4) 国において昭和57年度より年 1回サイトを中心に電気事業者の自主保安管理状況の調査(総合保安管理調査)を実施するとともに、運転責任者資格認定制度を設け、その運用を昭和57年6月より実施すること等により電気事業者の自主保安管理体制の一層の充実が図られてきたこと等運転管理監督の充実強化を図ってきたこと。
4.事故・トラブル発生時の適確かつ迅速な対応
 電気事業者の自主保安管理体制の充実、運転経験の蓄積等によりトラブルが発生した場合の対応が適確かつ迅速に行われるようになるとともに、国においても昭和55年4月より各サイトに運転管理専門官を常駐させており、トラブルが発生した場合に適確な情報を速やかに把握でき、それにより原因の究明、対策の徹底等適確かつ迅速な対応が図られてきた。
 また時間稼動率については 表2 及び 表3 に示すように平均で73.2% であった。
<図/表>
表1 設備利用率
表1  設備利用率
表2 時間稼働率
表2  時間稼働率
表3 我が国の原子力発電所の時間稼働率及び設備利用率(昭和58年度)
表3  我が国の原子力発電所の時間稼働率及び設備利用率(昭和58年度)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所の時間稼働率の推移(2004年度まで) (02-05-02-01)
日本の原子力発電所の設備利用率の推移(2004年度まで) (02-05-02-02)
昭和58年度原子力発電所の事故・故障 (12-01-02-05)

<参考文献>
(1)原子力委員会編(1985):我が国の原子力発電所の時間稼働率及び設備利用率(過去10年間)、昭和59年版原子力白書、320-323.
(2)(社)火力原子力発電技術協会(1984):原子力発電所の運転状況、昭和58年度原子力発電所運転管理年報、19-131.
(3)(社)火力原子力発電技術協会(1984):ユニット別設備利用率、ユニット別設備稼働率、昭和58年度原子力発電所転管理年報、68-119.
(4)科学技術庁原子力安全局編(1984):我が国の原子力発電の設備利用率、我が国の原子力発電の時間稼働率、原子力安全委員会月報.
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