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<概要>
 BWR型原子力発電所で使用されるMARKII型格納容器圧力抑制系において、原子炉冷却材喪失(LOCA)時及び逃がし安全弁作動時に生ずると考えられる動的な荷重を評価することを目的とした指針である。
 本指針では、MARKII型格納容器の設計の妥当性を評価するに当たって、圧力抑制系内にLOCA時及び逃がし安全弁作動時に考慮すべき動荷重及びそれらの評価方法を示している。ここでは本指針のほぼ全文を示す。
(昭和56年7月20日 原子力安全委員会決定、一部改訂 平成2年8月30日)

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている動荷重の評価指針については、原子力規制委員会によって見直しが行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
1999年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 原子炉冷却材喪失(LOCA)時に、圧力抑制系内においては、原子炉冷却系から多量の冷却材が流出するに伴い、ドライウェルから非凝縮性ガスがサプレッションプールへ移動し、さらに流出した蒸気がプール水によって凝縮される。この過程でプール水が運動し、このため種々の動的な荷重が生じる。また、逃がし安全弁の作動時にも逃がし安全弁の排気管(以下「排気管」という)内非凝縮性ガス及び原子炉冷却材がサプレッションプールに流れこむ事によって、動的な荷重を生じる。
 「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」の格納容器に関する指針を満足するためには、これらの動荷重に対して、圧力抑制系の各構成部分がそれぞれ十分な強度をもち、健全性を確保する事を定量的に評価する必要がある。
 本報告では、MARK-II型格納容器の設計の妥当性を評価するに当たって、圧力抑制系内にLOCA時及び逃がし安全弁作動時に考慮すべき動荷重及びそれらの評価方法を示したものである。
 現時点では、なお多くの実験研究等が国の内外で進められており、その結果の評価作業も進捗中である。したがって、将来、実験の結果等にもとづく別の妥当な評価方法等が示され、これによって本報告で満足される場合と同等の安全性を確保し得ると判断される場合にはそれを排除しようとするものではない。
 MARK-II型格納容器の圧力抑制系は、LOCA時に原子炉冷却系から流出してくる蒸気を凝縮し、格納容器内の圧力上昇を抑制し、格納容器からの漏えいによって核分裂生成物がプラント外へ放出されるのをできるだけ少なくする機能を有している。
 MARK-II型格納容器の構造説明図を 図1 に、主要設計諸元を 表1 に示した。
 MARK-II型格納容器はダイアフラムフロアをはさんで上部のドライウェルと、下部の圧力抑制系(ウェットウェル)にわかれる。ドライウェルには原子炉容器をはじめ、主蒸気系配管、再循環系配管、再循環ポンプなどが収納されている。ウェットウェルはダイアフラムフロアを貫通する多数のベント管と円筒型のプールよりなる。ベント管の先端はプールの水面下に没している。この他、主蒸気系配管から分岐して多数の逃がし安全弁がとりつけられている。逃がし安全弁の作動時に放出される蒸気は排気管を通って、サプレッションプールに導かれる。この排気管の末端には、蒸気の凝縮効果を高めるためクエンチャがついている。
1. 考慮すべき動荷重
 MARK-II型格納容器の動荷重の評価に当たっては、以下に掲げるような原子炉冷却材喪失(LOCA)時並びに逃がし安全弁作動時に、圧力抑制系内に生ずる動的な荷重を考慮し、格納容器の健全性が確保できる設計であることを確認しなければならない。
 圧力抑制系内のLOCA時及び逃がし安全弁作動時の現象と動荷重は、それぞれ図2-1図2-2図2-3図2-4、および図3に示すとおりである。
1.1 原子炉冷却材喪失時の動荷重
 1.1.1 圧力抑制系のバウンダリに加わる荷重
  (1) 破断発生直後に生ずる圧力波により、プール底面に加わる荷重。
  (2) ベントクリアリングにいたるまでの過程におけるベント管下端からの噴流によるプール底面への荷重。
  (3) 前項と同じ噴流によるプール壁面への圧力による荷重。
  (4) 気泡の形成、プールスウェルによるプール底面、壁面への圧力による荷重。
  (5) プールスウェル時のウェットウェル気相部圧縮によるウェットウェル気相部壁面に加わる圧力による荷重。
  (6) 同じくウェットウェル気相部圧縮によるダイアフラムフロアへの圧力による荷重。
  (7) フォールバックによるプール底面、壁面に加わる圧力による荷重。
  (8) プールスウェル後のプール水面の揺動によりプール壁面に加わる荷重。
  (9) 蒸気凝縮に伴うプール底面、壁面への圧力による荷重。
 1.1.2 圧力抑制系内の構造物に加わる荷重
  (1) 蒸気凝縮に伴い排気管に加わる水平荷重。
  (2) ベントクリアリング、気泡形成、プールスウェル、フォールバック及び蒸気凝縮に伴うプール水の流動によるドラッグ荷重。
  (3) プールスウェルに伴うウェットウェル気相部内の構造物に対する衝撃荷重。
  (4) プールスウェル時、蒸気凝縮時の真空破壊弁への荷重。
  (5) ベントクリアリング時にベント管に加わる水平荷重。
  (6) プールスウェル時にベント管に加わるドラッグ荷重。
  (7) プールスウェル後のプール水面の揺動による荷重。
  (8) 蒸気流によりベント管に加わる反力による荷重。
 1.1.3 格納容器を貫通する配管系に加わる荷重
  1.1.1及び1.1.2に示した荷重によって格納容器を貫通する配管系に間接的にもたらされる荷重。
1.2 逃がし安全弁作動時の動荷重
 1.2.1 圧力抑制系のバウンダリに加わる荷重
  (1) クリアリングに引き続き、排気管内にたまっていた非凝縮性ガスがプール内にふき出して膨張・収縮することによりプール底面、壁面に加わる圧力荷重。
  (2) 排気管からプールへ流入する蒸気の凝縮が不安定となる場合に生ずるプール底面、壁面へ加わる圧力荷重。
 1.2.2 圧力抑制系内の構造物に加わる荷重
  (1) 弁の作動開始直後、排気管内にたまっていた水のクリアリングによる噴流により、プール内構造物に加わる衝撃荷重とドラッグ荷重。
  (2) クリアリングに引き続き、排気管内にたまっていた非凝縮性ガスがプール内にふき出して膨張・収縮することにより構造物に加わるドラッグ荷重。
  (3) 排気管からプールへ流入する蒸気の凝縮が不安定となる場合に生ずる構造物へのドラッグ荷重。
  (4) 弁作動時にクェンチャ自身に加わる荷重。
 1.2.3 格納容器を貫通する配管系に加わる荷重
  1.2.1及び1.2.2に示した荷重によって格納容器を貫通する配管系に間接的にもたらされる荷重。
2. 動荷重の定量的評価
2.1 評価方法
  前項に揚げた各動荷重は、現在得られている理論、実験データとの比較等により、使用の妥当性を示し得る評価方法を用いて定量的に評価されなければならない。
  設計荷重の評価方法は、米国MARK-IIオーナーズグループによる評価案と、これに対する米国 NRC の評価リポート等に基づいて行なわれる。
  具体的な評価方法は、実験研究等の進展につれて変化し、より精緻なものになると考えられる。
2.2 事故条件、弁作動条件
  本指針の対象とする格納容器の動荷重は多種多様であり、各々の荷重の大きさや継続時間等は事故条件・弁作動条件に依存し、それらの最悪条件は必ずしも同一ではない。したがって、動荷重の評価に当たっては、例えばプールスウェル、蒸気凝縮荷重に関しては、破断面積をはじめとするパラメータへの依存性、荷重及びその組み合わせを保守的に考慮しなければならない。また、逃がし安全弁作動時の動荷重に関しては、弁が引き続き継続的に作動する等の作動条件、原子炉圧力条件、荷重及びその組み合せを保守的に考慮しなければならない。
<図/表>
表1 MARK-II型格納容器主要設計諸元
表1  MARK-II型格納容器主要設計諸元
図1 MARK-II型格納容器構造説明図
図1  MARK-II型格納容器構造説明図
図2-1 MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図
図2-1  MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図
図2-2 MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図2-2  MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図2-3 MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図2-3  MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図2-4 MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図2-4  MARK-II型圧力抑制系内のLOCA時の動荷重説明図(つづき)
図3 MARK-II型抑制系内の逃がし安全弁作動時動荷重説明図
図3  MARK-II型抑制系内の逃がし安全弁作動時動荷重説明図

<関連タイトル>
安全審査指針体系図 (11-03-01-01)
指針の整備 (11-03-01-02)
BWR、MARK-I型格納容器圧力抑制系に加わる動荷重の評価指針 (11-03-01-13)

<参考文献>
(1)科学技術庁 原子力安全局原子力安全調査室(監修):改訂8版 原子力安全委員会 安全審査指針集、大成出版(1994)
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