<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 総論
<小項目> 安全規制の枠組
<タイトル>
多重防護の考え方による事故防止 (11-01-01-06)

<概要>
 原子力施設では、品質保証などを十分に行い、機器や系統の故障等の発生を未然に防止することや運転し易い設備にして運転ミスを無くすことが重要である。また、仮に異常が発生しても、それが拡大し事故に発展することを防止するとともに、万一の事故でも、放射性物質が環境に異常に放出されることがないようにすることが必要である。
 この「多重防護の考え方」により、原子力施設の事故防止を計っている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 原子力発電所においては、その運転により原子炉内に放射性物質が発生、蓄積されるという特性を考慮し、一般の産業施設等における措置以上に入念な事故防止のための技術的措置が講ぜられている。
 異常の発生を未然に防止するとともに、仮に異常が発生したとしてもそれが事故にまで拡大し、周辺公衆に放射線障害を及ぼすことのないよう十分な事故防止対策を講ずる。このために多重防護の考え方による安全対策を行う( 図1 参照)。
(1) 異常の発生防止
 すなわち第一のレベルの安全対策として「異常の発生防止」に努めるが、そのためには使用する機器に対して十分余裕のある設計を行なうとともに、誤操作や誤動作が原子炉の安全性に大きな影響を与えるものについては、高性能・高品質の機器や材料を使用するとともに、フェイルセイフやインターロックのシステムを採用する。すなわちフェイルセイフとはシステムの一部に故障があった場合でも安全が確保されるシステムで、例えば制御棒駆動用の電源が失われても制御棒自身の重さや水圧により自動的に制御棒が挿入される。またインターロックシステムとは、例えば運転員が誤って制御棒を引き抜こうとしても、引き抜きが出来ないようになっているなど誤操作による異常の発生を防止するシステムである。また機器の製造や据え付けなどが設計どおり行なわれていることを確認するため、多くの試験・検査を行なうほか、運転が開始された後も定常的に機器の点検を行ない、また法律に基づき約1年に1回、原子炉を停止して定期点検を受けることを義務付けられている。
 その他、原子力発電所は地震、台風、高潮、津波などにも十分耐えるように土地・地盤・地質を選び、また建造物や機器配管なども余裕のある強度設計がなされているが、さらに例えば地震検知器を設置し、ある程度以上の地震動を受けた時には原子炉を自動停止させるようになっている。
(2) 異常の拡大防止、事故への発展の防止
 第二のレベルの安全対策として「異常の拡大及び事故への発展の防止」を行なう。すなわち異常を拡大させないためには、異常を早期に発見するとともに、異常が発生した場合には異常が拡大しないうちに原子炉を停止する等の適切な措置が講ぜられるようにする。例えば何らかの理由で原子炉内の圧力が急激に高まる等緊急を要する異常を検知した場合には、自動的に制御棒を挿入し原子炉を停止するようになっている。
(3) 周辺環境への放射性物質の放出防止
 第三のレベルの安全対策として「周辺環境への放射性物質の放出防止」が挙げられる。上述の対策にもかかわらず、万一事故が発生した場合には、放射性物質が周辺環境に異常に放出されるのを防ぐため、例えば非常用炉心冷却装置や原子炉格納容器が設けられており、炉心や炉容器を冷却するとともに、原子炉内の核分裂生成物の外部への放散を防止あるいは減少するようになっている。
 さらに、上記対策のうち重要なものについては、安全性を高めるために独立性や多重性を考慮した設計がなされている。これは例えば、温度、圧力、水位、中性子束等の測定器や安全弁、電源等にみられる。
 以上のように3つのレベルに分けて安全対策を講じることにより、全体としての安全防護を非常に高い水準のものとすることができる。
<図/表>
図1 多重防護の考え方

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<関連タイトル>
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)
原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて (11-03-01-03)
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-01-05)
発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針 (11-03-01-10)
発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針 (11-03-01-11)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会編(1989):原子力発電所の安全確保の基本的考え方、平成元年原子力安全白書 3−4.
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