3.科学教育の支援活動
科学教育のように幅広い内容をもつ分野の教育には、社会のあらゆる階層の種種の人々の参画が必要である。科学教育の支援活動には、連邦・州政府は言うに及ばず、研究機関、大学、企業、多くの団体が参加している。支援活動の内容も、カリキュラム作成の支援、教師の教育、学生の学習材料の提供、見学会、ワークショップ、校外実験、体験学習、論文募集等多彩である。また、図書館、資料センターなども開設され、パソコンからオンラインでアクセスして、資料を得ることができる。
これら支援活動は、公開のウェブサイトによって見ることができ、学生、教師、親、学校、教育行政官、その他関心のある人達は、サイトを開けて利用することができる。
3.1 連邦・州レベルの支援
エネルギー教育の中心は、エネルギー省である。エネルギー省のホームページでInformation for Teachers and Studentsを開けると、「サイエンス、数学と技術の教育を進展させることはエネルギー省の重要な使命である」としている。この中の「Learn About Energy」を開けると、「Energy, Science, and Technology Information」、傘下の研究所で進める「Education Web Sites at DOE Labs and Facilities」、及び「DOE Kidszone」への3つのリンクがある(図1)。
「DOE Kidszone」は高学齢向きの再生型エネルギー、エネルギー節約、エネルギー効率に関する少し堅い解説をしている(図2)。
「Energy, Science, and Technology Information」は、エネルギー省の科学・技術情報局(Office of Nuclear Energy, Science, and Technology)へのリンクで、マンハッタンプロジェクト以来今日までのエネルギー、サイエンス、技術開発の豊富な情報にアクセスできる。
「Education Web Sites at DOE Labs and Facilities」は、エネルギー省が1983年以来進めている、傘下の研究所の科学教育活動と科学教育のための資料センターのウェブサイトである。必ずしも、エネルギーに限っているわけではなく、地質時代、原子核、化学、環境問題なども含んでいる。例えばローレンス・バークレイ研究所(図3)を開け、次のカリフォルニア・サイエンス・プロジェクトを開けると、これは大学ベースの専門教師養成プロジェクトで、この州全域に渡るネットワークはカリフォルニアの全ての学生の科学教育を改善することを目的としており、ウェブサイトはカリフォルニアの総合及び単科大学に置かれ、教育はカリフォルニアの科学教育内容に基づいているとある(参考文献(6))。カリフォルニア科学教育内容は勿論NSESに基づいている。研究所が大学、州政府等とも連携して、教育基準に即して教育用プログラムを展開している様子がよく分かる。多くの国立研究所でも同様である。これら教育用のサイト・リソースは、常時、改定・統合されている模様である。
エネルギー教育全般は、エネルギー情報管理局(Energy Information Administration:EIA)が管理している。ここからは種種のエネルギー教育・訓練のクラスに参加できる。また、「EIA Kid's page」を管理している(図4)。これは「DOE Kidszone」と同レベルであるが、画像を交えて、とりつきやすい形で解説が行われている。また、ここから[Online Resources]を見ることができる。この中には、政府資料へのリンクばかりでなく、企業や後述の非営利団体へのリンクもある。上述の各研究所は、州政府や、地方のコミュニティと密な連絡を保って、科学教育内容に従った教育、教師の教育、教育用教材の開発、教育用ウェブサイトの運営・保守に当っており、これに多くの教師や学生の団体、企業が参加している様子が読み取れる。[Office of Nuclear Energy,Science and Technology]はエネルギー省の一部で原子力の情報を用意している。また、学生や教師は[Public Information Center]を訪れても、情報が得られる。
3.2 非営利団体の支援活動
非営利団体として、以下のような多くの団体がある。
・National Energy Foundation(NEF:全米エネルギー財団)は、非営利の教育団体で、教師の訓練、学生の教育プログラム、教材等の開発と配布で指導的立場にある。企業、政府部局、教育団体との協力的な共同関係は、NEFのプログラムとサービスに多大の支援となっている。
・National Energy Education Development(NEED:全米エネルギー教育開発)は、学生、教師、コミュニティ、EIA、州政府部局及び企業のエネルギーの学習に専念するネットワークである。実験や演習問題などの資料が得られる。
・National Science Teachers Association(NSTA:全米科学教師協会)は、エネルギーの入門用サイトで、エネルギー全般について論じ、教育者用の授業プラン、実験も含まれている。
・Northeast Sustainable Energy Association(NSEA:北東部持続型エネルギー協会)は、最大の地域エネルギー協会で、公衆と職業人の教育、弁護、政策的情報に主導的な力を持つ。
・Solar Energy International(SEI:国際太陽エネルギー)は、太陽、風力、水力などの実地についてワークショップで教える教育団体で、学校の太陽エネルギープログラムで再生型エネルギーとエネルギー効率を子供達に教えている。
4.補遺
2002年1月8日ブッシュ大統領が「遅れた子供を作らない法令」(No Child Left Behind Act)に署名して以来、米国教育省は、この画期的な法令を実施すべく働いている。<図/表>
<関連タイトル> 中学・高校の原子力・放射線の教育 (10-08-02-01) エネルギー・環境に関する教育 (10-08-02-02) 米国の科学教育プログラムとその背景 (10-08-03-01) 英国におけるエネルギー教育 (10-08-03-03) <参考文献>
(1) National Committee on Science Education Standards and Assessment, National Research Council:National Science Standards,The National Academies Press(1996);www.nap.edu/catalog/4962.html
(2) 米国エネルギー省:What We Do, www.ed.gov/about/landing.jhtml
(3) 米国エネルギー省:Information for Teachers and Students, www.energy.gov/engine/content.do
(4) 米国エネルギー省:DOE Kidszone, www.energy.gov/engine/content.do?BT_CODE=KIDS
(5) ローレンス・バークレイ研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory):Educational Web Sites, www.lbl.gov/Education/index.html
(6) カリフォルニア・サイエンス・プロジェクト(California Science Project(CSP)):csmp.ucop.edu/csp/
(7) 米国エネルギー省:EIA Kid's Page, www.eia.doe.gov/kids/
(8) エネルギー財団(National Energy Foundation(NEF)):www.nef1.org/
(9) エネルギー教育開発(National Energy Education Development(NEED)):www.need.org/
(10)科学教師協会(National Science Teachers Association):www.nsta.org/Energy/find/primer/index.html
(11)北東部持続型エネルギー協会(Northeast Sustainable Energy Association):www.nesea.org
(12)国際太陽エネルギー(Solar Energy International):www.solarenergy.org/
(13)長洲 南海男:米国におけるエネルギー教育の新しい方向、〔特集〕エネルギー教育、エネルギー・資源 vol.20 No.3 pp.37-41(1999)