3.米国と英国のエネルギー教育
欧米では、ここ20年来、次世代層の科学・技術教育を重視しており、1990年代には教育基準を作成している。エネルギー・環境教育も、その文脈の上で進められている。
米国は、次世代の科学技術教育に国を上げて取り組んでいる。米国教育界は次世代の生産性を確保するためには、サイエンスの教育が重要であるというので、早くから取り組んでいる。
全米学術会議(National Academy)傘下の全米研究審議会(National Research Council)は、科学教育の基準を検討し、1995年迄に原案を作成し、1996年に公布した。「次世代の米国民の活動と繁栄に科学は欠かせないという考え方に沿って、科学教育基準(National Science Standards:NSS)にしたがった科学教育を進めている(表6参照)。
米国では、エネルギー教育の中心は、エネルギー省で、「サイエンス、数学と技術の教育を進展させることはエネルギー省の重要な使命である。」といっている。「Energy,Science,and Technology Information」はエネルギー省の科学・技術情報室(Office of Energy,Science,and Technology)へのリンクで、マンハッタンプロジェクト以来今日までのエネルギー、サイエンス、技術開発の豊富な情報にアクセスできる。「Education Web Sites at DOE Labs and Facilities」(表7参照)は、エネルギー省が1983年以来進める、傘下の研究所のサイエンス教育活動とサイエンス教育のための資料センターのウェブサイトで、1万件を超える情報が蓄積されている。関連タイトルを参照されたい。
英国では、1988年の教育改革法(Education Reform Act)に基づいて、ナショナル・カリキュラム(National Curriculum:NC)が設定されている。 1988年の教育改革法と1997年の教育法(Education Act)は、すべての学校に、以下のようなカリキュラムを生徒に用意するよう要求している。調和が取れて広い基礎に立ち、生徒の精神的、道徳的、文化的、知的かつ肉体的発育を促進し、大人の人生の機会、責任、経験のための準備をさせる。加えて、宗教教育、性教育を含める。NCは義務教育学校の生徒のために最低限の教育の権利を定めるもので、これは学校の全教科課程を構成するものではなく、学校はその特殊な必要と環境を反映して、その全課程をつくる裁量権がある。NCは5-16歳のすべての生徒に適用される。サイエンスは数学とともに必須課目である。
NCの中で、エネルギーは、例えば、「地球とその先」>「エネルギー資源とエネルギー伝達」中で、多様なエネルギー資源他、7教科に亘って扱われている。
米国と同様、多くの国、民間の教育支援活動がある。関連タイトルを参照されたい。
4.オーストラリアの児童向け省エネルギー教育
オーストラリアは広大な国土、豊富な地下資源を有する国であるが、活発な省エネルギー活動が展開されている。最近この国の工業エネルギー省(Department of Primary lndustries and Energy:DPIE)では正規の学校教育に取り入れることを目的として省エネルギー教材を製作した。教材は9歳から11歳までの児童を対象としたものである。省エネルギーに関するDPIEの出版物を表8に示す。
DPIEは1991年に表8(4)の「The Energy Guide」を出版、全世帯に配布した。このガイドブックは家庭における省エネルギーの方法を具体的に示したもので、さらにこの内容を児童に理解させるためにビデオ「Saving Hieronymusキット」を作成した。これには、1)ビデオ、2)授業手引、3)Wall Chart、4)ゴム印、5)参考文献”The Energy Guide”が含まれている。キットの柱はビデオで、沼地のほとりに住むサム少年の物語である。授業手引はビデオの内容に関連する教材である。表9に示すように3グループに分け合計16の課題で構成されている。この教材は美術、保健、算数、社会と環境、英語、英語以外の言語、科学、技術の8科目で単独に、または組み合わせて使用することができるが、特に社会と環境、科学、技術の授業で使用するのが適している。
各課題は(1)課題解決のための予備知識、(2)基礎事項の解説、(3)実験演習問題で構成されている。宿題も出される。優れた宿題、作業にはGood Workと刻まれたゴム印が押される(図1)。<図/表>