<本文>
以下、要約を示す。
1 本年次計画策定の基本方針
1.1 安全研究の考え方
放射性廃棄物は、生活環境に対する
放射能の影響を防止して処分されるべきで、そのため処分方法に適した形態に処理後、その放射能レベルが減衰し安全上問題のないレベル以下になるまで、生活環境から隔離することが処分の基本となる。
生活環境からの隔離方法及びその期間は、主に放射性廃棄物の性状、特に含有される
放射性核種の種類・濃度により異なるが、人工構造物等の健全性または人間による管理に依存しなくとも最終的には安全に確保されることを基本として考えなければならない。
また、放射性廃棄物の処分に当たっては、放射性
核種の生活環境中への移行を通じて受ける一般公衆の線量当量を評価し、放射線障害防止上支障のないことを確認することを基本とし、さらに、実際の処分の際には、処分される廃棄物の種類、性状、放射能量等が
安全評価の前提とされたものに適合するものであることを確認することが必要である。
以上を踏まえ、本安全研究は、今後の原子力開発利用の拡大と多様化に対応し、放射性廃棄物の処理処分の安全確保に関する技術的知見のより一層の充実を図ることにより、各種基準、指針等の整備・改定や安全評価に当たって安全裕度の定量的把握に用いるデ
−タの蓄積に資することを目的とする。
1.2 安全研究として取り組むべき内容
(1)陸地処分
原子力施設の運転に伴って発生する低レベル放射性廃棄物には、その性状、放射能レベル等が異なる種々の廃棄物が存在するので今後これら各種の廃棄物を安全かつ合理的に処分するため、所要の時期に、必要な安全研究を実施する必要がある。
今後に進めるべき安全研究は次の通りである。
(a)原子力施設の運転等に伴い発生する低レベル放射性廃棄物のうち、均質または均一に固形化した廃棄物については、法令等が整備され、青森県六ヶ所村において平成4年12月から浅地中のコンクリ−トピットに収納処分され、埋設を開始されている。また、放射能レベルが極めて低い放射性コンクリ−ト廃棄物については、法令等の整備及び人工構築物を設置しない処分場に処分する計画が具体化している。一方、
雑固体廃棄物に関しては、一部法令等が整備されているところで、さらに最新の科学的知見と安全評価等を踏まえた研究開発を行う。
(b)原子力施設の運転等に伴い発生する低レベル放射性廃棄物のうち、法令で定める埋設濃度上限値を超える
放射能濃度の放射性廃棄物については、廃棄物、放射能量等の実態把握及び閉じ込め機能の強化並びに安全確保に関する研究を行う。
(c)長半減期核種を含むウラン廃棄物及び
TRU核種を含む放射性廃棄物(α放射能濃度が比較的低いもの)については、廃棄物量、放射能量等の実態把握及び当該核種の特性に応じた安全確保等に関する研究を行う。
(d)多種類の
放射性物質を含む
RI廃棄物、研究所等の廃棄物については、廃棄物量、放射能量等の実態把握及び当該核種の特性に応じた安全確保等に関する研究を行う。
(2)再利用
原子力施設の廃止措置等により出る極めて放射能レベルの低い金属配管等は、必要に応じて条件を付して再利用の道を開くことができる。この場合、
被ばく形態が処分の場合と異なると考えられるのでその特殊性を考慮し、安全評価の為の総合的研究を行う。
なお、
海洋処分に関しては、将来、政治的、社会的情勢等が大きく変化した場合、改めて政策の再検討を考慮する。
1.3
電源開発促進対策特別会計による実証試験の取り扱い
電源開発促進対策特別会計による実証試験は、安全研究とは目的を異にするものだが、その成果は安全研究を補う点で貴重なデ−タを提供するので、参考として取り上げる。
1.4 留意事項
(1)効率的かつ系統的な研究推進のため、高レベル放射性廃棄物等の安全研究を含め相互の研究間で緊密な情報・意見の交換等有機的連携を図りつつ整合性を持って計画を進めること。
(2)今後の進展に応じて新たに必要となる研究課題についても適宜実施を図るなど、適正かつ柔軟な対応で安全研究年次計画の実施に望むこと。
2 安全研究年次計画
2.1 陸地処分に係る安全研究
2.1.1 研究の必要性及び研究の概要
陸地処分の対象となる廃棄物は、法令関係等の整備状況、或いは事業の進展に鑑み、放射性廃棄物の分類に応じて核種の特性を考慮した安全研究課題を掲げて推進する。
(1)原子炉施設の運転等に伴い発生する放射性廃棄物(濃度上限値を超えないもの)安全裕度の定量的把握により安全評価の研究を一層進めるとともに、今後埋設が検討されると想定される廃棄体に含まれる種々の放射性物質の分析法を確立するための研究を行う。
(2)原子炉施設の運転等に伴い発生する放射性廃棄物(濃度上限値を超えるもの)
安全確保の考え方の確立に資するための総合的な研究を行うとともに、これに係る基準の整備に資するための研究を行う。
(3)TRU核種を含む放射性廃棄物(α放射能濃度が比較的低いもの)及びウラン廃棄物
当該核種の特性に応じた具体的処分方策に係る安全確保の考え方の確立等の総合的な研究、並びに安全基準の整備に資するための研究を行う。また、非破壊測定等により外部から容易に放射能濃度を確認する手法等について研究を行う。
(4)RI廃棄物及び研究所等廃棄物
廃棄物量、放射能量等の実態把握を行った上で、当該核種の特性に応じた具体的処分方策に係る安全確保の考え方の確立等の総合的な研究、並びに安全基準の整備に資するための研究を行う。また、放射能濃度測定手法に関する研究を行う。
2.1.2 具体的な課題研究とその内容(省略、
表1 参照)
2.2 再利用に係る安全研究
2.2.1 研究の必要性及び研究の概要
複雑多岐にわたる被ばくの形態を考慮した上で、再利用に係わる基準の整備に資するための研究を行う。
2.2.2 具体的な課題研究とその内容(省略、
表1参照)
<図/表>
<関連タイトル>
原子力開発利用長期計画(昭和62年策定)総論 (10-01-05-01)
原子力開発利用長期計画(昭和62年策定)各論 (10-01-05-02)
原子力施設等安全研究年次計画(平成3年度〜平成7年度) (10-03-01-01)
高レベル放射性廃棄物等安全研究年次計画(平成3年度〜平成7年度) (10-03-01-03)
<参考文献>
(1)科学技術庁原子力安全局(編集):原子力安全委員会月報 通巻第186号 (第17巻第3号) 大蔵省印刷局(1994年6月)
(2)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック 1995年版、(社)日本原子力産業会議(1995年6月)