<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 原子炉施設、核燃料施設及び核燃料輸送容器についての工学的安全性に係る研究(以下「原子力施設等安全研究」という)については、今後とも長期的視点に立って計画的かつ総合的に推進する必要があり、このため、原子力安全委員会原子力施設等安全研究専門部会は、平成3年度以降5カ年に国として実施すべき安全研究課題についてその必要性、研究内容、実施機関等について審議し、その結果を「原子力施設等安全研究年次計画(平成3年度〜平成7年度)」としてとりまとめた。
 原子力安全委員会は、この年次計画について検討した結果、原子力施設等安全研究は、今後この計画にそって積極的に進められることが適当であるとしている。
 本文に本年次計画の要約を示す。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
I 本年次計画策定に係る基本計画
1.原子力施設等安全研究の目的及び範囲
(1) 原子力施設等安全研究は、今後の原子力開発利用の拡大と多様化に対応し、原子力施設等の安全を確保することを目的とする。
(2) 範囲
 イ)安全基準、指針、安全審査における判断資料等の整備のための研究(但し、施設の安全裕度等を検討するという観点から、シビアアクシデントに関する研究を含む。)
 ロ)安全性向上のための研究
2.年次計画に基づく研究の対象施設等及び範囲
(1) 対象施設等
 イ)水炉については、軽水炉及び新型転換炉を対象とした研究を行うこととする。
 ロ)高速増殖炉については、ナトリウム冷却・MOX燃料型高速増殖炉を対象とした研究を行う。
 ハ)核燃料施設については、再処理施設、廃棄物処理・貯蔵施設、ウラン濃縮施設及び燃料成型加工・転換施設を対象とした研究を行うこととする。
 ニ)放射性物質輸送については、放射性輸送物を対象とした研究を行うこととする。
(2) 範囲(省略)
3.年次計画の構成(省略)
4.年次計画策定に係る留意事項
(1) 留意事項(省略)
(2) 重点研究分野
 本計画では下記の項目を重点研究分野とする。
 イ)ヒューマン・ファクターに関する研究
 ロ)シビアアクシデントに関する研究
 ハ)確率論的安全評価に関する研究
 ニ)再処理に関する研究
5.年次計画策定に係る検討の進め方(省略)

II 原子力施設等安全研究年次計画
 年次計画に基づく安全研究課題を、 表1-1 および 表1-2 に示す。
1.水炉の安全性に関する研究
[軽水炉]
(1) 通常運転及び設計基準事象に関する研究
 本年次計画では、通常運転及び設計基準事象に関する研究を以下の3研究分野に細分類し、研究を進めることとした。
 イ)通常運転及び運転時の異常な過渡変化に関する研究
 ロ)事故の発生防止に関する研究
 ハ)事故時の事象に関する研究
(2) シビアアクシデントに関する研究
 シビアアクシデントとは、設計基準事象を大幅に越える事象であって、安全設計の評価上想定された手段による適切な炉心の冷却または反応度の制御が出来ない状態であり、その結果、炉心の重大な損傷に至る事象をいう。
 従来の年次計画では、シビアアクシデントの影響評価に関する研究を中心に進めてきたが、本年次計画では、シビアアクシデントに関する研究をより体系的・積極的に推進するため、さらに以下の3研究分野に細分類した。
 イ)シビアアクシデントへの拡大防止に関する研究
 ロ)シビアアクシデントの影響評価に関する研究
 ハ)シビアアクシデントの影響緩和に関する研究
[新型転換炉]
 我が国で開発された新型転換炉は、軽水炉の技術と経験が利用でき、安全性に関しても軽水炉の研究の成果が広範囲に適用できる炉型である。従って、新型転換炉の安全性に関する研究では、軽水炉に関する研究から得られる知見を活用しつつ、新型転換炉特有の燃料及び炉心構造を中心に、通常運転及び設計基準事象に関する研究とシビアアクシデントに関する研究を進める必要がある。
2.高速増殖炉の安全性に関する研究
 我が国の高速増殖炉開発は着実に進展し、実験炉「常陽」及び原型炉「もんじゅ」に引き続いて、実証炉の建設推進により実用規模の発電プラント技術の実証、習熟及び性能向上並びに経済性の確立を図っていく段階に移りつつある。
 年次計画策定に当たっては、高速増殖炉の特質を活かし、我が国における高速増殖炉の安全技術体系の充実を図っていく上で必要な安全論理について検討し、WBS(作業分類表)を作成して、その基本的枠組みの構築と体系化に努めた後、国の安全研究として必要とされる研究項目を摘出した。
 実用プラントにおける安全性の考え方を検討するに当たっては、原型炉の段階までに確立された高速増殖炉の安全性の考え方を出発点とし、今後、実用化に向けて課題となる燃料の高燃焼度化、原子炉の大型化等に対応しつつ、安全確保の目標の具体化と評価のための方法論を明らかにしていくこと、並びにPSA(確率論的安全評価)を始めシビアアクシデントに関する研究や検討の実施を通じて、安全確保に万全を期す対策の検討を体系的かつ定量的に行い、安全性の向上に資するための方法論を明らかにしていくことが重要である。これらを裏づける国の安全研究として、総合的視点に立って適切な安全裕度を確保しつつ体系的に行うべきであるとの認識の下に、必要とされる研究項目の摘出、検討を行った。
 安全研究項目の摘出に当たっては、実証炉に対する安全基準、指針、安全審査における判断資料等の整備を図る段階であることから、具体的ニーズの把握に努めると共に、研究成果の効果を考慮し、広く国際的視野に立ち、その重要性、必要性等を考慮しつつ、項目、内容の検討を行った。この結果に基づき、研究項目の取捨選択、統合を行い、これらを主として安全論理との関連に従って、次のように分類整理した。
 イ)安全設計・評価方針の策定に関する研究
 ロ)事故防止及び緩和に関する研究
 ハ)事故評価に関する研究
 ニ)シビアアクシデントに関する研究
3.核燃料施設の安全性に関する研究
 再処理施設、プルトニウム取扱施設、ウラン燃料の加工施設等に共通な「核燃料施設安全審査基本指針」による分類を勘案し、核燃料施設の安全設計及びその評価に関連する次の8分野について研究課題を検討することとした。
 イ)臨界安全性に関する研究
 ロ)遮蔽安全性に関する研究
 ハ)閉じ込め安全性に関する研究
 ニ)放射線管理技術及び分析・測定技術に関する研究
 ホ)運転管理保守・補修及び検査技術に関する研究
 ヘ)放射性物質の放出低減化に関する研究
 ト)事故評価手法に関する研究
 チ)放射性廃棄物の処理に関する研究
4.放射性廃棄物輸送の安全性に関する研究
 今後の放射性物質輸送安全研究年次計画の策定に当たっては、関係機関に対する調査を実施し、研究課題の把握を行い、今後国が実施すべき研究について重要性及び緊急性の観点から研究課題の抽出を行った。
 イ)構造・材料に関する研究
 ロ)耐熱、耐火に関する研究
 ハ)密封に関する研究
 ニ)遮蔽・臨界に関する研究
 ホ)安全解析コードに関する研究
5.原子力施設の耐震安全性に関する研究
 原子力施設耐震安全研究年次計画の策定に当たっては、初めに耐震安全研究の分野を総合的・体系的に把握するため、耐震安全研究分野の分類フローチャートを作成した。次にフローチャートに従って各分野毎に、研究課題を策定した後、研究の重要性、緊急性について検討を行った。この際、安全規制等において今後重要と考えられる研究について関係者からニーズを調査し、国の実施する研究課題の抽出の参考とした。原子力施設の耐震安全研究の分野を以下に掲げる。
 イ)地震動策定に関する研究
 ロ)地盤の安全性評価に関する研究
 ハ)建物・構築物の挙動と評価法に関する研究
 ニ)機器・配管系の挙動と評価法に関する研究
 ホ)免震に関する研究
 ヘ)その他の研究
6.原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究
 従来の年次計画では、原子力施設等の確率論的安全評価に関する研究は、主に確率的安全評価に関する研究を対象としてきたが、安全研究の進展に伴い、その他各原子力施設等に共通する研究を体系的・計画的に進めるため、対象とする研究分野の見直しを行い、本年次計画では、確率論的安全評価に関する研究、人間特性に関する研究及びその他の研究を対象とすることとした。
<図/表>
表1-1 原子力施設等安全研究年次計画に基づく安全研究課題(1/2)
表1-1  原子力施設等安全研究年次計画に基づく安全研究課題(1/2)
表1-2 原子力施設等安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2/2)
表1-2  原子力施設等安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2/2)

<関連タイトル>
原子力委員会と長期計画(平成6年原子力委員会) (10-01-01-01)
長期計画改定の背景(平成6年原子力委員会) (10-01-01-02)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会:原子力安全委員会月報 Vol.13,No.9 1990(通巻第144号)
(2)原子力安全委員会(編集):原子力安全白書 平成6年版、大蔵省印刷局(1995年3月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ