<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 我が国の原子力の研究、開発及び利用に関する施策が計画的に遂行されるように原子力委員会は「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を策定し、これに基づいて、関係行政機関の原子力研究開発利用に関する経費の見積及び配分計画について企画、審議し、原子力研究、開発及び利用に関する計画として決定している。平成17年度計画は長期計画に掲げている6つの項目の分類に従って各分類項目ごとに長期計画の概要とそれに対応した取組がまとめられている。具体的な施策では、各取組に対応した各省庁機関の施策と17年度及び前年度予算額が示されている。ここでは17年度計画に基づき、取りまとめるに当たっての基本認識と取組の概要及び原子力関係予算の省庁別区分の概要を示した。
<更新年月>
2005年04月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 原子力委員会は、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(原子力長期計画)を策定し、これに基づいて「原子力委員会及び原子力安全委員会設置法」第2条に従って、関係行政機関の原子力研究開発に関する経費の見積及び配分について、企画、審議及び決定している。「平成17年度 原子力研究、開発及び利用に関する計画」(原子力研究開発利用基本計画)は以下に述べる基本認識に基づいて、平成17年度において関係行政機関が計画している施策が原子力研究開発利用の基本理念や基本政策の具体化に向けた効果的な取組となっているかどうか、重点化、合理化、効率化が図られているかどうかについて評価し、まとめられた。表1に17年度基本計画の目次を示す。I.では原子力長期計画(平成12年11月24日策定)が掲げている6つの分野(1.国民・社会と原子力の調和、2.原子力発電と核燃料サイクル、3.原子力科学技術の多様な展開、4.国民生活に貢献する放射線利用、5.国際社会と原子力の調和、6.原子力の研究、開発及び利用の推進基盤)それぞれについて、長期計画の概要とそれに対応する取組が示されている。II.では個々の具体的な施策、III.では平成17年度の原子力関連予算がまとめられている。表2-1表2-2表2-3表2-4表2-5および表2-6に平成12年策定の原子力長期計画の概要を示す。

2.原子力研究開発利用基本計画をまとめるにあたっての基本認識
 17年度の原子力研究開発利用基本計画をまとめるにあたっての原子力委員会の基本認識は、「平成17年度の原子力関係施策の重点化の方向性」(平成16年4月13日)と「平成17年度の原子力関係施策の基本的考え方」(平成16年6月1日)に反映されている。その主要な論点は次のとおりである。
 ・原子力発電は国の持続的発展の基盤になる基幹電源の一つである。現在の主要課題は安全性、信頼性および経済性の一層の向上と核燃料サイクル技術の成熟化である。原子力発電は化石燃料依存の低減化の有力な手段の一つである。
 ・研究用原子炉、加速器等は原子力の研究開発だけでなく基礎科学技術の研究開発にも必須の研究・技術革新インフラである。
 ・放射線利用技術、放射性物質利用技術は様々な産業分野と国民生活において重要な役割を果たしている。また、この分野は国際協力の重要テーマである。
 ・核融合は有力なエネルギー生産技術となる可能性を有する。各国とも適宜に協力して推進していく。
 ・ITER計画や次世代原子力システムの研究開発等では、国際的な活動の中核となることを含め、積極的に参加していく。
 ・国際的な核不拡散体制の強化については、IAEA等の国際機関や関係国と連携・協力して積極的に貢献する。
 ・原子力利用に関する国民の信頼回復のために、積極的な情報公開・情報提供に努め、広聴・広報活動の強化を図る。

3.平成17年度における取組の概要
3.1 国民・社会と原子力の調和
1)安全確保と防災
(原子力安全委員会)安全研究の実施状況や安全規制の向上のために必要となる安全研究の成果と活用方策についての調査。技術的助言の効率的・効果的実施のためのIT技術の活用による機動性の確保と情報の共有化。
(総務省)消防機関の対処能力の向上のため、地方公共団体の消防防災対策について調査・研究、指導を実施。消防活動が困難な空間における活動支援システム実用化のための技術確立。緊急消防援助隊用機材整備の推進。
(文部科学省)軽水炉燃料高度化に対応した燃料安全研究、炉材料等の高経年化に関する安全研究等を実施。
(経済産業省、文部科学省)平成15年10月に改訂した原子力安全規制の着実な実施。保安規定の遵守状況の検査。原子力防災のための施設・設備の整備、防災訓練・防災研修への支援等。
(経済産業省)高経年化・検査高度化・安全性評価等に係る所要の対策の継続。クリアランス制度の整備と核防護対策の増強に係る法整備の検討。
(国土交通省)放射性物質の輸送に係る安全規制・講習会の開催、安全基準策定に必要な調査解析。海上輸送に係る原子力災害対策の実施、環境影響評価システムの保守。
2)情報公開と情報提供
(原子力委員会)市民参加型の懇談会の継続開催。
(原子力安全委員会)シンポジウム開催等による国民との直接対話、双方向の意思疎通の推進。
(文部科学省・経済産業省)インターネット等を活用した双方向コミュニケーション、地域担当官事務所の機能強化等による国民との相互理解の促進。
(経済産業省)原子力立地地域を中心としたニュースレター発行、シンポジウム開催、情報収集・発信専用サイト設置等による規制情報の透明性確保。リスクコミュニケーションの向上のための研修実施。
3)原子力に関する教育
(文部科学省)原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金制度の着実な運用。パンフレット、インターネットを活用したエネルギー・原子力に関する教育支援情報の提供。
4)立地地域との共生
(経済産業省・文部科学省)電源立地地域対策交付金の効果的な運用、定着。
(経済産業省)核燃料サイクルの確立に向けた支援拡充、交付金措置。
3.2 原子力発電と核燃料サイクル
1)原子力発電の確実な展開
(経済産業省)原子力発電所の給水流量計の高精度化のための技術開発推進。
2)核燃料サイクル事業
(文部科学省)東海再処理施設では軽水炉使用済ウラン燃料の再処理および運転・保守に関する技術開発。ウラン濃縮技術開発事業では、遠心機処理、工程内ウラン回収等の技術開発を継続、また、施設設備の廃止措置を適宜実施。新型転換炉「ふげん」については、使用済燃料の輸送、廃止措置に必要な研究開発、関連施設の導入・改善、環境保全対策研究の実施。MOX燃料については、製造条件確認試験、製造簡素化プロセス技術開発等を実施。
(経済産業省)民間MOX燃料工場における各種技術の適合性確証試験を補助(平成19年度まで)。ウラン濃縮事業の経済性向上を目指す新型遠心分離機の開発を補助(平成21年度まで)。大間原子力発電所の全炉心MOX炉の技術開発を加速、設計終了した機器の材料手配。
3)放射性廃棄物の処理及び処分
(文部科学省)RI・研究所等廃棄物の処分に関する検討継続。超ウラン核種を含む放射性廃棄物の発生量低減、処理処分の合理化に向けた調査検討の継続。
(経済産業省)高レベル放射性廃棄物等の地層処分について、処分技術の信頼性向上技術開発を継続、地層等調査技術開発を重点化して実施。クリアランスレベルの測定確認のための機材整備。
(文部科学省・経済産業省)深地層の研究施設建設を進め、地層処分技術の確認、安全評価手法の確立に向けた研究開発を継続。
4)高速増殖炉サイクル技術の研究開発
(文部科学省)高速増殖原型炉「もんじゅ」については、発電プラントとしての信頼性実証とナトリウム取扱技術の確立のため、地元、国民の理解を得て運転再開を目指す。「実用化戦略調査研究」では、中間取りまとめ(16年度)を踏まえ、電気事業者等と連携し、計画を推進。高速実験炉「常陽」については、実用化戦略調査研究に反映させるための材料・燃料等の照射データ取得。
3.3 原子力科学技術の多様な展開
(文部科学省)大強度陽子加速器建設は平成19年度完成を目指す。RIビーム加速器建設は18年度完成を目途とする。国際熱核融合実験炉(ITER)計画を推進、建設地にかかわらず設備機器等の開発に向けた準備。臨界プラズマ試験装置(JT-60)等により定常核融合炉の経済性・環境適合性の向上、ITERの燃焼プラズマ制御のための研究開発を実施、また核融合人材の育成を行う。産学官を活用した革新的原子力技術に係る提案公募方式の研究開発により、I-NERI等の国際協力枠を拡大、また、FBRサイクル実用化戦略調査研究との連携強化。高温工学試験研究炉(HTTR)については、高温ガス炉技術基盤の確立、また、核熱利用研究としてISプロセスのパイロットプラント試験に着手、ガスタービン要素技術試験を実施。重イオン科学、放射光科学などの基礎・基盤研究の継続。
(経済産業省)将来の選択肢確保のため、革新的実用原子力技術に係る提案公募方式の研究開発を実施。
(文部科学省・その他5省)原子力委員会による研究テーマの事前・中間・事後の評価を徹底。波及効果の期待される基礎・基盤研究を重点的に実施する。
3.4 国民生活に貢献する放射線利用
(文部科学省)放射線医学総合研究所における重粒子線によるがん治療の臨床試験を継続実施。普及のための小型加速器の開発、また、医療・技術関係の人材を育成。分子イメージング研究では、アイソトープ標識技術、核酸標識基盤技術の研究開発を実施する。
(農林水産省・内閣府)放射線を利用した不妊虫放飼法による病害虫対策を継続する。
3.5 国際社会と原子力の調和
(原子力委員会)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の体制を充実させ、原子力政策に対する国際協力を強化。アジアの持続的発展における原子力の役割に関する検討会を開催する。
(原子力安全委員会)関係各省と連携し、我が国全体としての原子力安全確保に係る情報を収集する。
(外務省・文部科学省・経済産業省)IAEA、OECD/NEA等の国際機関の活動に協力する。
(原子力安全委員会・経済産業省)IAEAによる放射性物質輸送安全規制の実施状況評価サービス(輸送安全評価事業:TranSAS(Transport Safety Appraisal Service)の受け入れを行う。
(外務省・文部科学省)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)、原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)等の枠組を活用し、原子力利用、安全性の向上に資する協力を継続する。
(文部科学省・経済産業省) アジア諸国の原子力安全規制当局職員等を対象とした安全管理に関する国際研修の実施。アジア諸国、ロシア、中東欧諸国の原子力発電事業者等を対象とした安全運転に関する国際研修を実施する。
(文部科学省)包括的核実験禁止条約(CTBT)の実施に係る研究開発の継続実施。民間機関による査察代行等の積極的活用。統合保障措置については、保障措置への強化・効率化に向けた取組の実施。六ヶ所再処理工場の保障措置実施に向けた体制を整備。ロシアの核兵器解体により発生する余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力を高速増殖炉サイクル技術等を活用して継続実施。国際的な安全確保のための技術的基盤を提供する会合等に積極的に関与。GIF(Generation IV International Forum)等の原子力研究・開発の国際的な協力の枠組に参画。ITER計画の推進。設備・機器の開発準備。
3.6 原子力研究、開発及び利用の推進基盤、その他
(文部科学省)博士課程修了者等の若手研究者の研究交流を継続。産学官を活用した革新的原子力技術に係る提案公募方式の研究開発により、I-NERI等の国際協力枠を拡大、また、FBRサイクル実用化戦略調査研究との連携強化。
(経済産業省)革新的実用原子力技術に係る提案公募方式の研究開発を実施、人材育成にも寄与する。自然科学、人文科学、社会科学の分野において原子力安全に関する知識基盤の創生につながる調査研究を実施。
(原子力委員会)新たな原子力長期計画策定のための検討に向けて、幅広い範囲からの意見聴取。原子力開発利用の進捗状況の調査を実施する。原子力委員会の政策企画力及び情報受信・発信力を強化する。

4.各省庁における原子力関係予算の概要
 表3に平成17年度の原子力関係の省庁別予算総評を示す。
<図/表>
表1 平成17年度原子力研究、開発及び利用に関する計画 目次
表1  平成17年度原子力研究、開発及び利用に関する計画 目次
表2-1 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(1/6)
表2-1  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(1/6)
表2-2 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(2/6)
表2-2  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(2/6)
表2-3 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(3/6)
表2-3  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(3/6)
表2-4 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(4/6)
表2-4  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(4/6)
表2-5 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(5/6)
表2-5  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(5/6)
表2-6 原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(6/6)
表2-6  原子力開発長期計画(平成12年策定)の概要(6/6)
表3 平成17年度一般会計 原子力関係予算総表
表3  平成17年度一般会計 原子力関係予算総表

<関連タイトル>
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)総論 (10-01-05-03)
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)各論 (10-01-05-04)
平成16年度原子力研究開発利用基本計画 (10-02-01-14)

<参考文献>
(1)原子力委員会、平成17年度 原子力研究、開発及び利用に関する計画(2005年3月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ