<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
放射化分析 (09-04-03-20)

<概要>
 放射化分析とは、試料に放射線照射し、原子核反応により生成した放射性核種から放出される放射線を測定し、元素の分析、定量を行う方法である。検出感度が良く、少量の試料でも多元素同時分析が可能である、などの優れた特徴を持っている。今日では、微量元素定量の代表的な方法のひとつであり、自然科学、工学の分野だけではなく、考古学、医薬、環境などの分野でも有効な元素分析法として利用されている。
<更新年月>
2002年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.放射化分析とは
 安定な原子核を不安定な原子核に変換することを放射化する(Activate)という。放射化されて生じた不安定核種(放射性核種)は放射壊変をして、再び安定核種に変わる。放射性核種が壊変によって始めの個数の半分になるのに要する時間を半減期と定義する。半減期は核種に固有であり、また壊変に伴って放出される放射線のエネルギーも核種に固有である。従って半減期や放射線のエネルギーを測定することにより核種を同定することができ、放射線の強度をもとめることにより核種の量(個数)を決めることが出来る。このように、放射化することによって生じた不安定核種の放出する放射線を測定して、はじめの安定核種からなる元素を分析する方法を放射化分析(activation analysis)という。
 この分析法は、(1)検出感度が良く、多くの元素を10-8 g/g以下まで測定できる、(2)少量の試料でも多元素同時分析が可能である、(3)試料を分解せずに測定することも可能であり、測定後の試料を他の目的に使用することもできる、(4)照射後に化学操作を行っても他の微量分析法で問題となるような試薬からの目的元素の混入の心配はない、(5)化学的に類似する元素が共存しても妨害とはならない、などの優れた特徴をもっている。一方、原子炉加速器などを利用しなければならないこと、また、放射線防護を考慮する必要があることなどの欠点もあるが、今日では、微量元素定量の代表的な方法のひとつであり、自然科学、工学の分野だけでなく、考古学、医薬、環境などの分野でも有効な元素分析法として利用されている。
2.放射化分析の種類
 通常は、照射粒子として中性子を用いる中性子放射化分析(NAA:Neutron Activation Analysis)が行われている。中性子は、熱中性子、エピサーマル中性子、速中性子などに分けられるが、熱中性子は多くの元素と(n,γ)反応を起こしやすく、また原子炉で高い熱中性子束密度が得られるため、これを用いた方法が一般に利用されている。(詳細は、ATOMICA <08-04-01-27>「中性子放射化分析−原理と応用」参照)
 中性子放射化分析を照射後の操作の違いにより、機器中性子放射化分析(INAA:Instrumental Neutron Activation Analysis)と放射化学的中性子放射化分析(RNAA:Radiochemical Neutron Activation Analysis)の2種類に分けられる。前者は、放射化した試料を非破壊のまま測定する方法で、分解能の高い半導体検出器と波高分析器を組み合わせγ線を測定することにより多元素同時分析が可能となる。後者は、放射化した試料を放射化学的に分離・精製したのち測定する方法で、極低濃度の元素の分析や測定ピークに妨害となる核種が含まれている場合、検出感度および分析値の確度が高い。
 中性子放射化分析の概念図を 図1 に示す。また、 表1 に中性子放射化分析の分類を示す。
3.照射条件
 ある元素に中性子を照射することにより生成される放射性核種の量は次式によって求められる。
      A=N・f・σ・(1−EXP(−λt)
       A:照射により生成される放射能(dps)
       N:試料中に存在する目的元素に含まれる標的核種の数
       f:中性子束密度(毎秒1平方センチメートルあたりの通過中性子数)
       σ:核反応断面積核反応が起きる確率を表す数)
         [一般的にはバーン(1.0×10-24 cm2)で表されるが、ここではcm2の単位で記述する]
       λ:壊変定数(半減期をT(1/2)とすると
      T(1/2)=1n2/λ=0.693/λの関係がある)
       t:照射時間
 また、Nは次式により求められる
      N=6.02×1023・W・φ/M
      W:目的元素の重量(g)
      M:目的元素の原子量
      φ:核反応にあずかる同位体の存在比
 上式の(1−exp(−λt))の項は飽和係数と呼ばれ、照射時間が半減期の5倍以上になるとほぼ1に近くなる。そのため、むやみに長時間照射しても目的核種の生成量の増加がほとんど見られないばかりか、それよりも長い半減期をもった核種も大量に生成されるので注意しなければならない。照射に先だち、上記の式により生成される核種の種類ならびに量を推定することが必要である。
 照射により生成された目的核種の半減期が分オーダー以下の場合は、短時間照射後ただちに放射能測定を行わなければならない。しかし、通常は一定時間放置(冷却)する。冷却時間をとることにより、短半減期の核種の多くが減衰してしまい取り扱いが安全になるからである。また、照射により試料中に半減期が異なる種々の核種が生成されるので、冷却時間を変えて放射能測定を行うことにより効率よく多核種の測定が可能になる。
4.分析試料の調製
 試料は、照射時間が短い場合は小型のポリエチレン袋やポリエチレン管に封入する。長時間照射の場合は、石英管でアンプルを作りそれに封入する。水分を多く含んだ試料の場合は、凍結乾燥などの方法によりあらかじめ水分を除いておく必要がある。水銀やハロゲン元素などは試料の乾燥時や照射時に揮発する恐れがあるので石英管に封入した方がよい。照射試料の量は照射条件や目的元素の濃度などにより異なるが、数十ミリグラムから数百ミリグラムが適量である。
5.比較標準試料
 照射により生成した核種の放射能強度から計算により試料中の元素の含有量を求めることも不可能ではない。しかし、中性子束密度(f)を正確に求めることは難しく、また放射能の絶対測定(毎秒当たりの壊変数を測る)は面倒な操作を必要とする。そのため、一般には、既知量の元素を含む比較標準試料を分析試料と同一カプセルに入れて、同時に照射しそれぞれの生成放射能を比べ元素の定量を行う方法(比較放射化法)がとられている。比較標準試料としては大きく分けて次の2種類がある。(1)既知量の元素を含んだ溶液を濾紙などに滴下し、乾燥させるか、既知量の粉末の試薬を混合して作る。(2)元素含有量が正確に調べられている試料を標準試料とする。
6.測定法およびデータ解析
 機器放射化分析の場合、放射化された試料のγ線は高分解能のGe半導体検出器により測定され波高分析器を用いエネルギーごとに相当するチャンネルに振り分けられ記憶される。測定にあたっては、分析試料と比較標準試料は同じ形状で、かつ検出部から同一距離に置かなければならない。放射能が強すぎるとγ線が検出器に入射しても数え落とし(不感時間)が生じるので試料を検出器から遠ざける必要がある。この不感時間は、大きすぎると誤差の原因となるので10%以内に押さえることが望ましい。
<図/表>
表1 中性子放射化分析の分類
図1 中性子放射化分析の概念図

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<関連タイトル>
中性子放射化分析−原理と応用 (08-04-01-27)

<参考文献>
(1) 海老原充:放射化学的中性子放射化分析、ぶんせき、(1988年)、p.904−911
(2) 佐伯誠道(編):「環境放射能」,ソフトサイエンス社,東京,1984.
(3) 日本アイソトープ協会:「放射化分析による環境調査」,日本アイソトープ協会,東京,1979.
(4) 関 李紀:RADIOISOTOPES,38,(2)10p,1989
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