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<概要>
 放射性核種の数が壊変によってある時刻から半分になるまでの時間を半減期という。半減期Tは、壊変定数\(\lambda\)とともに放射能の統計的な壊変現象を特徴付ける。これらの間には、 \[ \lambda=\frac{0.693}{T} \] という関係がある。
<更新年月>
2002年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1)半減期
 放射性核種の壊変は、統計的現象であり、個々の核種が次の瞬間どうなるかは予測できないが、集団で見ると明確な法則に従っている。主要な放射性核種の半減期を 表1 に、壊変図の例を 図1 に示す。即ち、放射性核種の単位時間当りの壊変数は、その時の原子数に比例し、それぞれに固有の壊変定数\(\lambda\)を比例定数とする。
従って、時刻t=0のとき\(N_{0}\)個あった放射性原子の時刻tでの数Nは、次式で求めることができる。

\[ \frac{dN}{dt}=−\lambda{N}  N = N_{0}\exp(−\lambda{t}) \]
  半減期は、ある時刻に\(N_{0}\)個存在した放射性の原子が、その半分の\(\frac{1}{2}N_{0}\)個になる時間Tとして定義され、放射能の時間的変化の関係式から誘導される。
壊変定数\(\lambda\)との間に次の関係がある。

\[ (\frac{1}{2})N_{0} = N_{0}\exp(−\lambda{T})  \lambda=\frac{0.693}{T} \]
2)自然放射性核種及び人工放射性核種の半減期
 自然放射性核種の3H、14C、40K、226Ra、238Uの半減期は、それぞれ12.33年、5730年、12.77億年、1600年、44.68億年であり、人工放射能の60Co、90Sr、99Mo、99mTc、129I、131I、137Cs、239Puは、それぞれ1925.1日、28.79年、65.94時間、6.01時間、1570万年、8.0207日、30.07年、2.411万年である(自然放射性核種は人工でも作られるが、壊変法則では核種が同じであれば壊変型は同一であるため省略した)。
3)地殻に存在する自然放射能の半減期
 地殻中には、地球の誕生時から存在した多数の放射性核種が広く分布している。主要なものとしては、ウラン系列238U)、トリウム系列232Th)、アクチニウム系列(235U)と言われるような、( )内に示した放射性核種を始まりとして、次々に娘核種を作りながら壊変していくものがある。一方、単独の放射性核種としては、半減期が12.77億年のカリウム40(40K)、475億年のルビジウム87(87Rb)のようなものがある。このうちカリウム40は、カリウム中に0.012重量%含まれていて、天然に存在する放射性核種の主要なものである。わが国の土壌中には229〜814Bq/kg含まれているとされている。
4)宇宙線によって生成される放射性核種の半減期
 宇宙線が地球及びその大気に突入するときに、種々の放射性物質が生成する。その代表的なものとしては、3H、14Cがある。半減期は、それぞれ12.33年、5730年である。このほかに、7Be、10Be、22Na、24Na、28Mg、36Cl、81Krなどがある。それらの半減期はそれぞれ、53.29日、151万年、2.6019年、14.96時間、20.91時間、30.1万年、22.9万年である。
5)医療などに使用される放射性核種の半減期
 放射線治療に使用される放射性核種としては、癌・腫瘍の場合等の放射線治療で用いられる226Ra(半減期は1600年)が知られている。現在は、症状に応じて各種の放射性線源が選択され、使用されるようになっている。体外の放射性線源を用いる、いわゆる外部照射のためには、60Co、137Cs、192Ir線源が使用され、甲状腺疾患の治療には、体内で131Iを使用する非密封内用治療が良く知られている。それぞれ半減期は、1925.1日、30.07年、73.83日、8.0207日である。
 試験管内検査のための標識化合物として、使用される放射性同位元素としては、125I、131I、3Hがある。それぞれ半減期は、60.2日、8.02070日、12.33年である。体内に放射性物質を投与する検査には、99mTc(99Mo)、81mKr(81Rb)が使用される(括弧内は親核種でこのような組合せをジェネレータと呼ぶ)。半減期はそれぞれ6.01時間(65.94時間)、13.10秒(4.576時間)である。
6)放射性降下物に基づく環境内の人工放射性物質の半減期
 核実験による放射性降下物は、フォールアウト(狭義)と呼ばれている。生成する人工放射性物質は、大部分が90Sr、137Cs、14C、95Zrである。それらの半減期は、それぞれ28.79年、30.07年、5730年、64.02日である。
7)原子力施設に起因する環境中人工放射性物質の半減期
 核燃料サイクルを構成する原子力施設のうち、ここでは原子力発電所と再処理工場について述べる。原子力発電所において注目すべき放射性核種は、60Co、63Ni、90Sr、137Cs、14Cであり、それらの半減期は、1925.1日、100.1年、28.79年、30.07年、5730年などである。再処理施設における主要な放射性核種は、3H、137Cs、106Ru、90Sr、134Csとされている。半減期は、それぞれ12.33年、30.07年、373.6日、28.79年、2.065年である。
8)体内に存在する自然放射能の半減期
 体内に存在する放射性核種は、われわれ人間が被ばくするもっとも身近な放射能である。これは、主として天然のカリウム中に含まれる放射性同位元素(40K、質量数が40のカリウム)であり、半減期は12.77億年である。生体に取り込まれた放射性核種は代謝により体内から排せつされて変動するため、放射能が体内から半減する時間を生物学的半減期という。この対比で通常の放射性核種の半減期を物理学的半減期ということがある。
<図/表>
表1 主要な放射性核種の半減期
表1  主要な放射性核種の半減期
図1 壊変図式の例
図1  壊変図式の例

<関連タイトル>
放射能 (08-01-01-03)
α壊変 (08-01-01-05)
β壊変 (08-01-01-06)
天然の放射性核種 (09-01-01-02)
フォールアウト (09-01-01-05)

<参考文献>
(1) National Nuclear Data Center: Nuclear Wallet Card, http://www.nndc.bnl.gov/wallet/
(2) 日本原子力文化振興財団(編):原子力の基礎講座、第5版(1996)
(3) 日本アイソトープ協会(編):放射線・アイソトープ、講義と実習、丸善(2001)
(4) 日本アイソトープ協会(編):アイソトープ手帳、10版(2001)
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