<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 燃料集合体実証試験には、燃料集合体照射試験、燃料集合体最大熱負荷試験、燃料集合体管群ボイド試験、BWR新型燃料集合体熱水力試験、混合酸化物燃料照射試験、高燃焼度9×9型燃料照射試験、PWR燃料集合体過渡時熱伝達試験がある。
<更新年月>
2006年09月   

<本文>
1.照射実証試験(1976年度〜1986年度)
 BWR8×8型、PWR15×15型の実機燃料集合体について、通常工程の燃料の製造段階から照射段階、さらに照射後試験段階に至る実証実験を行い、燃料集合体の信頼性、健全性を確認した。
(a)試験項目
・製造時試験
 照射試験結果と対比できるように通常の製造工程で作られた燃料の品質管理・検査データを採取するものである。
・照射試験
 原子力発電所原子炉で燃料を燃焼させる試験である。照射終了後、水に満たされた使用済燃料プールの中で外観観察、漏れ試験等が行われる。
・照射後試験
 照射試験後、燃料試験施設に送られ、試験施設で外観検査後、燃料の解体、切断が行われ、ペレットや被覆管などの詳しい試験・検査が行われる。
(b)試験結果
 予測どおりの健全な状態で燃焼していることを実証し、燃焼状況では、製造時、照射、照射後試験のデータから、設計時の状態に比べ余裕があり、信頼性、安全性を有していることを確認した。
2.最大熱負荷実証試験(1978年度〜1989年)
 燃料集合体から冷却材に伝達される熱量は、冷却材の流量、温度等の様々な条件により異なるが、ある熱的限界値(最大熱負荷という)以下でなければならない。試験は、通常運転時はもとより、異常過渡時でも燃料集合体が安全に熱除去が行われることを目的とし、1978年度から、BWRおよびPWRの標準燃料集合体を対象に炉外試験設備を設置し、電気加熱による実寸大の模擬燃料集合体を使用して行われた。
(a)BWR燃料集合体最大熱負荷試験
・試験項目
 定常時最大熱負荷試験、過渡時最大熱負荷試験、ボイド特性試験、流動特性試験の4項目である。
・試験手順
 図1に示すとおりである。
(b)PWR燃料集合体最大熱負荷試験
・試験項目
 定常時最大熱負荷試験、過渡時最大熱負荷試験、曲り効果最大熱負荷試験、混合試験の4項目である。
・試験手順
 図2に示すとおりである。
(c)試験結果
・定常時および過渡時最大熱負荷試験(BWR,PWR)
 原子炉の通常運転状態での燃料集合体の限界出力は現行の最大熱負荷相関式から良好に予測できること、また、異常過渡状態でも燃料集合体から安全に熱除去が行われることを実証した。
・曲り効果最大熱負荷試験および混合試験(PWR)
 燃料集合体内で燃料棒が曲った場合でも、安全に燃料集合体から熱を除去することを実証した。また、燃料集合体内を流れる冷却材の混合割合の測定値は設計値と良好に一致することを確認した。
3.管群ボイド実証試験(1987年度〜1994年度)
 BWRおよびPWRの燃料集合体を対象に、管群体系内で発生するボイド挙動について、現状の設計の妥当性を実証する試験を行い妥当性を確認した。
(a)BWR燃料集合体管群ボイド試験
 沸騰水型原子炉(BWR)内の冷却水は、燃料集合体を流れることにより燃料要素からの熱で沸騰し、ボイド(蒸気泡)と水の二相流となる。この二相流のボイドの割合(ボイド率)や流れ方等の挙動は、燃料要素の出力や燃料集合体内の位置に依存しているため、このボイド挙動を詳細に把握するためにCTスキャナ装置等を使って実証試験を実施した。試験項目は定常時ボイド測定試験、非定常時ボイド測定試験の2つである。
(b)PWR燃料集合体管群ボイド試験
 加圧水型原子炉(PWR)内の冷却水は、加圧水を使用しているため、通常運転時の炉心全体でみた場合には、ボイドはほとんど発生しない。しかし、異常時あるいは事故時には、かなりのボイドが発生する。このボイドの挙動や流れは、燃料要素の出力や原子炉内の冷却水の流れに影響する。したがって、実炉での燃料集合体の複雑なボイド分布を把握するために様々な冷却水条件を包含した高温高圧条件下で模擬燃料集合体を用いて管群体系のボイド分布を測定した。
 試験項目は定常時ボイド測定試験、非定常時ボイド測定試験の2つである。
4.BWR新型燃料集合体熱水力試験(1989年度〜2000年度)
 BWRの高燃焼度化を目指した8×8型および9×9型燃料集合体を対象に、水力振動および熱的余裕を確認し、燃料集合体としての健全性を実証するものである。
(a)BWR新型燃料集合体
BWR新型燃料集合体は、燃料の高度化に対応するために従来の燃料集合体に設計改良が施されている。図3は、従来の8×8燃料集合体と高燃焼度8×8および高燃焼度9×9(A、B型)燃料集合体の構造比較を示したものである。
(b)試験項目
9×9型燃料集合体熱水力試験項目は以下のとおりである。8×8型燃料でも同様の試験が実施されている。
  イ.水力振動試験
   模擬燃料棒の内部に加速度計を内臓し、単相及び二相流条件下で水力振動データを取得した。
  ロ.圧力損失特性試験
   単相及び二相流条件下で試験体の圧力損失を測定した。圧力損失は、模擬燃料集合体の軸方向に沿ってチャンネルボックス壁に設けられた数個の圧力測定孔を組み合わせて差圧を測定することによって求めた。
  ハ.定常限界出力試験
   試験体出力を沸騰遷移の発生がなく、かつ、限界出力に近い状態から試験体出力を一定の時間間隔でステップ状に増加させ、限界出力を求めた。
  ニ.非定常限界出力試験
   入口温度を一定として出力、流量を許認可解析条件ベースとして設定し、初期出力レベルを増加させることにより故意に沸騰遷移を発生させる過渡変化時被覆管温度挙動試験及び圧力、流量及び入口温度を一定として出力を一定間隔でステップ上に増加させ沸騰遷移を発生させる沸騰遷移後の被覆管温度挙動試験を実施した。
(c)試験結果
  9×9型燃料と8×8燃料の振動特性に大差ないことを確認した。また、9×9型燃料と8×8型燃料の限界出力のパラメーター依存性(流量、入口サブクール、圧力)の傾向は、ほぼ同等であること等を確認した。また、過渡変化時に意図的に不当遷移を発生させた試験では、何れの燃料についても同様に沸騰遷移にともない被覆管温度は急昇するが、過渡とともに温度の上昇は単調となり、リウェットが生じて被覆管温度が元のレベルに戻ることを確認した。
5.1/3炉心混合酸化物燃料信頼性実証(1992年度〜)
 国内で利用されるBWR及びPWRのMOX燃料について、燃焼する前及び燃焼した後の調査・分析を行い、燃焼に伴う燃料の挙動評価に関する現行安全評価手法の妥当性を確認、実証するものである。
(a)全体計画
  ・基本計画・技術調査(1992年度〜1998年度)
  ・燃焼前調査(1999年度〜2000年度)
  ・照射後試験技術整備(2001年度〜2005年度)
  ・照射後試験
(b)試験結果
   照射後試験技術整備として、細粒化組織観察手法、径方向FP・燃焼度分布測定、超ウラン元素測定、プルトニウム高濃度領域におけるFPガス保持量の測定評価が2005年度までに完了している。
6.高燃焼度9×9型燃料信頼性実証(1992年度〜2006年度)
 国内の原子炉で先行的に少数体使用されている高燃焼度化に適用するよう改良されたBWR高燃焼度9×9型燃料集合体について、燃焼する前及び燃焼した後の調査・分析(照射後試験)を行い、現行安全評価手法の信頼性を確認・実証するものである。
(a)全体計画
 【フェーズI】
  ・実証用燃料集合体の照射挙動予測評価と燃焼前・照射後試験計画の検討(A型)
  ・8×8型燃料集合体の照射後試験データ取得と燃焼前・照射後試験計画の検討(B型)
 【フェーズII】
  ・燃焼前調査(燃料製造データ評価、測定装置製作他)
  ・原子炉運転時データ取得
  ・照射後試験(3サイクル燃焼燃料および5サイクル燃焼燃料)
(b)試験結果
  フェーズIは1998年度までに完了し、現在フェーズIIの試験が実施されている。フェーズ2のうち、3サイクル燃焼燃料の照射後試験は、2002年度までに完了し、現在5サイクル燃焼燃料の照射後試験が実施中である。
7.燃料集合体過渡時熱伝達試験(1995年度〜2001年度)
 PWR炉心においてDNB発生後の燃料棒から冷却材への熱伝達挙動を定量的に把握し、現行の許容限界値による評価の安全余裕を確認するとともに、燃料の高燃焼度化等、将来の炉心の多様化に備え、今後の熱的制限値の検討に際しての基礎知見とするデータを取得することを目的として実施されたものである。
(1)試験
  イ.基礎試験
   短尺の単管及び3x3管群試験体を用い、フレオンを作動流体とした基礎試験を実施し、DNB後の熱伝達特性に関する基礎データを取得した。
  ロ.高温高圧水試験
   発達した膜沸騰状態での熱伝達データの取得を目的とした定常試験と、実際の過渡変化を模擬し、過渡条件での熱伝達データの取得を目的とした非定常試験を実施した。高温高圧水試験の試験系統概念図を図4に示す。
 (2)試験結果
   PWRの条件下において仮にDNBが生じたとしても温度上昇は急激なものではなく、燃料の健全性を脅かすような温度に達する前に原子炉トリップによって温度上昇を抑制できる程度のものであることを確認した。また、現行の安全評価でDNBを起こさないように、最小DNBRを許容限界値以上とする判断基準には十分な安全余裕があることを明らかにした。
(前回更新:1997年3月)
<図/表>
図1 BWR燃料集合体最大熱負荷試験の手順
図1  BWR燃料集合体最大熱負荷試験の手順
図2 PWR燃料集合体最大熱負荷試験の手順
図2  PWR燃料集合体最大熱負荷試験の手順
図3 従来の8×8燃料集合体と高燃焼度8×8および高燃焼度9×9(A、B型)燃料集合体の構造比較
図3  従来の8×8燃料集合体と高燃焼度8×8および高燃焼度9×9(A、B型)燃料集合体の構造比較
図4 PWR燃料集合体過渡時熱伝達試験で使用する試験設備の系統概略図
図4  PWR燃料集合体過渡時熱伝達試験で使用する試験設備の系統概略図

<関連タイトル>
蒸気発生器信頼性実証試験 (06-01-01-08)
原子力発電用機器の工学試験(1)(機器・システムに関する信頼性実証試験・確証試験) (06-01-01-13)
溶接部等熱影響部信頼性実証試験 (06-01-01-26)
原子力発電施設のポンプ信頼性実証試験 (06-01-01-27)

<参考文献>
(1)(財)原子力発電技術機構:原子力発電施設 信頼性実証試験について−平成8年(1996年9月)
(2)(財)原子力発電技術機構:原子力発電施設 信頼性実証試験の現状−平成7年(1995年11月)
(3)(財)原子力発電技術機構:平成12年度燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書(BWR新型燃料集合体熱水力試験編)、p.492−p.493、付−1?付−65)(2001年3月)
(4) 独立行政法人 原子力安全基盤機構:平成17年度1/3炉心混合酸化物燃料信頼性実証成果報告書、p.1−1?p.1−6、(2006年7月)
(5) 独立行政法人 原子力安全基盤機構:平成17年度高燃焼度9×9型燃料信頼性実証成果報告書、p.1−1?p.1−10、(2006年7月)
(6)(財)原子力発電技術機構:平成13年度燃料集合体信頼性実証に関する報告書(燃料集合体過渡時熱伝達試験 総合評価編)、p.1?p.10、p.175、(2002年3月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ