<大項目> バックエンド対策
<中項目> 放射性廃棄物の処理、処分
<小項目> 放射性廃棄物の処理方法
<タイトル>
WASTEFの運転と研究利用 (05-01-02-10)

<概要>
 日本原子力研究所(2005年10月より(独)日本原子力研究開発機構)の廃棄物安全試験施設(WASTEF)は、使用済軽水炉燃料等の再処理で発生する高レベル放射性廃棄物固化体の長期貯蔵とその後の地層処分に関する安全性評価のための実験施設として、我が国における高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術の確立に寄与する目的で、昭和57年12月から運転を開始し、以後、平成8年度の主要プログラム終了まで、16年間に渡って人工バリアによる廃棄物閉じ込め性能とその耐久性に関する各種の安全性研究に活用された。その後、ガラス固化体試験に係る実験設備、試験装置の解体・撤去を目的とした終了措置と利用の拡張を並行して進めつつ、平成10年度から新たなタイプのホット試験施設として再スタートし、いわゆる、照射後試験に限定することなく、所内の研究分野全般を視野に入れた利用拡張を図って、TRU取扱試験やホット環境試験を含む広範なホット試験利用者を確保し、計画的に試験設備・装置の整備を進めて、材料研究、燃料研究、マイナーアクチノイド物性研究、廃棄物処分研究等の分野を対象とした特徴ある施設運転を展開してきた。施設概要と利用の変遷、研究利用の成果、今後の展望を概説する。
<更新年月>
2005年11月   

<本文>
1. 施設概要と運転の変遷
 廃棄物安全試験施設(WASTEF;Waste Safety Testing Facility)は、使用済軽水炉燃料等の再処理で発生する高レベル放射性廃棄物固化体の長期貯蔵とその後の地層処分に関する安全性評価のための実験施設として、我が国における高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術の確立に寄与する目的で、昭和57年11月に核燃料・RI使用施設として完成し、翌12月から運転を開始した。建家は、地上2階、地下1階、延べ床面積3、476m2の基礎一体型鉄筋コンクリート造りで、1.85PBqの再処理実廃液を最大5リットルのガラス固化体として取扱うことのできるβγコンクリートセル3基(No.1、2、3セル)とPu等超ウラン元素(以下TRU)含有の廃棄物固化体が取り扱える気密構造のαγコンクリートセル2基(No.4、5セル)を主体とし、これらを補完するための設備としてαγ鉛セル1基、グローブボックス類9基(H15年度にボックス付き装置2基増設)、フード7基を付設するとともに、周辺には操作室、アイソレーションルーム、サービスエリア、ホット実験室、コールド実験室、一般居室等を配置した構造である(図1参照)。
 昭和57年12月開始の最初の運転は、137Csを含むRI合成廃液を用いたガラス固化体の作製で、この分野における我が国初のホット試験であった。WASTEFは、以後、平成8年度(一部10年度)の主要プログラム終了まで、16年間に渡って人工バリアによる廃棄物閉じ込め性能とその耐久性に関する各種の安全性研究に活用された(ここまでを第1世代期と呼ぶ)。その後、ガラス固化体試験に係る実験設備、試験装置の解体・撤去を目的とした終了措置と利用の拡張を並行して進めつつ、平成10年度から新たなタイプのホット試験施設として再スタートした(ここからを第2世代期と呼ぶ)。この利用拡張においては、WASTEFが培ってきた特徴的技術を生かすべく、所内の研究分野全般を視野に入れた展開を図り、いわゆる、照射後試験(以下PIE)に限定することなく、広範な利用分野を確保した。この第2世代期の試験装置整備は、平成15年度をもって第1段階を終了し、これ以降は、14年度末をもって照射後試験を停止した東海ホットラボの代替施設としての使命を果たすべく、材料関連の試験実施に向けた第2段階の整備を進めている。
 第1世代期においては、No.1セルに貯蔵試験装置、No.2にガラス固化体作製装置(図3)、No.3に試料調製機器と処分試験装置、No.4に物性測定装置、No.5にα加速試験装置とシンロック固化体作製装置を配備し、鉛セル、グローブボックス(以下GB)には、これらでの各種試験を補完するため、X線回折装置、試料調製機器、物理測定機器、分析機器等を備え、RI添加の合成廃液ガラス固化体と再処理実廃液のガラス固化体を試験目的に応じて作製し、(1)貯蔵時における安全性評価のための貯蔵試験及び事故時評価の1つとしてのガラス固化体の揮発試験、(2)処分時の安全性を調べるための各種の浸出試験、α加速試験(244Cmなどの比較的短半減期α放出核種を添加した固化体を用いて高レベル放射性廃棄物固化体が1万年以上に渡って受けるα線を約2年間で与え、固化体の放射線に対する長期的安全性(耐久性)を評価する試験)等を実施した。加えて、当時、新たな固化法として注目されたシンロック(人工岩石)固化体についての性能評価試験を実施した。
 利用拡張のために試験装置の再整備化を図った第2世代期第1段階整備においては、各研究分野の研究計画等に沿って計画的に設備、装置をセル、GBに設置し、また、試験技術を開発・確立して、順次にホット試験(TRU取扱試験、ホット環境試験)及びPIEを開始した。各利用分野の機器整備と技術開発等の状況は以下の通りである(表1参照)。
1)βγセルの大きなスペースは、他施設では設置困難な大型実験設備用に使用し、軽水炉構造材の照射誘起応力腐食割れ現象(IASCC)研究のための複合環境下試験設備(水ループ付き)として、No.2セルに高温高圧水中低歪速度試験装置(SSRT試験装置;図4参照)と高温水中マルチ型単軸引張SCC試験装置(単軸定荷重試験装置UCL3台、SSRT/UCL試験装置1台)、No.3セルに環境適応性評価試験装置(高温高圧水中のSSRT試験、伝熱面腐食試験可能)を整備し、発生機構解明等のためのデータを蓄積中である。
2)沸騰硝酸のオフガスとαの取扱技術は、再処理施設用機器材料の耐食性評価研究のための腐食試験に生かし、No.3セルに使用済燃料溶解液を用いる燃料溶解槽材料用伝熱面腐食試験装置(図5)と連続式溶解槽等材料用伝熱面応力腐食割れ評価試験装置を、また、No.4セルにNpを使用する酸回収蒸発缶材料用伝熱面腐食試験装置2台(板材試験片用、管材試験片用)、高レベル廃液濃縮缶材料用伝熱面腐食試験装置を整備して機器補修の判断基準や新材料の規格策定のためのホット環境試験に適用し、有益なデータの排出に寄与してきた。
3)不活性GBを使用するTRU等のα核種取扱技術は、マイナーアクチノイドの核変換を睨んだアクチノイド凝縮系物性研究の推進に生かし、No.5セルにAm、 Cm使用の蒸発挙動試験装置と小型高温電気炉を、メンテナンスボックスにTRU窒化物調製用電気炉とTRU窒化物不純物分析装置を整備するとともに、15年度には新たにAr雰囲気ボックス付き熱拡散率測定装置と空気雰囲気ボックス付き比熱容量測定装置を増設し、マイナーアクチノイド窒化物・酸化物についての世界的にも先進的な実験の展開に貢献してきた。
4)第1世代期に培った化学分析・測定技術は、PIE分野における長年の懸案であった使用済燃料の燃焼度測定に応用し、環境科学研究部(旧原研(現日本原子力研究開発機構))からの技術移転を受けて、14年度に化学分離技術を自前技術として定着させ、15年度には、同部所有の表面電離型質量分析装置の操作技術を習得して一連の技術を確立し、PIEに新たな道を拓いた。
5)加えて、放射性廃棄物のバリア性能研究として,従来設備機器を用いてのPu移行実験や岩石型燃料(U−ROX)の浸出試験及びRI・研究所等廃棄物研究を睨んだTRU使用の小規模溶融固化体作製装置をN o.5セルに整備しての溶融固化体浸出試験等を実施している。
 他方、東海ホットラボの代替機能に照準を合わせた第2段階整備では、材料試験に特化した機器整備、技術開発を進めており、15年度においては同施設から電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)と集束イオンビーム加工装置(FIB)を移設し(図6参照)、17年度にはオージェ電子分光分析装置を整備してPIE技術の高度化を図った。更に、原子燃料工業(株)との燃料被覆管の破壊靱性試験に係る共同研究によって、恒温槽付き引張・圧縮試験機、放電加工機、予き裂導入装置をNo.1セルに整備し、試験技術を確立して国のプロジェクトを支援するための特殊な機械強度試験を行っている。今後においては、大強度陽子加速器施設における核変換実験施設建設に係る研究開発ニーズに応えるため、微小試験片材料試験装置(引張試験装置、疲労試験装置)を整備する計画がある。
2.研究利用の成果
 WASTEFの第1世代期の運転では、「海外委託再処理に伴う高レベル廃棄物返還固化体に関する調査」、「ガラス固化体閉じ込め安全性実証試験」、「海外再処理返還廃棄物確認手法信頼性実証試験」等の国あるいは電力10社からの受託調査と原研(現日本原子力研究開発機構)における独自研究の下に、その固化体についての発熱量等の各種物性測定、貯蔵条件下での放射能揮発試験、数万〜10万年経過時の閉じ込め性能を調べるα加速試験、処分環境下における万一のマルチバリア破れを想定してのTRUの地下水への浸出試験等々の実施によって安全性と妥当性評価に貴重で有用なデータを提供し、国の安全基準策定や海外委託再処理の返還廃棄物受け入れ等に大きく貢献した。
 利用拡張を進めた平成10年度以降の第2世代期においては、材料研究分野では、IASCC研究に関して、軽水炉環境模擬条件下での、試験片表面の「その場観察」を伴う低歪速度(SSRT)試験と一定荷重(UCL)試験の継続実施により、SCCき裂の発生条件、進展挙動等に関するデータを取得し、構造材のIASCC支配因子と発生機構の解明に有効なデータを着実に提供して来た。また、超高燃焼度炉MOX燃料用高性能燃料被覆管材料の技術開発として、原研(現日本原子力研究開発機構)開発材料の適用性評価のための基礎データを蓄積中である。他方、六ヶ所再処理機器の耐食性評価試験では、酸回収蒸発缶材料について、現行再処理規格と原研(現日本原子力研究開発機構)開発のステンレス鋼の耐食性の比較評価試験を継続中であり、腐食の重要な支配因子として見出したNp添加の模擬硝酸溶液を用いて、寿命を支配する伝熱管の腐食に及ぼすγ線や沸騰伝熱条件等の評価データを取得している。また、燃料溶解槽材料の金属ジルコニウムについては、実機環境を模擬したγ線照射下の使用済燃料溶解液を用いた腐食試験及び応力腐食割れ評価試験を、実環境の沸騰伝熱の影響も考慮して実施しており、耐食性及びSCC感受性の評価データを取得し、機器の保守管理の判断基準となる寿命評価システムの整備に貢献してきている。加えて、使用済燃料被覆管の破壊靭性試験では、試料加工技術、試験片組立技術、疲労予き裂導入技術を開発して国のプロジェクトである受託業務に適用し、軽水炉燃料集合体の健全性評価に係る貴重なデータを取得した。
 アクチノイド凝縮系物性研究分野に関しては、酸化物を出発原料として炭素熱還元法により高純度のAm及びCm系窒化物(AmN、(Am,Zr)N、(Cm,Pu)N等)の合成に世界で初めて成功したほか、高温におけるAm蒸発等の高温挙動に関するデータを取得するとともに、これらの基礎物性、熱物性データを蓄積中である。廃棄物処分分野では、小規模溶融固化体作製装置によりNp、Am含有の溶融固化体を作製してバリア性能確認のための浸出試験等を行うとともにモルタル・ベントナイト内及び花崗岩内のNp等拡散試験により人工及び天然バリアによるTRU閉じ込め性能に関する安全試験データを取得した。燃料関連では、燃焼度測定に係る化学分離と質量分析技術をPIEに定着させ、14及び17年度には東電福島第2のBWR燃料、15及び16年度には旧JNCふげんMOX燃料についての都合4件の試験を実施して旧原研(現日本原子力研究開発機構)の化学部門が培ってきた特殊技術の継承を可能にし、PIE分野における懸案課題の一つを解消した。(旧JNCと旧原研(現日本原子力研究開発機構)は2005年10月より(独)日本原子力研究開発機構となった)
3.今後の展望
 新たなホット試験施設として再生されたWASTEFの18年度以降の運転は、IASCC研究や再処理施設用機器材料の研究開発、軽水炉燃料の健全性評価等に係る材料関連試験、燃焼度測定等の化学分析を主体とした燃料関連試験、アクチノイド凝縮系物性研究や廃棄物処分の安全性に係る試験を軸とした4分野のPIE、ホット環境試験、TRU取扱試験の継続的実施が基本となるが、特に、材料分野に特化した第2段階整備を推し進め、微小試料取扱技術の高度化によるTEM−FIB装置の利用拡張、微小試験片材料試験や燃料被覆管周方向引張試験等のニーズに対応してゆく所存である。加えて、17年度下期からは、放射性同位元素使用の許可を取得した同じサイトに位置する燃料試験施設との連携によって、金相試験、SEM観察、EPMA分析、超微小硬さ試験等のより広範且つ高度な試験が可能となる。
<図/表>
表1 WASTEFの研究利用分野と試験・装置一覧
図1 廃棄物安全試験施設(WASTEF)全景
図3 ガラス固化体作製装置とガラス固化体試料
図4 高温高圧水中低歪速度試験装置(SSRT試験装置)
図5 燃料溶解槽材料用伝熱面腐食試験装置
図6 微小領域観察用TEM−FIB装置

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<関連タイトル>
日本原子力研究開発機構 (13-02-01-35)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:日本原子力研究所年報(H14年度、H15年度、16年度)
(2)日本原子力研究所安全性試験研究センター(編):原子力安全性研究の現状(JAERI−Review 2002−30、2005−009)
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