<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理施設
<タイトル>
再処理施設の工程設計 (04-07-03-02)

<概要>
 再処理施設の工程設計は、処理対象燃料の仕様、立地条件、環境条件すなわち放射能放出の制限条件等に対応して、性能について評価が高い幾つかの方法から最適なものを選んで組合せ、全体として優れた工程を纏め上げることである。この際、安全面の重視と運転、保守両面にわたって使い易い施設を設計することが重要である。軽水炉使用済燃料の再処理では、燃料集合体剪断、溶解、ピューレックス溶媒抽出法による核燃料物質核分裂生成物との分離・精製、蒸発法を主とする廃液処理、高レベル廃液のガラス固化等の組合せが広く用いられている。
<更新年月>
2004年03月   

<本文>
1.はじめに
 再処理施設の工程には大きく分けると湿式法と乾式法があり、技術開発の歴史的変遷、対象燃料の種類、施設の目的や規模等により実施例は多様である。
 ここでは現在、発電施設として最も広く普及している軽水炉の低濃縮ウラン酸化物燃料の使用済燃料再処理の工程設計について解説する。
2.再処理施設の仕様
 工程設計にあたって、施設の基本的な性格を決める必要がある。主なものは次のようである。
(1)立地条件:輸送、用水源、排水等に係わって海に面している(臨海)か、河に沿っているか等の条件のほか、放射線、放射性物質放出の影響についての評価に関連して、気象条件、社会条件(人口、人口密度、産業形態等)等の環境条件から、また施設の堅固さに関連して地盤状況、予想される地震力、風力等の自然条件から定める。
 立地国毎に国際的な基準や勧告等を基に再処理施設規制の法律が定められている。
(2)対象処理燃料(質と量):ここでは軽水炉使用済燃料としたが、更に細かく対象燃料の仕様を定める必要がある。沸騰水型炉BWR)か加圧水型炉(PWR)かで燃料の形が異なるので、工程の選択や機器の設計に影響を及ぼす。燃料の燃焼度及び冷却期間によって使用済燃料の内蔵する核燃料物質、放射性核種の種類と量が定まるので、この二つは基本的な設計条件である。工場の規模は使用済燃料の処理量で表現されるが、総合的には年間の処理量が規定されており、安全評価等ではピーク量として一日当たりの量が規定されている。処理量は取り扱う使用済燃料を炉心に装荷して照射する前に含まれていた核燃料物質の量で表す。
(3)線量評価:再処理施設はその運転にあたって、環境へ放射線や放射性物質の放出を低く抑える必要がある。自然放射能や既に行われた核爆発等による人工放射性核種の分布による環境の線量をバックグラウンドとして把握した上で、施設からの放出による影響がそれに対して有意な付加量にならないように制限している。
 線量評価のためには、工場から排出される放射性物質がどのように環境や住民に取り込まれるのか、立地条件にあわせて今までの経験や研究をもとに余裕を持ったシナリオが作られる。これで試行的に線量評価を行って工場排出量のレベルを定め、それを実現できるように工程を選択し組み合わせる。
 工程設計が決まってから線量評価は再評価される。
3.再処理施設の工程設計
(1)稼働率:再処理工場は化学工場のような性格を持っているので、一日の最大処理量で出来るだけ長く連続的に運転日数を重ねるのが効率的である。しかし、次のような理由で既設の工場では一つの連続運転期間(キャンペーン)は百日程度になっている。
 (a)年間少なくとも一度の核燃料物質計量管理上の運転停止を伴う在庫調査が必要、
 (b)年間一度の原子炉等規制法による定期検査が必要、
 (c)工程機器にはある程度の間隔で部品交換や調整の必要なものがある、
 (d)放射能の蓄積によりバックグランドが上昇し計測や放射線管理上都合が悪い、
 (e)工程機器内に核燃料物質等の蓄積が増えると計量管理や安全管理上都合が悪い。(a)、(b)、(c)等のため年間適当な保守期間を予め設定して、その期間を効率よく使用すると共に、数年間に一度、より長期の保守期間を計画的に設定すると良い。
 現在では年間運転期間 200〜260 日、保守期間 100〜160 日程度が妥当と考えられている。前者を長くするような工程を選択し、装置機器材料を設計、調達すると共に後者を短縮するように保守設備の設計を行う訳であるが、適当なところで折り合わないと総合的な合理化は図れない。工場の性格、規模によっても稼働率設定の分岐点は異なってくる。
(2)燃料受入貯蔵工程
 現在、発電炉の大部分がプールタイプの使用済燃料一時貯蔵施設を持ち、輸送容器に使用済燃料を装荷するのはプール内で行っている。輸送容器は湿式(燃料は水漬け)と乾式(ガス密封)がある。再処理側の燃料受入施設では湿式(プール)、乾式(セル)の二方式がある。
 再処理前の一時貯蔵はプール内で行うのが一般的である。
(3)脱被覆工程
 軽水炉燃料は、酸化物ペレットをジルコニウム合金の被覆管に詰め密封した燃料棒を数十〜数百本束ねた燃料集合体である。ペレットを硝酸に溶解するためには被覆管を壊さなければならない。集合体のまま剪断機で端部から剪断する方法が主流であって、剪断機の設計には色々な様式がある。小規模施設では集合体を分解してから燃料棒を剪断する方式も用いられる。
(4)溶解工程
 剪断した燃料を硝酸で溶解する工程では被覆管は溶けず、また核分裂生成物のうちで白金族等は溶け難い。溶解は回分式又は連続式の溶解槽で行われる。溶け残った被覆管は回分式ではバスケットで、連続式では自動的に溶解槽から取り出される。その他の不溶解残滓は遠心清澄機、フィルター等で分離される。この部分を清澄工程と言う。溶解時に発生するオフガスは、含まれる放射性ヨウ素等を除去する装置を経て、高性能フィルターで放射性の塵を除去し排気筒に送られる。オフガス処理系の設計は、環境からの要求によって最適なものが選ばれる。溶解の連続化はフランスによって建設された大型工場に採用され、六カ所村に建設している再処理工場にも用いられるが、回分式との絶対的な優劣を論ずる段階ではない。
(5)抽出分離工程
 清澄工程を出た溶解液は、成分、酸度等を調整し核燃料物質の計量を行ったのち、核分裂生成物とウラン、プルトニウム等の核燃料物質とを分離する工程に送られる。ここでは燐酸トリブチル(TBP)をドデカンによって希釈した溶媒で核燃料物質を抽出する方法が用いられる。ウランとプルトニウムを分離するにはプルトニウムを還元して原子価を3価にすればよい。還元剤には4価のウラン等が使われるようになった。この方法をピューレックス法と言う。これに替わる方法は今のところわが国では、工業的に採用されてはいない。
 抽出を行う装置にはミキサセトラ、パルスカラム、遠心抽出器等があり、それぞれ特徴を活かした用い方が採用されている。
 今後、高次のα線放射体(ネプチニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム等のTRU)やテクネチウム等の分離が考えられるようになると、抽出分離工程の細部に手が加えられる可能性はある。
(6)ウラン精製工程
 分離した硝酸ウラン溶液は、更にTBPによる溶媒抽出で精製されたのち、蒸発によって濃度を高める。このまま燃料加工工場に送られるか、あるいは加熱して硝酸分を飛ばして酸化ウラン粉末としてから一時貯蔵するか燃料加工工場に送られる。
(7)プルトニウム精製工程
 分離した硝酸プルトニウム溶液は、更にTBPによる溶媒抽出で精製されたのち、シュウ酸沈澱、仮焼等により酸化プルトニウム粉末にするか、蒸発缶で濃度を高めたのち加熱して脱硝し酸化プルトニウムとする。硝酸ウランと硝酸プルトニウムの溶液を混合してマイクロ波で加熱・脱硝し、混合酸化物燃料に適する原料を直接製造する方法が、核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)により開発され実用化されている。
(8)溶媒再生工程
 溶媒は工程で使用中に放射線損傷、化学的劣化等があるので、アルカリ洗浄等で連続的に浄化再生する工程が組み込まれている。
 ある程度使用した溶媒は、再生しても性能が低下するので廃溶媒として処理する。廃溶媒処理法には蒸留法、燐酸洗浄法等があり、回収された希釈剤等は工程にリサイクルされる。劣化物はプラスチックで固化するとか加熱分解して処理する。
(9)高レベル廃液処理工程
(a)高レベル廃液
 溶媒抽出で分離された核分裂生成物を主要な成分とする廃液(ラフィネート)は高放射性であり硝酸を含む。蒸発缶で濃縮し、蒸気の凝縮液中の硝酸は酸回収工程で回収する。蒸発缶の腐食を減らすため減圧蒸発(蒸発温度が低下)を採用したり、耐食性の合金を用いたりする。硝酸の濃度が高くなり過ぎないように操作条件を工夫する。濃縮液は貯蔵して放射能をある程度崩壊させてから、ガラス状に固化する方法が定法となっている。
(b)中・低レベル廃液処理工程
 精製工程等の溶媒抽出ラフィネートは酸回収工程の蒸発缶で硝酸を回収し、濃縮液は高レベル廃液処理工程に送る。回収酸は工程にリサイクルされる。溶媒再生工程等の塩を含む廃液は蒸発・濃縮しアスファルト、セメント等で固化する。
 中レベル廃液処理工程の蒸発蒸気の凝縮液を更に低レベル廃液処理工程で蒸発処理すると殆ど放射能を含まない処理液が得られる。これは環境制限が厳しい場合でも可能な限り放射性物質を取り除き、海や河に放出できる。環境影響評価の結果、放射能放出限度に余裕があれば、上記の工程を変更する例もある。図1に軽水炉使用済燃料再処理の代表的な工程図を示す。
4.むすび
 工程設計に当たっては、運転と保守の両面にわたって使い易い工場を実現することが重要である。研究開発を含めた実地の経験が、優れた工場を生み出す工程設計の実施の基礎になることを忘れてはならない。
 環境放出についてはALARA(As Low As Reasonably Achievable)「合理的に達成できる限り低く」という考え方が国際的に提唱(ICRP勧告等)されており、工程設計に当たって尊重されている。
<図/表>
図1 軽水炉使用済燃料再処理工程図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
再処理技術の現状 (04-07-01-06)
再処理施設の安全設計 (04-07-03-01)

<参考文献>
(1)清瀬量平:原子力化学工学(第3分冊)使用済燃料とプルトニウムの化学工学;(第4分冊)燃料再処理と放射性廃棄物管理の化学工学(1983)。
(2)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、火力原子力発電技術協会(平成2年6月)
(3)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ