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<概要>
(1) ラドン222は、ウラントリウム系列中の唯一の気体元素として、その挙動には独特なものがある。
(2) 空気中の放射性物質には、粉塵状のものとしてウランやラドンの娘核種があり、気体状のものとしてラドンがある。
(3) 粉塵状のものは濾紙で捕獲し、α線検出器を使用して測定する。ラドンは電離箱で測定することが多い。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1) ラドン222は、ウラン・トリウム系列中の唯一の気体元素として、その挙動には独特なものがある。ウラニウム・ラジウムなどの天然の放射性元素からラドン(またはトロン)ができるが、これは気体であるから地中の鉱物からにげて空中に飛び出す。これからα線またはβ線を出して、ラジウムA、ラジウムB、ラジウムCなどの放射性元素がつぎつぎと出来て行く。そこで雨が降ると、これらが雨にまざって落ちてくる。したがって降りはじめの雨には特に多く入っており、後になるほどきれいな雨が降る。
 ラドンは元来ガスで水にとけているが、その半減期は 3.8日で短く、体内に入りやすく、また出やすいのが特徴である。体内にいる短時間の間にラジウムA、ラジウムB、と変わっていき、その間に放射線をたえず放出して生理的作用をする。
 このようにラドンは普通の生態系中にも存在するが、その濃度は2.59×10-14MBq/cc程度で極めて微量である。しかし、核原料物質鉱山(ウラン鉱山) の坑内ではラドンの発生が顕著であり、坑内通気設備の管理下においても0.22〜0.44×10-8 MBq/cc程度と、相当量存在することとなる。このラドンガスは放射性壊変によって、3核種からなる娘元素を伴い、吸気とともに人体内に摂取されるが、特にラドン222から壊変したばかりのラジウムA(ポロニウム218)は短寿命ながら原始的な状態で存在する(拡散速度が大きい)ので、気管支内壁に容易に付着して、作業者に高い被曝を与える。
 このようにウラン鉱山における放射性被曝には、ラドンおよび放射性粉塵の吸入もしくは摂取に起因する内部被曝と、もう1つはウランその他の放射性物質による外部被曝とがある。坑内作業個所の照射線量率は放射性鉱物の含有量によって左右され、0.04〜1.0 mR/h であり、平均約0.2mR/h である。したがって、年間被曝量としても0.5 レム以下で職業人の許容線量と比較して、10分の1以下であり、かなり低い値である。

(2) 坑内や製錬所におけるβ線やγ線はG・Mサーベイメータやシンチレーションカウンタなどにより照射線量率を測定するほか、フィルムバッジやポケット線量計を使用して外部照射線量を測定する。空気中の放射性物質の測定は、環境中の放射性物質の濃度を知り、それより作業者の摂取するであろう放射性物質の量を求めるとともに、その量をできるだけ低く抑える対策を立てるための指針を得ることである。
 空中の放射性物質には、粉塵状のものとしてウランやラドンの娘核種(以下ラドンdrsという)があり、気体状のものとしてラドンがある。ウラン鉱物は微細な粉塵になりやすいので、鉱床中のウラン品位より粉塵中のウラン品位の方が高い。ウラン粉塵は濾紙に多量の試料空気を流して採取する。採取位置はできるだけ作業位置に近づけて、最低5m3程度を採取する。また作業者が特に広い範囲で行動する場合には、個人用エアサンプラを使用する。製錬所においては、作業者と発塵源および通気の状態などを考慮して、平均的ウラン濃度が得られる場所を選ぶ。また酸のヒュームやミストのように濾紙で採取しにくいものもあるので、ガラス洗浄ビンに入れた溶液中に試料空気を送り、ウランを落とすような湿式法が使われる。ウラン粉塵の測定は、粉塵の粉塵重量とウラン量を求め、空気中の粉塵濃度、ウラン濃度を求める。ウラン量は化学分析および放射能測定によって行う。

(3) ウラン鉱床がマグマ起源の場合はトリウムが共存することが多く、ラドン222とラドン220が共存しているが、人形峠鉱山のような堆積型鉱床の場合は、ほとんどトリウムを含まないので、ラドン222のみが存在する。ラドン220は半減期が54.4秒で、第一番目のポロニウム216の半減期も0.158 秒と短いので、試料採取後短時間内に測定しなければならない。それに反しラドン222は半減期が長く、その上比較的長時間にポロニウム218、ポロニウム214のα線放射体を生ずるので、試料採取後長時間経過してから測定しなければならない。ラドンは電離箱で測定することが多いが、スプレーなどで試料空気を濾材ー乾燥管ー電離箱の順に電離箱容積の6〜7倍以上流す。電離箱の電極に適当な電位を与え、α線などによって作られるイオン対の再結合を防止しながらイオンの総量を振動容量電位計によって電離電流を測定して求める。ラドン220はラドン222と同一の方法で測定できるが、試料採取後できるだけ早く(1分以内)測定を開始し、1分間測定して、その時間的変化から濃度を計算する。

(4) 呼吸器管内部被曝の原因の大部分はラドンdrs によるものとされ、作業個所の危険度の評価上極めて重要なものと考えられている。ラドンdrs のうちラジウムA は半減期が小さいため、採取時間を短くしなければならない。普通3分間である。ラドン娘核種は一次粒子でも大型粒子でも比較的容易に濾紙に捕えられる。 ラジウムAと ラジウムCがα放射体であるので、α線検出器を使用して測定する。 ZnSシンチレータはα線によって強い蛍光を発するが、β線、γ線に対してはほとんど光ることはない。採取した資料のα放射能は時間と共に減衰するが、その様子は始めの ラジウムA、 ラジウムB、 ラジウムCの存在比によって決まるので、減衰曲線の形状係数から計算で求められる。
 また照射線量率の測定にはG・Mサーベイメータにより測定しているが、さらに個人被曝線量の監視のため、坑内作業員等はフィルムバッジを着用し、現像測定により、個人被曝線量の評価を行っている。坑外施設(製錬所、六フッ化ウラン転換開発室、鉱石試験室等)においては、照射線量率、表面汚染密度、場内空気中のウラン粉塵濃度、ラドン濃度および排気中のウラン濃度を週1回、また排水中のウラン、ラジウム濃度を排水の都度測定するほか、ハンドフットクロスモニタ等によって身体表面、衣服の汚染検査を行い、放射線管理に努めている。以上ウラン鉱山においては作業者の内部被曝防護のため、作業環境の空気中の放射性物質濃度を管理し、汚染の発生の防止をはかり、フィルムバッジ等を使用して外部被曝線量を測定して被曝管理を行っている。
 放射性壊変:原子核のなかには、自然に粒子や電磁波を放出して、別の原子核に変わるものがある。この現象を放射性崩壊、または単に原子核の崩壊という。崩壊の種類としては、α崩壊、β崩壊、γ崩壊が古くから知られている。そのほかにもβ崩壊に近い現象として電子捕獲、γ崩壊に近い現象として、内部転換などがあるが、それらには核外の軌道電子が必要であり、厳密に言えば、原子の崩壊を伴う。また、自発核分裂も崩壊の一種とみなすことができる。外から別の粒子が衝突して原子核が壊れることは核反応と呼ばれ、普通は崩壊といわない。なお放射性核種が、崩壊して順次変化していく系列を放射性崩壊系列という。
<関連タイトル>
ウラン・トリウム鉱石に含まれる放射性核種 (04-03-02-02)

<参考文献>
動力炉・核燃料開発事業団(編):『ウラン鉱業技術集』(1968年7月)
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