<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 技術開発
<タイトル>
JENDL汎用ファイルの変遷 (02-08-01-08)

<概要>
 JENDL汎用ファイルは、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)核データセンター(現核データ評価研究グループ)とシグマ委員会とが協力してAll Japanで開発されている、日本の標準として利用できる汎用の評価済み核データライブラリである。汎用であるということから、利用目的を特定しない。原子力のエネルギー分野を主たる対象として、原子炉設計解析をはじめとする、種々の分野で必要となる中性子入射反応断面積、放出粒子のエネルギー分布、角度分布等のデータを多数の原子核に対して、必要となる全てのエネルギー範囲(例えば10-5eVから20MeVまで等)について、またそのエネルギー領域で起こり得る全ての核反応データが、エネルギーに対して一意に評価され(一本の線で表現され)かつ決まったフォーマットでそれらが計算機可読の形で用意されている(ENDF/B-6フォーマット)という特徴を持ったデータファイルである。
 ここでは、日本のJENDL汎用ファイルの変遷を昭和40年代のJENDL-1から最新版のJENDL-4までを概観する。
<更新年月>
2011年11月   

<本文>
1.JENDL-1(参考文献(1)参照)
 昭和40年代の初期より、わが国で最初の評価済核データライブラリJENDL-1の開発が開始された。当初、対象は高速炉に限定(「常陽」、「もんじゅ」への利用のみ想定)していた。高速炉の設計に必要となる主要燃料核種、構造材、冷却材の72核種のデータを評価すると共にファイル化し、昭和52年(1977年)に第1版として公開された。
2.JENDL-2(参考文献(2)参照)
 JENDL-1の公開を受けて、高速炉のみならず、軽水炉を含めた核分裂炉(炉心、遮へい)及び、核融合炉を対象とした、評価済汎用核データライブラリの開発を目指してJENDL-2の開発がスタートした。JENDL-1を基に、核分裂炉を対象とした汎用ライブラリとして必須となる、核分裂生成物(FP)に中心をおいた181核種を整備し、汎用核データライブラリJENDL-2を開発し、昭和57年(1982)公開された。この間、ライブラリ公開に関して、広範囲のベンチマークテストによるデータの適用性の検証のあと公開という手順を確立し、そのためのデータ検証グループをシグマ委員会内に組織して対応した。こうした一貫した、評価、検証のサイクルを行う組織として、シグマ委員会を再構成した。当時、世界の汎用核データライブラリの中でもJENDLの核分裂生成物のカバー率は突出しており、詳細な燃焼計算を可能とするべく大きな貢献をした。また本ライブラリは、「もんじゅ」の設計への貢献や、炉心のみでなく、遮へいについての適用を考慮し、核分裂炉設計のための日本の共通ファイルとしての位置付けを得た。
3.JENDL-3.2(参考文献(3)参照)
 JENDL-2の完成を受けて、JENDL-3の開発がスタートした。目標は、多目的用評価済核データライブラリの開発で、対象は原子力開発一般である。JENDL-2を基に、原子力一般への利用のための汎用評価済核データライブラリの開発を行い、核分裂炉設計、施設遮へい設計、その他放射線応用のための、中性子反応断面積、2次γ線生成断面積を含む汎用ライブラリとして平成元年(1989年)にJENDL-3が、さらにそれに新たな核種を追加した340核種からなるJENDL-3.2が平成6年(1994年)に公開された。本ライブラリは、当時、中性子反応断面積及び2次γ線生成断面積を収容するわが国で唯一の汎用ライブラリであり、熱中性子炉、高速炉、核融合炉等に代表される原子炉開発で必要となるほぼ全ての核種を網羅していた。また、適用性評価を十分行い、その時点でのQA(品質保証)についての検討が実施されたデータが公開されているといった、他のライブラリにはない特徴を有していた。また、この間大幅な進歩をとげた、連続エネルギーモンテカルロ法等の原子炉計算手法の高度化に呼応して、汎用ライブラリをできるだけ変更しないで利用する方法での核データの利用がこのライブラリで一般化した。世界3大ライブラリのひとつであり、適用性の良いことには定評がある。また、NEA,IAEAを通して公開されている(CD-ROM,WEB)ため、いまだ世界で広く使われていることがその特徴として挙げられる。
 他の主要評価済ライブラリとの違いをあげるとすると、ENDF/B等が採用している、全ての断面積データに基準となるデータからなるStandard Fileの概念はJENDLにはない。その代わり、主要重核の同時評価によって断面積を決定するといった、他のファイルとは違った非常にユニークな評価手法を取っていること、輸送計算での利用を第1義と考えて、実験データの比較的豊富にある天然元素評価を行っていること、前にも述べたが、高速炉、熱中性子炉、遮へい、核融合炉ニュートロニクスでの広範なベンチマークテストを実施し、その結果をフィードバックしてさらに再評価し、その時点でのQA(品質保証)についての検討が実施されたデータを評価データとして採用していること、が挙げられる。
4.JENDL-3.3(参考文献(4)参照)
 前版であるJENDL-3.2は、核分裂炉、核融合炉、遮へい、臨界安全解析等数多くの場面で使われ、さらには、原子力のみならず、宇宙進化等へといったこれまで異分野であった方面までその利用が広がった。それに伴い、核データ評価上の問題、プロセス上の問題、評価ポリシーからの問題等、議論すべき問題点が多数上がってきた。これら問題点を総括するとともに、新たにJENDL-3.3の目標として、エネルギー生産のための原子炉を目的とするものの、設計裕度の算出までを可能とする、誤差データを含む核データの提供を目指したファイルの作成が決定された。核分裂炉対応と言うことで、現行炉(軽水炉、高速炉)、将来炉(ABWR、APWR、及び近未来のPuリサイクル炉及びADSを含む革新的将来型炉)で問題となる核データの再評価を行った。特に、従来ユーザーニーズの点からおろそかに成りがちであった軽水炉関係のデータに対して重点化をはかる事とし、235Uについては、熱群からepi-thermal(熱外中性子)にかけての断面積(核分裂、捕獲、それらの比であるα値)の確定、高燃焼度化を視野に置いた可燃性毒物断面積の充実(Erの新規評価)等が予定された。また、238U非弾性散乱断面積をはじめとする、粒子放出反応におけるエネルギー分布データの改訂によるライブラリの充実が図られた。特徴的なこととして、高速炉を主な対象としてはいるが、核データの持つ誤差からの設計マージンを少なくすることを目標に、従来全くデータを収録していなかった共分散データを主要核種について充実させたことが挙げられる。また、従来天然元素評価とアイソトープ評価との整合性が取れていない核種が散見されており無用の混乱の種となっていたことから、アイソトープ評価のみのデータを提供することとしている。このことは後のJENDL-4.0にも引き継がれている。積分テストによる複数回にわたるデータ再評価を経て、最終の公開前のベンチマークテストとして、熱中性子炉、高速炉、遮へい、核融合ニュートニクス等でのチェックを終了し、平成14年5月にJENDL-3.3は公開された。
5.JENDL-4(参考文献(5)参照)
 平成22年5月に公開されたJENDL汎用ファイルの最新ファイルである。詳しくは、<02-08-01-07>「日本の評価済み核データベースJENDLの開発」を参照されたい。
<関連タイトル>
日本の評価済核データベースJENDLの開発 (02-08-01-07)
JENDL特殊目的ファイルの概要 (02-08-01-09)

<参考文献>
(1)S.Igarashi et. al.,“評価済み核データライブラリー、JENDL-1の概要”,日本原子力学会誌,20,30(1978)
(2)Version of Japanese Evaluated Nuclear Data Library (JENDL-2)”,J.Nucl.Sci.Technol.,22,593(1985).
(3)Nakagawa T.,Shibata K.,Chiba S.,Fukahori T.,Nakajima Y.,Kikuchi Y.,Kawano T.,Kanda Y.,Ohsawa T.,Matsunobu H.,Kawai M.,Zukeran A.,Watanabe T.,Igarasi S.,Kosako K. and Asami T.,:”Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-2: JENDL-3.2”,J.Nucl.Sci.Technol.,32,1259(1995).
(4)K. Shibata,T. Kawano,T. Nakagawa,O. Iwamoto,J. Katakura,T. Fukahori,S. Chiba,A. Hasegawa,T. Murata,H. Matsunobu,T. Ohsawa,Y. Nakajima,T. Yoshida,A. Zukeran,M. Kawai,M. Baba,M. Ishikawa,T. Asami,T. Watanabe,Y. Watanabe,M. Igashira,N. Yamamuro,H. Kitazawa,N. Yamano and H. Takano:”Japanese Evaluated Nuclear Data Library Version 3 Revision-3: JENDL-3.3,”J.Nucl.Sci.Technol.39,1125(2002).
(5)K. Shibata, O. Iwamoto, T. Nakagawa, N. Iwamoto, A. Ichihara, S. Kunieda, S. Chiba, K. Furutaka, N. Otuka, T. Ohsawa, T. Murata, H. Matsunobu, A. Zukeran, S. Kamada, and J. Katakura: "JENDL-4.0: A New Library for Nuclear Science and Engineering," J. Nucl. Sci. Technol. 48, 1 (2011).
(6)日本原子力研究所エネルギーシステム研究部核データセンター:原研核データセンターパンフレット、核データ 明日の原子力利用のために(2000年3月)
(7)日本原子力研究開発機構核データ評価研究グループホームーページ
(8)長谷川明、中川庸雄、片倉純一、千葉敏、深堀智生、川合将義:「原子力研究における最近10年の歩み その概要と展望 1.核データの評価」、日本原子力学会誌,vol.41,p.287(1999)
(9)柴田恵一、岩本修、千葉豪:「原子力開発のための中性子核反応データベース−評価済み核データライブラリーJENDL-4.0の完成、日本原子力学会誌、Vol. 52, 801 (2010).
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