<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の立地・建設・運転・保守
<小項目> 原子力発電所の建設
<タイトル>
原子力発電所の建設工事 (02-02-02-03)

<概要>
 原子力発電所の建設工期は、立地条件、原子炉型式、出力等により多少変わるものの、岩盤検査から営業運転開始まで、4年程度を要している。建設工事の特徴としては、(1)建築工事と機械・電気工事が長期間並行して行われること、(2)工事物量が大きく、工事期間が長期にわたること、(3)品質管理上の要求から細部にわたって試験・検査が行われること、が挙げられる。建設工事全体の流れとしては、原子炉建屋の主要設備の建設工程がクリティカルパスとなり、全体建設工程を決定している。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.建設準備工事
 一般的に、工事計画認可等所要の許認可手続き取得後、原子炉建屋等の基礎掘削工事開始をもって着工と呼んでいる。着工前には、敷地造成等の諸工事を準備工事として実施する。
(1)仮設ヤード
 発電所敷地内の一部または近傍に仮設ヤードを確保し、敷地造成工事、護岸工事等の作業基地およびコンクリート製造プラントの設置等の用地造成を行う。
(2)護岸工事
 護岸は、捨石、ケーソン(潜函,*1)、消波用ブロック等で構成される。港湾、荷揚等との関連があり、これらと調整を取りながら施工していく。
(3)切土、埋立、土捨
 敷地造成に当たっては、原子炉建屋等の主要設備を強固な基盤上に設置するため、敷地の一部は山地を切り取って造成する場合が多い。海岸線側は埋立によって敷地造成されるが、通常は山地を切り取った土を埋土として使用する。敷地全体の土量バランスを考えて、山地切取、敷地レベル、護岸線などを設定する。
(4)整地
 設計敷地レベルの整地、切取斜面の法面保護、構内道路、排水設備等の整地工事を行う。
2.建設工事手順の概要
 代表的な建設工事の流れを図1に示す。原子炉建屋の基礎掘削開始から営業運転開始までの工事の流れは、土木工事→建築工事・機械電気据付工事→試験・試運転と移行していく。主要工程の概要について以下に説明する。
(1)着工〜岩盤検査
 この間はほとんど土木工事で、原子炉建屋、タービン建屋等の本館建物、冷却水取水槽等の基礎掘削を行う。原子炉建屋の基礎岩盤については、電気事業法第49条の規定により同施行規則第69条に基づいて、イ項使用前検査の岩盤検査が実施される。
(2)原子炉建屋基礎
 岩盤検査後、原子炉建屋の基礎マットコンクリートを打設する。
(3)原子炉格納容器
 基礎コンクリート打設後、原子炉格納容器の建方(立上げの意)を開始する。工事が完了すると耐圧漏洩試験を実施し、構造の健全性を確認する。
(4)原子炉建屋
 原子炉格納容器と並行して原子炉建屋の工事に着手する。
(5)主要機器
 原子炉格納容器と並行して原子炉容器等の主要機器・配管の据付が開始され、主要系統の水圧試験をもって据付工事はほぼ完了する。
(6)試験・試運転
 機器・配管、電気・計装等一連の設備に対する各種機能試験、使用前検査の受験後、燃料装荷が開始される。その後、初臨界、初並列を経て、段階的に出力を上昇しながら、100%出力に至るまでの各出力段階にてプラントの性能確認を実施し、営業運転の開始となる。
3.建設工事工程
 原子力発電所の建設工事は膨大な物量をいかにうまく消化していくかが重要なポイントとなっており、以下の点について検討しておく必要がある。
(1)並行作業
 建築工事と機械工事は、階層毎に原則的にシリーズ作業となっているが、建屋工事中に機器等の先入れを行い、連続作業を並行作業とすることにより工期短縮を図る。
(2)省力化
 鉄筋および機器・配管類を工場等でプレハブ化または大ブロック化して搬入することにより、現地作業量の低減を図る。
(3)合理化
 仮設構台の設置、大型クレーンの採用等により、作業現場への資機材の流れをスムーズに行うことにより、作業の効率向上を図る。
 改良型BWRABWR:柏崎刈羽原子力発電所6号機、7号機等)および110万kW級PWR(敦賀発電所2号機、玄海原子力発電所3号機、4号機等)の代表的なプラント建設工事工程を図2および図3に示す。
4.建設用仮設備
 建設工事をサポートする主な建設用仮設備は、立地条件、発電所規模、工事条件等により若干異なるが、建設工期を左右する重要な因子である。
(1)荷役設備
 原子炉容器、タービン・発電機等の重量物、大型の資材・機器類は、通常海上輸送によって運搬される。そのため、重量トン数3000〜5000トン級の船舶が接岸できる物揚岸壁を設け、揚重設備としてデリッククレーン等を設置している。
(2)運搬方法
 物揚岸壁から建設現場への大物重量機器の運搬方法は、コロ引きまたは自走式重量物運搬車両による方法がある。構内道路条件、揚重設備の有無にもよるが、輸送時間の大幅な短縮が図れる車両輸送が最近では一般的である(図4−1)。
(3)構台
 大量の資材・機材・配管等を効率的、合理的に建設現場に搬入するために、道路から建設現場へ直接寄り付いて、スムーズに搬出入が出来る乗込み構台(鉄鋼による仮設道路)を設置する。
(4)揚重設備
 乗込み構台の設置と併せ建屋周辺にタワークレーンを死角の無いように適切に配置し、作業の効率化を図っている。この他要所要所に移動式クレーンを配置し併用している。大物重量機器の搬入・据付に、タワークレーンの代わりに自走式の大型クローラクレーンを使用する場合もある(図4−2)。
(5)工事用水
 工事用水源として構内および周辺の河川水、地下水を利用するため、送水ポンプ、貯蔵タンク等を設置する。河川等からの取水が困難な場合は海水淡水化装置を早期に設置し工事用水として利用する。
(6)工事用電力
 工事用電力は工事用機器類(クレーン、溶接機、仮設照明等)と一部の試運転用仮電源として使用され、これらのピーク容量を想定して電源容量、受電設備を決定する。
(7)仮設用地
 事務所、作業員詰め所、倉庫、資材置場、コンクリート製造プラントなどの設備を構内の建設現場の近くに配置するため仮設用地を確保する。
5.試験・検査
 原子力発電所の建設に当たっては、所期の機能・性能、安全性の確認のため、工場製作から現地据付、試運転までの各段階において、入念な各種の試験・検査(使用前検査を含む)が実施される。ここでは、工場試験、溶接検査、据付工事中検査、機器単体試験について説明する(機器単体試験に引き続き行われる系統機能試験、使用前検査、起動試験(出力上昇試験)については、<関連タイトル>を参照)。
(1)工場試験
 機器の製造過程において実施する試験で、材料検査、部品検査、組立中検査、機器性能試験等がある。これらの一部は溶接検査、使用前検査としても実施される。
(2)溶接検査
 電気事業法に基づき、定められた容器・配管などの溶接部について実施されるもので、材料検査、開先検査、溶接作業中検査、非破壊試験、機械試験、耐圧試験等が実施される。
(3)据付工事中検査
 機器の受入、据付工事中の各種試験・検査として、据付検査、寸法検査、耐圧漏洩検査、計測制御装置の試験調整、警報およびシーケンステスト、電気関係の受電に伴う各種試験などを行う。これらの検査の一部は、溶接検査、使用前検査としても実施される。
(4)機器単体試験
 機器の単体運転調整および実機運転における制御装置の調整等を行う。
用語解説
*1 ケーソン(潜函)
 水中での基礎工事で、浸水を防ぎながら圧縮空気を送って中で作業するための箱形建物。
<図/表>
図1 建設工事の流れ
図2 BWRプラント建設工事工程
図3 PWRプラント建設工事工程
図4−1 建設用仮設備(1/2)
図4−2 建設用仮設備(2/2)

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<関連タイトル>
原子力発電所建設のための手続き (02-02-02-01)
原子力発電所に係わる法規法令 (02-02-02-02)
原子力発電所の試験・試運転 (02-02-02-05)
BWRの原子炉格納容器 (02-03-04-02)
PWRの原子炉格納容器 (02-04-04-02)
電気事業法(原子力安全規制関係)(平成24年改正前まで) (10-07-01-08)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):火原協会講座22発電所の建設・試運転と運転保守、火力原子力発電技術協会(1995年6月)、p.57?87
(2)徳光岩夫:原子力発電所の計画設計・建設工事、電気書院(1979年8月)、p.339?354
(3)電気事業講座編集委員会(編):電気事業講座第9巻原子力発電、電力新報社(1997年2月)、p.229?234、p.283?295
(4)東京電力:「原子力発電所の建設工程」(パンフレット)(1994年8月)、p.9−10、p.15−16
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