<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 電力政策
<タイトル>
電気事業審議会の長期電力需給見通し(1998年6月) (01-09-05-13)

<概要>
 電気事業審議会需給部会(当時)では、前回の1994年(平成6年)6月に策定した長期電力需給見通しを4年ぶりに改定し、1998年(平成10年)6月4日、中間報告としてとりまとめた。今回の改定は、電力需要の着実な増加と原子力発電所立地を取り巻く環境が極めて厳しくなってきたことなどの供給面での環境変化、1997年12月のCOP3での国際合意を踏まえた地球温暖化問題への対応の必要性、エネルギー・セキュリティの確保、電力供給の効率化の課題に対処するためである。
 この中間報告では、(1)需要面では、前回に想定した省エネ対策を上回る大幅な省エネ対策によって、電力需要の抑制が必要であること、(2)供給面では、需要を抑制していく中においても前回と同じ原子力開発目標を実現することが必要不可欠であること、(3)火力燃料の選択においては、エネルギーのベストミックスにも配慮しつつ、可能な限りよりCO2排出量の少ない燃料ミックスを目指すことが必要であること、との電気事業政策の基本的な方向を提言している。これによりCOP 3で合意されたCO2排出量の削減目標の達成を目指すこととして、今後の長期的な電力需給見通しをとりまとめた。
<更新年月>
1999年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
電気事業審議会需給部会(当時)では、前回の1994年(平成6年)6月に策定した長期電力需給見通しを4年ぶりに改定し、1998年(平成10年)6月4日、中間報告としてとりまとめた。今回の改定は、電力需要の着実な増加と原子力発電所立地を取り巻く環境が極めて厳しくなってきたことなどの供給面での環境変化、1997年12月のCOP3での国際合意を踏まえた地球温暖化問題への対応の必要性、エネルギー・セキュリティの確保、電力供給の効率化の課題に対処するためである。以下に中間報告の概要を示す。
1.電力需給を巡る環境変化と課題
(1) 電力需要の着実な増加と供給面における問題
 一次エネルギー総供給に占める電力部門への投入エネルギーの割合(電力化率)は上昇傾向にあり、民生用需要を中心に引き続き増加基調にある。また、負荷率は低下基調を示している。これらは、電力コストや地球温暖化問題への対応等にも大きな影響を与える。
(2) 国際合意を踏まえた地球温暖化問題への対応の必要性
 1994年(平成6年)3月に気候変動枠組条約が発効し、1997年(平成9年)12月の気候変動枠組条約第三回締約国会議(以下「COP3」という。)において、CO2等の温室効果ガスの削減目標が拘束力を伴うものとして設定された。わが国については、2008年から2012年までに温室効果ガスを対1990年比で▲6%にすることとなった。
 わが国の一次エネルギー総供給のうち、発電に投入されるエネルギーが約4割を占め、CO2総排出量の1/4程度が電力に由来するので、原子力を含めた電源開発の動向は、今後地球温暖化問題への対応で大きな影響を与える。
(3) エネルギー・セキュリティに関する考え方
 世界のエネルギー情勢を見ると、近年において需給は軟化傾向で推移しているが、流動的な要素も見られ、中長期的には世界のエネルギー需給が逼迫する可能性がある。このため、わが国のエネルギー・セキュリティを確保する観点から、原子力を始めとする石油代替エネルギーの導入による適切なバランスのとれた電源構成の在り方を検討する必要がある。
(4) 効率化の要請
 電力供給の効率化については、電気事業法改正等により目的は着実に達成されつつあるが、わが国経済を取り巻く内外環境の急速な変化を受け、構造的に低下する負荷率等に起因するコスト押し上げ要因も依然として存在する。今後、上記の地球温暖化問題への対応やエネルギー・セキュリティの確保という要請が強まる中で、電力供給の効率化という課題をこれらと両立させる方策について、十分な検討が必要である。
2.電力需給の基本的な考え方
 上記の様々な環境変化を踏まえ、次の三つの基本的視点から今後の電力需給の在り方を検討した。
(1) 必要な供給力を確保すること。
(2) 環境調和型の電力供給構造を確立すること。
(3) 電力コスト削減などの効率化と地球温暖化問題を両立させること。
3.電力需要面での取組
 COP3における合意を踏まえ、地球温暖化問題に適切に対応する観点から、電力分野においてもCO2排出量の抑制を図っていく必要がある。他方、国民生活や経済活動を支える必要不可欠なエネルギーである電力については、その需給の長期安定性を確保するとともに、効率的な供給を図っていく必要性が極めて高い。
 このような諸要請に対応していくためには、想定される電力需要に対する供給面での取組だけではなく、省電力対策(kWhの削減)および電力負荷平準化対策といった需要面での取組を事業者、消費者、政府が一体となって強力に進めることが必要である。
4.電力供給面での取組
(1) 電源構成のベストミックスの考え方
 供給安定性、経済性、環境特性、各電源の運転特性等を踏まえ、中長期的観点からバランスの取れた最適な電源構成(ベストミックス)の構築を図ることが引き続き必要である。他方、電源のベストミックスを考える上で地球温暖化問題のウェイトが高まっていることを踏まえれば、可能な限りCO2排出量の少ない電源構成へのシフトを進めることが一層重要となっている。
 上記の観点からは、まず、2010年の目標に向けて原子力の開発を最大限進めることが必要である。また、火力電源にあっても経済性、燃料の安定供給に配慮しつつ可能な限りCO2排出量の少ない燃料選択や更なるエネルギー効率の向上に努めることが必要である。
(2) 原子力促進対策
 1998年(平成10年)4月1日現在、わが国で稼働している商業用原子力発電所は、全国で51基、4,492万kWとなっており、1997年度(平成9年度)の発電電力量の推定実績は3,181億kWhに達している。この結果、一般電気事業用における割合は既に、設備容量で約20%、発電電力量で約3分の1を占めるに至っている。
 原子力発電は、燃料供給およびその価格の安定性に加え、発電過程においてCO2を排出しない等優れた環境特性を有する電源であることから、わが国のエネルギー・セキュリティ確保、さらには、「京都議定書」を踏まえた地球温暖化対策の観点からも、ベース供給力の中核を担う電源として、今後、平成22年度(2010年度)における発電電力量、設備容量の目標の達成に向けて、その着実な開発を進めることが必要である。
 しかしながら、1995年(平成7年)末の高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故等を契機として、立地地域を始めとする国民の間に原子力の安全性・信頼性に対する不安、これを背景として原子力を一層推進することの必要性に対する疑問等が高まっており、原子力立地をめぐる情勢はこれまで以上に厳しい環境下にある。
 このような情勢を踏まえ、今後の原子力開発を進めるに当たっては、引き続き安全規制の透明性、実効性の向上に努めるとともに、安全の確保に万全を期すことを大前提に、(1)原子力の必要性・安全性について国民の理解を得るための活動を強化するとともに、(2)立地地域と原子力発電施設の真の「共生」の実現に向け、原子力立地を一つの契機とする立地地域の自立的かつ持続的発展に向けた関係者の取組の強化を図るほか、(3)バックエンド対策および使用済燃料貯蔵対策への取組の強化を図ることが必要である。
(3) 火力発電に関する対策
 火力電源は、電源構成の中で引き続き大きな比重を占めると予想される一方、燃料調達を含め電源設備形成に長期間を要するという現状の中で、(1)省電力、原子力の導入が予定される中での効率的な電源構成の形成、(2)1999年度(平成11年度)以降予定されている新規火力全面競争入札制度における環境制約への配慮の必要性の増大、(3)2010年(平成22年)以降の更なるCO2排出削減をも視野に入れた電源開発の必要性、等を踏まえれば、エネルギーベストミックスにも配慮しつつ、可能な限りCO2排出量の少ない燃料選択や更なるエネルギー効率の向上に努めることが重要であると考えられる。特に、電源設備形成のリードタイムが長期にわたることを踏まえれば、今後新たに開発、リプレースが見込まれる電源について、エネルギー・セキュリティ、経済性等の観点も勘案しながら、最適な燃料選択に向けた諸課題の検討を現時点から進めていくことが重要である。その際は、よりCO2排出量の少ない燃料の選択、開発順位の見直し、卸電力入札制度の活用等まで含めて、幅広い観点から検討されるべきである。
5.柔軟性措置の積極的活用と新エネルギーへの取組
(1) 柔軟性措置の積極的活用
 COP3では、先進国の温室効果ガス削減目標の実現に当たって、排出権取引、先進国間共同実施、クリーン開発メカニズムCDM)が柔軟性措置として導入された。日本は、当面2010年数値目標である1990年レベル▲6%のうち、▲1.8%程度をこれら措置によって実現していくこととしている。
 電力分野ではCO2総排出量の中に占める比率が高く、その削減に向けて積極的な対応が国内において期待される一方、世界的に見てもエネルギー利用効率面でハイレベルな技術の蓄積がある。このため、本制度の積極的活用により、これを海外に適用していくことができれば、グローバルな観点からの地球温暖化防止に貢献することが可能となるとともに、柔軟性措置に関する議論の内容によっては、将来、エネルギー・セキュリティ上の配慮を含め、電気事業に与える影響も大きいと考えられる。
(2) 新エネルギーへの取組
 新エネルギーの導入については、「新エネルギー利用等の促進に関する基本方針」に基づき、エネルギー使用者、エネルギー供給事業者等の各主体がその促進に努めることとされており、電気事業者もエネルギー供給事業者としての役割を担っている。
 地球温暖化問題への対応の必要性が高まっている昨今の状況等を考慮すれば、今後、電気事業者においても、さらに新エネルギーの導入に努めるとともに、新エネ電力を円滑に買い取る(長期的な買取りが可能な購入メニューの設定や、廃棄物発電コストの見直しによる適正な余剰電力購入メニューの検討)などの、積極的な取組が期待される。
6.長期電力需給見通し
 新たな2010年度における長期電力需給見通しは、電力の安定的かつ効率的な供給確保とともに、特に地球温暖化問題への対応として、1997年(平成9年)12月のCOP3において合意されたCO2排出量の抑制を達成するための政策的な方向性を示す目標として策定したものである。
(1) 電力需要
 わが国の電力需要は、将来的には人口増が頭打ちになるものの、経済社会の発展、国民生活の高度化、高齢化の進展等による電力化率の上昇等も見込まれるため、今後とも着実な増加が見込まれる。電力需要の想定に際しての経済成長の見通しとしては、現下の景気動向は不透明であるものの2000年(平成12年)までは「構造改革のための経済社会計画」を基に年平均3%程度、2001年度(平成13年度)以降2010年度(平成22年度)までは産業構造審議会及び経済審議会の試算を基に年平均2%程度と設定した。
 この前提に基づいて総需要電力量の想定を行うに際しては、既存政策等による省エネルギー効果等を見込んだ自然体での電力需要(BAUケース)を想定した上で、COP3を踏まえた省エネ法改正等の新たな省エネルギー対策の強化等による省電力を織り込んだ電力需要(対策ケース)の見通しを策定した。その結果、2010年(平成22年)に向けてBAUケースにおいては2.1%、対策ケースにおいては1.2%の年平均伸び率となっている。2010年度(平成22年度)における電力需要の見通しを 表1 に示す。
(2) 供給力
 2010年度(平成22年度)における電力供給目標(電力量)を 表2に示す。
 長期的な電力の供給目標設定に当たっては、エネルギー・セキュリティを踏まえた電源構成のベストミックスに努めつつ、環境調和型の電源設備形成が必要である。今回新たに策定する電力供給目標は、石炭火力電源について一定の適正な水準を確保しつつ原子力の発電電力量4,800億kWhを始めとする非化石エネルギーについては、前回の見通しと同等の目標を維持し、新エネルギーについては政府・電気事業者等による積極的な取組も織り込んである。特に、原子力の目標4,800億kWhは、その実現がCO2排出量の削減目標達成に不可欠であることを踏まえ、安定的・効率的運転、立地の促進等により、その達成が強く期待される。他方、設備利用率については、今後高経年化に伴う低下が想定される一方、安全管理の徹底によるトラブル停止の低減や定期検査期間の短縮等の諸方策を講じることによって更なる向上も期待される。これを踏まえ、2010年(平成22年)の電力供給目標についての電力量の目標を4,800億kWhとすることを維持しつつ、設備容量については、最近の実績と同程度の設備利用率を維持し得ることを想定した場合、7,000〜6,600万kWとなると考えられる。2010年度(平成22年度)末における電力設備容量を 表3に、また、1996年度末実績と比較した電力供給目標を 表4に示す。今後、この4,800億kWhという電力量の目標達成のため、政府、地方自治体、関係事業者等の最大限の努力を期待する。
 また、火力発電については、省エネルギーの進展により電力需要が減少することを反映して発電電力量が前回の見通しと比べ減少する(表2参照)が、今後の電力需要の動向の推移等によっては、必要な供給力の確保のため、この目標を上回る新たな設備形成が求められる可能性も否定し得ない。その際は、燃料の安定供給、経済性に配慮しつつ、よりCO2排出量の少ない燃料選択等により、環境調和型の火力電源構成の構築に努めることが重要である。
<図/表>
表1 2010年度における電力需要の見通し
表2 2010年度における電力供給目標(電力量)
表3 2010年度末における電力設備容量
表4 電力供給目標(1996年度末実績との比較)

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<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(編):電気事業審議会需給部会中間報告(平成10年6月4日)
(2)日刊工業新聞社(編集発行):電気事業審議会需給部会中間報告(概要)、原子力eye、vol.44,No.10(1998年10月)p22-23
(3) 資源エネルギー庁のホームページ (アクセス:1999年1月)
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