<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 電力政策
<タイトル>
主要国の電気事業の現状 (01-09-05-12)

<概要>
 各国の電気事業は、その国が保有しているエネルギー資源と歴史的背景や国情等によって、国有化または民営化等の様々な状況にある。米国の1998年現在における民間公益事業者は、販売電力量で54.7%を占めている。カナダの電気事業者は発電、送電、配電の一貫した大規模電気事業者によって経営されてきたが、近年の規制緩和により、この体制は崩れつつある。東・西ドイツの統合により、ドイツは8大電力会社、地域電力会社および小規模配電会社の電気事業者が存在し、約1000社に上る。フランスの電気事業は、公営電気事業を除いては、1946年から国有化され、フランス電力公社EDF)が1997年に、発電設備、発電電力量とも約95%を占めている。英国では国有電気事業の分割・民営化が実施されて、組織再編成が実施された。このほか、イタリア、中国についても述べる。欧米では電力再編・自由化が進行している。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.米国
 米国の電気事業者は、1998年末で5099の多くを数え、2000万kWを超える発電設備を有し、発送配電一貫で事業を営む大手電力会社から発送電設備を持たず専ら配電のみを営むものまでまちまちである(表1)。企業形態の上からは私営、地方公営、協同組合営と連邦営に区分される。民間公益事業者は、1998年末、販売電力量で事業者合計の54.7%を占めている(表2)。最近では仲買いを主な事業とするマーケッターが注目されているが、これらの事業者は電気事業者と見なされている。米国の電気事業は公共事業と見なし独占的経営が認められてきたが、発電部門の競争が制度的に取り入れられて1978年に発効した公益事業規制政策法(Public Utilities Regulatory Policy Act:PURPA)による認定施設や競争的料金で電気事業に卸売電を専業とする独立系発電事業者(Independent Power Producers:IPP)と呼ばれるような非電気事業者(Non-Utility Generator:NUG)がある。
 自家発電は鉱工業および鉄道業における自家発電であり、学校、病院、ホテル、アパート、事務所、遊園地等の連係されていない設備は含まれていない。1984年から自家発電は連邦政府への報告義務がなくなり、その正確な統計数値は把握できない状態にあったが、最近、非電気事業者というカテゴリーのもとに旧来の自家発電のほかに、公益事業規制政策法(PURPAS)に基づくコージェネや小規模発電を営む事業者を含め、その実態がエジソン電気協会(Edison Electric Institute:EEI)によって調査されるようになった。2001年末現在、発電設備で全体の約35%、発電電力量で約30%を占めている(表2表3)。
2.カナダ
 カナダの電気事業の企業形態は州によって異なるが、その大勢をなすものは、大規模電気事業者による発電、送電、配電の一貫した経営である。しかし、近年における規制緩和の動きの中、この体制は崩れつつある。
 カナダの電気事業を形態別に大別すると、次のとおりである。
(1)公営
・州営−通常、州電力庁、電力公社あるいは電力局と呼ばれる独立企業体であって、州保証の電力債を発行して資金を調達することができる。
・市町村営−大規模電気事業者から卸供給を受ける配電事業が多いが、発電を行なうものもある。
(2)私営−株式、社債を発行する民間会社で、発電、送電、配電の一貫経営の会社が多い。
 これらの電気事業者の他、非電気事業者として、パルプ製紙業、アルミニウム生産業、鉱業等による自家発電および独立系発電事業者(Independent Power Producers:IPP)が発電を行い、自社で使用する他、主に大規模電気事業者へ卸売電している。ただし、この大規模電気事業者への卸売電は、今後の電力市場における規制緩和により徐々に自由化されていくとみられる。
 カナダにおける電気事業に対する規制は、電力の輸出とそのための送電線の建設等に関する国際間の事項および原子力発電については連邦政府が管轄し、その他の事項については、州政府のみが管轄している。州政府は州内に自由市場発展させている。電力自由化は米国市場へのアクセスを強化するように進みつつある。
3.ドイツ
 1990年10月に東・西ドイツが統合された、これを契機に旧東独の国営電気事業(コンビナート)が解体した。1990年8月に旧東独政府、信託公社、旧西独大手電力会社3者の間で電力契約が締結された。この契約から電力合同会社(Vereinigte Energiewerke AG:VEAG)が設立され、発電、送電事業を行なうことになった。同社の株式の75%はRWEエネルギー会社(RWE Energie AG)、プロイセン・エレクトラ社、バイエルン電力会社が所有し、残り25%を旧西独電力会社が出資した。また旧東独において旧西独電力会社の出資により12のエネルギー供給会社(旧西独の地域電力会社に相当)が設立されることになった。さらに合計164の自治体事業者が生まれた。
 8大電力会社、地域電力会社および小規模配電会社(主に自治体営)の事業者が存在し、全体では約1000社に上る。8大電力会社は地域電力会社、配電事業者へ卸供給する他に、最終需要家への小売り供給も行う。1997年12月31日現在ドイツ電気事業連合会(Vereinigung Deutscher Elektrizitatswerke:VDEW)に加盟する企業数と販売電力量を企業態別に示す(表4)。
 全国総発電電力量に占める電気事業者の割合は年々増加しており、1997年のシェアは約89%であった。ドイツの発電設備と発電電力量(1997年現在)を表5に示す。ドイツでは電力企業の合併が進んで、1998年〜2002年に23の合併があった。西ヨーロッパの電力部門は少数の多国籍企業に支配されつつある。また、1999年から2000年間に電力貿易は13%増加している。
4.フランス
 フランスの電気事業は、ローヌ公社(ローヌ河の総合開発を行なう)と公営電気事業を除いて、国有化法(電気およびガスの国有化に関する1946年4月8日付法律46-268号)により、発電、送電および配電の総てを原則として、フランス電力公社(Electricite de France:EDF)が経営することとなった。また一定基準の以上の自家発電設備もEDFに譲渡された。フランス国有鉄道およびフランス石炭公社(CDF)の発電設備はEDFに譲渡されなかったが、その発電業務は、それぞれEDFとの合同委員会の下に行なわれている。フランスで電気事業者とは、通常EDF、ローヌ公社および公営事業の三者であるが、ローヌ公社は発電電力量を総てEDFに引き渡すので、EDFと公営のみを事業者という場合もある。EDFが事業者中に占める割合は、1997年において、発電設備、発電電力量とも約95%である。EDFは電気事業者として国の監督を受けるのは当然であるが、国有企業一般に対する監督も受ける。
 しかし、1996年末にEU電力規制緩和指令が採択されたことにより、これに基づいて1999年2月までに国有化法を改正することが必要となった。EU指令では発電部門において許可制に基づく独立系発電事業者(Independent Power Producers:IPP)の参入を認めることを義務付けている。このため、当面は設備過剰で参入は殆どないと見られるが、長期的にはIPPの増加が考えられる。またEU指令では系統の管理部門を独立させる必要があるが、これについてはEDF内の独立組織とする方向で検討が進められている。政府はエネルギー部門を民営化する措置を取り始めている。この再編の動きは欧州連合の動きと歩調を合わせて進められている。
 フランスの発電設備と発電電力量(1997年現在)を表6に示す。
5.英国
 英国では、中央発電局(Central Electricity Generating Board:CEGB)がイングランド・ウエールズで発電と送電を独占し卸供給を受けた12の地区配電局が独占供給区域内の需要家に電力を供給してきた、スコットランドでは、南スコットランド電気局と北スコットランド水力電気局がそれぞれの地域において発送配電一貫による供給を行なってきたが、国有電気事業の分割・民営化が実施され、イングランド・ウエールズおよびスコットランドにおいては1990年4月1日から新体制に移行した。また、北アイルランドでは1992年に、組織再編成が実施された。
(1)イングランド・ウエールズおよびスコットランドの供給体制(図1
(2)北アイルランドおよびその他の諸島
 北アイルランドでは92年に組織再編成が実施され、従来の国有電力公社(発送配電一貫)が民有化されるとともに、全発電設備は民間会社に売却された。
 その他の諸島では個々の会社(私営、公営)によって発送配電一貫による供給が行なわれている。
 英国の発電設備と発電電力量(1997年現在)を表7に示す。
 英国の電力再編は大局的には成功といわれていが、プールの中に充分な競争を持ちこむことができていない。2001年初めにプールは閉鎖され、新電力貿易協定(New Electricity Trading Arrangement:NETA)という新システムの形成に動き出している。旧いプールでは競り値が小数グループによって容易に支配されるところにあったという。ゲーム理論と競売理論がプールの創設に応用されるという。
6.イタリア
 1962年12月実施の法律第1643号(電力国有化法)により、イタリア電力公社(Ente Nazionale per l'Energia Electrica:ENEL)が発足した。この結果、一部の事業者を除き、イタリアの電気事業はENELによって営まれてきた。しかし、近年の世界的な電力民営化の潮流、特に欧州における単一市場形成の中で、イタリアでも電力民営化の方針が打ち出された。1992年7月には第一段階として政令第333号によりENELは株式会社化され、ENEL Spa(株式会社)となった。さらに1999年5月にENELを持株会社化し、発電、送電、配電、原子炉廃炉(国営)に分社化されることが決められた。1994年現在、ENELは、全国の総発電設備の79.7%、総発電電力量の74.4%を占めている。
 ENEL以外の事業者としては、主に大都市によって営まれる公営事業者と、若干の私営事業者がある。殆どはENELから卸売電力供給を受ける配電専業事業者であるが、一部公営事業者は発電所も所有している。なお、2003年以降のENEL発電設備保有量規則に向けて、一部設備売却の準備が進められている。
 国有鉄道の発電設備は従来自家発電として扱われてきたが、電力産業国有化に伴って、ENELに移管された。
 イタリアは通常四つの地域(北部、中部、南部、島部)に分類される。ENELは全国八つの管轄地区に分けている。各地区に地区本部が置かれ、発送電設備の管理・運営に責任を持つとともに、実際の配電・販売業務の指令監督に当たっている。イタリアは2001年70%の自由率で、2007年に完全自由化するという。
 イタリアは先進諸国のなかで、唯一の原子力発電を行なっていない国である。
7.中国
 中国の電気事業は基本的に国有で、国家電力公司が運営している。外資との合弁や合作方式による発電所、大企業の自家発電、農村が運営する小規模水力発電所などもある。
 近年行政改革がたびたび実施されており、1988年の改革では従来の水利電力省の電力部門と石炭工業省、石油工業省および(原子力)工業省が統合され能源部が新設されたが、その後1993年5月の政府機構改革により能源部は解体、代わって電力工業部が設立された。さらに1997年1月には国家電力公司設立され、電力工業部は1998年3月に開催の全国人民代表大会により廃止された。
 一方、地方単位の電気事業体制の改革も進められ、1993年1月には華北、東北、華東、華中、西北の5大電力網(合計で全国の発電設備容量および発電電力量の70%を占める)に、それぞれ電力集団公司が設立されている。従来、複数の省にまたがるこれら5大電力網にはそれぞれに電業管理局があり、その下部機構として省単位の電力工業局があった。さらに、電業管理局ないし電力工業局には民間的性格をもった電力連合公司および電力公司が併存していた。電力集団公司を基に組織され、投資、内部資金融通、貿易に関する権限などがかなり広範な自主権が認められている。
 上記のように、行政と事業が渾然一体であった従来の体制を分離しつつある中で、懸案であった電気事業関連法規の整備が着々と進められている。まず電気事業を律する基本法規である「中華人民共和国電力法」が1996年4月に施行され、これを受けて同年9月には事業者と需要家の権利・義務を定めた「電力の供給及び使用条令」が施行されるなど、様々な規則が相次いで制定されている。
 参考のため図2および図3に、主要国の電力情勢および主要国の総発電電力量に占める原子力発電の割合を示した。表8に世界の電力消費の実績と予測(1990-2025)を示した。
<図/表>
表1 アメリカ電力産業の構造
表2 卸売市場での他の事業者及び非電気事業者による販売
表3 米国の発電設備容量と発電電カ量(2001年)
表4 ドイツの電気事業者の企業態別分類
表5 ドイツの発電設備と発電電力量(1997年現在)
表6 フランスの発電設備と発電電力量(1997年現在)
表7 英国の発電設備と発電電力量(1997年現在)
表8 世界の電力消費の実績と予測(1990−2025)
図1 イングランド・ウエールズおよびスコットランドの電力供給体制
図2 主要国の電力情勢
図3 主要国の総発電電力量に占める原子力発電の割合

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<関連タイトル>
主要国の発電原価(1992年OECD・NEA/IEAの試算) (01-04-01-04)
IEAによるロシアのエネルギー事情のレビュー(2002年) (01-07-06-12)
IEAによるスウェーデンのエネルギー政策のレビュー(2000年) (01-07-06-11)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(4)電力 (01-07-06-04)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会(編)、海外電気事業統計 1999年版(1999年8月)、p.1-280、ほか
(2)(社)海外電力調査会(編)、海外諸国の電気事業 第1編 1998年版(1998年3月)、p.1-243.
(3)(社)日本原子力産業会議(編)、原子力年鑑 1999/2000年版(1999年10月)、p.279-363
(4)Energy Policy of IEA Countries −The United States− 2002 Review,OECD/IEA,2002,p60
(5)EIA:electricity,electric publication,electric power annual,,Electric Power Annual 2001,p.16,p.17
(6)EIA:Energy Policies of IEA Countries −Italy (2003)−2003 Review,Press Release,
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