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<概要>
 環境と開発の両立を目指して世界各国の政府、民間の代表が集まった国連環境開発会議(地球サミット)が1992年(平成4年)6月ブラジルのリオデジャネイロで開催された。会議には約180ヵ国が参加し、100ヵ国近い元首が出席するというハイレベルで大規模な会議であった。地球サミットでは、温暖化防止のための「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」の署名が開始されるとともに、環境と開発に関するリオ宣言、アジェンダ21、森林原則声明が採択された。ここでは、地球サミットを中心に、その前後に行われた地球環境保護対策を概観した。また、地球サミットのフォローアップとして開催された国連環境開発特別総会と、持続可能な開発に関する世界サミットについて述べた。さらに、アジア・太平洋地域における取り組みとして、アジア・太平洋環境会議と環日本海環境協力会議についてふれた。
<更新年月>
2005年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.地球サミットの背景とその準備過程
(1)国連人間環境会議(ストックホルム会議)
 195O〜1960年代には、先進国を中心とした経済発展に伴う環境破壊、それに伴って生まれた「宇宙船地球号」という考え方、そして開発途上国における貧困と密接に関連する環境衛生の問題が注目された。さらに1972年本会議の直前に発表されたローマクラブの報告書「成長の限界」は、今後の人口増加に関して資源の制約の面から幾何級数的な成長の持続不可能性を訴えたものであり、世界の経済成長の行き着く先のシミュレーションを行って現代社会が行き詰まるという結論を示し、大きな衝撃をあたえた。
 このような背景で国連人間環境会議は、「かけがえのない地球(Only One Earth)」をキャッチフレーズとして1972年6月5日からスウェーデンのストックホルムで開催されたもので、環境問題全般についての大規模な国際会議としては初めてのものであった。
 この会議においては、先進工業国における環境問題については経済成長から環境保全への転換か、また、開発途上国における環境問題については開発の推進の援助の増強が重要であることを明らかにした。そして「人間環境宣言」やかけがえのない地球を守るための「行動計画」が決定された。
(2)オゾン層破壊等に関する地球環境問題
 オゾン層の保護に関するウィーン条約が1985年オゾン層保護全権会議で採択され、モントリオール会議が1987年にオゾン層を破壊する物質に関して規制を検討し、フロン、ハロン、二酸化炭素の削減による地球温暖化の防止やその対策としてクリーンエネルギー「原子力」の見直しが指摘された。1988年には気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が設置された。
2.環境と開発に関する国連会議UNCED(地球サミット)
 1992年6月5日(世界環境デー)を含む2週間、1992年(平成4年)6月3日から14日にかけてブラジルのリオディジャネイロで開かれた。1972年にスウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議の20周年を記念して開催されることから、第2回国連人間環境会議とよばれることもある。
 会議の具体的内容については、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林減少などの地球環境問題が中心テーマとなった。UNEP(United Nation Environmental Plan:国連環境計画)、IPCCなどで進められている条約作りなどの作業を集大成する会議となった。
 準備会合や本会議を通じて、環境保全に重点をおく先進国と開発及び貧困問題の解決を重視すべきとする開発途上事国との間の様々な対立点について議論が深まり、世界的な合意が形成された。
 具体的には21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオデジャネイロ宣言」、同宣言の諸原則を実行するための行動計画である「アジェンダ21」、全ての種類の森林の重要性の認識及び森林保全と接続可能な管理の必要性を訴えた「森林原則声明」が採決されるとともに「気候変動枠組み条約」及び「生物の多様性に関する条約」が署名された。
3.地球サミットの成果
(1) リオデジャネイロ宣言(リオ宣言)
 リオ宣言は簡単な前文と27の原則からなっており、21世紀を目指した人と国家の行動範囲である。中心は「持続可能な開発」(sustainable development)である。
(2)アジェンダ21
 アジェンダ21は環境と開発に関するリオ宣言の諸原則を実行するための21世紀に向けた具体的な行動計画である。
アジェンダ21は
   1.前文
   2.社会的・経済的側面
   3.開発資源の保護と管理
   4.主たるグループの役割の強化
   5.実施手段
の5部で構成され全40章からなっている(表1-1表1-2)。開発資源の保護と管理の中で、大気保全、森林、砂漠化、生物多様性、海洋保護、廃棄物対策などの具体的問題についてプログラムを示すとともに、実施手段においては、実施のための資金、技術移転、国際機構、国際法のあり方等についても規定している。
4.地球サミットのフォローアップ
(1) 国際的な取り組み
「地球サミットのフォローアップに関する機構整備」の決議にしたがって1993年2月に国連経済社会理事会の下に設立された「持続可能な開発委員会」(CSD)はわが国を含めた国連加盟国53ヵ国から成りその主要目的は
 a)アジェンダ21および環境と開発の統合に関する国連の活動の実施状況の監視
 b)各国がアジェンダ21を実施するために着手した活動についてまとめたレポート等の検討
 c)アジェンダ21に盛り込まれた技術移転や資金問題に関するコミットメント(約束)の実施の進歩状況のレビューと監視
等である。
 第1回会合は、1993年(平成5年)6月に開催され、5年後の1997年(平成9年)の「国連環境と開発特別総会」に向けて、アジェンダ21の実施状況について総括的な評価を行う「多年度テーマ別検討計画」が合意された(表2-1表2-2)。
 第2回会合は1994年(平成6年)5月、メンバー国53ヵ国および非メンバー国多数の参加を得て開催された。
 持続可能な開発に関する高級諮問評議会の設置については、1992年(平成4年)の地球サミットで採択されたアジェンダ21で勧告されたものであり、CSD等と並び地球サミットのフォローアップにおいて重要な役割が期待されているものである。第1回会合が1993年(平成5年)9月に、第3回会合が1994年(平成6年)10月に開催された。
 1997年(平成9年)6月にはアジェンダ21の実施状況の点検と評価を目的として、国連環境開発特別総会が国連本部(ニューヨーク)において開催された。参加国は約170ヵ国であり、「アジェンダ21の更なる実施のためのプログラム」が採択された。
 さらに、2002年8月26日〜9月4日には、アジェンダ21について10年間の成果を評価し、計画の検討を行うために「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」がヨハネスブルグにおいて開催された。参加国は約120ヵ国であり、2つの公式文書の採択、228のパートナーシップ・イニシアティブの登録、60のイニシアティブの発表が行われた。図1に同サミットにおける成果物を示す。
(2)アジア・太平洋地域における取り組み
 a)アジア・太平洋環境会議(エコアジア)
  環境庁(現環境省)は、1994年(平成6年)6月21、22日に埼玉県大宮市において、アジア・太平洋地域諸国の環境担当大臣等の参加のもと「エコアジア'94」を開催した。地球サミットで指摘された「持続可能な開発」を実現していくために当地域の役割及び協力の在り方、またエコアジア'93(1993年6月30日〜7月1日、千葉)で実施が合意された「長期展望プロジェクト」の進歩状況と推進方法等について討論し、地球環境保全に関する取り組みの新たな展開に貢献することを目的としたものである。会議においては地方公共団体の役割の重要性が認識された。その後、エコアジアは2004年(平成16年)6月の第12回会議まで開催を重ねている。表3に過去12回の会議の開催年、開催地および重要議題をまとめた。
 b)環日本海環境協力会議
 北東アジア地域の環境問題に関する環境行政レベルでの情報交換および政策対話を行い、アジェンダ21で強調されている地域協力の促進をはかるため、1992年より毎年「環日本海環境協力会議」が開催されている。参加国は日本、中国、韓国、モンゴルおよびロシアである。
 1993年(平成5年)9月ソウルにて開催された第2回会議の成果を受け、環境庁(現環境省)は1994年(平成6年)9月、兵庫県との共催により第3回会議を開催した。各分野における協力の強化等について合意が得られた。第13回会議は2004年12月20日〜22日に韓国ソウル市で開催された。会議における主要テーマは「都市部における大気環境管理政策」、「種の回復」、「地方自治体における環境回復」および「工業団地における持続可能な管理」であった。
(3)地球サミット直後の国内における取り組み概観
 a)地球サミットでの合意を受けた条約への対応
  わが国は地球サミットにおいて気候変動枠組み条約および生物多様性条約に署名したが1993年(平成5年)5月、両条約を受諾し締約国となった。また、地球サミットによって条約交渉が開始された砂漠化防止条約は、1994年(平成6年)6月に採択されわが国は同年10月、パリで開催された同条約署名式典において署名を行った。
 b)「アジェンダ21」行動計画の実施
 「アジェンダ21の行動計画」は、1992年(平成4年)のミュンヘンサミット及び1993年(平成5年)の東京サミットにおいて、1993年末までに策定し公表することとされた。これを受けて政府は、平成5年12月に開催された地球環境保全に関する関係閣僚会議において「アジェンダ21行動計画」を決定し、CSD事務所に提出した。
5.その他:先進国首脳会議(サミット)における環境問題への取り組み
 1981年(昭和56年)のオタワ・サミット以来、経済宣言において毎年環境問題が取り上げられてきている。特に1989年(平成元年)のアルシュ・サミット以降地球環境問題がサミットの重要な課題として位置づけられるようになった。
 1994年(平成6年)7月のナポリサミットでは、環境は国際協力の最優先事項であるとの認識が示され、環境政策が適切な技術投資、エネルギー効率改善、汚染地域浄化等を通じて、経済成長、雇用及び生活水準の改善にも大きく寄与し得るものとされた。
<図/表>
表1-1 アジェンダ21の構成(1/2)
表1-1  アジェンダ21の構成(1/2)
表1-2 アジェンダ21の構成(2/2)
表1-2  アジェンダ21の構成(2/2)
表2-1 多年度テーマ別検討計画(1/2)
表2-1  多年度テーマ別検討計画(1/2)
表2-2 多年度テーマ別検討計画(2/2)
表2-2  多年度テーマ別検討計画(2/2)
表3 これまでのアジア・太平洋環境会議
表3  これまでのアジア・太平洋環境会議
図1 ヨハネスブルグサミットでの成果物
図1  ヨハネスブルグサミットでの成果物

<関連タイトル>
ハーグ宣言とノールトヴェイク宣言 (01-08-05-06)
環境問題に関する国際会議(国際的取組み) (01-08-04-07)

<参考文献>
(1)環境庁(編):平成7年版 環境白書 各論、大蔵省印刷局(1995年6月)
(2)環境庁地球環境部(編):改訂地球環境キーワード事典、中央法規出版(株)(1995年2月)
(3)環境省(編):平成15年版 環境白書、(株)ぎょうせい(2003年6月)
(4)環境省(編):平成16年版 環境白書、(株)ぎょうせい(2004年5月)
(5)茅 陽一(監修)、オーム社(編):環境年表2004/2005、オーム社(2003年11月)
(6)環境省ホームページ:http://www.env.go.jp/
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