<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球環境問題
<タイトル>
中国における環境保全 (01-08-01-18)

<概要>
 過去20年間において、中国はGDP規模を6.3倍に拡大したが、エネルギー純輸入問題、国内環境汚染と生態破壊問題、越境汚染問題、二酸化炭素急増問題を引起してきた。将来に向かって、中国政府が2020年までにGDP規模を2000年の4倍にする目標を立てたが、それに伴ってエネルギー安全保障問題、国内環境と地域環境問題、地球温暖化問題がさらに深刻化する恐れがある。中国の高度成長の陰に潜むエネルギー、環境問題の現状把握とその影響を最小限に留める対策が必要である。
<更新年月>
2004年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 中国における環境保護は1972年にストックホルムで開かれた国連環境会議への参加が始まりである。1992年の国連環境サミットで地球環境問題がクローズアップされた後、1994年には中国のAGENDA21管理センターが開設され、1995年には持続的発展が国家戦略であるという方向性が示された。1996年に国務院で環境保全目標が掲げられ、1998年の発展的戦略調整により、環境保護が重視され、それまでの輸出依存、東部沿岸地区偏在の外資調達指導・生産力拡充を主眼とする20年来の改革開放発展戦略から、内需拡大、中西部内陸重視の財政支出主導・インフラと環境重視の方向に変化している。
1.エネルギー純輸入大国への転落と環境問題の深刻化
 中国は1960年代半ばから石油の自給自足を達成し、改革開放初期の1985年には3600万トンの石油純輸出も達成した。その後、生産の低迷と需要の急増により、純輸出量は急速に減少し、1993年からは純輸入国に転落した。2000年に石油輸入量は6960万トン以上に達し、米国、日本、ドイツ、韓国、フランス、イタリアに次ぐ世界7位の輸入大国となった。現在では約30年間続いたエネルギー輸出国から輸入国に変わったと同時に、エネルギー安全保障問題が急速に顕在化してきた。表1に中国の一次エネルギーの需要量とその構成を示す。
 一方、中国国家環境総局によると、公害問題と生態破壊は1996年までに継続的に深刻化してきたと報告している。1997年に一部の地域で、そして1999年から統一的に環境汚染の悪化が徐々に削減される傾向にあるが、生態破壊は依然として厳しい状況である。
2.環境汚染の現状
2.1 大気汚染
 中国は世界第2位の石炭産出国であり、世界第3位のエネルギー消費と硫黄酸化物排出国である。大気環境汚染は主として煤煙型で、主な汚染物質は二酸化硫黄と煙塵である。中国の石炭は硫黄合有量が高く、都市部のエネルギー構成の主軸となる。大気汚染は主として石炭によるものであるが、自動車による排気ガスの汚染も大都市を中心に深刻化している。表2に石炭の消費量とSO2の排出量の推移を示す。
2.2 酸性雨
 酸性雨は主に西南部地方の省および自治区(湖南、江西、広東、広西、四川、貴州)でみられ、とくに成都、重慶、貴陽、長沙、柳州市では普遍的に酸性を呈している。煤煙を主とする大気汚染に端を発し、酸性雨が国土面積の30%を覆う。全国の降雨pH値は、4.30〜7.47である(1999年の統計)。図1に中国酸性雨の分布図を示す。
 酸性雨の問題を解決するために、中国政府は一連の措置を講じ、酸性雨汚染対策を強化した。国務院は国家環境保護局の「酸性雨制限地域と二酸化硫黄汚染制限地域の画定案」を認可した。
2.3 水質汚染
 水環境では、汚水排出量が年間430億トンにも昇り、都市水域の90%が汚染され、河川の70%が魚介類の生殖も困難なほど汚染されている。黄河の水が途中途切れる「黄河断流」に見られるように水不足も深刻化している。北部を中心に668の都市の内400以上が渇水状態で、年間渇水量は60億トン、農村部を入れると渇水量は218億トンにもおよぶ。特に遼河、海河、淮河、黄河では有機物による汚染が普遍化しており、汚染源に面したところでは定常的に悪化している。また主な湖の富栄養化も深刻化してきている。
 中国の水の環境が直面している三つの問題は水質汚染、水資源不足、洪水災害である。水資源賦存量は国際的にも低位にあり、1人当たりの量は、世界平均の4分の1しかない。降水量は、年間格差(多雨年と渇水年との差)、季節格差ともに甚だ大きい。賦存量では、北京、天津、河北省が最も少なく、周辺の遼寧、山西、河南、山東、江蘇の5省がその次に深刻である。
2.4 砂漠化
 砂漠化の問題では、国土面積の27.3%にあたる262.2万平方キロメートルがすでに砂漠化し、しかもその面積は1970年代以来、毎年2460平方キロメートルの早さで拡大している。一方1949年中華人民共和国設立以来、全国で66.6万ヘクタールの耕地、233.3万ヘクタールの草原、633.3万ヘクタールの営林地帯が流砂地に変わり、土壌の劣化も進んでいる。国務院は全国18の省・自治区・直轄市の4億人もの人口は砂漠化の影響を受けている地域に暮らしており、毎年、砂漠化による直接の経済損失は540億元にのぼると発表した。
2.5 地球温暖化
 さらに、過去20年間、CO2排出量が2.1倍に増大し、世界の排出量に占める比率は8.2%から13.7%に上昇した。
3.環境政策
 中国の環境行政は、「第1回全国環境保護会議」(1973年8月)以降整備され、全国環境保護会議の開催時期にあわせて、1973年〜1982年の初期段階(環境管理制度や管理体制の準備期間)1983年〜1989年の基礎段階(処理施設の同時設計、施工、稼働を義務づける三同時制度、環境影響評価制度、汚染物排出料金徴収制度、環境保護目標責任制度、期限付き汚染処理制度、都市環境総合整備定量審査制度、汚染物質排出許可証制度、汚染物質集中処理制度、企業環境保護審査制度など9制度の制定期間)、そして1990年以降の環境行政の実施段階に大きく区分される。
 また、1999年1月、国務院が「全国生態環境建設計画」を発表(表3参照)し、50年をかけて、破壊された生態環境を回復する目標を決定した。2000年12月、国務院から「全国生態環境保護要綱」が発表されている。中国の環境対策は(1)環境問題の事前防止を主とし、事前防止と事後処理を両立させること、(2)汚染者が汚染を処理し、開発者が環境要素を保護し、利用者が環境要素を補償すること、(3)環境管理を強化することが3大柱となっている。
3.1 大気環境基準と対策
 総浮遊粒子状物質、浮遊粉塵、二酸化硫黄などの物質について、自然保護区や住民区などの地域の状況に応じて、詳細な基準が設定されている(表4参照)。日本では全国一律の環境基準であるが、中国では都市部と農村部の格差が大きいため、3段階の基準を設けているのが特徴である。また、日本の環境基準と比較すると、SO2は中国の1級と2級の間、NOxで1、2級と考えられる。
 大気汚染環境対策として、国務院は国家環境保護局の「酸性雨制限地域と二酸化硫黄汚染制限地域の画定案」を認可している。二つの制限地域に、石炭層の硫黄含有量が3%を超える炭鉱の建設を禁止している。既設の炭鉱で石炭層の硫黄含有量が3%を超える場合はその生産を逐次制限、操業停止を行う。また、大中都市の市街区および近郊で石炭を燃料とする火力発電所の建設を禁止する。また、新規建設される発電所や、硫黄含有量が1%を超える発電所には、硫黄除去施設を設けることを義務づけている。
3.2 水質環境基準
 中国の水質基準は1〜5類に区分され、規定が設けられている(表5参照)。1、2類は許容範囲内であるが、5類はかなり深刻である。
4.環境行政組織
 中国における環境行政は、主に国務院環境保護委員会および国家環境保護局で行われる。
 国務院環境保護委員会は、国務院副総理を主任として国務院の部や委員会などの組織員(部長・主任や副部長・副主任など)、主要国有企業の幹部など約50名により構成される。そこでは、環境保護に関する基本的・総合的な施策の審議、年度ごとの環境保護業務の報告、環境政策方針の検討、省や主要地方都市での環境保護業務の検討などを行う。
 また、国家環境保護局は、国務院の直属機構として位置づけられ、(1)国家の環境保護に関する方針、政策、法律、法令を執行・監督、(2)環境保護の条例、規定、基準、経済技術政策を制定、(3)環境保護の長期計画、年度計画の制定、執行状況の管理、(4)環境調査および改善措置の提案、(5)環境科学研究と環境教育事業の推進と、環境保護の先進的経験と技術の普及、(6)国務院所属の各部門と各省、自治区、直轄市(北京・上海・天津・重慶)の環境保護行政指導、(7)環境保護の国際協力など、広範な環境保護行政を担当している。国家環境保護局内は部門別に組織され、汚染管理では、都市、水、大気、海洋環境、固体廃棄物、騒音を対象とする管理所が設立されている。
 環境保護に当ってはそのほかの国務院の部に司、局レベルの環境保護機構が設立され、省・自治区・直轄市などの地方においても環境保護委員会や環境保護局が環境科学研究や環境観測、環境の監理を行っている。
 中国国務院が先ごろ批准した環境保護に関する「第10期5カ年計画」(2001年〜2005年)では、期間内に中国の二酸化硫黄の総排出量を2000年より10%減少させ、80%以上の都市で二酸化硫黄濃度が国家空気環境品質2級の水準にまでするとしている。
<図/表>
表1 中国の一次エネルギーの需要量とその構成
表2 石炭の消費量とSO2排出量の推移
表3 全国生態環境建設計画
表4 中国と日本の大気汚染に係る環境基準
表5 中国における地表水の水質環境基準
図1 中国酸性雨の分布図

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<関連タイトル>
北米電力システム大停電 (01-07-02-15)
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アジア地域におけるNOx排出量の予測(科学技術政策研究所) (01-08-01-11)
アジア地域におけるSOx排出量の予測(科学技術政策研究所) (01-08-01-12)
アジア・太平洋地域における環境問題の特殊性 (01-08-04-02)

<参考文献>
(1)APEC環境技術交流促進事業運営協議会:中国・環境ニーズ調査報告書
(2)環境省国際環境協力:http://www.env.go.jp/earth/coop/jcec/index.html
(3)日中友好環境保全センター:
(4)(財)東海技術センター 中国環境事情:
(5)立命館大学政策科学 梁秀山HP:「中国のSO2排出課徴金と許可証取引制度」
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