<本文>
電力供給計画は、電気事業法第29条に基づき、毎年3月末までに一般電気事業者10社及び卸電気事業者2社から、経済産業大臣に届出が行われる。各社の2004年度供給計画とその中の電源構成計画について述べる。
(1)北海道電力
2003年度の販売電力量は、オール電化住宅の普及拡大、鉄鋼や機械の生産増などから、297億kWh(対前年度比1.5%増)となる見込み。2004年度は、民生用が引き続き堅調に推移するものの、産業用は生産活動が本格的な回復までには至らず、299億kWh(同0.7%増)と想定した。中長期的には、民生用は堅調に伸び、一方、産業用は低めの伸びになると想定しており、2013年度の販売電力量は、340億kWh、2002年度から2013年度までの年平均伸び率は、1.4%(民生用1.6%、産業用0.8%)、前年度計画と比較すると、2012年度時点で4億kWh程度の下方修正となる。2003年度12月の最大電力は、平年と比べて気温が高く、降雪量が少なかったことから、493万kW(対前年比2.9%減、気温補正後は同0.7%増)となった。2004年度については、販売電力量が民生用で堅調に推移すると見込み、525万kW(同6.4%増、気温補正後は同1.0%増)と想定している。中長期的には、2013年度の最大電力を600万kW、2002年度から2013年度までの年平均伸び率を1.5%と想定しており、昨年度計画と比較すると、2012年度時点で11万kW程度の下方修正となる。電源構成計画を
図1に示す。
(2)東北電力
2002年度から2013年度までの販売電力量は、年平均で1.0%(気温補正後1.1%)の伸びを想定している。このうち、電灯や業務用電力は、人口の減少、トップランナー機器の浸透による省エネルギーの進展など減少要因はあるものの、アメニティ指向の高まりによる家電機器の普及拡大、医療福祉や生活支援分野などサービス産業の多様化・情報化の進展などから、比較的安定した伸びで推移するとみている。産業用需要は、大口電力を中心として、構造改革の動向や今後の経済見通し、省エネルギー対策の推進などを考慮し、低い伸びになるとみている。また、最大電力は、冷房空調機器の着実な普及拡大など増勢要因はあるものの、
負荷平準化に向けた取り組みの強化などを考慮し、2002年度から2013年度まで、年平均で0.9%(気温補正後1.2%)の伸びを想定している。電源開発計画は、安定供給を確保しながら競争の進展、環境規制の強化、および事業環境変化への柔軟性を確保することを基本とし、スリムで効率的な設備形成を目指す。電源構成計画を
図2に示す。
(3)東京電力
供給計画は、環境適合性に配慮しながら設備などを形成する。安定供給・
エネルギーセキュリティーの確保が基本だが、これに加えて、経済性・運用性・CO
2俳出削減への対応も含めた競争力の強化と社会的使命の両立を目指して効率的な設備形成を実施する。2004年度の販売電力量は、景気が民需中心の緩やかな回復に向かうことに加え、前年の冷夏の反動により空調需要が増加することから、対前年比2.0%増の2820億kWhと2年ぶりにプラスの伸びとなる見通し(気温閏補正後では1.7%増)。長期的には、経済成長率の鈍化や競合エネルギー間の競争激化、省エネルギーの進展などにより、販売電力量の増勢は緩やかになると見ている。その一方で、経済のサービス化の進展やアメニティー指向の高まりに伴う家電機器の普及などを反映し、商業用・家庭用などの民生用需要については、依然として堅調な伸びが期待できることから、2002年度から2013年度までの平均で1.3%(気温補正後)の伸びを見込んでいる。2004年度の販売電力量は、景気が民需中心の緩やかな回復に向かうことに加え、前年の冷夏の反動により空調需要が増加することから、対前年比2.0%増の2820億kWhと2年ぶりにプラスの伸びとなる見通し(気温閏補正後では1.7%増)。長期的には、経済成長率の鈍化や競合エネルギー間の競争激化、省エネルギーの進展などにより販売電力量の増勢は緩やかになるとみている。一方、経済のサービス化の進展やアメニティー指向の高まりに伴う家電機器の普及などを反映し、商業用・家庭用などの民生用需要については。依然として堅調な伸びが期待できることから、2002年度から2013年度までの平均で1.3%(気温補正後)の伸びを見込んでいる。電源構成計画を
図3に示す。
(4)中部電力
2004年度供給計画における販売電力量は、最終年度の2013年度で1380億kWhを見込んでいる。2002年度から2013年度までの年平均伸び率は、気温補正後で1.2%。内訳は、自由化対象外となる家庭用中心の需要は、省エネ対策が進むものの、住環境の充実志向を背景とした家電機器の普及増などにより、1.3%と安定した伸びを見込んでいる。自由化対象の特定規模需要のうち、業務用需要は情報化の進展や高齢化社会に向けた医療・福祉施設の充実などから、堅調な伸びが見込まれている。一方、産業用需要は、IT関連市場の拡大や、製品の高付加価値化による下支えがあるものの、国内製品需要の成熟化や省エネ対策の強化などにより、伸び悩みが予想されることから、低い伸びになる見通し。このため、特定規模需要全体では、1.1%と安定した伸びになるとみている。最大電力は、13年度において2868万kWと想定。2002年度から2013年度までの年平均伸び率は気温補正後で1.1%を見込んでいる。なお、2013年度までの年平均伸び率は、販売電力量・最大電力とも過去最低となっている。電源構成計画を
図4に示す。
(5)北陸電力
2004年度の供給計画は、将来にわたる安定供給の確保と地球温暖化防止の観点から、志賀原子力発電所2号機の建設および基幹系統の強化を着実に推進するとともに、風力を中心に
新エネルギーの開発に向けた取り組みを推進する。また、設備投資は、供給信頼度維持のもと、投資効率を重視した設備形成に努める。需要見通しは、今後10年間、販売電力量・最大電力とも年平均で1.1%の伸びを見込んでいる。電源開発計画は、志賀原子力発電所2号機(135.8万kW)の建設を着実に推進する。1999年に
着工しており、2006年3月の運転開始を目指す。2003年度推定実績は、需要が489万kWに対して、供給は567万kWで、予備力は78万kW、供給予備率は15.9%(気温補正後10.9%)となっている。電力量構成比は、志賀原子力発電所2号機の運転開始以降は、CO
2を発生しない電源の割合が発電電力量で約70%となる。電源構成計画を
図5に示す。
(6)関西電力
2004年度供給計画は、競争力の強化、エネルギーセキュリティの確保、地球環境保全の推進−を重点課題として策定した。今後の電力需要は、短期的には構造改革を加速する集中調整期間が続き、省エネ家電機器の普及、他エネルギーとの競争激化などマイナス要因が少なくない。しかし、アメニティ志向の高まり、情報化社会の進展などプラス要因も多く、中長期的にみた電力需要は、民生分野を中心に緩やかな増加基調で推移するものとみている。2002年度から2013年度までの販売電力量は。年平均伸び率(気温補正後)が0.8%と緩やかに拡大するものと想定。
年負荷率も緩やかに上昇するとみている。最大電力については2002年度から2013年度までの年平均伸び率(気温補正後)は、販売電力量を下回る0.5%と想定した。電源開発計画の電源設備形成においては。経済性、エネルギーセキュリティ、環境負荷特性を総合勘案し、引き続き原子力を基軸として、各電源をバランスよく組み合わせ、効率的な設備形成を図る。電源構成計画を
図6に示す。
(7)中国電力
2004年度供給計画では、2013年度における販売電力量は618億kWh、2002年度から2013年度までの年平均伸び率は0.9%増(気温など補正後1.0%)と想定している。生活関連用需要では省エネルギー機器が普及するとみられるが、情報化と高齢化の進展、快適性志向の高まり、電化住宅の普及拡大などによって着実に増加するとみられる。一方、産業用需要は素材型産業の生産の伸び悩みなどから、ほぼ横ばいで推移すると想定している。最大需要電力は、2013年度において1276万kW、2002年度から2013年度までの年平均伸び率は1.3%増(気温など補正後1.2%)と想定。年負荷率は、生活関連用需要の増加や産業用需要の伸び悩みなど、悪化要因はあるものの、負荷平準化努力により、ほぼ横ばいで推移すると見込んでいる。電源開発計画は、需要動向に対応した安定供給の確保および効率的な設備形成を基本として、電源多様化の推進、地球環境問題への対応、広域運営などを総合的に勘案して計画。原子力は、島根原子力3号機を2011年3月に、上関原子力1号機を2013年度にそれぞれ運転開始する。電源構成計画を
図7に示す。
(8)四国電力
2004年度供給計画では、2013年度における販売電力量は290億kWh、2002年度から2013年度までの年平均では0.9%増(気温補正後1.1%)と想定している。家電・情報機器の普及拡大や電化住宅の増加などが見込める一方で、省エネルギーの進展や人口の減少、さらには素材型産業のウェイトが高い産業構成など、四国の実情を反映している。2013年度の最大電力は597万kWと想定している。2002年度から2013年度までの年平均伸び率は0.8%(気温補正後0.9%)。これは、エアコンの普及拡大に伴い冷房需要の増加が見込める一方、省エネルギーの進展や蓄熱式空調システムの普及促進など、負荷平準化効果を織り込んだためで、年負荷率は2013年度において59.5%に改善すると見込んでいる。電源構成計画を
図8に示す。
(9)九州電力
2004年度供給計画によると、2003年度の販売電力量は、オール電化住宅の普及拡大や大型店舗の出店増などによる民生用の増加に加え、産業部門における生産活動の持ち直しなどにより、776億kWh、対前年伸び率1.2%(気温など補正後1.3%)となる見込みだ。2004年度については、民生用は個人消費の伸び悩みなどに伴い、前年に比べ低めの伸びが予想されるほか、産業用は中小製造業の生産回復に一定の時間が必要と考えられることなどから、778億kWh、対前年伸び率0.3%(気温など補正後1.0%)を想定している。長期的には、人口の減少や省エネルギーの進展による影響があるものの、安定的な経済成長や情報化、高齢化の進展、アメニティ指向の高まりなどにより、民生用需要を中心に着実な増加が予想され、2002年度から2013年度までの年平均伸び率は、1.0%(気温など補正後1.1%)を見込んでいる。2003年度の最大電力は、1556万kWで、対前年伸び率1.4%(気温など補正後0.6%)となったが、2004年度は1616万kW、対前年伸び率3.9%(気温など補正後1.3%)を想定している。長期的には、販売電力量の安定した増加などから、2002年度から2013年度までの年平均伸び率は1.5%(気温など補正後1.2%)を見込んでいる。電源開発計画は、今後の電力需要増加に対し、エネルギーセキュリティの確保、経済性および環境への適合などを勘案し、原子力を中核として、バランスのとれた計画を推進する。電源構成計画を
図9に示す。
(10)沖縄電力
2004年度の電力需要については、民生用は昨年の猛暑による冷房需要増の反動から、前年度を下回るものと予想されるが、産業用は水道業・食料品製造業などの安定した増加が見込まれるため、全体では前年度並みとなる見通し。長期にわたる電力需要は、省電力が拡大するとみられるものの、全国水準を上回る人口の伸びに伴うユーザーの増加や、沖縄振興計画の着実な推進による経済振興が期待できることから堅調に推移していくものと見込まれる。このため、2004年度の販売電力量は70億9000万kWhで、対前年度比0.4%減(気温閏補正後2.1%)、最大電力は142万3000kWで、対前年度比1.0%増(気温補正後2.4%)と想定している。また、2013年度の販売電力量は86億1400万kWh、最大電力は172万6000kWで、2002年度から2013年度に至る年平均伸び率は、販売電力量が2.1%(気温補正後2.1%)、最大電力が2.4%(気温補正後2.0%)と想定している。電源設備計画は、需要想定に基づき、長期的な電力の安定供給を基本に、経済性とセキュリティの調和した電源構成を目指し、電源設備を増強する。
<図/表>
図1 北海道電力電源構成計画
図2 東北電力電源構成(発電電力量)計画
図3 東京電力電源構成計画
図4 中部電力電源構成計画
図5 北陸電力電源構成計画
図6 関西電力電源構成計画
図7 中国電力電源構成計画
図8 四国電力電源構成計画
図9 九州電力電源多様化計画(他社受電分含む)
<関連タイトル>
平成16年度電力供給計画 (01-09-05-21)
<参考文献>
(1)日本工業新聞社:電力各社の経営計画&供給計画、エネルギー、37(6),p.100-119(2004年6月)
(2)北海道電力:プレスリリース、平成15年度、2004年度経営計画について(要約版)(H16.3.26)、電源計画
(3)東北電力:会社のご案内、経営方針・計画、平成16年度経営計画、電源構成
(4)東京電力:株主投資家の皆様、平成16年度経営計画の概要、2.効率的な設備形成の実施
(5)中部電力:会社案内、事業計画、電力供給計画の概要、3.電力需給と電源構成
(6)北陸電力:株主・投資家のみなさまへ、経営計画の概要
(7)関西電力:経営方針、平成16年度供給計画、電力需給計画
(8)中国電力:株主投資家の皆様へ、電力供給計画、2.電源開発計画
(9)四国電力:プレスリリース、平成15年度、平成16年度供給計画の概要、p.6
(10)九州電力:プレスリリース一覧、平成16年度経営計画の概要、p.5
(11)経済産業省 資源エネルギー庁:平成16年度供給計画の概要(2004年3月)
(12)資源エネルギー庁:平成16年度電力供給計画について(2004年3月31日)