<大項目> 海外情勢
<中項目> 中南米各国
<小項目> アルゼンチン
<タイトル>
アルゼンチンの原子力開発体制 (14-08-02-01)

<概要>
 アルゼンチンでは、1997年の原子力法の改正によって、従来の原子力委員会は、研究開発を担当する現 原子力委員会(CNEA)と、規制を担当する原子力規制庁(ARN)、及び原子力発電所の運転・建設を担当する国営のアルゼンチン原子力発電会社(NASA)に分割された。原子力法改正の大きな目的の一つは、原子力発電所の民営化であり、NASAの民営化が進められている。
<更新年月>
2012年12月   

<本文>
1.旧原子力委員会の設置と原子力研究センターの設立
 アルゼンチンは1940年代後半から原子力開発に関心を示し、原子力産業の自立をめざしていた。ウラン探査、農業・工業用(RI)の利用、原子力用電子機器類の開発・製造、研究炉や燃料製造工場の開発等に取り組むために、1950年に大統領直属の機関として原子力委員会(CNEA)が設置された。
 それから数年以内に、原子力委員会によって、コンスティテュエンテス原子力研究センター(CAC)、エセイサ原子力研究センター(CAE)、バリローチェ原子力センター(CAB)の3つの原子力研究センターが設立された。原子力委員会が設計・製造した研究炉が、これらの原子力研究センター、コルドバ大学及びロサリオ大学に設置された。燃料の濃縮は米国が行ったが、製造は原子力委員会が行った。最初の研究炉RA-1はコンスティテュエンテス原子力研究センターに設置され、研究が始まった。これまで7基の研究炉及びRI製造用の原子炉が造られた(表1及び図1参照)。
2.原子力開発・規制体制の再編成
 アルゼンチンでは、国営企業の非効率な運営によって負債が増大しているとの観点から、1960年前後に一部企業の民営化が実施された。しかし、こうした動きが本格化したのは、原子力関連では1994年8月で、政府はそれまで一元的に担当していた原子力委員会(CNEA)を「規制」、「発電所の建設・運転」、「研究開発」などの3機関にする分割案を発表し、それに関連した「国家原子力事業法」と「放射性廃棄物管理法」の2つの法案を議会に提出した。野党からの強い反発もあって難航したが、同法案は下院で1996年6月、上院では翌1997年4月に承認された。
 これらの原子力法の改正によって、旧原子力委員会は、(1)研究開発を担当する現原子力委員会(CNEA)、(2)規制を担当する原子力規制庁(ARN)、(3)アトーチャ1号機(PHWR、35万7,000kW)とエンバルセ原子力発電所(CADU、64万8,000kW)の運転及びアトーチャ2号機(PHWR、74万5,000kW)の建設を担当する国営のアルゼンチン原子力発電会社(NASA)などに分割された。
 また、両院の承認を受け、新しい放射性廃棄物管理法が1998年10月に成立した。それによると、政府やCNEA、ARN、廃棄物発生者等の責任は明確に定められており、CNEAは放射性廃棄物の管理に関した国家戦略や詳細な実施計画を作成し、議会の承認を受けることになっている。このほか同法では、廃棄物の発生者が計画の実施にかかる費用を負担することが規定されており、そのための放射性廃棄物基金の設立が盛り込まれた。
 原子力法改正の大きな目的の一つである原子力発電所の民営化については、原子力発電、核燃料サイクルと放射線及びRIの利用に関するすべての活動が対象とされたが、廃棄物管理や既設原子炉の廃炉に関しては政府が責任を負うこととなった。
3.原子力関係機関
3.1 主要原子力機関
(1)原子力委員会(CNEA:Comision Nacional de Energia Atomica)
 政府所有形態をとり、機構改革前は大統領直属であったが、現在は連邦計画・公共投資サービス省の管轄下となった。CNEAは、下記 1)から 3)に示す原子力センターでの研究開発業務が中心であるが、原子力発電所への商業ベースでの技術支援、ウラン燃料やRIの生産、使用済燃料や放射性廃棄物管理、廃止措置に対して責任を保持する。なお、これらの活動は将来の民間投資の対象となる。図2に組織図を示す。
 1)コンスティテュエンテス原子力研究センター(CAC:Constituyentes Atomic Center):物質科学、原子燃料、物理、化学、放射線生物学、Non Destructive、20MW重粒子イオン加速器
 2)エセイサ原子力研究センター(CAE:Ezeiza Atomic Center):RA3研究炉(5MW→10MW)、放射線防護、農業、食品照射、ホットセル、廃棄物管理
 3)バリローチェ原子力センター(CAB:Pilcaniyeu Technological Center):ウラン濃縮パイロットプラント、UF6製造、Membranes製造、CAREM、加圧ループ
(2)原子力規制庁(ARN:Nuclear Regulatory Authority)
 大統領直属の連邦機関。政府任命の5人の委員から構成される。安全規制、放射線防護、国際保障措置等を担当する。図3に組織図を示す。
(3)アルゼンチン原子力発電会社(NASA:Nucleoelectrica Argentina S.A.)
 運転中の原子力発電所2基(アトーチャ1号機とエンバルセ)と建設中の原子力発電所1基(アトーチャ2号機)を所有・運転する原子力発電会社。
3.2 原子力関連会社
(1)ディオクシテック社(DIOXITEK S.A.):前身は1977年設立したウラン探鉱、製錬転換工場を運転する原子力メンドサSE。1997年2月に再編された。コルドバ市内で二酸化ウランの生産とエセイサ原子力センターの医療及び産業用のコバルト60の製造。(株式比率:CNEA99%、メンドサ州1%)
(2)アルゼンチン原子燃料会社(CONUAR SA:Combustibles Nucleares Argentinos S.A.):1981年設立。エセイサには核燃料加工工場があり、アトーチャ発電所用(Siemens-KWUタイプPHWR)とエンバルセ発電所用(CANDU-6タイプPHWR)の2種類の燃料、研究炉及びRI製造炉用の燃料要素(MTR)を供給している。(株式比率:Sudacia S.A 67%、CNEA33%)
(3)特殊合金製造会社(FAE SA:Fabricacion de Aleaciones Especiales S.A.):1986年設立。エセイサにジルカロイ・チューブ等の特殊製品の製造工場を操業。スウェーデンのサンドビック社の技術支援を得ている。製品はカナダ、米国、欧州にも輸出されている。(株式比率:CONUAR68%、CNEA32%)
(4)ENSI SE(EMPRESA NEUQUINA DE SERVICIOS DE INGENIERIA SE):1980年にスイスのザルツァー社からの技術導入によりアロイト重水工場の建設が開始されたが、ザルツァー社が手を引いたため、運転開始は1995年からである。年間約200トンの製造能力があり、輸出にも力を入れている。1996年の競争入札により韓国への重水30トンの輸出と、カナダへの将来的な重水供給に関する了解覚書(MOU)の締結などの実績がある。(株式比率:CNEA49〜51%、ネウケン州アジロート1%)
(5)INVAP SE:1976年設立。リオネグロ州サン・カルロス・デ・バリロチェにある研究炉やRI生産炉の製造者で、ペルー、アルジェリア、エジプト、オーストラリアへの輸出実績がある(図1参照)。CNEAと協力して燃料製造、ウラン濃縮、使用済燃料の乾式貯蔵施設、特殊機器等の開発・製造分野でも活動している。(株式比率:リオネグロ州100%)
(6)ルッフォ癌センター(Centro Oncolagico de Medicina Nuclear del Instituto de Oncologia Angel H. Roffo):1976年CNEAとブエノスアイレス大学との合意で設立した癌センター。放射線腫瘍学、診断と治療、医薬品の開発を行う。
(7)放射線医療クリニックセンター(Centro de Medicina Nuclear del Hospital de Clinicas):1958年CNEAとブエノスアイレス大学の共同イニシアチブで、1962年に大学病院のRI実験室として設立。技術支援や教育、核医学・画像診断の分野での研究活動を行う。
 図4にアルゼンチンの主な原子力施設配置図を示す。
4.トラテロルコ条約核不拡散条約を批准
 アルゼンチンは軍政時代に、隣国ブラジルに対抗するため、使用済燃料の再処理プルトニウムの製造能力向上に力を注いでいた。しかし、このような危険な開発は、1990年に両国が共通原子力政策宣言に署名したことにより終了し、ブラジル・アルゼンチン核物質計量管理機関(ABACC)が設立された。1991年12月13日、アルゼンチンとブラジルの両国はフルスコープ保障措置協定に調印した。同協定は、IAEAによる原子力資材の輸出入の確認や申告施設の査察を認めたもので、アルゼンチン議会は1992年8月に批准した。ウランなどの核燃料を供給しているアルゼンチンは、核物質防護条約(PP条約)に加盟し、原子力供給国グループのメンバーになっているが、さらに、1994年1月に中南米非核地帯条約(トラテロルコ条約)に、1995年2月には核不拡散条約(NPT条約)にそれぞれ批准している。
(前回更新:2003年1月)
<図/表>
表1 アルゼンチンの研究用及びRI製造用原子炉
図1 アルゼンチンにおける原子力開発の歴史
図2 アルゼンチン原子力委員会 (CNEA)組織図
図3 アルゼンチン原子力規制庁(ARN)組織図
図4 アルゼンチンの主な原子力施設配置図

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<関連タイトル>
アルゼンチンの核燃料サイクル (14-08-02-03)
アルゼンチンの原子力発電開発 (14-08-02-02)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2003(2002年11月)、p.441-444
(2)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向(2012)(平成24年5月)
(3)(一社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2013(2012年11月)、p.227-230
(4)IAEA/INPRO-ENV-PE 1st Meeting:Level-2/3 PSA: M. Caputo氏発表(CAB - CNEA)、Argentina experience(2012年10月)
(5)アルゼンチン原子力委員会(CNEA):関連機関及び関連会社及び組織図(2011年)
(6)アルゼンチン原子力委員会(CNEA):Nuclear Activities in Argentina(2002年10月)
(7)国際原子力機関(IAEA):Directory of Nuclear Research Reactors(1998) Argentina,
(8)国際原子力機関(IAEA):研究炉情報、http://www-naweb.iaea.org/napc/physics/research_reactors/database/rr%20data%20base/datasets/report/Argentina%20(Argentine%20Republic)%20Research%20Reactor%20Details%20-%20RA-8.htm
(9)アルゼンチン原子力規制庁(ARN):Nuclear Regulatory Authority Overvie、http://www.arn.gov.ar/images/stories/informes_y_documentos/overview/overview.pdf
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