<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ブルガリア
<タイトル>
ブルガリアの電気事業および原子力産業 (14-06-06-07)

<概要>
 ブルガリアは欧州連合(EU)への統合を目指して労働市場、産業構造、財政などの改革に取り組み、2007年1月よりEU加盟国となっている。加盟直前には国営企業資産の90%が民営化されていたが、2008年9月にブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)が成立したことにより、発電所、地域熱供給会社等の国営企業の民営化が進められた。
 BEHはブルガリア電力公社(NEC)、コズロドイ原子力発電会社、石炭火力、ガス火力、送配電システム、鉱山開発、通信ネットワーク会社など7社で構成されている。コズロドイ原子力発電会社は同国唯一の原子力発電所の運転責任組織である。また、NECは2015年に運転を開始する計画で、ベレネ原子力発電所の建設再開に取組んでいる。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 ブルガリアは、1989年11月の共産党独裁体制の終焉をもって民主化、市場経済へスタートした。しかし、政治的に不安定な期間が長く、旧コメコン市場の喪失、国連による対ユーゴ経済制裁などで経済状態は悪化。1997年7月の通貨委員会の設置により、固定相場制の導入などを図り、インフレの沈静、金利水準の低下、外貨準備高の増加傾向が見られるようになった。その後、EUへの統合を目標に労働市場改革、産業構造改革、財政改革に取り組み、2007年1月よりブルガリアは欧州連合(EU)加盟国となっている。
 2006年6月時点で国営企業資産の90%が民営化され、発電所、地域熱供給会社等の国営企業が残されたが、2008年9月にブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)が成立して、民営化が進んでいる。ブルガリア唯一の旧ソ連型PWR(VVER)を保有するコズロドイ原子力発電所もその傘下に置かれている。
 ブルガリアの原子力産業は1990年のIAEA/OSARTの安全調査を受容れて以来、コズロドイ1〜4号機の早期閉鎖、5、6号機の性能向上、ベレネ発電所建設再開にあたり、欧州連合(EU)諸国の原子力産業と密接な関わりを持っている。一方、石油及び天然ガスの大半をロシアから輸入している背景もあり、ロシアとも良好な関係の維持している。現在、貿易赤字幅は依然として大きいが、外国からの投資額は増大傾向にある。
1.電気事業
(1)ブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)
 2008年9月18日、経済・エネルギー省の決定により、ブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)が成立した。BEHは石炭の生産、石炭火力・天然ガス・原子力発電、送・配電システム、通信ネットワークなど7つの企業を傘下においたブルガリアの最大の電力会社である。なお、施設の運転管理は従来どおりそれぞれの企業に任される。図1にブルガリアの電力系統図を、図2にBEHの組織図を示す。
(2)ブルガリア電力公社(NEC)
 電気事業は、1991年11月の内閣令でブルガリア国営電力公社(NEC)が設立され、1992年1月より営業を開始した。同社は国営の会社として発送配電の一貫経営を行っていたが、2000年の組織分割以降、大型水力発電所の建設・運転管理、送電の業務を行っている。また、NECはベレネ原子力発電所を所有している。ベレネ発電所は旧ソ連製PWR(VVER−1000/V−466)の2基で構成され、住民の反対により1990年に建設を中断した。しかし、2002年5月、政府はコズドロイ発電所閉鎖に伴う代替電源として、ベレネ発電所建設の再開・運転を計画することを発表した。現在、ベレネ発電所はNECの1支社として管理され、今後ベレネ電力会社(BPC)を設立する方針である。図3にNECの組織図を示す。
(3)コズロドイ原子力発電会社(Kozloduy NPP Plc.)
 コズロドイ原子力発電所は、ブルガリア国営電力会社の1支社であったが、1999年9月に「エネルギー法」が採択され、2000年に独立した国有企業になった。コズロドイ発電所の管轄はエネルギー委員会からエネルギー・エネルギー資源庁へ、2005年8月から経済・エネルギー省、2008年9月からBEHへと移行している。
 コズロドイ発電所は旧ソ連製PWR6基で構成され、そのうちの4基(VVER440/V−230)が、2002年と2006年に運転を終了した。5、6号機(VVER1000/V−320)は、1998年から近代化プログラムを実施し、安全性能が拡充されている。現在、コズロドイ発電所会社は5、6号機の運転、1−4号機の廃止措置、廃棄物・放射線防護・環境モニタリング等の安全管理、技術管理、訓練、国際協力、広報活動などの業務を行っている。
2.原子力産業
 原子力プラントの部品は従来、旧ソ連に依存していたが、調達が困難な場合はブルガリアの国内企業に発注した。しかし、部品スペックが不完全なことから、品質管理の維持に課題があった。また、安全面で欧州連合(EU)を中心とした西側諸国から即時閉鎖を要求されたコズロドイ1〜4号機に関しては、原子力発電所の運転を継続するため、NECはフランスのBugey発電所とパートナーシップ条約を結んだほか、世界原子力発電事業者協会(WANO)、ドイツ原子炉安全協会(GRS)、フランス原子力安全・防護研究所(IPSN)等とともに安全技術支援プログラムを推進した。1998年3月から、ドイツKWU(シーメンス)を中心に仏フラマトム社、ロシアAEEから構成される欧州企業連合コズロドイ(European Consortium Kozloduy)が、コズロドイ5、6号機の近代化プログラムを実施している。作業の50%以上をブルガリア企業に委託した。
 また、ベレネ発電所の建設再開には、ロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)が2006年10月に落札している。計装制御系は仏アレバ社および独シーメンス社が担当する。
3.ブルガリア国内における原子力技術支援組織
(1)エネルゴプロエクト(Energoproekt−plc)
 1948年に設立。火力、水力、原子力の発電技術、電力送配電、自動化等の技術分野を有している。コズロドイ原子力発電所の安全性向上に係わる国際協力プロジェクトの多くに関与して技術導入を図ってきた(図4参照)。1989年以降は部門、人員とも削減されている。
(2)科学アカデミー原子力研究所(INRNE)
 原子力研究センター(1956年設立)と物理研究所がもととなり1972年に設立されたブルガリアで最も大きい研究所である。現在、基礎素粒子物理、核物質、高エネルギー物理、原子力、放射線研究等の基礎および応用研究を担っており、7つの研究部、30の研究グループがあり、研究員は約150人である。図5にINRNEの組織図を示す。
(3)EQEブルガリア社
 1992年に設立した民間会社で、耐震解析、設計、研究、リスク解析等を実施している。コズロドイ原子力発電所から設計解析業務を受注した。
(前回更新:1999年3月)
<図/表>
図1 ブルガリア電力系統図
図2 ブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)の組織
図3 ブルガリアの国営電力会社(NEC)の組織
図4 ブルガリアのエネルゴプロエクトの組織
図5 ブルガリアの科学アカデミー原子力研究所の組織

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<関連タイトル>
ブルガリアの国情およびエネルギー、電力事情 (14-06-06-01)
ブルガリアの原子力政策および計画 (14-06-06-02)
ブルガリアの原子力発電開発 (14-06-06-03)
ブルガリアの原子力開発体制 (14-06-06-04)
ブルガリアの核燃料サイクル (14-06-06-06)
コズロドイ原子力発電所(ブルガリア)のIAEAによる安全調査 (14-06-06-09)

<参考文献>
(1)(財)原子力安全研究協会:旧ソ連、中・東欧諸国 原子力ハンドブック(2002年3月)、p.151−167、1997年3月、p.201−219
(2)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑、2009年版(2008年10月)、p.284−286
(3)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第二編2005年(2005年3月)、p.153−166
(4)(財)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2007/2008年次報告(2008年4月)、p.76−77
(5)ブルガリア・エネルギー・ホールディング(BEH)
(6)KOZLODUY NPP PLC:コズドロイ原子力発電所 ANNUAL REPORT 2007
(7)ブルガリア電力公社(NEC):ANNUAL REPORT 2007
(8)ブルガリア経済・エネルギー
(9)ブルガリア科学アカデミー(INRNE)
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