<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フィンランド
<タイトル>
フィンランドの原子力発電所建設計画 (14-05-05-03)

<概要>
 フィンランドでは2011年現在、4基の合計グロス出力284万kWの原子力発電所が運転中である。懸案となっていた同国5基目となる新規原子力発電所建設計画は2002年5月、議会の採決を経て承認された。その後、2003年10月に建設サイトがオルキルオトに決定し、同年12月には炉型をグロス出力160万kWの欧州加圧水型炉(EPR=PWR)と決定して、正式な建設契約を締結した。テオリスーデン・ボイマ社(TVO)は2004年1月に政府に建設認可を申請し、2005年2月に建設認可が発給され、2005年8月から建設工事を開始した。建設工事はEPRの初号機であったことや、安全審査に時間を要したことで大幅な遅延が生じている。TVOへの引渡しは2013〜2014年へずれ込む見通しである。
 さらにフィンランドでは、国内6基目となる原子力発電所の建設計画が進展している。
<更新年月>
2011年11月   

<本文>
 エネルギー資源の乏しいフィンランドでは、1970年代の石油危機を契機にエネルギーの自給率を高めるため、1970年代後半から1980年代の初めにかけて原子力発電所を建設し、原子力開発を進めてきた。2011年11月現在、4基の合計グロス出力284万kWの原子力発電所が運転され、1基・160万kWの原子力発電所が建設中である。2010年には219億kWhを発電し、総供給電力量の28.4%を占めた。図1にフィンランドの原子力発電所の一覧および配置図を示す。
(1)オルキルオト3号機の建設に向けた手続きおよび建設状況
 フィンランド議会(1院制)は2002年5月24日、新規原子力発電所建設に関する政府の原則決定(2002年1月)を受けて採決を行い、107対92で新規建設を承認した。議会の承認が得られたことから、民間電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社(Teollisuuden Voima Oyj、以下、TVO)は2002年9月30日、出力が100〜160万kWの炉型を選定するための競争入札の実施を発表した。2003年3月31日に入札を締め切り、入札評価を開始。2003年10月16日には、建設サイトを既存のオルキルオト原子力発電所に決定し、フランスのフラマトムANP SAS社(現、AREVA NP)とドイツのシーメンス社のコンソーシアムフラマトムANP GmbH社が入札した欧州加圧水型炉(EPR、グロス出力170万kW)を建設候補炉型とした。
 TVOはその後、同年12月18日に同国5基目となる原子力発電所(オルキルオト3号機)の炉型を欧州加圧水型炉(EPR)に正式決定し、掘削作業を除く、設備の設置から試運転までの建設工事全体に関する業務を一括で請け負うターンキー方式で建設契約(契約総額:約30億ユーロ)を締結。2004年1月8日に政府に建設認可を申請した。TVOは同時にフィンランド放射線・原子力安全局(STUK)に対し、EPRの詳細安全報告書を提出。2005年2月に建設認可が発給され、同年8月から出力160万kWのEPRの建設工事が進められている。EPRの初号機という観点からも安全規制上審査は慎重に行われ、建設遅延が発生したことで、建設当初の予定の2009年4月の商業運転は2013年〜2014年を予定している。
 ちなみに、TVOの建設計画は1993年2月に一度政府によって承認されたが、1986年のチェルノブイル事故の影響を受け、1993年9月に議会で否決された経緯がある。しかしフィンランドでは、近年の慢性的な電力輸入、将来の電力需要の増加予想、京都議定書遵守の必要性などを背景に原子力発電への支持が強まり、再度新規の原子力発電所建設計画が浮上した。Suomen Gallup社が2002年5月の議会決定直後に実施した世論調査では、新規建設に賛成が55%、反対は31%であった。
(2)オルキルオト3号機の建設決定に至るこれまでの経緯
 フィンランドでは、TVOが1998年1月にオルキルオト発電所隣接区域で詳細環境影響評価(EIA)の作成を開始し、1998年4月には国営電力会社フォルトム社(Fortum Power and Heat Oy:Fortum、旧IVO社)がロビーサ発電所隣接区域で増設のための詳細環境影響評価(EIA)の作成を開始した。両社とも1999年8月にEIAを完了し、報告書を貿易産業省に提出した。EIAでは、サイト周辺の住民や環境・天然資源への影響等の調査が行われるとともに、建設計画案に対して周辺住民らから意見を聞く公聴会も開催された。
 いずれのEIAも、建設作業による影響を別にすれば、温排水放出による海水への影響が最も顕著な環境影響であるとした上で、それ以外は「新規立地を妨げる環境影響はない」と結論付けた。また両サイトともに住民の過半数が新規立地計画を支持していた。
 その後、両社の合意に基づきTVOが2000年11月、政府(貿易産業省)に新規立地の原則決定を申請。2001年2月には放射線・原子力安全センター(STUK)が「安全基準を満たしている」との事前評価を下し、2002年1月に政府が新規立地を承認(原則決定)した。表1にオルキルオト発電所3号機の建設プロセスを示す。
(3)新規原子力発電所建設に向けた動き
 このような状況のなか、フィンランドでは現在建設中のオルキルオト3号機の原子力発電所に加え、新たな原子力発電所の建設が検討されている。2008年〜2009年にかけてTVO、フォルトム社、ドイツの電力会社E.ONを親会社とするフェンノボイマ(Fennovoima)の3社が新たな原子力発電所の建設申請を議会に提出した。政府は2010年4月、このうちTVOとフェンノボイマ社の2社にフィンランドの建設許可手続きの第一段階である原則決定(DIP)の交付を決定している。
 DIPとは1987年の原子力法の改定で規定された手続きで、電気事業者が申請する事業計画が社会全体の利益になるか否かの全般的な判定をするものである。政府が承認した場合、議会で審議・承認を受けて正式なものとなる。DIPの決定には建設予定地の地元自治体の文書による同意が求められており、事業者が建設許可申請を行う際の必須項目である。2008年6月に改定された原子力法では、新設される原子炉が操業時に発生する放射性廃棄物の処分地確保が求められており、TVOは2008年4月に地層処分量を9,000トンに拡大するための原則決定の申請を行い、2010年5月には政府により原則決定が行われ、同年7月に国会で承認されている。
 なお、放射性廃棄物処分を含む原子力施設の建設に係わる規制行政機関には、政府、雇用経済省、放射線・原子力安全センター(STUK)がある。雇用経済省がエネルギー政策を所管し、事業の計画・建設・操業全般の管理・監督を行う一方、社会保健省に属するSTUKが原子力安全と放射線安全について安全規制を行う。図2にフィンランドの新規原子力発電所建設に伴うプロセスの流れを示す。
 TVOとフェンノボイマ社の新規原子力発電所建設プロジェクトは、2010年7月に議会承認が得られた結果、DIPが交付された。プロジェクトのうちTVOの原子力発電所の出力は140万〜170万kWのオルキルオト4号機で、ABWR(東芝)、APWR(三菱重工)、EPR(AREVA)、APR1400(韓国KEPCO)、ESBWR(GE・日立)の炉型から選択される。図3にオルキルオト原子力発電所サイトを示す。
 また、フェンノボイマ社は原子力発電所の出力150万〜180万kW×1基または100〜125万kW×2基でABWR(東芝)、EPR(AREVA)、SWR-1000(AREVA)の炉型から選択し、新規立地点としてシモまたはピュハヨキを候補地として挙げていたが、2011年10月、ピュハヨキを建設地として決定した。いずれも2020年ごろの商業運転開始を目指している。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 オルキルオト3号機の原子力発電所建設プロセス
図1 フィンランドの原子力発電所の一覧および配置図
図2 フィンランドの新規原子力発電所建設に伴うプロセスの流れ
図3 オルキルオト原子力発電所サイト

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<関連タイトル>
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)
欧州加圧水型炉(EPR) (02-08-03-05)
フィンランドのエネルギー動向および電気事業概要 (14-05-05-01)
フィンランドの原子力発電開発と原子力政策 (14-05-05-02)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2011年次報告(2011年5月)
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2011年版(2010年11月)、214-217
(3)フィンランド・エネルギー産業連盟ホームページ(など)
(4)テオリスーデン・ボイス(TVO)社:, http://www.tvo.fi/uploads/File/2008/Maisemointi_Englanti_HiRes.jpg
(5)フィンランド経済雇用省:および
(6)フィンランド貿易産業省:Decision-making (2005年2月18日)
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