<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
ラ・アーグ再処理工場をめぐる動き (14-05-02-10)

<概要>
 ラ・アーグ再処理工場は、UP2施設とUP3施設から構成されている。UP2施設での軽水炉用燃料の再処理は、当初、処理能力年間400トンUのUP2-400が1976年に運転を開始したが、その後増設し、1994年からは処理能力800トンUのUP2-800が運転している。一方UP3施設(年間処理能力800トンU)は、予定から1年遅れて1990年に運転を開始した。現在、両施設を合わせた再処理能力は年間1,700トンUに達している。
 UP2-800が主にフランス電力公社EDF)からの使用済み燃料を再処理するのに対して、UP3はドイツ、日本など外国からの再処理委託専用に使用している。これらの施設の運転は、以前は原子力庁(CEA)が行っていたが、1978年からはCEAの子会社であるコジェマ社(COGEMA)が所有・運転している。
 コジェマ社は現在、MOX燃料再処理の可能性など近年の状況変化に対応するため、これらの施設の設置・運転許可の修正を規制当局に申請している。また、規制当局は、その変更に伴う排出許可の見直しも行っている。
 また、近年原子力反対派などから問題とされてきたラ・アーグ再処理工場などの所在するコタンタン半島北部での小児白血病については、政府諮問専門家委員会が1999年に報告書を発表し、同地域での白血病と原子力施設に有意な因果関係は見られないと結論した。
<更新年月>
2010年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1. ラ・アーグ再処理工場の建設・運転
 ラ・アーグ再処理工場は、ノルマンディー地方・コタンタン半島の先端ラ・アーグ岬に位置する。フランスにおける再処理技術は原子力庁が研究開発を行い、コジェマ社(COGEMA)が施設の建設と運転(ラ・アーグ再処理工場は1978年から)、SGN社がエンジニアリングを担当した。同工場の周囲25km圏内には、フラマンビル原子力発電所、シェルブールの原子力潜水艦建造工場などの原子力関連施設が所在する。フランスの核燃料サイクル関連施設の地図を図1に示す。
 ラ・アーグ再処理工場は、UP2施設とUP3施設から構成されている。UP2施設は、当初はガス炉使用済燃料の再処理施設として、1966年に運転を開始したが、1976年には前処理施設(HAO)を設置し、UP2-400(年間処理能力400トンU)として軽水炉用燃料の再処理も可能となった。さらに、処理能力を800トンU/年に拡張したUP2-800が1994年8月に操業を開始した。
 一方、UP3施設は、1981年に年間処理能力800トンを目標として工事を開始し、1990年8月に操業を開始した。コジェマ社は、1970年代にドイツ、日本、ベルギー、スイス、オランダと再処理委託契約を締結しており、UP3はこれらの再処理委託契約専用に運転されている。この契約に基づき、2000年末までに約7,000トンUを再処理している。
 両施設は順調に運転している。2000年には、UP2とUP3を合わせて、1,198トンU(1999年は1,562トンU)の使用済み燃料を再処理した。また、2000年には1,158トンUの使用済燃料を受け入れた。同再処理工場の貯蔵プールには、累計7,370トンUの軽水炉から取り出した使用済燃料と6.1トンUの研究炉の燃料を貯蔵している。
 なお、コジェマ社は、現在、UP2-800およびUP3の設置・運転許可の修正を申請中である。現在の許可は1981年に交付されたものであるが、その後の施設の増設や状況変化に対応するため(例えばMOX燃料の再処理はUP2-400としては許可されているが、これらの施設には許可されていないなど)、同社は1999年、これらの施設の設置・運転許可の修正を規制当局に申請した。2000年2月〜5月には、その許認可手続きの一環として、地元意見調査が実施された。
 また、規制当局は、これらの許認可の変更に伴い、同工場からの液体・気体・固体排出物の排出許可についても、見直しを行っている。
2. ドイツとの再処理委託契約
 コジェマ社は、旧西ドイツ電力会社11社と再処理委託契約を締結し、15基の原子力発電所から2006年までに出てくる使用済燃料2,000トンの再処理を行うことになっている。
 ドイツの電力業界は2000年5月、ドイツ政府(1998年に緑の党と社民党の連立政権が誕生)と原子力発電所の段階的閉鎖に合意した。この合意の中では、2006年以降の再処理禁止も決まったが、これは現行の2006年までの再処理契約には影響しない。
 また、外国との再処理委託によって発生した廃棄物は、すべてその委託先の国に返還されることになっている。ドイツへの返還は、1998年に発生した使用済み燃料輸送用キャスクの放射能汚染問題以来、反対派の輸送妨害行為などもあり、中断を余儀なくされてきたが、2001年初めに仏独両政府が輸送再開に合意し、同年4月には返還輸送が再開された。
3. ラ・アーグのPA動向
 ラ・アーグでは、反対派による荷揚げ作業の妨害などを除いて、従来、目立った反対運動は起きてこなかった。
 これは、大きなトラブルなしに運転されていることや、地元に対する事業者側のきめこまかい対応や活発な広報活動などによるものと考えられる。事業者側は、一般向けテキストやプラント稼動状況などの週報の配布、従業員を通じてのトラブル・事故情報の住民への伝達、PR館の設置、工場見学などの広報活動を活発に行っている。最近では、インターネットを通じてリアルタイムで工場内の様子を見ることができるようにもなっている。また、地元住民との意見交換の場として、「地元情報委員会」が設置され、住民への情報提供を通じて意思疎通を図っている。また、再処理施設立地による地元への財政面、雇用面での貢献も大きく、地元との関係は良好である。
 その結果、同施設への反対運動は、一部の環境保護派によるもの以外、低調に推移してきた。
 しかし、1997年に環境保護政党・緑の党が、社会党、共産党との連立政権に参加し、ヴォワネ党首が環境大臣に就任して以来、同サイトを巡るグリーンピースなど環境保護団体の動きが活発化している。
 その一つがラ・アーグ工場と周辺住民の小児白血病との関連性に関する議論である。この議論は、ブザンソン大学のビール、ボベル教授が1997年に発表した論文を契機に、主に反対派から提起されたものである。政府は、専門家委員会を設置し、この問題の検討を求めたが、同委員会は、1999年に報告書を発表し、同地域での白血病と原子力施設に有意な因果関係は見られないと結論した。
 さらに、2001年6月には、スピーラ教授を中心とする政府委託調査グループが、1999年の調査を引継ぎ、ラ・アーグ周辺の白血病発症に関する疫学的調査を実施し、報告書を提出した。その報告書は、同地域の原子力施設からの排出物による被ばくが、白血病の増加に繋がったとは考えにくく、過疎地であった同地域への急激な人口集中によるものと示唆している。
<図/表>
図1 フランスの核燃料施設全国地図

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<関連タイトル>
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)
バッカースドルフ再処理工場建設計画の放棄 (14-05-03-10)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議:「原子力年鑑2000・2001年」,(2000年10月)、p.334〜341
(2)日本原子力産業会議:「原子力ポケットブック 2001年版」(2001年8月)、p.445
(3)日本原子力産業会議:「原子力産業新聞」、2001年7月12日号、p.3
(4)COGEMA:Annual Report 2000, July 2001
(5)Direction de la surete des installations nucleaire, Nuclear Safety in France 2000, July 2001
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