<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
米国の原子力水素イニシアチブ (14-04-01-38)

<概要>
 米国エネルギー省DOE)は、2002年11月にNational Hydrogen Energy Roadmapを発表し、燃料電池車の導入に向けて、水素技術の研究開発を加速するため、水素プログラム(DOE Hydrogen Program)を進めている。原子力水素イニシアチブ(Nuclear Hydrogen Initiative)は、この水素プログラムの一部として、エネルギー省原子力科学技術局(DOE Office of Nuclear Energy Science & Technology)が進めている研究開発プログラムであり、原子炉を用いた水素製造技術の開発と実証を目的としている。
 原子力水素イニシアチブでは、関連する国内のプロジェクトや国際協力による研究開発プロジェクトを効率的に活用しながら進めていくこととしている。
 原子力による水素製造を実証するための研究開発項目としては、水素製造プロセス技術、原子炉と水素製造システムとの接続技術、システム解析、コスト評価に関する項目などが取り上げられている。
<更新年月>
2004年02月   

<本文>
1.はじめに
 米国エネルギー省(DOE)は、2002年11月にNational Hydrogen Energy Roadmapを発表し、燃料電池車の導入に向けて、水素技術の研究開発を加速するため、水素プログラム(DOE Hydrogen Program)を進めている。表題の原子力水素イニシアチブ(Nuclear Hydrogen Initiative)は、この水素プログラムの一部として、原子力科学技術局(Office of Nuclear Energy Science & Technology)が進めている研究開発プログラムであり、原子炉を用いた水素製造技術の開発と実証を目的としている。
2.原子力水素イニシアチブに関連する研究開発プログラム
 原子力水素イニシアチブ(文献1)では、原子炉を用いた水素製造技術の開発と実証を目的としているが、DOEは水素に関連する研究開発プログラムとは別に、次世代原子力プラント(Next Generation Nuclear Plant:NGNP)プロジェクト(文献2,3)と呼ばれる先進原子炉を用いた電力水素併産のプロジェクトを計画している。また、これとは別に、第4世代原子力システム国際フォーラム(Generation IV International Forum:GIF)(文献4)において、2020年頃の実用化を目指した第4世代炉コンセプトの一つとして、超高温ガス炉(Very−High−Temperature Reactor:VHTR)システムが取り上げられ、水素製造について、国際協力により実施する研究開発課題の検討が進められている。
 図1にVHTRによる水素製造システムの概念図を示す。DOEは、GIFにおけるVHTRシステムの研究開発を通じて、自国のNGNPプロジェクトにより、電力水素併産の先進原子炉を建設するとともに、原子力水素イニシアチブにより水素製造技術の研究開発を進め、2016年頃に原子力による水素製造を実証する計画を立てている。
3.原子力水素イニシアチブの研究開発プログラム
 原子力水素イニシアチブでは、まず、水素製造プロセス技術および、原子炉と水素製造システムとの接続技術の研究開発を進めることとしている。
 水素製造プロセス技術では、原子力から経済的なコストで水素を製造するために、先進的高温ガス炉と接続した水素製造プロセス技術の研究開発に焦点を絞っている。
 原子力水素製造システムの接続技術では、高温の熱輸送、熱交換器、高温ガス炉と水素製造プラントを接続するための材料に関する問題を取り上げている。この他、種々の水素製造技術の評価やシステムの規模等の評価を行うための解析検討や効率的な国際共同研究も必要であるとしている。
 原子力水素製造システムの研究では、先のプロセス技術開発とは独立に解析評価することで、対象となる技術やシステムについて一貫性を持ったコストや性能の比較が可能であるとしている。
 DOEは、この研究開発プログラムを実施するに当たって、国内の協力はもとより、関連した研究を進めている日本やフランス、あるいはヨーロッパ共同体等との国際共同研究も積極的に進めて行きたいとしている。具体的な研究開発項目として、水素製造プロセス技術では熱化学法プロセス、高温水蒸気電解法等を、接続技術では原子炉−化学プラントシステムの設計、ライセンスや運転技術、さらに、熱交換器の設計や高温耐熱材料に関する項目を取り上げている。
 水素製造プロセス技術のうち、熱化学法プロセス(Thermochemical Process)として、硫黄(S)系のS/I(Sulfur/Iodine)サイクル、ハイブリッド/S(ウェスティングハウス社)サイクル、S/Br(Sulfur/Bromine)ハイブリッドサイクルが検討されている(図2)。これ以外のサイクルとしてCa/Brサイクル(UT−3)、その他多数のサイクルが過去に検討されている。
 研究開発スケジュールは、図3に示すように2006年までにS/Iサイクルとハイブリッド/Sサイクルに関する実験室規模の試験を完了し、2007年頃にはパイロットプラント規模の試験を実施する熱化学法プロセスを決定し、その後、パイロットプラントの建設を進める予定となっている。硫黄系以外のサイクルについても2006年頃までは技術評価を進めるが、2007年頃までには1つの熱化学法水素製造プロセス技術に集約していくこととしている。
 一方、高温水蒸気電解法(High Temperature Electrolysis:HTE)は、これまで原子力以外の部門で固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)の技術開発の一環として研究開発が進められてきたが、最近、原子炉による水素製造技術開発の気運が盛り上がってきたことから、原子力水素イニシアチブの枠組みの中で電池材料や製作コスト、エネルギー変換効率等の研究が進められている。上述のスケジュールでは、2006年頃までにシステム解析と電解セルの最適化に関する試験等を行い、熱化学法プロセスの研究開発と同様に2007年頃からパイロットプラント規模の試験装置の製作を開始する計画としている。図4に高温ガス炉に高温水蒸気電解プロセスを接続した水素製造システムの一例を示す(文献5)。
 原子力水素製造システムの接続技術では、原子炉−化学プラントシステムの設計、許認可、運転技術、さらに、高温の熱輸送技術、熱交換器の設計、高温耐熱材料、原子炉とプラントシステムを接続する中間ループのシステム構成等に関する項目が挙げられている。計画では、熱交換器の設計は2005年頃から開始されるが、基礎的な研究開発項目は既に開始されており、2008年頃まで継続されている。
 図5に原子力水素イニシアチブと第4世代原子炉(GIF)プロジェクトとの関係を示す。2003年9月の段階では、原子力水素イニシアチブに関するFY2003の予算額は約200万ドルであり、FY2004には約400万ドルの予算要求があった。今後、NGNPプロジェクトやGIFプロジェクト等の進展によっても影響を受けるものと予想されるが、年度ごとの予算額は増大するものと考えられる。
 現時点の研究開発計画では、2010年頃に熱化学法と高温水蒸気電解法のどちらを実証プロセスとして採用するのかを決定し、2016年頃のNGNPプロジェクトによる水素製造の実証を目標としている。
<図/表>
図1 超高温ガス炉による水素製造システムの概念図
図2 水素製造プロセス技術の例
図3 研究開発スケジュール
図4 高温水蒸気電解法による水素製造システム
図5 原子力水素イニシアチブと他のプロジェクトとの関係

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<関連タイトル>
熱化学水素製造 (01-05-02-03)
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高温ガス炉による核熱エネルギー利用の範囲と拡がり (03-03-05-02)
高温ガス炉の利用の仕方 (03-03-05-03)
一般教書の水素燃料イニシアティブ(ブッシュ大統領) (14-04-01-32)

<参考文献>
(1)A. D. Henderson, et al., ”The U.S. Department of Energy’s Research and Development Plans for the Use of Nuclear Energy for Hydrogen Production,” Proceedings of the OECD/NEA/NSC Second Information Exchange Meeting on Nuclear Production of Hydrogen, Argonne National Laboratory, Illinois, USA, Oct. 2−3, 2003.
(2)P. E. MacDonald, et al., ”NGNP Point Design − Results of the Initial Neutronics and Termal−Hydraulic Assessments During FY−03,” INEEL/EXT−03−00870 Rev.1 (2003).
(3)J. M. Ryskamp, et al., ”Next Generation Nuclear Plant − High−Level Functions and Requirements,” INEEL/EXT−03−01163 (2003)
(4)U.S. DOE Nuclear Energy Research Advisory Committee and the Generation IV International Forum, ”A Technology Roadmap for Generation IV Nuclear Energy Systems,” GIF−002−00 (2002)
(5)J. S. Herring, et al., ”Hydrogen Production through High−Temperature Electrolysis in a Solid Oxide Cell,” Proceedings of the OECD/NEA/NSC Second Information Exchange Meeting on Nuclear Production of Hydrogen, Argonne National Laboratory, Illinois, USA, Oct. 2−3, 2003.
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