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<概要>
 日豪原子力協定の旧協定は1972年に締結されたが、核不拡散の観点からオーストラリア政府は1977年にオーストラリア産ウランの輸出を認めるに当たっての新規制政策を発表したため協定の改正が必要になった。1978年に改正交渉が始まり、1982年8月に新協定が発効した。
 この協定の下で実際に行われている協力としては、オーストラリア産ウラン鉱石の輸入の他、オーストラリアが開発を進めている高レベル廃棄物シンロック固化技術の研究交流がある。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.日豪協定の締結に至る経緯
 日豪原子力協定(旧協定)は、主としてオーストラリア産ウランを輸入するために1972年に締結されていたが、その後、世界各国で核不拡散の気運が高まりオーストラリア政府は、1977年5月にオーストラリア産のウランの輸出を認めるにあたっての基本政策を発表し、この政策にそった新たな原子力協定を締結するよう関係各国に呼びかけた。
 これを受けて、日本は1978年に現行の原子力協定(新協定)への交渉を開始し、1982年3月に署名、その後、所要の手続をへて同年8月17日に発効した。
 新協定の特色は、オーストラリア産核物質に関し、核物質防護に関する規定が設けられたこと、再処理についての規制を設けたこと、さらに、再処理および再処理のための管轄外への移転を一定の条件の下にオーストラリア側の事前同意により、行い得る旨規定したことである。
2.意義
 わが国の原子力発電のために必要なウランの供給先として今後重要性を増すと見込まれるオーストラリアとの間で、両国間の原子力の平和的利用における協力関係を更に発展させるための基盤となるものである。
3.実際に行われている主な協力関係
 新協定は協力の方法として、1)専門家の交換による協力の推進、2)公開情報の提供・交換、3)核物質、資材、設備および機微な技術の供給、受領等を規定しているが、現在行われている協力としてはオーストラリア産ウラン鉱石の輸入のほかに、高レベル放射性廃液固化技術の一つとして、オーストラリアが開発を進めているシンロック固化技術について、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)と、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)との間で開発情報交換、専門家の派遣等を通じた共同研究がある。
 日豪原子力協議が1987年以降、毎年交互に日本またはオーストラリアにおいて、開催されてきており、日豪原子力協定の実施状況、両国の原子力政策、二国間および多国間の原子力協定等について意見交換、協議が行われている。
4.日豪協定の内容
 このような協力を行っていく上での条件として、新協定では、次のような事項を規定している( 表1−1 および 表1−2 参照)。
 (1) 平和目的への限定
 (2) 核爆発利用の禁止(平和的、軍事的の両方共)
 (3) 第三国移転では事前の同意が必要(ただし包括的同意が得られている)
 (4) 再処理への規制(ただし条件付き)
 (5) 20%以上の濃縮への規制(ただし条件付き)
 (6) 事前通告制を採用
 (7) IAEA保障措置の適用
 (8) ロンドン・ガイドラインに沿った核物質防護(PP)措置の実施
 (9) 核物質・資材・設備・機微な技術の返還請求権が規定
<図/表>
表1−1 日豪原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−1  日豪原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−2 日豪原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)
表1−2  日豪原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)

<関連タイトル>
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2) 外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)p.15−17
(3) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4) 原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)
(5) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力平和利用に関するニ国間協力、第11章国際協力の推進、原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)p.382−387
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