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<概要>
 国際放射線防護学会IRPAは、放射線防護に携わる世界の研究者や技術者の情報交換、計測と評価技術の向上、人類の福祉の向上等を目指し1964年に設立された。2010年には世界の46の「アソシエート学会」で構成され、そのほか多くの国際機関、専門学会等と連携している。1966年の第1回国際放射線防護学会の開催からほぼ4年毎に情報交換の国際会議を開催、放射線防護に関連した数多くの資料や論文を出版、研究・技術者の教育訓練計画を遂行するほか、「シーベルト賞」を設け顕著な業績を顕彰している。
<更新年月>
2010年10月   

<本文>
 国際放射線防護学会(IRPA:International Radiation Protection Association)の活動、設立目的、組織、教育実習、歴史等の概要を述べる。
1.活動
1.1 目的と戦略
 IRPAは放射線の防護に携わる世界の研究者や技術者の情報交換と技術向上を援助し、人類の福祉のため放射線の医療、科学、工業技術への利用を図る目的で設立された。世界の各国の関連学会や協会と連携し、1966年以来ほぼ4年毎に情報交換の国際会議を開催し、また、学会員の教育訓練の機会を設けている。
1.2 2008−2020年の戦略
 学会の2008−20年の戦略は、世界の専門家の発言機関となり、放射線防護の技術上の指標を提供し、さらに世界の国々の関連機関の質的向上を図ることである。
1.3 2008−2012年の活動計画
(1)IRPAの専門性の向上、このため委員会の設立、活動と情報交換を促進
(2)世界各国の関連技術の向上、このため各国の学会活動を支援
(3)専門家の質的向上
(4)世界の専門家の発言機関、このためドキュメントや論文を発行
2.組織
 第1条.学会名から第16条.学会の解散までの会則がある。第2条に学会の設立目的、第3条は会員と協力学会、第4条財政、第5条組織、第6条業務分担、第7条運営会議、第8条総会、第9条国際学会、第10条運営会計報告、第11条決算、第12条予算、第13条総会の提案、第14条手続き、第15条会則の変更、及び第16条学会の解散である。
 図1に学会の組織を示す。
(1)アソシエート学会
 放射線防護に関連する各国の学会は、入会を申請し、「入会審査委員会:Admissions Committee」の審査を経て「アソシエート学会」となる。2010年には世界に46の「アソシエート学会」がある。
(2)総会
 総会はIRPAを代表し、活動等を決定し資産を管理する。投票権があるのは、2010年の第12回国際放射線防護学会で決まった180名の代表会員と38のアソシエート学会である。日本には8名の代表会員がいる。
 総会は、理事長の招集で少なくとも8ヶ月前に予告され、2ヶ月前に議案が提示されて開催される。議長は理事長、不在ならば副理事長が務める。
(3)理事会
 理事会はIRPCの運営に責任がある。理事はアソシエート学会の活動を考慮して4年ごとに総会で選ばれた6名(Council member)と事務系担当の6名で構成される。表1に2008−12年の理事会員を示す。
(4)IRPA国際放射線学会委員会
 4年毎に開催されるIRPA国際学会を準備する委員会であり、組織委員会とプログラム委員会が活動する。2012年にイギリス、グラスゴーでIRPA13が開催予定である。
(5)出版委員会
 IRPAは放射線計測、放射線防護、計測試料の採取・管理、健康影響等に関する数多くの情報を発信している。多くの資料は、ホームページの出版物(Publication)のページで入手できる。
(6)シーベルト賞委員会
 1973年に始まった顕著な業績を挙げた研究者の顕彰制度である。4年毎に開催されるIRPA国際学会の3年前に、アソシエート学会の会長が集まり放射線防護に関する優れた研究者を推薦し、審査を経てIRPA国際会議で当該賞が授与される。1973年から2008年までに10名が授賞し、日本では2000年に1名が授賞している。
3.教育訓練
 IRPAは放射線防護のために専門家の教育訓練計画がある。この計画は、教育訓練を通じて研究技術者の育成・質的向上、協力、相互啓発等が目的である。ホームページには当該計画のため、専門家が提供した最新の再教育用資料(Refresher Course Materials)があり自由にダウンロードして利用できる。
4.国際放射線防護学会IRPAの歴史
 1964年、IRPAはフランス、パリで世界の15の保健物理と放射線防護学会の45名の代表の賛同を得て発足した。日本保健物理学会は1965年に「アソシエート学会」となった。2010年には世界に46の「アソシエート学会」である。
 1966年には第1回国際放射線防護学会(IRPA1)がイタリアのローマで開催され、それ以降ほぼ4年毎に開催されている。最近では2008年にアルゼンチン、ブエノスアイレスで第12回学会(IRPA12)が開催された。第13回(IRPA13)は2012年にイギリス(スコットランド)、グラスゴーで開催される予定である。そのほか、1968‐2010年の間に40回のIRPA地域学会(IRPA Regional Congress)が開催されている。
5.国際協力
 IRPAは、表2に示すような放射線防護に関連する国際機関、非行政府機関及び専門機関とも連携している。
(前回更新:2004年7月)
<図/表>
表1 2008-12年の国際放射線防護学会(IRPA)の理事会
表1  2008-12年の国際放射線防護学会(IRPA)の理事会
表2 IRPAが連携する機関
表2  IRPAが連携する機関
図1 国際放射線防護学会(IRPA)の組織図
図1  国際放射線防護学会(IRPA)の組織図

<関連タイトル>
経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA) (13-01-01-10)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
国際原子力機関(IAEA)による放射線防護活動 (13-01-01-18)
国連科学委員会(UNSCEAR) (13-01-01-19)
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)
日本保健物理学会 (13-02-02-07)
日本放射線影響学会 (13-02-02-08)

<参考文献>
(1)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、What Is IRPA?

(2)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、Administration

(3)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、Rules and Procedures

(4)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、Education and Training

(5)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、History

(6)国際放射線防護学会IRPA、ホームページ、International Cooperation

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