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<概要>
 昭和55年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は25件であった。
 一基当たりの報告件数は 1.1件であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和55年度における「電気事業法」及び「核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき報告された原子力発電所(電気事業用)の事故・故障の件数は25件であった。 表1 に故障・トラブル等報告件数(法律対象)を、 表2 に内容別報告件数を、 表3 に原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。これら25件の事故・故障を管理要素別に分類すると、設計管理が不適切であったもの14件、製作管理が不適切であったもの1件、施工管理が不適切であったもの3件及び保守管理が不適切であったもの7件であった。
 これら25件の事故・故障のうち運転中のものは17件、停止中のものは8件であった。運転中のもの17件の運転停止の状況は、検出器の誤作動等保護装置作動による自動停止9件、保修作業時に誤って保護装置を作動させ自動停止したもの2件、定期巡視等により機器等の故障を発見し修理のため停止したもの4件であった。なお、原子炉の運転に直接影響しない故障が2件であった。停止中のもの8件の内訳は、 1次冷却材ポンプ入口エルボ内スプリッタのひび割れ3件、燃料集合体内挿物押えスプリングの損傷3件、その他3件であった。
 なお、このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣(現経済産業大臣)通達に基づき報告された軽微な故障が4件であった。いずれの事象についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)
発生年月日発電所名概要
55. 4. 3日本原子力発電敦賀発電所 1号循環水ポンプ出口弁の制御用電源を誤開放したことにより出口弁が閉じ、給水ポンプが停止したため原子炉自動停止。
55. 4. 3日本原子力発電東海第二発電所定期検査中、タービン軸受摩耗検出装置の定期試験中、試験用回路のリレーの不具合により原子炉自動停止。
55. 4. 7関西電力大飯発電所 1号機定期検査中、燃料体内挿物押えスプリングの損傷を発見。
55. 4.12四国電力伊方発電所 1号機定期検査中、一次冷却材ポンプ入口エルボスプリッタのひび割れを発見。
55. 4.14関西電力高浜発電所 1号機定期検査中、一次冷却材ポンプ入口エルボスプリッタのひび割れを発見。
55. 4.17東京電力福島第一原子力発電所 4号機炉心スプレイ系の定期試験中、ポンプ起動による振動で原子炉圧力スイッチが誤作動したため原子炉自動停止。
55. 4.28東京電力福島第一原子力発電所 4号機「発電機軸受振動大」の誤信号のため原子炉自動停止。
55. 5.15東京電力福島第一原子力発電所 6号機タービン制御油圧系定期試験中、タービン油圧ポンプ起動時の油圧変動と振動により油圧検出器が誤作動したため原子炉自動停止。
55. 6. 6東京電力福島第一原子力発電所 3号機運転中の補修作業の際、発電機ロックアウトリレーを誤まって作動させたため原子炉自動停止。
55. 8.30東京電力福島第一原子力発電所 1号機調整運転中、タービン中間調整弁の試験時、湿分分離器水位検出器の誤作動により原子炉自動停止。
55. 9. 2関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、燃料体内挿物押えスプリングの損傷を発見。
55. 9. 6日本原子力発電東海第二発電所停止操作中、給水流量の変動により給水制御系に誤信号発生、原子炉自動停止。
55. 9.18関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、一次冷却材ポンプ入口エルボスプリッタのひび割れを発見。
55. 9.22東京電力福島第一原子力発電所 2号機調整運転中、給水制御系の切替スイッチの誤作動のため原子炉自動停止。
55. 9.29中部電力浜岡原子力発電所 1号機高圧第一給水加熱器ベント管からの蒸気漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
55.10.13関西電力高浜発電所 1号機定期検査中、 Cループ蓄圧注入系空気抜き小配管溶接部近傍からの冷却材漏れを発見。(手動停止)
55.10.22関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、取り外した制御棒クラスタ案内管の支持ピンの損傷を発見。
55.11.27関西電力大飯発電所 1号機化学体積制御系充てんラインベント管取付管台付近からの漏えいを発見、調査のため原子炉手動停止。
55.12.11関西電力大飯発電所 1号機Cループ一次冷却材ポンプの第1 シールが損傷、調査のため原子炉手動停止。
55.12.24中部電力浜岡原子力発電所 2号機調整運転中、B−原子炉再循環ポンプのMGセットが停動停止、原子炉は、出力を下げ運転を継続。
56. 1.14日本原子力発電敦賀発電所 1機主蒸気隔離弁1Bの通常作動用窒素が漏えい、調査のため原子炉手動停止。
56. 3.11九州電力玄海原子力発電所 2号機試運転中、二次側給水制御弁の弁開度調整装置の不調のため原子炉自動停止。
56. 3.12関西電力大飯発電所 1号機定期検査中、燃料体内挿物押えスプリングの損傷を発見。
56. 3.15東京電力福島第一原子力発電所 2号機強風のため補助ボイラー煙突上部が折損、原子炉運転を継続。
56. 3.25日本原子力発電東海第二発電所タービンスピード検出回路の周波数・電圧変換機の不調のため原子炉自動停止。


<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和55年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-01)
昭和53〜55年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-01)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1989):原子力発電所における故障・トラブル等の概要(昭和55年4月〜平成元年8月)、平成元年版原子力安全白書、98-111.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1989): 事故・故障等の状況(法律対象)、昭和54年度・昭和55年度(昭和55年度実績) 原子力発電所運転管理年報、35-213.
(3)科学技術庁原子力安全局(1989): 昭和55年度の原子力発電所における故障・トラブル等について、原子力安全委員会月報4号(第12巻第4号) 通巻第127号、12-15.
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