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<概要>
 本訴訟は、東京電力(株)福島第二原子力発電所1号炉の原子炉設置許可処分(昭和49年4月)の取消しを求めた行政訴訟(昭和50年1月提訴)である。福島地方裁判所における第一審判決(昭和59年7月)は請求棄却、仙台高等裁判所における控訴審判決(平成2年3月)は控訴棄却であり、いずれも国側の勝訴となっている。最高裁判所においても上告棄却の判決(平成4年10月)により国側勝訴が確定した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 本訴訟は、福島第二原子力発電所1号炉(東京電力(株)BWR 110万kW)の設置に際して内閣総理大臣が行った原子炉等規制法23条に基づく原子炉設置許可処分(昭和49年4月30日)に対し、周辺住民404名(その後3名取下げ)が許可処分の取消しを求めて内閣総理大臣を被告として、昭和50年1月7日に福島地方裁判所に提訴した行政訴訟であり、原子力発電に関する行政訴訟としては、伊方1号炉訴訟(昭和48年8月提訴)、東海第二訴訟(昭和48年10月提訴)に続く我が国で3番目のものである。
 訴訟提起後9年余にわたり福島地方裁判所において審理が行われ(口頭弁論45回、現地検証1回)、昭和59年7月23日に第一審判決がなされ、原告らの請求は棄却された。第一審においては、原告適格等の法律上の争点ならびに燃料棒の健全性、圧力バウンダリの健全性、配管・材料の健全性(SCC問題)、ECCSの有効性、平常運転時の被曝低減対策、TMI事故等の原子炉の安全性に関する技術上の争点があり、判決では原告適格を認めたものの、本件原子炉の設置について、その安全性が確保されることから、原子炉等規制法24条1項4号の許可基準に適合しているとした被告の判断には合理的根拠があるとし、また、TMI事故については、その原因は主に運転管理に属するものであり、本件設置許可に際しての安全審査の合理性を左右するものではないとした。なお、原子炉等規制法改正に伴い、昭和54年1月に被告が内閣総理大臣から通商産業大臣(現経済産業大臣)に変更されている。
 原告らは第一審判決を不服として、昭和59年8月6日仙台高等裁判所に控訴した。その後昭和62年4月26日、チェルノブイル事故が発生し、控訴審ではチェルノブイル事故が本件安全審査の合理性を左右するか否かが最大の争点となり、17回にわたる口頭弁論が開かれた。
 平成2年3月20日の控訴審判決は基本的には第一審判決を支持し、また、チェルノブイル事故については、本件設置許可に際しての安全審査では全ての出力領域で固有の自己制御性を有していることを確認の上、反応度事故の発生を防止する安全確保が十分に施されていることを確認しているため、チェルノブイル事故により本件安全審査の合理性に疑義を生じる由はないとし、原告らの主張を退けた。
 その後原告らは控訴審判決を不服として、平成2年4月3日最高裁判所に上告し、平成4年10月29日の判決により上告棄却が言い渡された。
<関連タイトル>
日本の原子力発電所の分布地図(2001年) (02-05-01-05)
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)

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