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<概要>
 放射線業務従事者を対象とした健康診断は、一般の労働者に対して実施される内容の他に、検査項目として血液、眼及び皮膚が加えられ、放射線障害防止施行規則では1年に1回、電離放射線障害防止規則では6か月以内に1回の頻度で実施され(医師の判断で省略できる)、放射線障害の防止及び健康の確保に配慮が払われている。
<更新年月>
2004年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.一般の健康診断
 一般労働者は、健康障害の防止及び健康を維持するために、雇い入れ時および雇用後は1年以内ごとに1回の定期健康診断を行うよう定められている。(労働安全衛生法第66条第1項、労働安全衛生規則第43条および第44条)
 これに対し、放射線業務(有害な業務=特定業務)従事者は、6か月以内ごとに1回、一般労働者と同じ検査項目(ただし、医師が必要でないと認める時に省略できる項目6項目あり)について、定期健康診断を行うように定められている(労働安全衛生法第66条第2項、同施行令第22条、同規則第45条)。
 現行の労働安全衛生規則は、高齢化社会の進展に伴う成人病の増加や疾病構造の変化に対応するため、検査項目の追加により健康診断項目の充実がはかられている。内容は、既往歴、業務歴の調査、自覚症状の有無、身体・体重・視力・聴力、胸部X線、血圧の測定等11項目で、実施記録は5年間保存し、実施後結果は管轄する労働基準監督署長に報告するよう定められている。
 また、聴力、貧血、肝機能等5項目の検査は35才及び40才以上の者は、必ず受けるよう定められている。定期健康診断の詳細を表1に示す。雇い入れ時には表に示される全項目について検査することが定められている。
2.放射線業務従事者の健康診断
 放射線業務従事者の健康診断については、問診、検査又は検診では、被ばく歴の調査、血液、眼及び皮膚の検査を行うよう定めている(電離放射線障害防止規則第56条、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律第23条、同施行規則第22条)。血液及び皮膚の検査については、初めて管理区域に立ち入る前の健康診断では必ず行い、管理区域に立ち入った後の健康診断ではこれを医師が必要と認める場合に限り行うこととし、眼の検査については、全ての健康診断において医師が必要と認める場合に限り行うこととしている(放射線障害防止法関係法令の改正、平成12年10月官報掲載、平成13年4月1日施行)。
 法令では、健康診断項目のほか、実施された健康診断の結果に関する記録の保存(5年間)、個人への通知、官庁への報告(電離放射線障害防止規則第58条)及び個人に対する措置なども定められている。ただし、放射線障害防止法では、記録の保存については永久保存または5年間保存後に指定の機関に引き渡すこととなっている。
 放射線業務従事者に対する健康診断においては、血液では末しょう血液中の血色素量又はヘマトクリット値(*1)、赤血球数、白血球数等、そのほか眼及び皮膚について検査を行うよう定められている。詳細を表2-1および表2-2に示す。ただし、それぞれの部位又は項目については、医師が必要と認める場合に限る。
 なお、原子力施設等における放射線業務従事者に対する健康診断の結果は、放射線管理手帳に記録され、管理状況の把握に利用されている。
3.緊急時における健康診断(法律第23条第1項、規則第22条第1項第3号)
 1)放射性同位元素を誤って吸入、摂取または経口摂取した時、2)表面密度限度を超えて皮膚が汚染され、その汚染を容易に除去できない時、3)皮膚の創傷面が汚染され、又は汚染された恐れのある時、4)実効線量限度又は等価線量限度を超えて放射線に被ばくし、又は被ばくした恐れのある時、などには事故につながる恐れがあるので判断は慎重に行う必要がある。場合によっては、事故報告事項に該当することがある。
[用語解説]
(*1) ヘマトクリット値:hematocrit value、赤血球が血液中で占める容積の割合を百分率%で表した値で、貧血や赤血球増加の有無や程度を判定する指標となる。正常男子は42〜45%、女子は38〜42%である。
<図/表>
表1 一般の定期健康診断の内容
表1  一般の定期健康診断の内容
表2-1 健康診断の内容(1/2)
表2-1  健康診断の内容(1/2)
表2-2 健康診断の内容(2/2)
表2-2  健康診断の内容(2/2)

<関連タイトル>
放射線管理手帳 (09-04-07-06)

<参考文献>
(1)労働安全衛生関係法令集 平成11年度版 労務行政研究所
(2)最新放射線障害防止法令集 平成8年度版 原子力安全技術センター(1997年3月)
(3)科技庁原子力安全局放射線安全課長:国際放射線防護委員会の勧告の取り入れ等による放射線障害防止法関係法令の改正について(通知)、Isotope News ,日本アイソト−プ協会、No.558、綴じ込み(2000,11)
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