<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 放射線による生物影響
<小項目> 生物効果の基礎原理
<タイトル>
遺伝子と遺伝子暗号DNAの構成 (09-02-02-02)

<概要>
 遺伝子は様々な形質を親から子供に伝える物質で、遺伝形質は遺伝子中のDNAに情報化されている。DNAは4種のデオキシリボヌクレオチドで形成された2重鎖状高分子である。3つのヌクレオチドの組み合わせで1種類のアミノ酸を規定し、その組み合わせで生命の基盤となるタンパク質を生成する。 この遺伝形質の情報化システムが放射線によってどのように攻撃(ヒット)されるかによって放射線障害が決まる。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1 DNA
 DNA、即ちデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)は遺伝情報(遺伝子暗号)を担う二重鎖の酸性高分子でタンパク質と結合して染色体を構成する。DNAの化学構造は(1)4種の塩基、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)に糖(デオキシリボーズ)とリン酸の結合した4種のデオキシリボヌクレオチドのみによって構成されている。(2)4種のデオキシリボヌクレオチドの重合した二本の鎖はA−T,G−C間の相補的水素結合でラセン構造を形成している(図1)。遺伝情報はA、T、G、Cの直線的配列によって書き込まれており、アミノ酸は3つの塩基の配列によって指定される。この3連符配列をコドンと呼ぶ(表1)。また二重鎖中の塩基間の水素結合はA−T、G−Cの組み合わせのみで形成されるために片方の鎖は他方の鋳型になることができる。これによって自己複製やRNAへの遺伝情報の転写を正確に行っている。

2 遺伝子
 遺伝子は遺伝形質を規定する因子であるが、分子レベルではDNA分子の長軸に沿って配列する塩基対の数でその大きさが表現される。つまり、遺伝子は細胞に必要な個々のタンパク質を構成するアミノ酸の配列、すなわちDNA分子でいえばコドンの配列として遺伝情報を保持しているので、合成すべきタンパク質の大きさによって必要な遺伝情報、すなわち塩基対の長さで表わされるDNA分子の長さも異なる。これがDNA分子から見た遺伝子の最小単位である。ところが、遺伝学でいう遺伝子は個体の遺伝形質を表現するのに必要な因子の総称である。形質の発現にはそれに関連する酵素タンパク質がいくつもあって、それが一連の合成と反応を達成して遺伝形質の機能が完成する。そのためには、関連するタンパク質の遺伝情報が2重、3重に必要で、互いに関連して働いてはじめて遺伝子が意味を持つ。したがって、DNAと遺伝子の関係は機能的な階層構造になる(図2)。DNAにはこのような遺伝情報領域がそれを構成する塩基対数によりいろいろなサイズとなって、DNAの長軸上に並ぶ。しかし、実際には有益な情報領域(エキソン)と無益な情報領域(イントロン)が互い違いに存在することである。これらの有益な情報領域だけが遺伝子とよばれる。遺伝子領域にはタンパク質の合成情報ばかりでなく、タンパク質の合成を制御する情報域も傍に存在する。遺伝子はこのように階層的な構造によって情報の発現が制御されているが、もう一つ大切な概念は遺伝子は長大なDNA分子の長軸に沿って直線的に配列していることである。この概念はDNAの2重鎖構造とともに放射線障害を考える上に重要な意味をもっている。
<図/表>
表1 普遍遺伝暗号表
図1 DNAの二重らせん構造
図2 DNAと遺伝子の関係

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<関連タイトル>
染色体の構成 (09-02-02-03)
生殖細胞の構成 (09-02-02-05)
放射線のDNAへの影響 (09-02-02-06)

<参考文献>
(1)日本分子生物学会(編):シリーズ分子生物学の進歩1.DNAの構造と動態(1989)
(2)日本分子生物学会(編):シリーズ分子生物学の進歩2.DNA複製とその調節(1989)
(3)日本分子生物学会(編):シリーズ分子生物学の進歩4.遺伝子の発現と制御(1989)
(4)江島洋介、木村 博(編):放射線生物学、オーム社出版局(2002年2月)
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