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<概要>
 字義のみでは放射性核種を含んだ廃棄物ということであるが、IAEA(国際原子力機関)が各国の専門家の意見に基づいて定めた定義によれば、「放射性物質の規制を所管する国の機関またはそれに準ずる権威ある機関により設定された’免除量’を超す濃度の放射性核種を含み使用の意図のないもの、あるいは放射性核種で汚染された物質で同じく使用の意図のないものをいう」となっている。含まれる放射能のレベルによる低・中・高レベルの区分、含まれる放射性核種の特性に基づくα廃棄物、β−γ廃棄物の区別、物理的形状の差による気体・液体・固体廃棄物の区別など、管理の局面に応じて色々に区別されている。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.放射性廃棄物とその区分
 放射性廃棄物は、その状態によって、気体廃棄物、液体廃棄物および固体廃棄物に分けられる。
 また、廃棄物がどのような放射性核種を含んでいるか、すなわちα放射性の核種か、β放射性の核種か、γ放射性の核種かにより、α廃棄物、β廃棄物、γ廃棄物などということもある( 図1 )。
 これら廃棄物に放射能の高低によるレベル区分は、法的には決められていないが、極低レベル、低レベル、中レベル、高レベルに分けられることもある。極低レベルは、大量の海水などによって薄めて放出することができる程度に低いもの、低レベルは直接取り扱えるもの、中、高レベルはなんらかの処理をしないと取り扱えないものと考えることもできる。これらのレベル区分は、まだ国際的に一定のものが決まっておらず、各事業所が、それぞれの目的に応じて区分しているのが現状である。一例として、1969年10月にIAEAが提案したものと( 表1 )、1964年6月に我が国の原子力委員会廃棄物処理専門部会が示したレベル区分( 表2 )がある。
 なお、現在我が国では、一般的には、再処理施設において使用済燃料から分離される「高レベル放射性廃棄物」と、原子力発電所等の原子力施設から発生する「低レベル放射性廃棄物」とに定性的に区分している( 図2 )。
2.放射性廃棄物の管理
 各施設からの放射性廃棄物の発生から処理処分経路を図2に示す。
1)原子力発電所の運転、核燃料施設の運転、放射性同位体の医学・薬学・理工学・生物学・農学・工業への利用等(RI利用)に伴って発生する廃棄物は、原則として移行や拡散がし難い形態に変換された後ドラム缶等に収め、最終処分に移行するまでの間は外部環境からの隔離が確保できるような施設に保管される。
2)現在までに累積された廃棄物のうちの低レベル廃棄物の容積を、200リットル・ドラム缶の本数に換算して上記の三分野で比較してみると、原子力発電施設から発生するものが最も多く、全体の半分以上となっている。
3)これらの廃棄物は最終的には、低レベルの主としてβ−γ放出核種を含む廃棄物は比較的地表に近い浅い地中への埋設処分を、使用済み核燃料の再処理で発生する高レベル廃棄物は深い地層中への処分をすることになっている。
4)原子力発電所から発生する放射性廃棄物一覧を 表3 に示す。
<図/表>
表1 IAEAによる放射性廃棄物の区分
表1  IAEAによる放射性廃棄物の区分
表2 我が国による放射性廃棄物の区分
表2  我が国による放射性廃棄物の区分
表3 原子力発電所から発生する放射性廃棄物一覧表
表3  原子力発電所から発生する放射性廃棄物一覧表
図1 放射性廃棄物の種類による区分の例
図1  放射性廃棄物の種類による区分の例
図2 原子力施設からの放射性廃棄物の発生から処理処分まで
図2  原子力施設からの放射性廃棄物の発生から処理処分まで

<関連タイトル>
放射性気体廃棄物 (09-01-02-02)
放射性液体廃棄物 (09-01-02-03)

<参考文献>
(1)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック 1997年版,日本原子力産業会議(1997年5月)、p217
(2)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック1994年版、1994年7月
(3)資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、1997年8月
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