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<概要>
 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターの岐阜県瑞浪(みずなみ)市における瑞浪超深地層研究所計画では、花崗岩を対象にして、地質環境の評価のための体系的な調査・解析・評価技術の基盤の開発と、深地層における工学的技術の基盤の開発を目的とした地層科学研究を進めている。研究は、第1段階(地表からの調査予測研究)、第2段階(研究坑道の掘削を伴う研究)及び第3段階(研究坑道を利用する研究)の3段階で進められ、現在、第1段階の研究を終了し、第2段階の研究を実施している。
 この研究計画の中心施設である研究坑道は、瑞浪市が所有する市有地に建設することになり、2002年1月に土地貸借契約を締結し、同年7月に造成工事を開始した。研究坑道は、最終的には約1000mの深度まで掘削することを計画しており、現在研究杭道の深さは、500mに達している。
<更新年月>
2011年12月   

<本文>
1.目的
 高レベル放射性廃棄物高レベル廃棄物)の地層処分を安全に行うためには、地下深部の岩盤構造や地下水の状態などの地質環境を、外乱を最小限に保ちつつ的確に把握することが重要である。日本原子力研究開発機構(日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が平成17年に統合して設立、以下「JAEA」という)が進める地層科学研究は、こうした地下深部の地質環境を評価する際に必要な調査・解析・評価を体系的に行う基盤技術の確立と、地下深部における坑道建設に関する工学の基盤整備を目的とする。
 わが国の地質は大別すると結晶質岩と堆積岩に分けられるが、高レベル廃棄物地層処分の安全性を評価する際に重要な地下水の動きは、これら2種類の岩種間で著しく異なる。すなわち地下水は、結晶質岩中では亀裂に沿って動くが、堆積岩の場合は、それを構成する土砂粒の間隙に均一に浸透・拡散する形で動く。こうした事情から、地層科学研究は2つの岩種のそれぞれの特徴をふまえて行う必要があり、東濃地科学センターの瑞浪超深地層研究所では、結晶質岩の代表としての花崗岩を対象とした研究を行う。一方、堆積岩を対象とする研究は、JAEAの北海道にある幌延深地層研究センターで進めている。
 また、地下深部の地下水は、場所によって淡水の場合と塩水の場合があるが、こうした地下水の性状も地層処分の安全性に重要な影響を及ぼす因子の一つである。瑞浪超深地層研究所の地下水は淡水系であり、一方、幌延深地層研究センターの地下水は塩水系であることから、両地下研究施設において、淡水系と塩水系の両方の性状の地下水を対象とした研究を行うことができる。
 本計画で得られる成果は、幌延深地層研究センターにおける研究や、JAEA 東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所で行っている地層処分研究開発、あるいは、海外との共同研究等の成果と合わせて、実施主体(原子力発電環境整備機構)が行う処分事業や国が行う安全規制などに反映される。
 深地層の研究施設は、その科学的、技術的目的の他に、一般の人々が地下深部の環境やそこで行われている研究を実際に見て体験することにより、地層処分に関する研究開発について理解を深める場としても位置付けられている。
 なお、深地層の研究施設の計画は、処分場の計画とは明確に区別して進めるべきものであり、放射性廃棄物の持ち込みや使用をしないことや、将来においても放射性廃棄物の処分場にすることのないことを地元との協定で約束している。
2.施設計画
 瑞浪超深地層研究所計画の主要な施設である研究坑道は、深度約1,000mの主立坑と換気立坑の2本の立坑、両立坑を深度約100mごとにつなぐ予備ステージ、主に第3段階の研究を行う中間ステージと最深ステージの水平坑道から構成される。地上には、立坑の掘削に必要となる櫓(やぐら)を収納した掘削タワーと巻上機、掘削に伴い必要となる給排水設備、換気設備、コンクリートプラント、排水処理プラントなどの付帯設備、受変電設備などが設けられている(図1)。
 立坑等の研究坑道の工事は、まず立坑坑口部分に掘削タワー等を設置し、その後、研究坑道の本格掘削を行う(図2)。主立坑と換気立坑の掘削を同時に進め、深度約100mごとに予備ステージを掘削して両立坑をつなぐ。立坑の途中には以下、3.研究計画に示す第3段階の研究のための中間ステージを設ける。中間ステージでの研究を開始しつつ、最深部に向け両立坑の掘削を続ける。深度約1,000mまで到達した後、換気立坑の掘削用巻上設備は、第3段階の本格的な研究のための昇降設備に改造する(図3)。
 なお、研究所の施設は、東濃研究学園都市構想に相応しい、国内外に開かれた研究施設とし、地元大学はじめ、広く国内外の研究機関の研究者にも、地震研究や深部地下空間利用研究などに開放し、極限環境における最先端の研究のための中核施設として役立てられている。
3.研究計画
 東濃地科学センターは、これまでセンター所有地内(正馬様用地)に研究坑道を建設することを計画してきたが、瑞浪市の提案を受けて当初の計画地から1km強離れた市有地に研究坑道を設置することとし、2002年1月に瑞浪市とJAEAの間で市有地借用のための契約を締結し(2002年10月に変更)、同年7月に敷地造成工事を開始した。市有地地下には正馬様用地の地下と同じ花崗岩(土岐花崗岩)が分布しているため、市有地では、これまでに正馬様用地で行われた調査研究の成果を生かした研究を進めることができる。
 研究は地下施設の建設工程を挟んで以下のように3段階で進められる(図4)。
(1)第1段階:地表からの調査予測研究(図5
 地表からの地質調査、表層水理調査、物理探査及びボーリング調査(試錐調査)を行い、できるだけ外乱を与えずに地下の地質環境の状態を把握する。これらの調査の結果に基づき地質環境のモデル化を行い、地層の分布などの地質環境を予測するとともに、研究坑道の建設が地質環境に与える影響を予測する。
(2)第2段階:研究坑道の掘削を伴う研究(図6
 この段階では研究坑道の建設を進めつつ、研究坑道内から岩盤の直接的な観察や調査を行い、詳細な地質構造や岩盤中の亀裂、地下水の状態などの情報を系統的に取得する。また、坑道を掘削する時の岩盤の歪みや岩盤にかかる力の調査などを行う。これらの結果に基づいて、第1段階の調査や評価で用いた手法の有効性の確認や、地質環境のモデル化手法の信頼性を確認する。また、研究坑道の施工により、坑道等の設計技術や施工技術などの有効性の確認も行える。
(3)第3段階:研究坑道を利用する研究(図6
 第3段階では中間ステージ及び最深ステージの水平坑道を利用して、坑道周囲の岩盤にかかる力の測定や、地下水の流れ方や性質(水質等)についての調査、基盤や地下水の発熱影響、地質環境での物質の動きに関する調査、岩盤や地下水の発熱影響、地質環境の詳細モデル化などを行い、深部地質環境における物質の移動などの現象を詳しく研究する。また、深地層における基礎的な工学技術に関する研究も主としてこの段階で進める。さらに、地震などの天然現象が地質環境に与える影響についても研究を進める。それらにより、地下深部の地質環境と、それに対する地震などの天然現象や坑道掘削による外乱が与える影響などを、高い精度で効率よく調査・予測・検証できる総合的な技術を確立していく。
 当初、研究坑道設置を予定していた正馬様用地では、これまでに表層水理調査や物理探査に加え、4本の深層ボーリング調査が行われてきた。ここには地下数百mの花崗岩に月吉断層と呼ばれる断層が分布している。この地質学的な特徴をふまえ、特に断層周辺の水理を評価するための体系的な調査・解析・評価手法を開発し、高度化するための研究を継続する(図7)。
4.研究の進捗状況
 平成23年11月現在、瑞浪超深地層研究所では第1段階の調査研究を終了し、第2、3段階の調査研究を進めており研究杭道の深さは、500mに達している。
<図/表>
図1 瑞浪超深地層研究所の主な施設
図1  瑞浪超深地層研究所の主な施設
図2 立坑掘削工事概念図
図2  立坑掘削工事概念図
図3 瑞浪超深地層研究所イメージ図
図3  瑞浪超深地層研究所イメージ図
図4 瑞浪超深地層研究所の進め方
図4  瑞浪超深地層研究所の進め方
図5 瑞浪超深地層研究所における第1段階の調査研究例(振動を利用して地下を調べる研究)
図5  瑞浪超深地層研究所における第1段階の調査研究例(振動を利用して地下を調べる研究)
図6 瑞浪超深地層研究所における第2、3段階の調査研究(研究坑道での主な調査位置図)
図6  瑞浪超深地層研究所における第2、3段階の調査研究(研究坑道での主な調査位置図)
図7 正馬様用地における研究
図7  正馬様用地における研究

<関連タイトル>
わが国における高レベル放射性廃棄物の処分についてのシナリオ (05-01-03-06)
高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方 (05-01-03-15)
幌延深地層研究計画 (06-01-05-12)
高レベル放射性廃棄物地層処分技術の研究開発 (10-02-02-16)

<参考文献>
(1)核燃料サイクル開発機構:「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ」、原子力委員会提出、(1999年11月26日)
(2)核燃料サイクル開発機構、東濃地科学センター:「平成14年度東濃地科学センター事業説明:説明資料」
(3)核燃料サイクル開発機構、幌延深地層研究センター:「超深地層研究所計画に関する岐阜県瑞浪市との土地賃貸借契約及び協定の締結について」
(4)「超深地層研究所計画」、サイクル機構技報 No.14、p.262-265(2002年3月)
(5)日本原子力研究開発機構、東濃地科学センター: 超深地層研究所計画、
http://www.jaea.go.jp/04/tono/index.htm
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