<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
遮へい安全の研究では、最近の計算機の進歩及び整備された核データを取り込んだ最新の遮へい解析手法を駆使し、従来から使用されている簡易計算コードや簡略モデルの有する安全裕度を定量的に評価し、合理的な遮へい安全設計手法を確立するための研究が行われている。この研究では、高精度の遮へい解析を連続エネルギーのモンテカルロコードを使って行うため、最適の計算機を使った高速処理に関する研究も行われている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 再処理施設は、原子炉から発生する使用済燃料を受け入れて、剪断・溶解処理後、核分裂生成物を分離貯蔵し、ウランプルトニウムを回収精製する施設である。使用済燃料を取り扱うため、核分裂により生成された核分裂生成物(FP)から放出されるガンマ線及び核分裂により発生した中性子をウランが捕獲した結果できる超ウラン元素TRU:プルトニウム、キュリウム等)の自発核分裂やアルファ崩壊により発生する中性子の2種類の放射線に対する遮へいを考慮する必要がある。ここで、ガンマ線と中性子は原子炉中でも発生しており、原子炉施設での遮へい安全達成方法が再処理施設の遮へい安全達成方法にも生かされている。つまり、遮へい安全確保の観点からは、再処理施設に特有な課題はなく、むしろ従来行われている遮へい計算法の合理化が課題となっている。
1.合理化研究の目的
 従来の遮へい計算では、保守的な簡易計算コードを使用したり、保守的な形状モデル化を行い、遮へい設計から見ると、かなり安全裕度の大きなものとなっており、必ずしも合理的な設計とはなっていない。しかしながら、近年、中性子やガンマ線に対する核データの充実・整備が行われたり、並列計算機の様な超高速の計算機の実現によるモンテカルロ法の実用化などを背景に、遮へい解析手法は大きく進歩している。このような、最新の遮へい計算手法により従来行われている設計手法を見直し、合理的な遮へい安全設計手法を確立してゆくのが本研究の目的である。
2.合理化研究の方法
 従来の簡易計算コードの使用や簡略化されたモデル化による過度の安全裕度を定量的に評価するためには、遮へい計算が基本的なより所としているボルツマン輸送方程式を近似することなく忠実に解くことができ、かつ解析対象の幾何学的形状を3次元的に忠実にモデル化可能な遮へい計算コードが必要となる。現在のところ、この条件を満足するものとしては、モンテカルロ法に基づく遮へい計算コードがあげられる。最近のモンテカルロコードは米国ロスアラモス研究所で開発されたMCNP(Monte Carlo Neutron and Photon Transport Code System)コードに代表されるように、核データを連続エネルギーで取り扱い、核データと遮へい計算コード間のインタフェ−スが最も精度良く行えるようになっているものが主流となっている。このような詳細計算コードを使用して、簡易計算コードや、簡易形状モデルが有する保守性を定量的に評価するのが、合理化研究の第一歩である。
3.合理化研究の現状
 詳細計算コードであるモンテカルロ法によるMCNPコードでは、体系内での中性子や光子(ガンマ線)の挙動を一粒子毎にシミュレーションしており、実際の状態に最も近い方法といえるが、その反面、計算時間が非常に長いという欠点を有している。MCNPコードの利用では計算を多数行う必要があるため、合理化研究ではその一環として、並列計算機を利用した高速処理の研究を行っている。MNCPより小型のモンテカルロ遮へい計算コードによる並列化の予備的検討では、非常に良好な高速化が達成されている。
 一方、簡易計算コードや簡略化されたモデル化に対し詳細計算コードや詳細モデルとの比較計算では、比較対象とすべき簡易計算コードや解析対象を収集・整理して、数種のカテゴリーに分類して検討を進めており、MCNPコードの詳細計算コードによる評価を行なっている。
<関連タイトル>
放射線の遮へい (08-01-02-06)
放射線防護上の遮へい (09-04-10-03)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:原子力安全性研究の現状 平成5年、平成5年10月
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ