<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 我が国の安全研究は、原子力安全委員会の策定した原子力施設安全研究年次計画に基づいて行われている。再処理施設の安全研究については、この年次計画の「核燃料施設の安全性に関する研究」で以下の8項目の研究を行うこととしている。「臨界安全性」「遮へい安全性」「閉じ込め安全性」「放射線管理技術及び分析・測定技術」「運転管理、保守・補修及び検査技術」「放射性物質の放出低減化」「事故評価手法」「放射性廃棄物の処理」

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。再処理施設に関する安全研究等について新組織により見直しされる可能性がある。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 我が国の核燃料施設の今後を展望すると、現在民間において再処理施設等の計画が進められており、今後高速増殖炉燃料サイクルの確立に向けての再処理等にかかわる新しい技術の開発が具体化している。このような状況を踏まえて、原子力安全委員会は「今後の原子力開発利用の拡大と多様化に対応し、原子力施設の安全を確保すること」を目的として原子力施設安全研究年次計画を策定した。現行の年次計画は平成3年度から平成7年度までの5か年計画である。ここでいう安全研究には、「安全基準、指針、安全審査における判断資料等の整備のための研究」及び「安全性向上のための研究」の2つが含まれる。我が国の原子力安全研究はこの年次計画に基づいて進められている。
 再処理施設の安全研究は、この年次計画で重点研究分野に指定されており、その内容は、主として、年次計画のなかの「核燃料施設の安全性に関する研究」に示されている。そのほかに「原子力施設の耐震安全性に関する研究」及び「原子力施設等の確率論的安全評価に関する研究」に原子力施設に共通の課題として示されている。
 「核燃料施設の安全性に関する研究」では、以下の8分野について研究課題を示している。
[1]臨界安全性に関する研究
[2]遮へい安全性に関する研究
[3]閉じ込め安全性に関する研究
[4]放射線管理技術及び分析・測定技術に関する研究
[5]運転管理、保守・補修及び検査技術に関する研究
[6]放射性物質の放出低減化に関する研究
[7]事故評価手法に関する研究
[8]放射性廃棄物の処理に関する研究
「原子力施設の耐震安全性に関する研究」も、我が国は世界有数の地震国であるから重要な研究テ−マである。再処理施設以外の原子力施設と共通の課題が多い。また再処理施設において特有な複雑な配管系やグロ−ボックスのように剛構造化が困難なものもあり、合理的安全裕度を追求する研究の重要性が認識されている。
 「原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究」では、人間特性に関する研究等共通の課題以外に、再処理施設については下記の研究を行うこととしている。
[1]再処理施設の信頼性評価手法の開発及び改良
[2]再処理施設のソ−スタ−ム評価手法に関する研究
[3]再処理施設への確率論的安全評価の適用研究
 以上の安全研究以外に現実の再処理施設の安全性を実証する仕事も進められている。その例を以下に示す。
・再処理施設新材料耐食安全性実証試験
・再処理施設セル換気系安全性実証試験
・再処理施設オフガス吸着系安全性実証試験
・再処理施設臨界安全性実証試験
・ガラス固化体閉じ込め安全実証試験
・再処理施設抽出工程安全性実証試験
・再処理施設耐震安全性実証試験
 以上の安全研究により、再処理施設の安全確保及び安全性が向上することが期待されるとともに、実証試験により安全性を確認している。
我が国の再処理施設を初めとする核燃料施設の安全性に関する研究は、国が中心的役割を果してきているが、大学、民間においても各種実施されており、それらの成果は核燃料サイクルの基礎となっている。
 具体的には、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)においては、臨界安全性の研究、再処理施設の事故解析コ−ドの開発、再処理施設安全評価ハンドブックの整備、放出放射能の低減化等の研究を実施してきている。また、廃棄物の処理に関する研究として、TRU(超ウラン)廃棄物処理の安全研究等も実施してきている。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)においては、再処理施設、プルトニウム取扱い施設等の核燃料施設の安全性向上のための研究として、未臨界度測定にかかわる臨界安全性の研究およびインライン測定技術の開発、供用期間中の検査技術の開発等の運転管理技術向上の研究を実施しているとともに、再処理の安全性向上研究として、材料等の耐食性に関する研究、放射性気体廃棄物の除去・固化技術の開発等を実施してきている。放射性廃棄物の処理に関する研究として、TRU廃棄物 管理の安全性等に関する研究を積極的に進めてきている。また、科学技術庁金属材料技術研究所(現独立行政法人物質・材料研究機構)においても、再処理施設の安全性向上研究として溶接部等の耐食性に関する研究を実施している。
 一方、海外においては、再処理を実施している英・仏においては、再処理施設の安全設計及び安全評価に関する研究はもちろんのこと、高レベル放射性廃棄物の処理技術に関する研究、遠隔保守機器等の開発、放射性物質の放出低減化に関する研究等が行われている。また、使用済燃料の再処理を英・仏に委託しているドイツにおいては、安全評価手法の改良、評価基礎デ−タの充実、放射性物質の放出低減化等について積極的な安全研究が行われている。さらに、米国を初めとするその他の国々においては、使用済燃料の貯蔵や放射性廃棄物の処理に関する安全研究が実施されている。
<関連タイトル>
再処理の概要 (04-07-01-01)
再処理の安全と規制 (04-07-01-08)
再処理施設の安全設計 (04-07-03-01)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会:原子力施設等安全研究年次計画(平成3年度〜平成7年度)、平成2年9月27日
(2)日本原子力研究所:原研における原子力安全性研究−第20回安全性研究成果報告会−、平成4年10月
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ