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<概要>
 ドイツのカールスルーエ研究センター(FZK)では、EPR(European Pressurized Reactor)を含む将来型軽水炉の過酷事故(シビアアクシデント)対策に関する大規模実験を中心とするPSF計画を実施した。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 過酷事故(シビアアクシデント)時の影響を評価するとともに、将来型軽水炉で設置予定のシビアアクシデント対策機器の有効性を実験的に調べるため、ドイツのカールスルーエ研究センター(FZK)は、EPRを含む将来型軽水炉のシビアアクシデント対策に関する大規模実験を中心にPSF計画(Project Nukleare Sicherheitsforschung:原子力安全性研究計画)を実施した。本計画には、フランスを始めとする欧州連合諸国が参加するとともに、日本原子力研究所(原研(現日本原子力研究開発機構))もFZKと個別に協定を結びPSF計画に参加した。
2.計画内容と主な成果
 1992年1月からのPSF計画では、燃料損傷挙動に関するCORA実験と溶融炉心コンクリート反応に関するBETA実験等を実施した。
 CORA実験は、燃料集合体の損傷・溶融過程を調べることを目的とした炉外実験である。原子炉を用いた炉内総合実験に比べ、計測が容易であること、多くのパラメータ実験が可能なことなどに特徴がある。CORA実験の試験部は、発熱部長さ100cmの電気加熱の模擬燃料棒と非加熱の模擬燃料棒および制御棒より構成されている。これまでに、PWR型、BWR型、およびロシアのVVER型の模擬燃料集合体を用いて、集合体の溶融挙動に及ぼす制御棒材料、集合体の大きさ、燃料棒の内圧、昇温速度、被覆管酸化膜の厚さおよび再冠水による急冷等の影響が調べられた。昇温過程では、燃料内部の酸化ウランを残したまま、まず燃料被覆管が先に流れ落ちる「キャンドリング」現象を見出すなどの成果を上げた。
 BETA実験は、溶融炉心が格納容器の床上に落下した場合に発生する溶融炉心コンクリート反応を調べることを目的とした大規模実験である。BETA実験では、テルミット反応で生成した酸化鉄とアルミナとより構成される最大300kgの模擬溶融炉心をコンクリートと反応させ、長期的な崩壊熱高周波加熱により模擬している。図1にBETA実験装置の概要を示す。これまでに種々の条件下で実験を行い、コンクリートの侵食、発生するガスおよびエアロゾルの種類と量、コンクリート外部に水が存在する場合のコンクリートの冷却挙動等を明らかにした。
 1995年からは、ドイツ・フランスを中心にヨーロッパで共同開発しているEPR(European Pressurized Reactor)を主な対象とした将来型軽水炉のシビアアクシデント対策に関する大規模実験に移行した。この中には、コアキャッチャーの性能評価に関するSUCOS実験(図2参照)、静的格納容器冷却に関するPASCO実験、原子炉圧力容器内水蒸気爆発対策に関するBERDA実験、水蒸気爆発現象解明のためのQUEOS実験(図3参照)等の他、関連する解析コードの開発・検証を実施した。
 原研はFZKとの協定に基づき、PSF計画から得られる実験データを分析・評価することにより、シビアアクシデント時の諸挙動に関する総合的な知見を得るとともに、原研で開発しているシビアアクシデント解析コードの改良と検証に役立てた。
<図/表>
図1 BETA実験装置の概要
図1  BETA実験装置の概要
図2 SUCOS実験装置の概要
図2  SUCOS実験装置の概要
図3 QUEOS実験装置の概要
図3  QUEOS実験装置の概要

<関連タイトル>
CSARP計画 (06-01-01-20)
ACE計画 (06-01-01-21)
RASPLAV計画 (06-01-01-22)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:原子力安全研究の現状 平成7年(1995年10月)
(2)日本原子力研究所:原子力安全研究の現状 平成6年(1994年10月)
(3)Proc. Second OECD(NEA) Specialist Meeting on Molten Core Debris-Core Interactions,Karlsruhe,Germany(1992)
(4)Proc. OECD/CSNI Workshop on Fuel Coolant Interactions,Tokai-mura,Japan(1997)
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