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<概要>
 ボストン大学医療センター(Boston University Medical Center: BUMC)では、医学研究のため放射性度同位元素(ラジオアイソトープ、RI)を50年以上使用した10階建て研究棟の汚染していた7階分の除染を行い、1994年完全に修復した。また、この経験に基づき、隣接する吸収合併した病院建屋の汚染状況を調査し、除染、解体を1997年に行った。
<更新年月>
2001年04月   

<本文>
1.ボストン大学医療センター研究棟の放射線サーベイおよび除染
 この研究棟では、放射性同位元素(ラジオアイソトープ、Radio Isotope=RI、英語ではRadio Nuclide = RN)14C、3H、125I、32P、35Sが主として使用され、またその他のγ線放出核種や238Uが使用されていた。 表1核医学 in vivo 検査に用いられる放射性医療品の例を示す。大部分のエリアでは、1993年 NRC解放基準を超える汚染はなかったが、固定した汚染が検出された。
 作業は、(1)米国原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission)への届け出、(2)1992年NRCガイドライン(CR-5849)の遵守、(3)サイト外への放射性廃棄物処分の最小化、(4)過去の使用履歴を考慮した「放射線の影響のあるエリア」と「放射線の影響のないエリア」との汚染評価区分、(5) 「放射線の影響のあるエリア」100%と「放射線の影響のないエリア」10%の NUREG/CR-5849に基づく放射線サーベイ、 (6)専門会社による放射線サーベイおよび除染という戦略に基づいて行われた。
 なお、「影響あるエリア」とは、表面の放射線の潜在性を表すNRC NUREG/CR-5849で使われている用語であり、かつて放射性物質を使用したか、またはその疑いのある場所をさす。
1.1 研究棟582エリアの放射線サーベイ結果
(1)「放射線の影響のあるエリア」292エリアから、75の汚染スポット検出(25.7%)
(2)「放射線の影響のないエリア」290エリアから、2つの汚染スポット検出(0.7%)
 大部分(86%)のエリアは汚染されていなかった。除去できる汚染(ルーズコンタミ)に関しては、全130エリアについて4,114ヶ所の「拭取り」テストを行ったが、解放基準値限界以上は12カ所に過ぎず、その大半の汚染は固着汚染であった。12カ所のうち5つはトリチウム汚染である。
1.2 機器等の放射線サーベイ結果
(1) 32フード内から、70の汚染スポット検出。
(2) 28作業台から、70の汚染スポット検出。
(3) 23室の床から、66の汚染スポット検出。
(4) 9室のキャビネットの棚から、31汚染スポット検出。
 汚染平均レベルは、30,000dpm/100cm2(500Bq/m2)で、3H、14Cが主汚染核種であった。
 本デコミッショニング・プロジェクトは、内部機器の撤去、除染を含め契約金額100,000ドル、7ヶ月間で完了している。
2.病院の放射線サーベイおよび除染
 病院の3つのビルディングは、1997年、放射能汚染調査、除染後に解体された。これら3つのビルディングは、放射線管理者の放射線使用履歴から類似の汚染状況であることが判明した。作業は、マサチューセッツ(Massachusetts)州の最新協定書および施設解体等の米国多省庁間マニュアル「MARSSIM」(米国エネルギー省DOE)、米国環境保護庁(EPA)、米国原子力規制委員会(NRC)管轄の廃止措置に関する最終サーベイを中心とした手引書NUREG−5849に代わる新指針)に基づいて行われた。
 まず、マサチューセッツ州保健局(Department of Public Health : DPH)に解体届けを提出し、1994年時にデコミッショニング経験のある請負い業者が採用された。また、ビルディング内の放射線サーベイには概括的サーベイ(Scoping Survey)が実施された。その結果、「放射線の影響のあるエリア」10%、「放射線の影響のないエリア」1%の割合で放射線サーベイが行われた。サーベイには3H比例計数カウンター、GMカウンタ およびNaIシンチレーションカウンターが用いられ、表面を直接スキャンした。拭取り試験はダクト、シンクなどの立ちいれないエリアのみ実施した。
2.1 放射線サーベイ結果
(1)ビルディング1(4階建て看護病棟、15年間放置);放射能は検出されなかった。
(2)ビルディング2(3階建て研究棟、15年間放置);「放射線の影響のあるエリア」30エリアから、4汚染スポット検出(3Hおよび14Cによる汚染)。
(3)ビルディング3(6階建て研究棟、数カ月前に閉鎖、40年間使用);「放射線の影響のあるエリア」21エリアから、7汚染スポット検出。「放射線の影響のないエリア」の1カ所に汚染があり、226Raと同定された。また、床下コンクリート40平方インチから70μ Ci(2.59*106Bq)の汚染が検出されたが、削岩機で除去した。このため汚染を検出した階の全ての「放射線の影響のないエリア」を100%サーベイした。
 このプロジェクトは、内部機器の撤去、除染を含め契約金額10,000ドルで、2ヶ月間で完了した。
3.まとめ
 1997年に実施した過去の使用履歴と専門的判断を考慮した限定範囲の概括的サーベイ(10%サンプリングサーベイ)法は、1994年の広範囲なサーベイ(100%サンプリングサーベイ)法と比較すると、時間、経費が節約でき、また、法令に基づく規制要件が満たされていることが判明した。なお、新指針DG-4006(認可終了のための解放基準1998/08)は、多くの汚染物質に対して、表面解放制限値を高め、信頼性を向上させた。
<図/表>
表1 核医学in
表1  核医学in

<関連タイトル>
放射性同位元素 (08-01-03-03)
医療分野での放射線利用 (08-02-01-03)
放射性医薬品(放射性薬剤)の利用状況 (08-02-04-01)

<参考文献>
(1) Victor Evdokimoff: Lessons Learned in Decommissioning Medical Facilities, Radiation Protection Journal, Vol.77, No.5-suppl.,(1999年11月)
(2) NUREG-1575: Multi-Agency Radiation Site Survey and Investigation Manual(MARSSIM)(1997)ホームページ
(3) U.S.NRC: Guideline for Decommissioning of Facilities and Equipment prior to Release for Unrestricted Use (1993)
(4) Boston University Medical Center Radiation Protection Office(BUMC)ホームページ
(5) (財)原子力研究バックエンド推進センター:デコミニュース(2000年6月発行)
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