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<概要>
 エネルギー政策の基本は、石油ショックの経験から明らかなように、国民生活、経済活動に不可欠なエネルギーの量的安定供給を図ることである。また、エネルギー価格の安定性向上にも配慮が必要である。わが国のエネルギー供給構造は極めて脆弱であり、その安定的供給の実現は、世界のエネルギー需給の安定化の実現と不可分である。また、地球環境問題、特に地球温暖化問題に対して、エネルギー政策上最大限の対応が必要である。それらは、省エネルギーなどのエネルギーの効率的利用、適切なエネルギーミックスによる安定供給の確保、そして地球環境問題を考慮したエネルギー政策の総合的国際協調体制を提唱し、推進することにある。
<更新年月>
2005年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 現在、世界のエネルギー情勢は、先進国を中心として原子力等の石油代替エネルギーの導入が進んだこと、省エネルギー政策が進められたこと、北海、アラスカ、メキシコ等の非OPEC(Organization of Petroleum Exporting Countries:石油輸出国機構)地域、産油国の生産能力拡大が積極的に図られてきたこと、OPEC石油価格政策が穏健化したことなどの要因から、比較的安定を保っている。しかしながら、中長期的には、アジア地域をはじめとする発展途上国を中心にエネルギー需要の増大が予想され、石油需給の逼迫など資源制約の顕在化が懸念されている。
 エネルギーは、経済社会の発展を支える基礎的な財の1つであり、経済の持続的発展のためには、エネルギーの安定的かつ効率的な供給が必要不可欠である。
 わが国のエネルギー需給構造は長年の努力にも拘らず、2002年度においてエネルギー供給の約8割を海外に(図1)、また、49%を石油に依存しており(このうち、中東依存度は約86%)(表1)、依然として諸外国に比べ極めて脆弱であるといわざるを得ない(図2)。このため、エネルギー供給の安定確保はわが国にとって引き続き重要な課題である。
 さらに、化石燃料の燃焼に伴って排出されるCO2、NOx、SOx等が、地球温暖化、酸性雨等の原因物質であることが指摘されるなど、エネルギーと環境問題は今や密接な関係を持っている。現在、世界的なエネルギー消費の増大に伴い、地球規模でのエネルギー環境問題が顕在化しつつあり、わが国もこれに積極的に対応していくことが必要である。
 わが国は、このような視点を踏まえ、エネルギー政策の基本方針として、それぞれトレードオフの関係にある3つの要素、すなわち、「経済成長(Economic Growth)」、「エネルギー供給の安定確保(Energy Security)」、「環境保全(Environmental Protection)」の調和を図りつつ、この3つの”E”を同時達成することを目標としている。
1.経済成長とエネルギー需給
 1960年代半ば、わが国経済の急速な成長に伴うエネルギー消費の急増、石炭に代わる石油の重要性の増大といったエネルギー供給構造の変化の中で、総合的なエネルギー政策を確立することが必要であるとの指摘が高まった。このような状況を踏まえ、1965年、通商産業大臣(現経済産業大臣)の諮問機関として(総合エネルギー調査会設置法により)総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)が設置され、同調査会は1967年に、第1回目の長期エネルギー需給見通しを含む第1次答申を提出した。当時は、低廉な石油輪入によるエネルギー供給体制を基本とし、石油供給の低廉、安定、自主が重要な課題とされた。その後、1975年の第3回目の長期エネルギー需給見通し以降は、2度の石油危機を経て、石油依存度の低減、省エネの必要性が重視されるに至ったが、長期エネルギー需給見通しの役割としては、基本的にはエネルギー需給の将来像を示しつつ、エネルギーの安定供給へ向けた取り組みを促すというものであり、エネルギー需要の想定は、実勢を踏まえた自然体の見通しに近いものであった。
 1990年6月以降に策定された見通しにおいては、地球環境問題への対応の必要性という考え方が導入され、長期エネルギー需給見通しは、地球温暖化防止のためのわが国の取り組みの政策目標を加味しつつ、経済成長を図るものとなっている。
2.エネルギー安定供給の確保
 今後の安定供給対策としては、従前の石油および中東地域に係るエネルギー安全保障対策に加え、石油以外のエネルギー(石炭、天然ガス、LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス))の供給確保、および中東以外の地域からの供給拡大にも新たに力を入れていくことが不可欠となってきている。具体的には、産油国等との連携の強化、石油備蓄の推進等は依然として重要であるが、これに加え、天然ガスの開発促進、石炭供給構造の確立等が必要になっているところである。さらに、電力の安定供給確保のためにも、大規模電源である原子力発電の立地を推進することが必要となっている。
 一方、国際エネルギー情勢については、近年アジア地域のエネルギー需要が急増しつつあり、世界のエネルギー需給と、後に述べる地球環境問題の両面で大きな影響を与えるようになってきている。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)統計によると、世界のエネルギー需要は、アジアの発展途上地域におけるエネルギー需要の急速な伸びにより、2010年には2000年比で12%、2030年には2000年比で66%増加する見込みで、世界のエネルギー需要に占めるアジア地域のシェアは、2000年の28%から2010年には31%、2030年には34%に拡大し、特に中国の伸びが大きく、アジア全体の増加の約4割を占める(図3)。
 このようなアジアのエネルギー需要の急増が、世界全体のエネルギー需袷の逼迫と環境問題の深刻化をもたらすものと懸念されている。
 これらに対処していくためには、総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)国際エネルギー部会の国際展開のあり方についての提言にしたがって、多国間(APEC(Asian Pacific Economic Cooperation:アジア太平洋経済協力会議)等)、2国間の協力・対話の促進、さらに、中国、ASEAN(Association of South-east Asian Nations:東南アジア諸国連合)等との2国間対話の強化、中東諸国への工業化協力等の推進が重要である。
3.環境保全
 わが国は1990年10月、地球環境保全に関する関係閣僚会議において「地球温暖化防止行動計画」を決定し、「1人当たり二酸化炭素排出量について、2000年以降、概ね1990年レベルでの安定化を図る」ことを掲げている。
 国際的には、1994年3月、気候変動枠組条約が発効し、わが国を含む先進加盟国は同年9月までに二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量の見込み、排出抑制のための対策等を内容とする国別報告書を条約事務局に提出した。
 このような状況等を踏まえ、通産大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会は1994年6月、「長期エネルギー需給見通し」の改定を行った。この見通しは、わが国のエネルギー政策の基本指針であるとともに、わが国の二酸化炭素排出抑制目標の達成のための道筋を示すものとしての性格も有する。
 需給見通しにおいて示されている具体的なエネルギー需要面での取り組みの方向としては、省エネルギー対策の一層の強化により、エネルギー消費の伸びを今後2010年に向けて年率約1%程度に抑制することが必要であるとしている。一方、供給面では、環境特性に優れた原子力、新エネルギー等の非化石エネルギーおよび天然ガスの一層の導入拡大を椎進することにより、石油依存度を2010年度には、47.7%まで低減させることが必要であるとしている。このような取り組みを進めることにより、同見通しによれば、2000年度における一人当たり二酸化炭素排出量は約2.6トンとなり、わが国が気候変動枠組条約上の目標と位置づけている、地球温暖化防止行動計画に掲げる「1人当たり二酸化炭素排出量について、2000年以降概ね1990年レベルでの安定化を図る」ことが達成される見通しとなっている。
 その後、1997年12月の京都で開催された気候変動枠組み条約の第3回締結国会議(COP3:the 3rd Conference of the Parties)において、先進国における2000年以降の排出削減目標を定めた京都議定書が採択された。この議定書の中で、わが国は2010年を中心とした5年間の年平均温室効果ガス排出量を1990年と比べ6%削減することが義務付けられた。これに対して、内閣に設置された地球温暖化対策推進本部は、当面の方針として、二酸化炭素については0%水準までの削減を行い、残りを他の手段(他の温室効果ガスの削減、共同実施等の柔軟性措置の活用ほか)で達成することとした。
 この方針を受けて、総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会は1998年6月に再びエネルギー需要見通しの改訂を行い、今後2%程度の経済成長を持続しながら、上記の二酸化炭素排出削減目標を達成し、かつエネルギー自給率の一層の向上を図ることを狙って、2010年におけるエネルギー需給の目標を定めた。2003年4月より、わが国のエネルギー政策の基本目標(環境保全や効率化の要請に対応しつつ、エネルギー安定供給を実現)を達成するため、エネルギー需給像とそれを支える政策の方向を明らかにするため、総合資源エネルギー調査会において検討が行われ、2004年7月に答申がなされた。更なる省エネルギー対策、新エネルギー対策を行い、燃料転換を実現するとした。
 この答申で、エネルギー需給に関しては、今後追加対策を行わないと仮定した現行対策(5000万Klの省エネ)ケースに対してさらに原油換算700万klの省エネルギー対策および新エネルギー対策等を進展させ、最終エネルギー消費量を2000年度(4億1300万Kl)比3.4%減の4億klに抑制することとした(表2)。また、供給側では化石エネルギー利用の抑制(石油供給量を現行対策ケースの2000年度比11%減から同15%減へ、石炭供給量を2000年度比2%減から同6%減へなど)、原子力発電の拡大(2000年度の石油換算7500万Klから8700万Klへ)、新エネルギー供給量の拡大(現行対策ケースの原油換算2100万klから2400万klへ)など盛り込んだ(表3)。
 わが国のエネルギー部門からのCO2排出量は2000年度に炭素換算3億1700万トンに達しているが、今後追加対策を取らない現行対策ケースでは、2010年の排出量が同3億400万トンに増大すると予想される。しかし、追加対策(1600万トンの削減)が実施されれば、同年の排出量を1990年水準(同2億8600万トン)に抑制することが可能と見込まれている(表4)。
<図/表>
表1 石油依存度、輸入依存度、中等依存度の各国比較(2001年)
表1  石油依存度、輸入依存度、中等依存度の各国比較(2001年)
表2 2010年度までの最終エネルギー消費の見通し(2004年7月)
表2  2010年度までの最終エネルギー消費の見通し(2004年7月)
表3 2010年度までの一次エネルギー供給構成の見通し(2004年7月)
表3  2010年度までの一次エネルギー供給構成の見通し(2004年7月)
表4 2010年度までのエネルギー起源CO
表4  2010年度までのエネルギー起源CO
図1 日本の一次エネルギー供給構成の推移
図1  日本の一次エネルギー供給構成の推移
図2 主要国のエネルギー輸入依存度(2002年)
図2  主要国のエネルギー輸入依存度(2002年)
図3 世界の地域別エネルギー需要の推移と見通し
図3  世界の地域別エネルギー需要の推移と見通し

<関連タイトル>
主要国のエネルギー政策目標 (01-09-01-01)

<参考文献>
(1) 資源エネルギー庁(監修):1997/1998 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1997年2月)、p.21-25
(2) 通商産業省(編):エネルギー’96、(株)電力新報社(1996年7月)、p.148-155
(3) 通商産業省資源エネルギー庁(編):21世紀、地球環境時代のエネルギー戦略−成長と環境の対峙を超える「価値ある選択」−総合エネルギー調査会需給部会中間報告、通商産業調査会出版部(1998年7月15日)、p.3-60
(4) 資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.21-45
(5) 資源エネルギー庁(編):エネルギー2000、(株)電力新報社(1999年10月)、p.10-46」
(6) 資源エネルギー庁:エネルギー白書「平成16年度エネルギーに関する年次報告」
(7) 電気事業連合:原子力・エネルギー図面集、第1章「世界および日本のエネルギー情勢」
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