<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球環境問題への取り組み
<タイトル>
砂漠化対処条約 (01-08-04-19)

<概要>
 砂漠化とは、「乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候上の変動や人間活動を含む様々な要素に起因する土地の劣化」である。砂漠化の原因としては、気候的要因と人為的要因がある。地球的規模の環境問題として現在注目されている砂漠化は、人間活動による人為的なものと考えられている。砂漠化対処条約—「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約」—は、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)が砂漠化に対処するために国家行動計画を作成し、実施すること、また、そのような取組を先進締約国が支援すること等について規定した条約である。わが国は1998年9月受諾書を国連事務総長に寄託し、同年12月10日に発効した。わが国としては、アジア地域における砂漠化対処への貢献と条約に基づく科学技術委員会への支援を念頭に置いた砂漠化防止対策推進支援調査を行ったほか、民間レベルでの調査・研究・支援が実施されている。
<更新年月>
2002年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.砂漠化
1.1 砂漠化の定義
 砂漠化防止条約によれば、砂漠化とは、「乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候上の変動や人間活動を含む様々な要素に起因する土地の劣化」である。この場含、土地とは、土壌や水資源、地面の表層や植生などを含む概念であり、劣化とは、降雨や風による土壌の流出や河床への堆積、長期間をかけた自然植生の多様性の減少、土地の塩化など、土地に作用する一つまたは複数のプロセスによって生じる土地資源の潜在力の減少をいう。1977年にUNEP(United Nations Environment Programme:国連環境計画)の主催により開催された国連砂漠化防止会議での漠然とした定義に比べて、砂漠化問題を世界的な土地の劣化という広い枠組みの中にとらえる必要性等から、条約において、改めてより正確に定義されたのである。
1.2 砂漠化の原因
 主な原因としては、新しい砂漠化の定義の中に明示されているように地球的規模での大気循環の変動による乾燥地の移動という気候的要因と乾燥地及び半乾燥地の脆弱な生態系の中でその許容限度を超えた人間活動が行われることによるインパクトという人為的要因の二つが考えられている。
 気候的要因としては、下降気流の発生または水分輸送量の減少などによって乾燥が進むことにより引き起こされ、地球的規模の気候変動によって、さらに砂漠化が進行していると言われている。
 人為的要因としては、草地の再生能力を超えた家畜の放牧(過放牧)、休耕期間の短縮等による地力の低下(過耕作)、薪炭材の過剰な採取が考えられている。これらのほか、かんがい(灌漑)農地の塩類集積の問題がある。これは、灌漑が行われる際に、過剰な灌漑や水路からの漏水等のために地下水位の上昇が起こったり、あるいは塩類濃度の高い地下水を用いたりするなどの不適切な灌漑が行われることにより、水分が蒸発した後に水に含まれていた塩類が集積し、塩化によって農地が荒廃、劣化してしまうことである。また、植生や土地基盤の弱い乾燥地では、耕作などで地面が裸地状態になり、乾季には風食、雨季には水による侵食が起こりやすく、土壌の流出に伴い砂漠化が起こり、進行していく場合もある。
 以上のように、砂漠化の原因としては、気候的要因及び人為的要因が考えられるが地球的規模の環境問題として現在注目されている砂漠化を考えた場合、気候の乾燥化(気候的要因)よりも、むしろ人間活動(人為的要因)に伴って砂漠化が引き起こされていると考えられている。砂漠化の進行によりいったん不毛の砂漠になってしまった土地は、膨大な労力及び費用をかけて再生しない限り、元の状態に戻すことは難しい。したがって、現在、まったく影響を受けていないか、わずかしか影響を受けていない土地の劣化を防ぐことは、劣化した土地を再生させるより、はるかに効率的で、実行可能性を有する対策であると考えられている。また、砂漠化の問題は、自然資源をべースとした開発途上国の発展のプロセスと深く関わっており、開発途上国の貧困、食糧、雇用、教育、人口問題といった社会的、経済的、文化的、政治的な観点に基づいた対策が行われなければ、根本的な解決にはならないと考えられている。
1.3 砂漠化の現状
 1991年のUNEPの報告書では砂漠化の影響を受けている土地の面積は約36億ヘクタールと報告されている。これは地球上の全陸地の1/4、世界の耕作可能な乾燥地域(乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域の合計)約52億ヘクタールの約70%に相当する。また、砂漠化によって影響を受けている人口は約9億人で、世界の全人口の1/6に当たる。砂漠化の広がりを地域別にみると、アフリカが約10億ヘクタール、アジアが約13億ヘクタールとこの両地域で世界の砂漠化の影響を受けている土地の面積の約2/3を占めている。これは両地域で耕作が可能な乾燥地域のうちのそれぞれ73%、71%に相当し、砂漠化問題が両地域の人々の生活を脅かす深刻な問題になっていることがこれらの数字からも明らかである(図1参照)。
 また、影響を受けている面積こそ両地域より少ないが、影響の深刻さではカリブ海諸国を含む南アメリカ地域も同様である。
 土地の形態別にみると、牧草地への影響が最も大きく、約33.3億ヘクタールの牧草地が影響を受けており、これは乾燥地域の全牧草地の面積の73%に相当する。降雨依存農地では、約2億ヘクタールが影響を受けており、これは乾燥地域にある降雨依存農地の47%に相当する。灌概農地では約0.4億ヘクタールが主に塩性化というかたちの砂漠化の影響を受けている。これは乾燥地域にある全灌漑農地の30%に相当する。
1.4 砂漠化の影響
 砂漠化の進行は人間社会に様々な悪影響を及ぼすが、そのうち最も直接的なものが、土地の劣化による牧草地や農地などの食糧生産基盤へのダメージである。乾燥地域の耕地には、もともと自然条件が厳しく生産力の低い土地が多いため砂漠化による土地の生産力の低下は、当然ながら食糧不足をはじめとする生活条件の悪化をもたらす。深刻なケースでは飢餓といった人々の生存そのものへの脅威となり、環境難民の発生や民族間の対立など大きな社会的混乱をも惹起する結果となる。例えば、1972/73年、1983/84年をピークとするアフリカのサヘル地域の大干ばつの際には、多数の人命と家畜が失われるとともに、環境難民が広域で発生し、深刻な政治的、社会的な問題となった。環境への悪影響も深刻である。特に動植物の生息地の減少による生物多様性の低下や、気候変動への影響など広域的なインパクトについても注視していく必要がある。また砂嵐の頻発などの局地気候の変動への影響についても注意する必要がある。これらに関してはこれまで必ずしも十分な知見が集積されていないため、今後積極的な調査研究が求められる。砂漠化の影響として、砂漠化の進行が次の砂漠化を引き起こすという、いわば砂漠化の悪循環ともいうべき現象が生じていることにも注意する必要がある。
2.砂漠化対処条約
2.1 目的
 正式名称は「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約」(United Nations Convention to Combat Desertification in Those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification, Particularly in Africa)で、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)が砂漠化に対処するために国家行動計画を作成し及び実施すること、また、そのような取組を先進締約国が支援すること等について規定した条約である。
2.2 条約の成立経緯及び締約国数
 1992年6月  国連環境開発会議(UNCED)において、1994年6月までに砂漠化対処条約を作成するための「政府間交渉委員会」の設置につき基本的合意
 1992年12月  国連総会の決議第188号(第47回会期)により、「政府間交渉委員会」を設立
 1993年5月  国連の下、第1回条約交渉委員会開催(於:ナイロビ)
 1994年6月  第5回交渉委員会において条約を採択(於:パリ)
 1994年10月  署名式典(於:パリ)で日本を含む86か国(ECを含む)が署名
 1996年12月  条約発効
 2002年4月1日 現在、締約国は179か国(主要国ではロシアが未締結)
3.条約の概要
 砂漠化対処条約は、前文、本文40箇条、末文及び5の附属書から成り、その概要は、次のとおりである。
3.1 本文
(イ) この条約は、砂漠化の影響を受ける地域における持続可能な開発の達成に寄与するため、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することを目的とする。(第2条1)
(ロ) 砂漠化の影響を受ける締約国は、砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに対して十分な資源を配分するとともに、その対処及び緩和のための努力において住民の参加を促進する。また、このような締約国は、この義務の履行に当たって行動計画を作成し、公表し及び実施する。(第5条及び第9条1)
(ハ) 先進締約国は、開発途上締約国による砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための努力を積極的に支援し、相当の資金等を提供するとともに、「地球環境基金」(Global Environment Facility:GEF)からの資金供与等を促進する。先進締約国は、また、援助の提供に当たって開発途上締約国の行動計画に対する支援を優先させる。(第6条、第9条2及び第20条)
(ニ) 締約国は、自国の能力に応じ、関連分野の技術上及び科学上の協力を促進すること、自国の法令又は政策に従い、関連の技術の移転、開発等のために資金を供与すること等を約束する。(第17条及び第18条)
(ホ) 既存の資金供与の仕組みの効果及び効率性を高めることを目的として、資金調達を促進するための「地球機構」(Global Mechanism)をこの条約により設立する。(第21条)
(へ) 砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに関連する科学技術的及び技術的事項に関する情報及び助言を締約国会議に提供する締約国会議の補助機関として、科学技術委員会をこの条約により設置する。同委員会は、締約国会議の通常会合の際に開催され、学際的な性格を有し、及びすべての締約国による参加のために開放される。(第24条)
3.2 附属書
 アフリカ、アジア、ラテン・アメリカ及びカリブ、地中海北部並びに中・東欧の5地域について、行動計画(国家行動計画、小地域行動計画、地域行動計画)に関する指針を規定している。(附属書のIからVまで)
4.締約国会議(COP:Conference of the Parties)
 砂漠化対処条約の各締約国は、条約第26条に基づき、自国が条約の実施のためにとった措置に関する報告書を提出することとされている。これまで5回締約国会議が開催されている。
 締約国会議では、事務的な事項、資金調達の受け入れ機関を国際農業開発基金(IFAD)とすること、科学技術委員会(CST)における専門家の登録制度の設立、研究の目録の作成、研究ネットワークの調査及び砂漠化に関する指標等の作成、国レベル及び地域レベルでの条約実施状況の報告、地球機構の活動報告等が議論されている。
5.わが国の対応
5.1 条約発効とそれまでの取組み
 日本は、1998年9月に受諾書を国連事務総長に寄託し、同年12月10日(寄託後90日)に日本について条約が発効した。わが国は、条約の作成作業が開始された1992年から、政府間交渉会議において作業部会の議長国を努めるなど積極的に貢献するとともに、1993年以降任意拠出金を提供し、財政面からも活動を支援してきた。
5.2 国際会議等への協力
 わが国は、条約発効以来、アジア地域の各国代表が、条約実施の進捗状況、今後の地域協力の進め方、締約国会議に向けた準備等について討議するアジア地域フォーカル・ポイント会合の開催を継続的に支援するほか、テーマ別プログラム・ネットワーク1(TPN1)に関する国際ワークショップの開催(2000年6月)、早期警戒体制アドホック・パネルの開催(2001年6月)等の国際会議を国内で随時開催し、これを支援している。
5.3 具体的な活動
 わが国としては、アジア地域における砂漠化対処への貢献と科学技術委員会への支援を念頭に置いた砂漠化防止対策推進支援調査を行ったほか、政府レベルでは、二国間、多国間援助を通じた砂漠化関連プロジェクトの実施、西アフリカサヘル地域における地下水の有効利用を中心とする持続可能なコミュニティ形成を図るための調査、ニジェール河流域における砂漠化に対処するための農業開発等の調査、砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究が行われている。
 民間レベルでは、「緑のサヘル」などのNGOがアフリカ、中国等で砂漠化対処活動を実施しており、これらの活動に対して支援を行った。
<図/表>
図1 砂漠化の現状

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<関連タイトル>
生物の多様性に関する条約 (01-08-04-16)
オゾン層保護に関する条約 (01-08-04-17)
バーゼル条約 (01-08-04-18)
ワシントン条約 (01-08-04-20)
ラムサール条約 (01-08-04-21)
ロッテルダム条約 (01-08-04-22)
南極条約 (13-04-01-13)

<参考文献>
(1)外務省:砂漠化対処条約
(2)環境庁(編):平成14年版環境白書、株式会社ぎょうせい(2002年5月27日)、p.316-317
(3)地球環境研究会(編):三訂 地球環境キーワード事典、中央法規出版(2001年2月25日)、p.106-115
(4)(財)地球産業文化研究所(編):地球環境2000−2001、株式会社ミオシン出版(2000年2月21日)、p.233-241
(5)環境省:平成14年度版環境白書、白書情報、http://www.env.go.jp/policy/hakusyo
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