<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球環境問題への取り組み
<タイトル>
オゾン層保護に関する条約 (01-08-04-17)

<概要>
 オゾン層破壊の問題は、1974年以来、北欧諸国や米国で認識され、これらの国では、独自の規制を実施してきた。国際的な取組みとしては、1985年3月に、「オゾン層の保護に関するウィーン条約」が制定された。同年末には、南極域上空でオゾンホールが観測され、国際世論に衝撃を与えた。ほどなく1987年9月に、具体的な規制を盛り込んだ「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」か採択された。日本は、1988年9月に条約及び議定書を締結した。条約は、1989年1月に発効し、規制スケジュールは5回にわたって改訂・強化された。また、オゾン層保護基金が設置されており、日本は、約2億8600万ドル(全体の約1/6近く)を拠出している。また、オゾン層保護法に基づいて、オゾン層保護対策を推進している。
<更新年月>
2002年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.オゾン層破壊問題と条約の成立
 オゾン層破壊の問題が大きく注目を集め始めるきっかけとなったのは、1974年にカリフォルニア大学のローランド教授及びモリーナ博士が発表したフロンによりオゾン層が破壊されるとの研究論文であった。
 1977年、UNEP国連環境計画)は専門家の会合を設け、科学的な知見の整理や対策の立案に乗りだした。この頃から、オゾン層保護対策に熱心な北欧諸国や米国は、相次いで独自の規制を率先して開始した。しかし、オゾン層破壊の原因物質の規制はすぐには合意できなかった。国際的な取組みの最初のステップとして、1985年3月に、国際共同研究や各国での適宜の対策の実施を内容とした「オゾン層の保護に関するウィーン条約」(ウィーン条約:Vienna Convention for the Protection of the Ozone Layer)が制定された。同年の末には、南極域上空においてオゾンの量が極端に減少するオゾンホールという現象が観測された。これは、フロンによるオゾン層破壊説を実証する現象ではないかとして国際世論に衝撃を与えた。この強い世論を背景に、具体的な規制を盛り込んだ「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(モントリオール議定書:Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer)が1987年9月に採択された。これによって、5種類の特定フロン(クロロフルオロカーボン:CFC:Chloro Fluoro Carbon)、3種類の特定ハロン(Halon)の生産量の削減が合意された。
 日本においてもこれらを的確かつ円滑に実施するため、1988年5月に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法:昭和63年5月20日、法律第53号)を制定するとともに、同年9月に条約及び議定書を締結した。ウィーン条約は、1989年1月に発効し、2002年12月6日現在184か国と1国際機関(EC)が加入している。
 日本のオゾン層保護法には 図1に示すような事項が盛り込まれている。
2.条約及び議定書の概要
(1)「オゾン層の保護のためのウィーン条約」の概要
 本条約においては、締約国は、以下の約束をさせられている。
(A)第二条(一般的義務) 締約国は、オゾン層を変化させ又は変化させるおそれのある人の活動の結果として生じ又は生ずるおそれのある悪影響から人の健康及び環境を保護するために適当な措置をとる。
(B)第三条(研究及び組織的観測) 締約国は、適宜、直接に又は関係国際団体を通じて必要な研究及び組織的観測等に着手すること並びにその実施に協力することを約束する。
(C)第四条(法律、科学、及び技術の分野における協力) 締約国は科学、技術、社会経済、商業及び法律に関する情報であってこの条約に関連のあるものの交換を円滑にし及び奨励する。当該情報は、締約国の合意する団体に提供する。
(2)「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の概要
(イ)議定書に定める規制措置
   本議定書において規定する主な規制措置等は次のとおりである。
 (A) オゾン層破壊物質の規制スケジュールの設定(第2条のA〜H)
 (B) 非締約国との貿易の規制(規制物質の輸出入の禁止等)(第4条)
 (C) 最新の科学、環境、技術及び経済に関する情報に基づく規制措置の評価及び再検討(第6条)
(ロ)議定書の下での規制措置の強化
 モントリオール議定書の採択後、議定書締約国の間でオゾン層の破壊状況と規制措置につきさらに検討が行われた結果、オゾン層の破壊が予想以上に進んでいることが判明したこと等から、
 (A)1990年6月  議定書第2回締約国会合(ロンドン会合)
 (B)1992年11月 議定書第4回締約国会合(コペンハーゲン会合)
 (C)1995年12月 議定書第7回締約国会合(ウィーン会合)
 (D)1997年9月  議定書第9回締約国会合(モントリオール会合)
 (E)1999年12月 議定書第11回締約国会合(北京会合)
の5回にわたって、規制物質の追加、規制スケジュールの前倒し等の規制措置の強化が行われてきた。さらに、2002年8月までに第13回目まで開催されている。2002年現在の規制スケジュールは 表1 に示すとおりである。
 なお、議定書では規制物質が全廃された後の規制の例外として「不可欠な用途」essential use;例えば、医療用途、試験研究・分析用途)が認められている。また、今後も必要に応じ締約国会合等を通じ規制措置の追加、調整が行われる可能性がある。
3.開発途上国援助
(1)経緯
 1990年6月の議定書第2回締約国会合(ロンドン会合)において、モントリオール議定書に基づく規制措置を自力で実施する十分な資金・技術を有していない開発途上国(議定書第5条1適用国)を援助するために、「オゾン層保護基金(モントリオール議定書の実施のための多数国間基金)」を中核とする資金供与の制度の設立につき合意され(議定書第10条)、同基金が1991年1月から発足した。
(2)オゾン層保護基金の概要
 オゾン層保護基金は、議定書第5条1非適用国(先進国)の拠出によって賄われ、執行委員会(議定書第5条1非適用国及び同適用国それぞれ7か国の合計14か国で構成。日本及び米国は事実上常任メンバー国)により運営され、世界銀行、UNEP、UNDP国連開発計画)及びUNIDO(国連工業開発機関)が援助の実施機関となっている(議定書第10条5)。
 なお、基金事務局はモントリオールに置かれている。
(3)オゾン層保護基金の資金規模
 同基金は、3か年を1期として、締約国会合においてその資金規模が決定されている。これまでの資金規模の推移は次のとおりである(括弧内は当該期間における日本の拠出額(予定を含む)を示す)。
 第1期(1991〜1993年):2億4000万ドル(約3300万ドル)
 第2期(1994〜1996年):5億1000万ドル(約6500万ドル)
 第3期(1997〜1999年):5億4000万ドル(約8500万ドル)
 第4期(2000〜2002年):4億7570万ドル(約1億ドル)
4.日本で実施している施策
 日本では、オゾン層保護法等に基づき、次のような施策を実施してきている(図1参照)。
 ア.CFC等の製造等の規制
 オゾン層保護法では、モントリオール議定書に基づく規制対象物質を「特定物質」として、製造規制等の実施により、モントリオール議定書の規制スケジュールに即して生産量及び消費量(=生産量+輸入量−輸出量)の段階的削減を行っている。この結果、ハロンについては1993年末をもって、CFC(クロロフルオロカーボン)、四塩化炭素、1.1.1−トリクロロエタン及びHBFC(ハイドロブロモフルオロカーボン)については1995年末をもって、生産等が全廃されている。他のオゾン層破壊物質についても、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)については2019年末をもって、臭化メチルについては2004年末をもって、検疫用途等を除き、その生産等が全廃されることとなっている。
 イ.CFC等の排出抑制・使用合理化
 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、そのための「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」(環境庁・通商産業省告示)を1989年に告示し、逐次改正するとともに、その周知普及を図っている。
 ウ.国家ハロンマネンジメント戦略
 1998年に開催されたモントリオール議定書第10回締約国会合において、先進国は2000年7月末までに、「国家ハロンマネンジメント戦略」を策定し、UNEPのオゾン事務局に提出することが決定されたため、関係省庁で検討を行い、当該戦略を2000年7月末に提出した。
 エ.国家CFC管理戦略
 1999年に開催されたモントリオール議定書第11回締約国会合において、先進国は2001年7月末までに、「国家CFC管理戦略」を策定し、UNEPのオゾン事務局に提出することが決定されたため、関係省庁で検討を行い、当該戦略を2001年7月末に提出した。
(1)CFC等の回収・再利用・破壊の促進
 CFC等の主要なオゾン層破壊物質の生産は、1995年末をもってすでに全廃されてるが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされた形で存在しているCFC等が相当量残されており、オゾン層保護を一層推進するためには、こうしたCFC等の回収・再利用・破壊を促進することが現在の課題となっている。
 日本では、関係省庁からなる「オゾン層保護対策推進会議」において、1995年6月にCFC等の回収等の促進方策を取りまとめ、さらに1997年9月にCFC等回収等の一層の促進方策を取りまとめた。本取りまとめにおいては、家庭用冷蔵庫だけでなく、カーエアコン、業務用冷凍空調機器に関しても破壊のための回収を行うこととするとともに、それぞれの機器ごとに、関係者が協力して回収等を行うための関係者の立場に応じた具体的な役割分担を含めた回収の仕組みについて考え方を示している。これらを踏まえて、機器メーカー、ユーザー事業者、整備業者等を所管する府省においては、所管する業界団体等に対して、CFC等回収等の一層の促進に取り組むよう要請を行った。これらの取組の状況については、オゾン層保護対策推進会議においてフォローアップを実施している。
 環境省においては、本取りまとめに基づきCFC等の破壊技術確立のためのモデル事業等を実施するとともに、フロン巡回回収システムモデル事業などフロン回収等普及促進事業を行い、関係府省、地方公共団体と連携して実効ある対策を積極的に展開している。
 さらに、CFC等の一層の回収率向上のため、2001年6月には、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収破壊法)が制定され、これにより、業務用冷凍空調機器及びカーエアコンについては、2002年以降これら機器が廃棄される際のフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収・破壊等が義務付けられることになった( 表2 参照)。なお、この法律は温暖化防止をも目的とし、HFCも対象としている。
(2)CFC等の排出抑制、使用合理化への支援対策等
 CFC等の代替品を使用する洗浄設備、冷凍冷蔵関連装置及びフロン回収・破壊設備等については、法人税及び所得税についての特別償却等の税制上の措置を講ずるとともに、これらの関係設備について日本開発銀行(1999年10月から日本政策投資銀行)等による低利融資等の金融上の措置を実施している。
(3)オゾン層の破壊に係る観測・監視、調査研究の推進
 オゾン層の適正な保護を図るため、オゾンゾンデ、オゾン分光光度計、オゾンレーザーレーダー、人工衛星に搭載した観測機器等を用いてオゾン層及びその破壊関連物質の観測・監視を行うとともに、オゾン層破壊機構の解明及びモデル化に関する研究、オゾン層破壊により生ずる影響に関する研究等を実施している。
<図/表>
表1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール
表2 代表的なフロン破壊処理技術
図1 「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」に盛り込まれている事項

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
生物の多様性に関する条約 (01-08-04-16)
バーゼル条約 (01-08-04-18)
砂漠化対処条約 (01-08-04-19)
ワシントン条約 (01-08-04-20)
ラムサール条約 (01-08-04-21)
ロッテルダム条約 (01-08-04-22)
南極条約 (13-04-01-13)

<参考文献>
(1)外務省HP:オゾン層保護に関する条約、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/ozone.html
(2)環境庁(編):平成14年版環境白書、株式会社ぎょうせい(2002年5月27日)、pp.96-107
(3)環境法令研究会(編):最新環境キーワード 第3版、(財)経済調査会(2000年8月10日)、pp.76-79
(4)地球環境研究会(編):三訂 地球環境キーワード事典、中央法規出版(2001年2月25日)、pp.48-57
(5)大沼保昭、藤田久一(編):国際条約集2002、有斐閣(2002年3月30日)、pp.346-356.
(6)(財)地球産業文化研究所(編):地球環境2000−2001、株式会社ミオシン出版(2000年2月21日)、pp.200-213
(7)環境省:平成14年度版環境白書、オゾン層保護対策
(8)外務省:地球環境関連条約・国際機関等一覧(平成14年12月)
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