<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 2006年には、日本は一次エネルギー資源(石油、石炭、天然ガス、原子力)の96%を輸入に依存している。原子力を準国産エネルギーと位置づけても、82%が輸入であり、エネルギー資源小国といわれる所以である。日本は、2006年に「新・国家エネルギー戦略」を立て、(1)石油依存の低減(エネルギー効率の改善)、(2)運輸エネルギーの低減、(3)新エネルギー利用技術の改善(太陽光、バイオ、風力など)、(4)原子力の電力に占める比率を30〜40%程度以上にする原子力立国計画の推進、さらに、(5)資源外交とエネルギー・環境問題への国際的協力等により、エネルギー環境の改善を進めている。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.日本のエネルギーの現状
 日本の江戸時代末までは、殆ど太陽エネルギーだけが頼りであったのが、今日では化石燃料、さらに原子力エネルギーを利用している。
 図1はエネルギー供給の様子を示す。この50年間に一次エネルギー供給は3.5倍以上に増え、2005年には96%を輸入に依存し、原子力を準国産エネルギーと見ても82%は輸入である。そのうち、石油は44.1%、石炭は21.2%、天然ガスが16.5%等である。以下にこれらのエネルギーの現状と対応策を視る。
2.石油について
 図2は近年の石油供給の移り変わりを示す。石油の用途は広く、発熱量が石炭より大きく液状で輸送に適する等から需要は急速に伸び、1970年には一次エネルギーの約74%になった。2度の石油危機を経てエネルギーの多様化と合理化が進み、2006年度は44.1%。その99.6%は輸入で国内生産は0.4%にすぎない。輸入先は、1968年には中東が約92%であった。その後はエネルギー資源の多様化を計り1987年ころは67.4%まで下がったが、2006年には開発途上国の経済発達の影響を受けて増大し89%を超えている。2007年の国内生産高は979千kリットル、輸入は242百万kリットルで海外依存率は99.6%であった。
3.天然ガスについて
 図3は天然ガスの近年の輸入量と輸入先、生産量を示す。天然ガスの輸入は1969年頃から始まり、石油危機以降のエネルギーの多様化により、ほぼ一定の割合で増加し図3−Aに示すように、2007年には68.3百万トンを輸入している。国内では新潟県、千葉県、北海道、秋田県等にガス田があり、需要の3.8%が生産されている。輸入先(図3−B)は、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ブルネイのほか、中東である。石油にくらべ輸入依存度は低いが、日本は世界の天然ガス貿易の39%を占める大輸入国である。
4.石炭について
 1966年には石炭需要の73%を生産したが、その後安価な外国炭の輸入と石油への転換に押され生産が低下し、北海道の釧路炭田の他の800近くあった炭鉱は閉山となった。第二次石油危機の後で、エネルギー資源の多様化を図り石炭火力が増えた。2006年度の輸入は17,934万トン、国産は需要の0.7%、132万トンである。輸入先は、オーストラリア、インドネシア、中国等であり、世界で最大の石炭輸入国になっている(図4参照)。
5.水力について
 水力発電は110年の歴史を持った純国産の再生可能なエネルギー源である。数分で需要に対応できるのが特徴であり、原子力と並んで電力のベースロードに対応している。1970年の発電量は約800億kWh、2005年には約860億kWhであり、一次エネルギーの約3.4%、電力の約9%を供給している。国内の大規模なダム・発電所開発はほぼ限界であり、今後は中小規模開発が中心になり、大幅な出力増強は望めない。
6.原子力について
 原子力の利用は、1954年に始まり、第一次、二次の石油危機を経て着実に伸びてきた。2008年1月には、55基の原子力発電所があり、3基が建設中で、11基が計画中である。原子力は既に一次エネルギーの14%を占め、日本の電力需要の1/3を発電している(図5参照)。
 燃料のウランはカナダ、オーストラリア、フランス、アメリカ等の政情の安定した国々から輸入している。燃料は一旦原子炉に装填すると数年間は利用できるので、また再処理すれば生成したプルトニウムを分離して燃料に利用できるため、準国産燃料とも言われている。二酸化炭素の排出は、他のエネルギー源と比較して格段に少ないのが特徴である。原子力発電放射性廃棄物の処分が大きな課題であり、国民一般の理解を進める必要がある。
7.今後のエネルギー計画
 日本にエネルギー資源が少ないことは上述のとおりである。今後の世界のエネルギー需要の拡大と、日本の状況を考慮した「新・国家エネルギー戦略」は、2006年に発表された。この戦略では、1)エネルギー安全保障、2)エネルギー問題と環境問題の一体的解決、3)世界のエネルギー問題克服への貢献、を目指しており、以下のような計画を進める。
(1)石油依存の低減:エネルギー効率を上げ2030年までに石油依存度を40%以下にする。
(2)運輸エネルギーの低減:運輸エネルギーの石油依存度を、燃費改善、バイオ由来燃料、電気自動車開発等により2030年までに現在の80%に下げる。
(3)新エネルギー利用:太陽光発電コストを2030年までに火力発電並みに下げ、またバイオマスなどを利用しエネルギー自給率を上げる。
(4)原子力立国計画:原子力の占める比率を30〜40%程度以上にする。
(5)資源外交と国際協力:エネルギー・環境問題への国際的協力を進める。具体的には、
 ・石油資源の自主開発比率を、2030年までに引取量の40%にする。
 ・メタンハイドレートの開発利用、石炭の利用技術に関する協力
 ・アジアとのエネルギーと環境技術の協力
 ・緊急時に対応できる製品備蓄、石油備蓄等の充実
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
図1 日本のエネルギー総供給構成と自給率
図1  日本のエネルギー総供給構成と自給率
図2 原油供給の移り変わり
図2  原油供給の移り変わり
図3 天然ガス供給の移り変わり
図3  天然ガス供給の移り変わり
図4 石炭供給の移り変わり
図4  石炭供給の移り変わり
図5 発電電力量の実績と今後の見通し
図5  発電電力量の実績と今後の見通し

<関連タイトル>
主要先進国のエネルギー需要の動向 (01-07-02-08)
世界の一次エネルギー消費の推移 (01-07-03-01)

<参考文献>
(1)石油鉱業連盟、わが国石油・天然ガス開発の現状、http://www.sekkoren.jp/kaihatsu/kaihatsu1.htm
(2)資源エネルギー庁、エネルギー資源を取り巻く情勢、一次エネルギーの動向(2008エネルギー白書)、第2部、第1章 国内エネルギー動向
(3)経産省、「新・国家エネルギー戦略」、2006
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ