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<概要>
 廃棄物発電は、廃棄物焼却に伴い発生する高温燃焼ガスにより、ボイラーで蒸気を作り蒸気タービンで発電機を回すことにより発電するものである。
 廃棄物の多くは焼却処理されている。ここに廃棄物発電を導入しても、新たに環境に負荷を与えることはない。電力としての利用はエネルギーとしての利用価値が高く、既存の送電系統による効率的な輸送が可能なことから利用形態として優れている。
 現在は、熱供給と発電が中心である。廃棄物発電の導入・普及はあくまで、現在ある廃棄物処理施設のスクラップ・アンド・ビルド、あるいは、新増設の時期に高効率設備を導入することであり、技術的要因のほかに、社会的要因、電力業界との連携等が必要である。また、導入促進のため、厚生労働省、総務省において、補助金、交付金等が交付されており、経済産業省も、高効率廃棄物発電に対する補助等を交付している。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.廃棄物発電とは
 廃棄物発電(ゴミ発電:Waste Power Generation)は、廃棄物焼却に伴い発生する高温燃焼ガスによりボイラで蒸気を作り、蒸気タービンで発電機を回すことにより発電するシステムに代表され、(1)発電に伴う二酸化炭素等の追加的な環境負荷がない、(2)新エネルギーの中では、連続的に得られる安定電源である、(3)発電規模は小さいが電力需要地に直結した分散型電源、等の特徴を有している。
 一般廃棄物の発生量の推移を図1に、産業廃棄物の発生量の推移を図2に示す。
 最近では、発電効率を上げるために、ボイラーの高温・高圧化への取り組みやガスタービンと組み合わせ、発電効率が25%を超える「スーパーゴミ発電」の導入が行われている。また、発電した後の排熱は、周辺地域の冷暖房や温水として有効に利用されている。廃棄物は都市ゴミ等の一般廃棄物と民間事業者から排出される産業廃棄物に二分され、2001年度末現在一般廃棄物の焼却処理施設数は全国で約1,700カ所程度あるが、発電設備に適さない小規模、バッチ炉の焼却施設が未だに多いことからそのうち発電設備を有するものはわずか12%の210カ所(総設備容量は約106万kW)である。また、パルプ製紙業を除く産業廃棄物処理場数は、53カ所(総設備容量は約11万kW)である。しかし、廃棄物焼却量比で見ると発電設備を有するものは全体の約80%弱を占めており(1998年度末)、全連続運転が可能な大規模設備を中心に発電設備が導入されていることを示している。
(注)バッチ炉は、ゴミを一定容量ずつ分割して焼却処分して行く方式の炉で、間欠的な焼却となるため連続処理炉と比べて能率が落ち、焼却温度の低下等によりダイオキシン等の有害物質が発生しやすくなる。
 2002年度末におけるわが国の廃棄物発電の設備容量は、一般廃棄物が約127万kW(243カ所)、パルプ製紙業を除く、産業廃棄物が約17万kW(63カ所)の合計約144万kWなっており、過去からの推移を見ても着実にその導入が進んでいる。2010年における国の廃棄物発電の導入目標は417万kWを見込んでいる。最近では、新設時だけでなく、設備の更新時に発電設備が導入されており、1998年度に設備更新をした大規模(処理能力300トン/回以上)の処理施設のうち、99%が発電を導入している。
2.技術開発の現状
 これまでに導入されてきた廃棄物発電は、一般に発電端効率が10%に満たないものが大部分を占めている。大規模火力発電が40%程度の効率であることを踏まえると、燃料である廃棄物のカロリーの低さやスケールメリットが得られないことを考慮して、より一層の改善が必要である。
 これまで、廃棄物発電の効率が低位にとどまっていた理由は、主としてボイラーチューブの塩素ガス等による高温腐食を避けるため、廃棄物発電は300℃未満の低い温度の飽和蒸気に設定していたことにある。このため、最近の廃棄物発電の効率は、対腐食性に優れたスーパーヒーター材料や塩素腐食がボイラーチューブで生じないような炉構造等の研究開発、およびゴミ焼却炉で回収した低温蒸気を、化石燃料等で再加熱(リパワリング)して蒸気の高温化をはかり高効率発電を行うスーパーゴミ発電技術の導入により、着実に向上しており、2001年度末時点で発電端効率が10%以上の一般廃棄物発電施設は63カ所、15%以上の高効率発電施設は22カ所存在している。
 最近では、廃棄物焼却処理に伴い発生するダイオキシン類の排出抑制策や焼却灰の減量化等更なる環境負荷低減が大きな技術開発課題となっており、これら課題の解決を目指した廃棄物発電に関る新技術の開発・導入が行われている。
(1)リパワリングシステム
 スーパーゴミ発電の例として、群馬県高浜発電所がある。群馬県企業局では、経済産業省の「環境調和型エネルギーコミュニティ形成促進事業」の適用を受け、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究で1996年11月、高浜発電所(出力25,000kW)の運転を開始している。ガスタービンで発電を行い、その高温燃焼ガス(約500℃)を排熱回収ボイラーに導き、ごみ焼却で発生した低温蒸気(約250℃)を高温化(約400℃)することによって、通常のごみ発電よりも効率の高い発電を行っている。ガスタービンは航空機のエンジンを使用しており、燃料は国産の天然ガス12Aである。発電機はガスタービン用と蒸気タービン用の2台があり、蒸気タービンは1年中ほぼ連続運転している。ガスタービンは電力需要の多い時のみ運転している(図3図4)。
(2)RDF(固形燃料)発電
 RDF発電は、廃棄物を原料として物理的に加工し固形燃料化した固形燃料は通称RDF(Refuse Derived Fuel)と呼ばれている。原科として産業廃棄物を用いる場合には、WDF(Waste Derived Fuel)とも称している。固形燃料の対象となる廃棄物は可燃物であれば可能であるが、パルパーかす、廃プラスチック、紙くず、木くず等の廃棄物から不燃物を選別、除去し、固形燃料を製造する実証プラントをクリーン・ジャパン・センターが経済産業省の補助金を受け千葉県市川市に建設している(図5)。RDFはごみを乾燥・粉砕した後、圧力を加えて4分の1程度に圧縮し、固形状態する。生ごみなどをRDFにすれば、水分や臭気がほとんどなくなるうえ、運搬も容易になることから、これを燃焼設備の整った施設に集約して、発電などの燃料として使用しようとするのがRDF発電である。従来の焼却炉を使うより社会的に1割のコストが削減できるとの見方もあり、実用化に向けた取り組みが活発化しつつある。
(3)「高効率RDF発電システム」実証実験
 電源開発(株)では、若松総合事業所(福岡県北九川市若松区)において、「新型廃棄物固形化燃料利用発電システム(高効率RDF発電システム)」の実証実験を開始している。このシステムは、家庭から排出されたごみを粉砕、乾燥、圧縮成形して作る固形化燃料(RDF)を利用した高効率の発電システムで、「現在の火力発電所並みの高効率発電」と「排ガスの高度処理」という、世界に例のない2つの特徴を持っている。同実験は、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業として1995年12月から取り組んでいるもので、1997年9月に試験装置の据え付けを完了し、これまで運転調整を行って、良好な運転状況が確認できたことから、本格的な実証実験を開始することにしたものである。試験概要は表1に示すとおりで、ボイラと排煙処理装置からなる試験装置(発電出力としては600kW相当)を用いて1998年度末にかけてRDF燃焼を行い、各性能、腐食、耐久性等の検証を行う。この高効率RDF発電システムでは、生ごみに比べて発熱量の高いRDFを燃料とし、循環流動層ボイラを採用することでボイラ腐食問題を解決、現状の火力発電所並みの発電効率(35%)を達成できるとされている。また、排ガスの処理については、活性炭を使用した排煙処理装置を採用し、ダイオキシン類をほぼ完全に分解するとともに、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素、重金属類の同時処理も可能としている。これは、同社が石炭火力用に開発した、活性炭使用の乾式脱硝装置の技術を応用した独自のシステムという。
3.廃棄物発電コストの現状
 廃棄物発電のコストは、事業形態(都道府県、市町村、民間)、発電システム形態(従来型、スーパーゴミ発型、RDF型)、処理規模等により異なるが、一般的には9〜17円/kWhといわれている。一般廃棄物発電の場合の試算例を表2に示す。
4.日本における導入の現状
 廃棄物からのエネルギー回収として現在導入が進められているのは、熱供給と発電が中心である。廃棄物発電の導入・普及はあくまで、現在ある廃棄物処理施設のスクラップ・アンド・ビルドあるいは、新増設の時期に、高効率な設備を導入することであり、技術的要因のほかに、社会的要因、電力業界との連携等が必要である。日本国内の廃棄物発電導入状況推移を図6に示す。建設中または建設予定の一覧を表3に、スーパーごみ発電所の導入状況を表4に示す。
 このため、廃棄物発電からの余剰電力の購入については、電力業界は1991年度に積極的な購入を表明し、1992年度には、購入価格等のメニューが提示され、現在では売電できるものはすべて購入している状況である。
 一方RDF利用システムについては、現在数カ所のRDF製造プラントが稼働しているが、技術面の他に、安定的なユーザーをどのように確保するか等の問題がある。
5.海外における廃棄物発電導入の現状
 欧米主要国の廃棄物発電の導入実績量の推移を図7に示す。これによると、最も導入が進んでいるのは米国であり、2000年度現在、約282万kW(発電所数約102)となっており、ドイツが1990−95年度現在、約100万kWの発電規模を持っている。日本はこれに次ぐものといえよう。アジアにおいても、約33万3000kWの廃棄物発電が導入されており、今後、世界的にさらに導入が促進されるものと期待されている。
6.導入における課題
 図8に廃棄物発電推進施策体系図を示す。
 導入促進のため、厚生労働省、総務省において、補助金、交付金等が交付されており、経済産業省においても、高効率廃棄物発電に対する補助等を交付している。
 今後、廃棄物発電の導入・普及を図っていくためには、以下の点に留意する必要がある。
・廃棄物発電を計画、設計する自治体によっては、発電整備に対する技術的な知識、判断能力に乏しく、発電設備の導入自体に積極的でない面があったり、導入する場合にも最適のシステムの適用がなされず、有効な資源が損なわれているケースも多い。
・小規模の焼却施設では、スケールメリットが得られず、経済的に成り立ちにくい。一般的には、150−200t/d以上が必要といわれている。
・ 現在の廃棄物発電の発電効率は17−20%と、通常の火力発電所の40%と比較して格段に低い。発電効率の向上が、最優先に取り組む課題である。
7.廃棄物発電導入に関する政策の動向
 1998年9月閣議決定された「石油代替エネルギーの供給目標について」の新エネルギー導入目標の内訳で、廃棄物発電は2010年度に設備容量で500万kWと設定されている。続いて2001年6月には新たな新エネルギー導入目標が設定され、廃棄物発電について2010年度に設備容量で417万kWへと下方修正された。
 2002年10月には「グリーン電力基金」が導入され、翌月に「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が閣議決定された。それに伴い「グリーン電力証書システム」が開始され、廃棄物発電導入促進の誘引となりうる一連の政策が整備されつつあると言える。2002年12月、「新エネルギー利用等の促進に関する基本方針の改定について」(概要)が経済産業省から示された。新エネルギー利用促進に即してエネルギーを使用する事業者が果たすべき役割とエネルギーを供給する事業者の果たすべき役割、政府や地方公共団体の講ずべき措置等が示され、廃棄物燃料製造、廃棄物発電のメリットとデメリットを新エネルギー利用促進の課題とともに挙げている。
 また、廃棄物の焼却処理は、そのプロセスから発生する微量有害化学物質について懸念は少なくなく、2002年12月より発生ダイオキシン類に係る「ダイオキシン類対策特別措置法」が完全施行されるに至った。これにより連続かつ安定した燃焼運転が困難である小中規模施設や、施設耐用年数からダイオキシン類対策への設備改修が経済的に困難である古い施設などが運転の休停止を余儀なくされた。このようなことから焼却施設の広域集約化、新設炉導入への機運が高まり、同時に廃棄物発電設備導入の機会となっていると考えられる。
 ダイオキシン類対策特別措置法の完全施行にも関連し、2000年度までの高効率廃棄物発電技術開発により発電効率の向上とダイオキシン類の発生抑制技術が確立している。今後はダイオキシン類発生抑制への対応が困難な小規模処理施設向けの発電システムの確立を緊急の課題として、低発熱量用の高効率ガスエンジンを開発し、環境に配慮した小規模廃棄物処理施設向けの高効率発電システムの確立が行われる予定である。また、廃棄物発電・廃棄物熱利用の技術開発、導入促進を目的として資源エネルギー庁では、1)高効率廃棄物発電技術開発、2)先進型廃棄物発電フィールドテスト事業、3)廃棄物発電導入促進対策、4)廃棄物発電導入技術調査費等、5)廃棄物リサイクルシステムエネルギー効率化調査などを行っていくこととされている。
 上記の施策を講ずることにより、「石油代替エネルギーの供給目標」の前提となっている2010年度に約417万kWの導入を目指すことにしている(表5)。
<図/表>
表1 高効率RDF発電システム試験概要
表1  高効率RDF発電システム試験概要
表2 一般廃棄物発電の経済性試算例
表2  一般廃棄物発電の経済性試算例
表3 廃棄物発電導入事業一覧
表3  廃棄物発電導入事業一覧
表4 国内複合廃棄物発電(スーパーごみ発電)導入状況
表4  国内複合廃棄物発電(スーパーごみ発電)導入状況
表5 新エネルギー導入の実績と目標
表5  新エネルギー導入の実績と目標
図1 一般廃棄物の発生量の推移
図1  一般廃棄物の発生量の推移
図2 産業廃棄物の発生量の推移
図2  産業廃棄物の発生量の推移
図3 廃棄物リパワリングシステム(スーパーごみ発電)のしくみ
図3  廃棄物リパワリングシステム(スーパーごみ発電)のしくみ
図4 高浜発電所システム系統図
図4  高浜発電所システム系統図
図5 製紙スラッジ等の固形燃料化実証プラント
図5  製紙スラッジ等の固形燃料化実証プラント
図6 国内の廃棄物発電導入状況推移
図6  国内の廃棄物発電導入状況推移
図7 主要国廃棄物発電導入状況比較
図7  主要国廃棄物発電導入状況比較
図8 廃棄物発電推進施策体系図
図8  廃棄物発電推進施策体系図

<関連タイトル>
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)
放射性廃棄物 (05-01-01-01)
電子ビームを利用した環境保全技術 (08-03-03-01)

<参考文献>
(1) 通商産業省資源エネルギー庁 省エネルギー石油代替エネルギー対策課(編):新エネルギー便覧 平成10年度版、通商産業調査会出版部(1999年3月31日)
(2) 資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、エネルギーフォーラム(2004年1月)p146
(3) 日本コージェネレーション研究会:コージェネレーションVol.11 No.1 1996(1996年3月29日)
(4) 小泉 ほか:廃棄物利用発電、火力原子力発電、48(10)(1997)、p.117-146
(5) 資源エネルギー庁(監修):資源エネルギー年鑑 1999/2000年版、通産資料調査会(1999年1月)
(6) 資源エネルギー庁 省エネルギー石油代替エネルギー対策課(編):新エネルギー便覧 平成8年版、(財)通商産業調査会(1996年3月)、p.34
(7) 小川 紀一郎:廃棄物発電の現状と将来展望、火力原子力発電、50(12)、28(1999)
(8) 日本工業新聞社(編):廃棄物発電−RDFで高効率発電、エネルギー、32(9)(1999)、p.138-143
(9) 環境省 総合環境政策局 環境計画課(編):平成15年版循環型社会白書(平成15年版)
(10) (財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):エネルギー・経済データの読み方入門、省エネルギーセンター(2001年2月)、p.258-281
(11) 立見 伸二:群馬県高浜発電所 火力原子力発電,Vol.51,No.5(2000/5)p.45-48
(12) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):ガスタービンリパワリング複合発電
(13) 山中 唯義(編):CO2・リサイクル対策総覧「技術編」、通産資料調査会(1999年10月)、p.219
(14) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):廃棄物発電
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