<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 新エネルギー技術開発
<タイトル>
超電導電力応用技術 (01-05-02-13)

<概要>
 発電設備や送電設備の増設・拡充に伴い、送電線の用地難、送電の電力損失の増大、電力系統の不安定化などの問題が生じている。これらの問題を解決するため、1988年度から、超電導電力応用技術の研究開発、超電導発電システム、高温超電導フライホイール電力貯蔵技術およびそれに伴う超電導線材などの開発を進めている。これまでに、超電導導体、酸化物系超電導材料導体を製作、発電機の各種要素技術を開発、発電機モデルの試験に成功した。冷凍システムでは、圧縮機の要素技術を確立し、信頼性の高いシステムを開発した。現在、超電導電力貯蔵システム技術開発に関して2003年度までに得られた成果を踏まえ、超電導電力貯蔵装置システムのコスト低減、実系統連系試験による電力ネットワーク制御システム技術の開発と検証が実用化を目指して行われている。また、これまでに得られた超電導線材要素技術開発の成果に基づき、イットリウム系線材作製要素技術を用いて、線材作製の事業化目指す技術開発が行われている。
<更新年月>
2005年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.超電導現象
 超電導(超伝導)とは、ある種の材科を極低温に冷却していくと電気抵抗が突然ゼロ(零)の状態になる現象を言う。超電導状態にある材料に外界から磁界を加えると、その磁界を打ち消す性質があり、磁界が弱い場合には完全に磁界が遮へいされマイスナー効果(Meissner Effect)が現れる。超電導現象を電力機器(発電機など)に応用することにより、電力機器の高安定化、高密度化および高効率化を図ることができることから省エネルギー効果が大いに期待されている。
 一方、増大する電力需要に対処するため、発電設備や送変電設備の増設あるいは拡充が進められているが、電源の大容量化・遠隔化にともない、送電線の用地確保難、電力系統の安定度などの問題が顕在化しつつある。また、電力損失の一層の低減を図る必要がある。このような問題に効果的に対処するためには超電導技術を電力機器に導入し、電力系統の高安定化、高密度化および高効率化を図る必要がある。このため、超電導電力応用技術の研究開発が進められている。
2.超電導電力応用技術の効果
 現在研究開発を進めている超電導電力応用技術で、超電導導体および超電導発電機が実用化された場合に具体的に期待される効果は次のとおりである。
2.1 系統導入効果
a.電力系統の安定度向上
 超電導発電機では、高電流密度が得られる超電導導体を界磁巻線に適用して大きな起磁力を得ることにより、発電機の磁束密度を大きくとることができる。高磁束密度の設計の結果、同期リアクタンスは現用機に比して1/3〜1/5と小さくなる。これにより、限界送電電力が増大し、電力系統の安定度が向上する。
b.系統電圧維持効果
 超電導発電機を負荷地点近くに導入あるいは275kV母線に直接接続する場合、10〜20%程度の電圧低下幅の改善を期待できる。
c.電圧不安定現象の改善効果
 超電導発電機の低リアクタンス化により、電圧降下は少なくなる。したがって発電機端子電圧上昇および遅相無効電力の供給能力の改善が図られ、電圧不安定現象による送電電力の限界値が向上する。
d.進相無効電力供給能力の向上
 現用機においては、進相運転を行うと電機子鉄心端部の過熱が問題となり、進相無効電力供給に制限を受けるが、鉄心のない超電導発電機は、この制限がなくなり進相無効電力供給能力が向上する。
2.2 省エネルギー効果
 超電導発電機の損失は、現用機に比して半分以下に低減できることから(100万kW級発電機の場合)、発電機効率が0.5−1.0%向上する。また、現用機では部分負荷領域における効率が大幅に低下するが、超電導機では励磁損、鉄損、機械損など固定損が少ないことから、この低下割合は少ない(例えば、すべての発電機が超電導機に置き換わると、0.5%〜1.0%の効率向上は、超高圧電力系統網の送電損失に匹敵する省エネルギー効果に相当する)。
2.3 省資源効果
 超電導発電機の製作および電力系統に導入時の省資源効果は次のとおり。
a.界磁巻線を、現用機に比して大きさで50%、重量でも50%削減可
b.電力系統の安定度向上により、同一系統で送電可能な電力、すなわち限界送電電力が増加するため、同じ送電容量に対して送電ルートの削滅が可能である。
c.現用機と比べ進相無効電力供給能力が増大するため、軽負荷時に使用するリアクトルの設置量の節減が期待される。
2.4 技術的波及効果
 今後、超電導発電機が実用化され、電力系統において信頼性が確認されることになれば、送電線、変圧器などへの適用が促進され、その結果将来の高効率・高密度超電導電力システムの構築が期待される。
3.超電導電力応用技術の研究開発
 1988年度からムーンライト計画の一環として、また1993年度から1999年度まではニューサンシャイン計画の一環として、通産省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)が推進の中心となり、国立研究所と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)が研究内容を分担し、両者協調の下に研究開発が進められた。その後、NEDOは交流超電導電力機器基盤技術(2000〜2004年度)、超電導発電機基盤技術(2000〜2003年度)、フライホイール電力貯蔵用超電導軸受技術(2000〜2004年度)、超電導電力貯蔵システム技術(1999〜2003年度)等の研究開発を実施した。産業技術総合研究所では、高温超電導酸化物の応用研究や大面積超電導膜の作製評価等の基礎的研究開発が行われている。また、電力中央研究所では、国のプロジェクトに協力して、超電導線使用時の交流損失の計測技術、低交流損失化の手法、高安定化技術等の開発および金属系・酸化物系超電導線材の開発と電力機器への適用研究が進められている。
 これまでに、超電導発電機用の10kA級の導体を、交流機器用として数kA級の低損失・高電流密度導体を作製した。また、酸化物系超電導材料では、電流密度が1.1×106A/cm2の線材や交流1kA級の電流リードなどの機器モデルを製作した。発電機については、各種要素技術を開発し、低速応型部分モデル試験に成功した。7万kW級の発電機モデルでは、低速応型回転子の静止励磁試験に成功した。冷凍システムでは、従来型については7万kWのモデル機用として信頼性の高いシステムを開発、改良型についてはオイルフリー圧縮機の要素技術を確立した。超電導発電システムの構成を図1に示す。
 超電導線材の研究開発に関して、米国では、実際電力ケーブルとしてエネルギー省の支援のもとにシカゴ郊外で実用送電の工事を開始している。
 1988年度から1999年度までに行われた研究開発に関するスケジュールと開発目標を、表1および表2に示す。
 現在、NEDOの計画の下では、超電導電力ネットワーク制御技術開発(2004〜2007年度)と超電導応用基盤技術研究開発(1998〜2007年度)が行われている。前者では、超電導電力貯蔵システム技術開発に関して2003年度までに得られた成果を踏まえ、実用化を目指した超電導電力貯蔵装置(SMES)システムのコスト低減、実系統連系試験による電力ネットワーク制御システム技術の開発検証を行う。後者では、2002年度までに得られた「超電導線材要素技術開発」の成果に基づき、イットリウム系線材作製要素技術を用いて、線材作製の事業化が見通せる技術を開発する。SMESシステムの概念図を図2に示す。
4.高温超電導フライホイール電力貯蔵技術の研究開発
 電源設備の利用率の向上および最大ピーク需要対策の観点から、負荷平準化対策の一つとして、各種電力貯蔵技術の研究開発が行われているが、導入形態が異なるため、用途に応じた導入を図る必要がある。
 高温超電導磁気軸受を応用した高温超電導フライホイール電力貯蔵は、設備のコンパクト化による分散配置が可能であり、需要地近傍の配電用変電所への設置により、系統端側における電力貯蔵により負荷平準化を図ることが期待されている。
 この高温超電導フライホイール電力貯蔵システム実現の可能性ならびに実現に向けての課題を明らかにするため、1995年度から2004年度まで、回転制御を含むフライホイールおよび高温超電導体と永久磁石を組み合わせた高温超電導磁気軸受に関する要素技術開発研究が進められた。すなわち、システム設計技術開発に必要な調査・検討および超電導磁気軸受、フライホイール、回転制御、高強度永久磁石などの要素技術の研究が行われた。また、このシステムの導入に関する調査・検討も行われている。図3に高温超電導フライホイールの構造例を示す。また、超電導フライホイール電力貯蔵技術などの超伝導技術を利用した未来像を図4に示す。
<図/表>
表1 研究開発スケジュール
表2 開発目標
図1 超電導発電システムの構成
図2 超電導電力貯蔵装置(SMES)システム概念図
図3 高温超電導フライホイールの構造例
図4 超電導フライホイール等超電導技術を利用した未来図

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<関連タイトル>
サンシャイン/ニューサンシャイン計画 (01-05-02-01)
ムーンライト計画 (01-05-02-06)
省エネルギ−技術の開発推進 (01-06-03-01)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.711-718
(2)資源エネルギー庁(監修):1997/1998資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1997年2月)、p.731-736
(3)科学技術庁科学技術政策局監修:日本のエネルギー開発、日本科学技術振興協会(1997年10月)、p.140-141
(4)田中 昭二:超電導技術の現状と展望、動力、1999年秋季号、p.7-20
(5)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)、p.613−615
(6)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構ホームページ:
(7)(独)産業技術総合研究所ホームページ:
(8)(財)電力中央研究所ホームページ:http://criepi.denken.or.jp/jp/electric/
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