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<概要>
 2001年3月30日、資源エネルギー庁総合政策課は、「1999(平成11)年度におけるエネルギー需給実績(確報)について」を発表した。これによると、1999年度の最終エネルギー消費は景気の回復等により対前年度比+2.4%となり、減少した。98年度から一転して増加し、過去最高となっている。部門別に見ると、産業部門では対前年度比+3.4%、民生部門では、対前年度比+1.5%、運輸部門では対前年度比+1.5%とそれぞれ増加した。エネルギー源別に見ると、石炭・天然ガスが顕著な増加を示し、原子力、水力が大きく減少する結果となった。
<更新年月>
2001年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
2001年3月30日、資源エネルギー庁総合政策課は、「1999(平成11)年度におけるエネルギー需給実績(確報)について」を発表した。これは2000年11月に同速報を発表した後、エネルギー需給バランス表の基礎としている各種統計が、確報値を取りまとめたことを踏まえて、作成したエネルギー需給バランス表に基づいて取りまとめたものである。エネルギー起源の二酸化炭素排出量についても、確報値に基づいて資源エネルギー庁で試算を行っている。
I.最終エネルギー消費
1.最終エネルギー消費の推移
 1999年度の最終エネルギー消費は景気の回復等により対前年度比+2.4%となり、減少した98年度から一転して増加し、過去最高となった( 表1 参照)。
2.部門別エネルギー消費動向
 1999年度の最終エネルギー消費を部門別に見ると、産業部門では景気の回復に伴い対前年度比+3.4%となり、景気低迷により減少した98年度に比べ一転して増加した。
 民生部門では、家庭部門において石油製品、都市ガス、電力消費が顕著に増加し、+2.2%となり、業務部門では引き続きガス、電力が増加し、エネルギー消費は対前年度比+0.8%となったため、民生部門全体では対前年度比+1.5%増加した。
 運輸部門では自動車保有台数の増加等により旅客部門が対前年度比+1.8%と引き続き伸びを示したことに加え、貨物部門でも景気回復に伴う輸送量の増加等により対前年度比+0.9%の増加となったことから運輸部門全体では対前年度比+1.5%増加した(表1参照)。
(1)産業部門
1)近年の推移
 これまで産業部門のエネルギー消費は、1973年の第1次石油危機以降、産業界の省エネルギー努力等により減少し、1980年代後半以降、多品種少量生産、製品の高付加価値化等、市場ニーズヘの対応等により、再び増加傾向で推移してきた。1990年代に入り、景気の調整局面を迎え、概ね他部門に比べると小さい増加幅で推移してきたが、1998年度においては、景気の停滞により6年振りに対前年度比がマイナスとなった。
2)1999年度の動向
 1999年度の産業部門のエネルギー消費は、対前年度比+3.4%となり、景気の回復とともに増加した。産業部門のうち、約88%を占める製造業での最終エネルギー消費は、対前年度比+4.6%と大きく増加した。業種別に見ると景気の回復に伴い総じて増加している。しかし新設住宅着工戸数(対前年度比+4.0%)等は増加したものの公共工事の着工が大きく減少(対前年度比▲7.4%)したため、窯業土石は引き続き減少し、同様に建設業でも減少幅が小さくなったものの減少した( 表2 参照)。
(2)民生部門
1)近年の推移
 これまで民生部門のエネルギー消費は、家庭都門においては、世帯数の増加、家庭における電化製品の大型化及び多機能化、新製品の晋及の進展等により大幅に増加していたが、近年ライフスタイルの変化等により減少傾向が見られた。また業務部門においては、事業所等の延床面積の増加、情報化の進展等により、増加傾向で推移してきた。なお、両部門とも電力消費が著しく増加してきている。
2)1999年度の動向
 景気が回復する中、新設住宅着工数の増加(対前年度比+4.0%、3年振りの増加)、新設住宅着工床面積の増加(対前年度比+7.7%、3年振りの増加)等が見られ、また1998年度に比して気温動向に変化があり(夏季高く、冬季低い)、家庭における冷暖房需要が増加したこと等から対前年度比+1.5%となった。またエネルギー消費の構造をみると、電力が依然増加し、石油製品が減少する傾向となっている( 表3 参照)。
[家庭部門]
 住宅着工数等の対前年度比の増加とともに、家電製品等の普及、気温動向が98年度に比べ夏季高く、冬季低く推移したこと等により対前年度比+2.2%と増加した。
[業務部門]
 建築物着工床面積(非居住用)のうち、商業用は増加(対前年度比+8.5%)したものの、サービス業用は減少(対前年度比▲11.5%)したため、対前年度比+0.8%と微増であった。なお、エネルギー別に見ると、ガス、電力の消費が顕著な増加を示した。
(3)運輸都門
1)近年の推移
 旅客部門は自家用乗用車の保有台数の増加により、使用頻度が多くなる一方で、公共交通機関の利用が減少する等、自家用乗用車を中心にエネルギー消費が大幅に増加した。また貨物部門は、多頻度小口配送の増加、個人の宅配便の利用の増大に伴う平均積載量の減少等の要因により、自動車、航空を中心にエネルギー消費が増加で推移してきたが、1998年度は景気の低迷に伴い微増であった。
2)1999年度の動向
 自動車保有台数の増加、景気の回復に伴う航空等の輸送量が増加したこと等により対前年度比+1.5%の増加となった( 表4 参照)。
[旅客部門]
 自家用乗用車保有台数が増加し、エネルギー消費量が+2.4%増加する一方で、バス、鉄道等の輸送量が引き続き減少したこと等により、エネルギー消費量は対前年度比+1.8%の増加となった。
[貨物部門]
 最気の回復に伴い、自動車輸送量(対前年度比+2.2%)等が回復し、貨物部門全体の輸送量(トンキロ)が対前年度比+1.6%と増加する一方で、鉄道の輸送量が▲1.7%であったこと等により、エネルギー消費量は対前年度比+0.9%の増加となった。

II.一次エネルギー供給
1.一次エネルギー供給の推移
 景気の回復に伴いエネルギー消費量が増加したことを受けて、1999年度の一次エネルギー供給は、対前年度比+0.7%と増加した。
 1999年度では一次エネルギー供給の増加率が、最終エネルギー消費の増加(+2.4%)に比べ小さくなっているが、輸出及び在庫変動後の供給量を表す「国内供給計」をみると原油等の在庫の取り崩しが大幅に行われており、対前年度比+1.7%と増加している( 表5 参照)。
2.エネルギー源別動向
 エネルギー源別に見ると、石炭・天然ガスが顕著な増加を示し、原子力、水力が大きく減少した( 表6 参照)。
(1)石油
 石油(原油等+石油製品)供給は、対前年度比▲0.02%の微減となった。これは、原油輸入が減少(▲2.3%)し、石油製品の輸入(特に軽油(+147.9%)、C重油(+79.2%)、ガソリン(+50.7%))が大幅に増加(+10.5%)している一方で、在庫の取り崩しも大幅に行われており(原油では99年度末在庫が98年度末に比べ約19%減少している他石油製品でも減少)、これにより一次エネルギー供給が減少したものと考えられる(輸出、在庫変動後の国内供給による石油供給量は対前年度比+1.8%)。一方で石油精製業における製油所稼働率が低下しており(97年度:81.2%、98年度:77.8%、99年度:77.1%)、安価な石油製品の輸入が増加したと考えられる。この結果、一次エネルギー供給に占める石油の比率(石油依存度)は、52.0%(97年度:53.6%、98年度:52.4%)と、わずかではあるが引き続き減少している。
(2)石炭
 石炭供給は、景気の回復に伴い産業部門における消費量が増加し、また電力需要の増大に伴い電力向け需要も増加した(電気事業者向け+12.3%)こと等により、対前年度比+6.8%の増加となった。これにより一次エネルギー供給に占める石炭の比率は、対前年度比+1.0ポイント増加し、17.4%となった。このうち、国内炭の生産は対前年度比+3.2%増加し、輸入炭も対前年度比+6.9%の増加となった。
(3)天然ガス/LNG
 天然ガス/LNG供給は、需要の増加に伴いLNG輸入が引き続き増加し(97年度:+2.5%、98年度:+3.8%、99年度:+4.2%)したことから、一次エネルギー供給は、対前年度比+4.1%となり、一次エネルギー供給に占める天然ガス/LNGの比率は12.7%(97年度:11.6%、98年度:12.3%)と、着実に増加している。これは、電力向げ及び都市ガス向けの供給で顕著な伸びを示したことによる(電力向け投入量:対前年度比+6.2%、都市ガス向け投入量:+6.0%)。
(4)原子力
 原子力については、対前年度比▲4.7%の3166億kWhと減少した。これは、トラブルによる停止や定期検査期間の延長等により設備利用率(発電電力量/認可出力×暦時間数)が低下(97度:81.3%、98年度:84.2%、99年度:80.1%)したこと等によるものでおる。この結果、一次エネルギー供給に占める原子力の比率は13.0%(97年度:12.9%、98年度:13.7%)と減少した。また、総発電電力量(電気事業用)に占める比率も、34.3%(97年度:35.2%、98年度:36.4%)と減少した。
(5)水力
 水力については、98年度に比べ渇水のため出水率が大きく減少(98年度:104.1%、99年度:97.5%:一般電気事業者平均)したことから、一次エネルギー供給は、対前年度比▲7.4%の883億kWhと大きく減少した。この結果、一次エネルギー供給に占める水力の比率は、3.6%と前年度と比べると0.3ポイント減少した。
(6)地熱・新エネルギー等
 地熱によるエネルギー供給は、対前年度比▲2.2%の減少となった。また新エネルギー等については、対前年度比+21%の増加となった。これは、景気の回復に伴い、紙パルプでの黒液廃材の利用が対前年度比+3.8%増加したこと、ごみ発電において引き続き地方自治体による取り組みの活発化等を反映して対前年度比+4.0%と増加したことによる。一方太陽熱は、機器出荷数が減少する等対前年度比▲9.1%の減少となった。

III.(参考)エネルギー起源の二酸化炭素排出量について(試算)
 1999年度エネルギー需給実績(確報)から、わが国におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量を試算すれば、以下の様になる( 表7 参照)。
 エネルギー起源の二酸化炭素排出量は、対前年度比+3.3%の増加となった。これは、景気の回復とともに産業部門におけるエネルギー消費量が増加しただけでなく民生・運輸部門でもエネルギー消費量が引き続き増加したこと、さらに供給面では原子力発電における設備利用率が低下(98年度:84.2%→99年度:80.1%)し、また水力発電が98年度に比べ渇水だったことから、不足した電力供給量を火力発電(主に石炭)で対応したことにより、排出量が増加したものと考えられる。
<図/表>
表1 最終エネルギー消費の推移
表1  最終エネルギー消費の推移
表2 産業部門の最終エネルギー消費の推移
表2  産業部門の最終エネルギー消費の推移
表3 民生部門の最終エネルギー消費の推移
表3  民生部門の最終エネルギー消費の推移
表4 運輸部門の最終エネルギー消費の推移
表4  運輸部門の最終エネルギー消費の推移
表5 一次エネルギー供給の推移
表5  一次エネルギー供給の推移
表6 化石及び非化石エネルギー供給増減率(対前年度比)の推移
表6  化石及び非化石エネルギー供給増減率(対前年度比)の推移
表7 エネルギー起源の二酸化炭素排出量の推移
表7  エネルギー起源の二酸化炭素排出量の推移

<関連タイトル>
日本のエネルギー供給とその推移 (01-02-02-01)

<参考文献>
(1) 日本原子力産業会議:データファイル「1999(平成11)年度におけるエネルギー需給実績(確報)について」(平成13年3月30日資源エネルギー庁総合政策課)原産マンスリー2001.4/5 pp.135-148
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