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<概要>
 平成21年は、エネルギー安定供給の確保と地球温暖化対策としての温室効果ガス排出量削減の観点から、原子力発電への高い期待が前年に増して国際的に共通なものとなった。欧米の原子力回帰、中東・アジア地域の原子力導入・拡大が具体化し、世界的に原子力発電は拡大傾向を歩んだ。我が国においては、自民党から民主党へ政権交代し、政策転換があるものの地球温暖化対策をさらに強力に推進し、2020年の我が国の温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減を国連総会で表明した。
 海外では、諸国で原子力再開・導入の機運が高まり、ドイツ新政権が既存炉の運転期間延長へ、イタリアでは原子力凍結解除の法案可決、ベトナム国会では原子炉建設計画を決定した。
 国内では、地震後の復旧が進む柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が発電再開し、震災の知見を踏まえ耐震安全評価も関係機関で進められた。また、プルサーマル利用では九州電力玄海3号機で国内初のMOX燃料を部分装荷した軽水炉の本格運転が始まった。
<更新年月>
2011年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
2009年
(平成21年)
1/6 東芝(WH社)、米国プログレス・エナジー・フロリダ社からAP1000二基を受注  
1/7   韓国、22年まで原子力のシェアを現行の34%から48%に拡大する国家発電計画を発表
1/9 九州電力、鹿児島県他に川内原子力発電所三号機増設計画を申し入れ  
1/15   米とアラブ首長国連邦(UAE)、原子力協力協定に調印
1/19 日本とアラブ首長国連邦(UAE)、原子力発電開発協力文書に署名  
1/30   仏が国内二基目のEPRをバンリーサイトに建設を発表
2/2   インドが民生用原子炉でIAEAと保障措置協定調印
2/5   スウェーデンの中道右派政権、長期エネルギー政策で1980年成立の脱原子力法の撤廃を発表
2/17   ヨルダンとカナダ、原子力協力協定に調印
2/18 原子力安全委員会が柏崎刈羽7号機の起動を了解する見解示す  
2/19 東京電力が新潟県他に柏崎刈羽7の再開申し入れ  
2/25 東芝、米STPNOC社より140万kW級ABWR2基建設を正式受注(国内初)  
3/3   独シーメンス社とロシアのロスアトム社、合弁会社設立で覚書
3/5 北海道他、泊3号機プルサーマル計画で事前了解 米のチューDOE長官がユッカマウンテン中止の可能性を示唆
3/17   ロシアとモンゴル、原子力協力協定に調印
3/18 名古屋高裁、耐震性に不備があるとした周辺住民の北陸電力志賀2号機の運転差し止め請求を棄却 ロシアとナイジェリア、原子力平和利用で覚書調印
3/23 GE日立ニュークリア・エナジー、インド原子力発電公社などとABWR建設に関し、了解覚書を締結  
3/24 島根県他、島根2号機プルサーマル計画で事前了解  
3/31 原子力安全委員会、平成19・20年版「原子力安全白書」を発表。特集として平成19年に発生した新潟県中越沖地震を分析している  
4/3 経済産業省、2009年度電力供給計画を発表、18年度まで9基の運開を予定  
4/8 中国電力が上関原発建設準備工事に着手  
4/11 北陸電力、志賀1号機が発電再開、約3年ぶり  
4/14 日本とヨルダン、原子力協力協定を締結  
4/15   英国エネルギー・気候変動省、新規原子力発電所の建設候補地リストを公表
4/15   米DOEがGNEPの国内再処理と高速炉開発計画の中止を発表
4/23 最高裁、安全審査が不十分として周辺住民の東京電力柏崎刈羽1号機の設置認可の取り消し請求を棄却、国側勝訴が確定  
4/27   リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国、ポーランドのビサギナス原発建設計画の協力を確認
5/7   米DOEが高レベル廃棄物処分場であるユッカマウンテン計画の見直しを発表
5/9 東京電力、中越沖地震によって運転停止していた柏崎刈羽原子力発電所7号機について、地元自治体の了解を得たことから1年10ヵ月ぶりに試運転入り  
5/12 日露政府、核燃料サイクルから原子力発電所の建設・運転まで、互恵関係の強化をねらった原子力協力協定を締結  
5/13 臨界事故により停止中の北陸電力・志賀原子力発電所1号機、国による最終検査に合格、2年2ヵ月ぶりに営業運転を再開  
5/19   ロシア原子力企業のロスアトム社、サンクトペテルブルクのバルチック造船所で世界初の浮揚型原子力発電所の組み立てを開始したと発表
5/20 柏崎刈羽7、発電再開、震災停止から1年10ヵ月ぶり  
5/25   北朝鮮が2回目の核実験実施
5/26 原子力委員会、北朝鮮が25日に行った核実験に遺憾の意を表明  
6/3   スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)、使用済み燃料の深地層処分サイトをフォルスマルクに決定
6/10 麻生首相、2020年時点の温室効果ガス排出量を2005年比で15%削減する中期目標を発表  
6/18 原子力分野での国際貢献を促進するための官民連携組織である「国際原子力協力協議会」が発足  
6/22   英国政府、原子力発電の導入を計画しているヨルダンと原子力平和利用協力協定に調印
6/29 原子力安全・保安院、東京電力柏崎刈羽原子力発電所7号機の健全性について「運転上、問題ない」とする評価報告書を経産省に提出、了承を得る  
7/1   イタリア下院、原子力促進法案を可決(原子力への復帰)
7/2 国際原子力機関(IAEA)事務局長に日本の天野之弥ウィーン国際機関日本政府代表部大使が選ばれる  
7/7   G8ラクイラ・サミット(イタリア、~10日)
7/16 日本・モンゴル首脳会談、原子力エネルギー・ウラン協力覚書に署名  
7/22 新潟県他、柏崎刈羽7号機の営業運転入りを了承  
7/23 原子力委員会、国際専門部会始動  
8/6   ロシアとトルコが原子力平和利用で協定締結
8/11 駿河湾地震で中部電力浜岡4,5号機が自動停止、同3号機は定期検査中 ポーランドが2020年の初号機運転開始目指した開発ロードマップを承認
8/25 新潟県他、柏崎刈羽6号機の運転再開を了承  
8/27   インド原子力公社が韓国電力公社と発電分野協力覚書に調印
8/31 柏崎刈羽6号機が発電再開  
9/3 原電が敦賀1号機の停止時期を2016年と発表、40年目高経年化評価認可で決定  
9/14 IAEA総会、天野大使の次期事務局長任命を承認  
9/16 衆院総選挙の民主党大勝で、鳩山代表を首班とする新内閣発足  
9/22 鳩山首相、国連で「温室効果ガスを2020年までに90年比25%削減」と表明  
9/25   イランがIAEAに第二濃縮工場の存在を通達
9/28   中国国務院が海陽原発計画に建設認可
9/29   米国がイタリアの軽水炉建設支援で合意
10/4   UAEが原子力平和利用で連邦法公布
10/7 宮城県他、プルサーマルの安全性検討会議を始動  
10/8 総合科学技術会議が新政権下で初会合、「グリーンイノベーション」を打ち出す  
10/8 東芝が米NRC(原子力規制委員会)より原子炉供給メーカーに認定と発表、国内初となる  
10/12   ベルギー政府、2015年までに閉鎖予定だった3基の原子力発電所を10年間延長すると発表
10/26   ドイツで右派中道政権発足、既存炉の運転期間延長へ
10/27   英デコミ機構がセラフィールドMOX工場の操業継続決定
11/5   フランスがポーランドの原子炉建設を全面支援へ
11/9 九州電力玄海3号機で国内初プルサーマル発電開始  
11/12 JCO臨界事故10周年で安全フォーラム開催(東海村)  
11/18 中部電力浜岡1,2号機の廃止措置計画が認可、国内商業軽水炉で初となる  
11/25   ベトナム国会が原子炉建設計画を決定
12/1 天野大使がIAEA事務局長に正式就任  
12/3 国連総会で日本提出の核軍縮決議案が採択 ヨルダン原子力委員会が研究炉建設で韓国を選定
12/7   COP15開幕(デンマーク、~18日)
12/15 ベトナム電力グループとロシアのロスアトムは、ベトナム初の原子力発電所建設協力に関する了解覚書を締結  
12/22 北海道電力泊3号機営業運転入り  
12/27   アラブ首長国連邦(UAE)、同国初の原子力発電所計画で設計・建設・運転で韓国企業連合を選択
12/28 中越沖地震の影響を受けて停止し、耐震強化工事を行っていた東京電力の柏崎刈羽原子力発電所7号機、営業運転に復帰  
12/31   リトアニアで最後のイグナリナ原子力発電所2号機(136万kW、RBMK型)を完全閉鎖した


 

2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
2009年
(平成21年)
1月   バラク・オバマ氏が第44代アメリカ大統領に就任
3月 ワールドベースボールクラシックで日本が優勝  
4月   北朝鮮が弾道ミサイルを発射、イタリア中部で強い地震
5月 裁判員制度がスタート、北朝鮮が地下核実験  
6月 足利事件でDNA不一致の菅谷さん釈放  
7月 衆議院解散、イタリア・ラクイアでサミット開催  
8月 衆議院選挙投開票・民主党歴史的勝利、全国初の裁判員裁判始まる  
9月 民主党・鳩山代表が第93代内閣総理大臣に決まる  
10月 日本航空、「企業再生支援機構」の下で再生へ、2016年夏季五輪のリオ開催決まる  
11月 行政刷新会議の事業仕分けがスタート、普天間基地問題に対し沖縄で強い反発  
12月 年越し派遣村に多くの人、失業率最悪レベルと雇用不安、デンマーク・コペンハーゲンでCOP15が開催  

<関連タイトル>
2006年(平成18年) (17-01-07-07)
2007年(平成19年) (17-01-07-08)
2008年(平成20年) (17-01-07-09)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会(監修)、原子力年鑑編集委員会(編):原子力年鑑2010、日刊工業新聞社(2009年10月26日)、p.428-433
(2)日本原子力産業協会:原子力産業新聞、第2506号(平成21年12月17日)
(3) 原子力委員会、「平成21年版 原子力白書」(概要) p.1-2、平成22年3月
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