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<概要>
 平成20年は、地球温暖化対策として原子力エネルギーが有効であるという国際的な共通認識が広まるとともに、先進国以外にも原子力利用への関心が拡大した年となった。このことは、G8洞爺湖サミットでも指摘された。
 我が国の原子力委員会は、「原子力発電は、低炭素エネルギーの中核として、地球温暖化対策を進める上で極めて重要な位置を占める」とする報告書をまとめ、原子力発電の比率を相当程度増加させることを目指す必要性を示した。
 海外では、タイ、エジプトが原子力発電導入の体制を明確化し、トルコでは原子力発電所建設で国際入札が開始された。国内では、MOX燃料を軽水炉で利用する「プルサーマル」は、平成20年に大きな進展が見られた。九州電力の玄海3号機、四国電力の伊方3号機及び中部電力の浜岡4号機では平成22年度までに利用開始が決定した。
 IAEA調査団による、中越沖地震に伴う第一次及び第二次のフォローアップが行われ、安全上重要な機器を中心に詳細評価がなされた。また、総合資源エネルギー調査会の専門部会で原子力発電所の運転期間を最長24ヶ月に延長できる新検査制度が8月に了承され、2009年1月施工となった。
<更新年月>
2011年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 

1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
2008年
(平成20年)
1/28 IAEA調査団来日、中越沖地震でフォローアップ(2/1まで)  
1/31 原子力機構が米仏とFBR実証炉協力で調印 タイのアムナラン・エネルギー相、原子力発電の導入へ専従事務局を設置
2/7   スペインの原子力産業団体「フォロ・ニュークリア」、電源を確保するため、2030年までに1300万kWの新規原子力発電設備が必要と発表
2/12   インドとロシア、インド最南端部のクダンクラム原子力発電所にロシア製原子炉4基を建設することで合意
2/14 日本原燃・六ケ所再処理工場、最終段階となるアクティブ試験に入る  
2/20 中越沖地震で被災した柏崎刈羽全7機の炉内点検が完了  
2/27 柏崎刈羽原子力発電所の被災状況を調査したIAEA(国際原子力機関)、「安全上重要な機器に顕著な損傷観られず」とする調査結果を公表  
3/5 経産省が50年までに温室効果ガス半減目指す「エネルギー革新技術計画」策定  
3/12 原子力委、革新的技術開発ロードマップ策定に着手  
3/13 原子力委が地球温暖化対策に向けた原子力エネルギー拡大のビジョン示す トルコ電力公社、原子力建設で国際入札開始
3/17 電源開発、大間原子力発電所(138万3000kW)の五月着工に向け原子炉設置認可の補正書を経産相に提出  
3/20 東芝がロシアのアトムエネルゴプロム社との相互協力推進を発表  
3/24   エジプトが原子力導入計画でロシアと協定締結
4/1 エネルギー総合工学研究所、次世代開発の中核機関となる新組織「原子力工学センター」を開設  
4/11 福田首相と仏フィヨン首相、「原子力平和利用の協力に関する宣言」に合意  
4/23 経済産業省、電源開発が計画している大間原子力発電所に設置認可  
5/5 経産省、カザフ・エネ鉱物資源省と原子力協力で覚書  
5/6   米露が原子力協力協定を締結
5/15 日本・ベトナム原子力協力文書が署名、発電導入を支援  
5/22 東京電力が中越沖地震分析結果を発表、新基準地震動で耐震工事を実施する  
5/26   経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)、発電用ウラン資源は向こう100年間を賄う量が十分とする報告書を発行
5/27 電源開発の大間原子力発電所が着工  
6/7 G8エネルギー大臣会合が青森で開催、中・印・韓も参加  
6/20 カザフのナザルバエフ大統領、福田首相との会談で原子力協力を盛り込んだ共同声明に署名
東芝がカザフ国営企業と原子力協力に関する覚書締結
 
6/24 総合資源エネルギー調査会の「検査の在り方に関する検討会」、2サイクル目から18ヵ月運転も可能とする省令案を了承、年内にも施工へ  
6/25   米エネルギー省(DOE)エネルギー情報局、2030年の世界のエネルギー消費量は50%増加するとする「世界エネルギー見通し」を発表
7/2 六ケ所再処理ガラス溶融炉、流下不十分で点検・再開するも再び停止  
7/7 G8(主要8カ国首脳会議)洞爺湖サミット開催  
7/9   ブッシュ米大統領とインドのシン首相、G8洞爺湖サミットで会談、米印原子力協定の発効推進で一致
7/29 「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定、福田首相スピーチの具体的施策明らかに  
8/1   IAEA理事会が印の保証措置協定案を承認
8/6 総合資源エネルギー調査会の原子力安全・保安部会、原子力発電所の運転間隔を最長24ヵ月に延長できる新検査制度を了承。2009年1月施工へ  
8/21   米食品医薬品局(FDA)、レタスとほうれん草の食品照射に認可
9/4   NSG総会がウィーンで開催、印を例外とする民生用原子力協力声明採択
9/12 中部電力が浜岡5タービン羽根損傷で、日立への損害賠償請求の訴訟提起  
9/24 福田内閣総辞職受け、麻生内閣発足  
9/29~10/4   IAEA総会がウィーンで開催、次期事務局長選に天野大使の擁立を表明
9/30   仏印両政府、原子力協力協定に署名
10/1   GNEP執行委が仏で開催、地球温暖化対策としての原子力平和利用で認識を共有
10/3   IAEAが国際耐震安全センター設置
10/7 米シカゴ大・南部陽一郎氏、KEK・小林誠氏、京大・益川敏英氏がノーベル物理学賞、米ボストン大の下村修氏が同化学賞を受賞  
10/8   米ブッシュ大統領、対印原子力協力協定法案に署名
10/22 日本原子力研究開発機構、日本の原子力発電のシェアを7割とする2100年までのビジョンをまとめる  
11/3   湾岸協力会議(GCC)、初の原子力国際シンポジウムをジェッダで開催
11/4 日本製鋼が仏アレバ社との大型鍛鋼製品の長期供給契約を発表  
11/17   西オーストラリア州政府、ウランの採掘と輸出を既存の鉱山に制限した「三鉱山政策」を正式に撤廃
11/20 原子力安全・保安院が柏崎刈羽の基準地振動を妥当とする中間報告を示す  
12/1~12/5 IAEA調査団来日、中越沖地震に伴う第二次フォローアップ  
12/3 東京電力が柏崎刈羽7の耐震安全評価を国に報告、Sクラスの設備等で安全性を確認  
12/4   ロシアがインドへの原子炉・燃料供給で協定締結
12/22 中部電力、浜岡原子力発電所1・2号機の停止と6号機の新設を決定し、御前崎市と静岡県に申し入れ  


 

2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
2008年
(平成20年)
1月   中国製ギョーザ中毒事件、事故米の食用への転売発覚
4月 ガソリン税の暫定税率廃止によりガソリン価格が大幅下降  
5月 ガソリン税の暫定税率復活によりガソリン価格が大幅上昇、ワーキングプアの増加が鮮明に、20才以下の非正規雇用者割合は70%を越す  
6月 岩手県南部を震源としたM7.2の直下型地震発生、東京秋葉原で無差別殺傷事件発生  
9月 福田首相が辞任し、麻生内閣誕生、リーマンブラザーズ破綻  
10月   米国金融危機の影響で、株価はバブル崩壊後最安値を更新、旧社会保険庁による年金データ改ざんが発覚
11月 元厚生省次官夫婦の刺殺事件発生、米大統領選で民主党のオバマ氏当選  
12月 ノーベル物理学賞を、南部陽一郎氏、小林誠氏、益川敏英氏の3名、化学賞を下村修氏が受賞  

<関連タイトル>
2006年(平成18年) (17-01-07-07)
2007年(平成19年) (17-01-07-08)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会(監修)、原子力年鑑編集委員会(編):原子力年鑑2010、日刊工業新聞社(2009年10月26日)、p.428-433
(2)日本原子力産業協会:原子力産業新聞、第2360号(2009年12月20日)
(3) 原子力委員会、「平成20年版 原子力白書」(概要) p.1-3、平成21年3月
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