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<概要>
 2006年はエネルギー資源の確保や地球温暖化を巡る状況を反映して、世界各国において、原子力発電所の新増設や原子力発電導入政策への転換の動きが見られる年であった。このような動きに伴い、原子力に関する国際協力の新たな動きや、原子力産業の国際的な合従連衡の動きも起きている。国内的には総合資源エネルギー調査会が「原子力立国計画」を策定し、「ブレない」確固たる国家戦略と政策枠組を掲げた。海外では、米国が国際原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)構想を発表し、核燃料サイクル、高速炉開発に積極的姿勢を表明し、日本も関与していく方針を示した。さらに第3期科学技術基本計画が閣議決定され、FBRサイクルが「国家基幹技術」に決定した。また、国内・欧米メーカーが世界市場獲得に向けての再編、原燃六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の開始、ABWR2基のタービン羽根損傷、25年ぶりの耐震設計審査指針の全面的見直しなどがあった。
 国際熱核融合実験炉計画(ITER)機構設立協定に日本、EU、米国、韓国、中国、ロシア、インドの参加7極が署名し、正式に立ち上がった。
<更新年月>
2008年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
2006年
(平成18年)
1/6 電気事業連合会(電事連)が六ケ所再処理工場から回収されるプルトニウムの利用計画を公表  
1/16 日本原子力技術協会(原技協)が東京電力・福島第一で米INPO(原子力発電運転者協会)方式ピアレビュー  
1/23   米プログレス・エナジー社がAP1000の新規建設サイトにシアロンハリスを選定
カザフスタン原子力公社、関西電力、住友商事が新規ウラン鉱山開発プロジェクト協定に調印
1/24 東芝が米WH買収で優先交渉権獲得と発表
安全委がリスク情報活用でシンポジウム開催
1/27   米サザンがA・W・ボーグル発電所2基増設計画でAP1000を採用決定
2/1   露(ロシア)原子力庁長官が30年までに40基の原子力発電所新設計画を発表
2/2 原子力安全委員会(安全委)事務局がISO9001取得  
2/6 東芝がBNFLとWHの全株取得契約締結し、約6400億円で買収 米DOEが「国際原子力エネルギー・パートナーシップ」(GNEP)構想を発表
2/7 米GNEPへの貢献を検討する政府見解示される  
2/12   オランダ環境相が新規原子力発電建設の可能性示唆
2/16 日本電子照射サービスが電子線滅菌による医薬品製造承認を受ける(国内初)  
2/17 原子力機構・高エネ研がJ-PARCセンター設置  
2/27 日本とユーラトム、原子力平和利用協定に調印 エストニア、リトアニア、ラトビアのバルト3国が原子力発電所の共同建設声明
3/2   米印(米国・インド)首脳が原子力協定を含む共同声明発表
3/8 関西電力が久美浜原子力発電所計画中止へ  
3/10 日本原子力発電(原電)が原子力安全・保安院に東海発電所廃止措置計画申請(制度創設後初)  
3/15 北陸電力・志賀2号機が営業運転開始。わが国で稼働中の原子力発電所は55基・4958万kWに  
3/16   露(ロシア)天然資源庁が国内ウラン生産大幅拡大計画を発表
3/24 2005年原子力白書が出る  
3/27   カナダ原子力公社ら5社がチームCANDUを結成
3/28 保安部会美浜3号機事故調査委員会が事業者の再発防止対策を了承  
3/29   英(イギリス)政府がBNG売却を正式決定
3/30 原子力安全・保安院(保安院)が四国電力伊方3号機のプルサーマル許可 バルト3国電力首脳、原子力発電所の新規建設に向けたフィージビリティー(FS)の実施で合意
3/31 日本原燃、六ケ所再処理工場での実際の使用済燃料を使ってのアクティブ試験開始  
4/1 日本原子力産業協会(原産協会:旧日本原子力産業会議)が「主体的行動」掲げ発足  
4/3   豪州(オーストラリア州)と中国がウラン供給協定と原子力技術協力協定に調印
4/12   イラン大統領が原子力発電用の低濃縮ウラン製造に成功と宣言
4/14   トルコ政府がシノップ発電所建設を決定
4/17 鈴木篤之原子力安全委員長、中桐安全委員が就任  
4/18 原子力委員会がTRU廃棄物と高レベル廃棄物の併置処分で技術的妥当性を示す  
4/20 原子力安全委員会が研究所廃棄物処分安全規制の考え方示す  
4/26 「原子力産業と再活性化」を基調テーマとする原産年次大会開催(横浜、~28日)  
4/30   スペインのホセカブレラ発電所が閉鎖
5/2   アルメニアが100万kW級原子炉の建設計画を表明
5/4 日米がGNEP協力で基本合意 フランス初の欧州加圧水型炉(EPR、160万kW)がフラマンビル・サイトで着工
5/9 JT-60が世界最長の高圧プラズマ28秒間維持  
5/12   中国・田湾1号機(VVER、106万kW)が初送電
5/18 原子力機構・核不拡散国際フォーラム開催  
5/21   インドのタラプール3号機(加圧重水炉)が初臨界達成
5/23 原子力OBによる教育支援「シニアネット」が結成  
5/29 経済産業省が2030年に向けた「新・国家エネルギー戦略」を策定  
6/2 2006年版科学技術白書が出る ブラジルがアングラ3号機建設再開を計画
6/4 経済産業省が伊方でプルサーマルシンポジウム開催  
6/6 2005年度エネルギー白書が出る 豪ハワード首相が原子力発電の総合的検討タスクフォース設置
6/14   露ロスエネルゴアトム社が世界初の海上浮遊型原子力発電所の建設契約を締結
6/15 中部電力・浜岡原子力発電所5号機がタービン羽根の破損・ひび割れで停止 インドのタラプール3号機が送電開始
6/27 文科省学術審が次世代放射光源計画評価取りまとめ  
6/28   英国の保健安全執行部(HSE)が、新規原子力発電建設促進に向け、2段階の事前認可制度策定を盛り込む意見書を政府に提出
7/3 三菱重工が最新APWR(US-APWR)の海外展開で米現地法人設立と発表  
7/11   英国がエネルギー政策方針、原子力発電所新規建設も含む現実的政策へ大幅に路線修正
7/13 経産省、文科省、原子力機構、電力、メーカーがFBR協議会立ち上げ  
7/16   G8サミット「原子力は地球温暖化やエネルギー安全保障に役立つ」との見解を示す
7/18 北陸電力・志賀2号機の低圧タービン羽根にひび割れ確認  
7/19   ポーランド新内閣が原子力発電計画策定に着手
7/26 総合資源エネルギー調査会(エネ調)がエネルギー基本計画改定審議を開始
原子力機構がITER幅広いアプローチで日欧会合開催(六ケ所村)
米下院が米印(米国・インド)原子力協定を承認
7/31   露(ロシア)原子力庁がアンガルスクに国際ウラン濃縮センター建設の計画発表
8/1 原子力機構JMTRがこの運転サイクルにて「一旦停止」 仏(フランス)アレバ社が米での受注目指しプラント機器の8割以上を米から調達へ
8/8 総合資源エネルギー調査会(エネ調)原子力部会、部会報告書「原子力立国計画」を取りまとめ  
8/17   米デベロッパー、テキサス州アマリロ市へのABWR建設を計画
8/22 日本原子力発電(原電)東海第二発電所(BWR、110万kW)が総発電量2,000億kWh達成(国内2基目)  
8/23   アルゼンチンがアトーチャ2号機増設やウラン濃縮活動の再開を計画
8/28 小泉首相がカザフスタンと原子力平和利用協力覚書調印 米LES社が2008年の部分操業を目指し、新規濃縮施設を着工
8/29 小泉首相がウズベキスタンのウラン鉱山共同開発で協力声明  
8/31   米TXU社が2008年に1~3サイトを対象としたCOLの申請を計画
9/5 日本に対するIAEA輸送評価が公表 チリ大統領が原子力発電導入に向け研究開発に着手と発表
9/7   メキシコが新規原子力発電建設に向け08年にも国債入札実施の方針発表
9/19 原子力安全委員会、発電所の耐震設計審査指針改訂まとまる  
9/20 原子力安全・保安院(保安院)が改訂指針に照らした既設発電所の評価指示  
9/21 関西電力、美浜3号機が事故後2年ぶりに試験起動 エジプト・エネルギー相が原子力発電導入を発表
9/26 安倍内閣発足、高市早苗科技担当相、伊吹文明文科相、甘利明経産相就任  
9/27   米上院委が中間貯蔵・GNEP・最終処分を柱とする「ユッカマウンテン処分場促進法案」を上院に提出
9/29 東京電力が保安院に東通1の許可申請 米エクセロンが08年を目途にテキサス州対象でCOL申請を計画
10/2   イエメン大統領が米加の協力で原子力発電導入を検討する意向を示す
10/3 原子力委員会が食品照射の検討を関係省庁に要請 フィンランドで6基目の新規原子力発電所建設を勧告する報告書が発表
10/9 北朝鮮の核実験に対し、官房長官が抗議声明 北朝鮮が核実験声明
10/12   露とカザフスタンがウラン鉱山開発で共同事業体設立を取り決め
10/13 愛媛県、伊方町が伊方3号機プルサーマルで事前了解  
10/17 東芝がWHの株式取得を完了  
10/19 三菱重工と仏・アレバ社が原子力分野の共同開発で覚書署名  
10/23   加シガーレイク鉱山が落盤事故で全地下区画浸水
10/25   英国が高レベル深地層処分決定、実施主体にNDAを指定
10/27 中部・北陸電力が蒸気タービン羽根損傷で原因・対策を示す報告書を保安院に提出  
11/2 文科省がFBR研究開発方針を示す エジプト・露(ロシア)首脳が原子力開発部門での協力強化確認
11/7   OECD/IEA「世界エネルギー見通し」、新規原子力発電建設加速を要請
11/11 鳥取県の方面(かたも)ウラン残土撤去終了  
11/13 日立製作所と米GEが原子力事業提携で意向書締結、日米に合弁会社設立で合意  
11/14 常陽が米原子力学会(ANS)、ランドマーク賞を受賞  
11/16   米上院が米印(米国・インド)原子力協定を承認
11/17   ベルギー・エネルギー省がエネルギー政策予備報告書で現行の脱原子力政策見直しを勧告
11/21 J-PARCリニアックでビーム加速試験開始 豪タスクフォースが50年までに25基の原子力発電所を建設するとの検討結果を発表
  ITER参加7極(日本、EU、米国、韓国、中国、露、印)がパリで正式署名
11/22   ナイジェリア大統領が15年までに原子力発電を導入する計画発表
11/27 FNCA大臣級会合がマレーシアで開催、原子力発電とCDMで議論  
11/29 エルバラダイIAEA事務局長来日、核不拡散体制等の意見交換  
12/1   ベラルーシ大統領が原子力発電導入に前向き発言
12/5   米エネルギー省/エネルギー情報局(DOE/EIA)が長期見通しで原子力発電設備容量を上方修正
12/6 原子力委員会が松江で市民懇開催 露(ロシア)下院が原子力産業複合体設立法案可決
12/7 総合資源エネルギー調査会(エネ調)総合部会がエネルギー基本計画改定案取りまとめ  
12/8 原子力機構他がCTBT放射性核種監視で外務相より感謝状 バルト3国の原子力発電所共同建設計画にポーランドも参加
12/10   湾岸協力会議(GCC)を構成するサウジアラビア、カタール、バーレーン、オマーン、クエート、アラブ首長国連邦の湾岸6カ国がGCC会議で、共同で原子力発電開発に着手する意向を発明
12/12 ボドマン米DOE長官が来日  


 

2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
2006年
(平成18年)
1月   探査機「スターダスト」が採取した「彗星の塵」入りカプセルが着陸し、NASAが回収に成功
JAXA、H2Aロケット8号機で地球観測衛星「ALOS」(「だいち」と命名)を打ち上げ  
  イランの核開発問題に関し、日本は国連安保理付託を支持
  米国産牛肉に危険部位混入、再び輸入禁止措置
証券取引法違反容疑でライブドア堀江社長ら逮捕  
2月 大手精密機器メーカー「ミツトヨ」による、三次元測定機の対中国不正輸出が発覚  
神戸空港開港  
JAXA、H2Aロケット9号機で運輸多目的衛星新2号「MTSAT-2」(「ひまわり7号」と命名)を打ち上げ  
JAXA/ISAS、M-Vロケット8号機で赤外線天文衛星「ASTRO-F」(「あかり」と命名)を打ち上げ  
テロ組織日本赤軍の重信被告に懲役20年の一審判決  
トリノ五輪、フィギュアスケートの荒川「金」  
3月 企業や官公庁を中心にWinnyによる情報流出が広がる  
新北九州空港開港  
オウム教団松本被告の控訴棄却  
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、日本が初代王者に  
4月 東京都の新交通システム「ゆりかもめ」が緊急停止(原因は一部のタイヤが脱落したため)  
JR山手線の線路が工事ミスのため隆起し、日中5時間半にわたり運転見合わせ  
マンション耐震偽装、姉歯元一級建築士ら8人を逮捕  
民主党新代表に小沢氏選出  
5月 景気拡大「バブル超え」戦後2位に  
  インドネシア・ジャワ島中部で大地震(M6.2)、死者約6,000人
6月 東京都港区の公営住宅のシンドラー社製エレベータで圧死事故  
インサイダー取引容疑の村上代表を逮捕  
  イラク復興支援の陸上自衛隊、活動2年半で撤収
7月 トンネルじん肺訴訟 東京地裁が国の責任を認める  
  北朝鮮が日本海へミサイル7発発射
  インドネシア・ジャワ島西部で大地震が発生
8月 クレーン船が旧江戸川にかかる送電線に接触、首都圏139万世帯が停電  
冥王星が太陽系惑星から除外され、矮惑星に分類されることが、国際天文学連合総会で決定  
小泉首相、終戦記念日に靖国神社参拝  
9月 JAXA、H2Aロケット10号機にて情報収集衛星(光学2号機)を打ち上げ  
JAXA/ISAS、M-Vロケット7号機にて太陽観測衛星「SOLAR-B」(「ひので」と命名)を打ち上げ  
国産旅客機YS-11、日本国内線最終フライト  
紀子さまが男児ご出産、悠仁さまと命名  
初の戦後生まれ首相、安倍政権が発足  
10月 県の官製談合で福島県前知事を逮捕  
  北朝鮮が地下核実験をしたと発表
11月 北海道佐呂間町で竜巻、死者9名  
官製談合で和歌山県知事を逮捕  
月例経済報告で「いざなぎ超え」と判断  
12月 ファイル交換ソフト「ウィニー」開発者が有罪判決  
  台湾南部の地震で海底ケーブルが切断、周辺各国で長期間の通信障害発生
改正教育基本法と防衛省昇格法が成立  

<関連タイトル>
2005年(平成17年) (17-01-07-06)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会(監修)、原子力年鑑編集委員会(編):原子力年鑑2008、日刊工業新聞社(2007年9月26日)、p.441-445
(2)日本原子力産業協会:原子力産業新聞、第2360号(2006年12月14日)
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