<本文>
1.国際原子力機関(IAEA)設立(1957年)の経緯
第二次世界大戦は1945年8月に終了した。同年11月に、米国、英国及びカナダの各首脳が米国の首都ワシントンに集まり、「原子エネルギーについての宣言」を発表した。この宣言は、国連のもとで、原子力を破壊目的に使用することを完全に無くし、かつ原子力を産業と人道主義的目的に広く使用することを促進することにあった。
1945年12月に米国、英国及びソ連邦の外務大臣がモスクワに集まり、国連原子力委員会(UNAEC)の設立を国連総会に提出するという決議案に了承した。この決議案は1946年1月に通過し、国連原子力委員会の設立となった。UNAECの準備のため、米国はD.アチェソンを議長とする委員会を設立した。この委員会はD.E.リリエンソールを議長とするコンサルタント委員会を指名した。この二つの委員会は、リリエンソール・アチェソン報告書で知られる「原子力の国際管理に関する報告書」を準備した。
このような背景で、1953年の国連総会で当時の米国大統領D.アイゼンハワーが、「
アトムズ・フォア・ピース(Atoms for Peace:原子力の平和利用)」演説で、国連後援の下にある国際機関の設立を提案し、その活動は原子力の平和利用に限ることとした。しかしその当時、原子エネルギーの利用を管理し開発する国際機関の設立については、十分な理解がなかった。
1954年12月4日の国連総会で、「原子力の平和利用」は満場一致で通過し、この様な機関は遅滞なく設立したいとの表明を行なった。
1955年4月には、米国の首都ワシントンで8カ国(オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ポルトガル、南アフリカ連邦、英国及び米国)による国際機関制定案の作成作業を進めた。
国連は、同時にスイスのジュネーブで原子力の平和利用に関する「第1回ジュネーブ会議」を組織し、1955年8月に開催した。ここに世界各国のあらゆる分野の原子力科学者が集まり、情報の交換と比較を行った。一般公衆は、原子力が一般公衆に利益をもたらすよう、すでに多くの国で大いに研究中であることを知ることとなった。このジュネーブ会議で、早期に国際機関を設立したいとの要求が増加し、その設立業務に参加したいという意見が広がった。多くの討論の結果、このような国際原子力機関の設立について国連全加盟国が同意した。
当初の交渉グループは12カ国(前述の8カ国とブラジル、旧チェコスロバキア、インド、旧ソ連邦の4カ国)で、米国の首都ワシントンに集まり国際機関憲章案を作成した。この案は、1956年9月23日の国際原子力機関憲章会議において全18カ国(アルゼンチン、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チェコスロバキア、エジプト、フランス、インド、インドネシア、日本、パキスタン、ペルー、ポルトガル、南アフリカ連邦、旧ソ連邦、英国、米国)が承認し、同年10月26日にニューヨークの国連本部で署名した。設立は1957年8月20日までニューヨークの国連本部に置かれ、委員長としてブラジルのカルロス・ベルナルデス氏を、副委員長としてチェコスロバキアのパーベル・ウインクラー氏を、実行事務局長としてスイスのパウル・R.ジョレス氏を選出した。
IAEAの第1回総会及び理事会は、1957年10月1日から23日にかけてオーストリアの首都ウイーンで開催した。総会当初におけるIAEA加盟国は54カ国であったが、総会終了時には59カ国に増加した。この総会の満場一致で、IAEA本部はウイーンに置くことに決定し、オーストリア政府とIAEAの両者で承認した。また国連とIAEA間の関係についての協定も総会で承認され、1957年11月14日に国連総会の承認により発効した。その結果、IAEAは国連傘下で自治権のある国際機関として認められた。この協定により、IAEAは国連総会に毎年の活動状況を提出することになった。
2.国際原子力機関の基本的活動
IAEA憲章に述べられているように、IAEAの目的は全世界における原子力の平和利用、健康と繁栄に貢献することを加速かつ拡大することにあり、また保証するものである。また、これらの活動は如何なる軍事目的にも利用されてはならない。
IAEAの活動は次の4分野、すなわち、1)加盟国への技術援助、2)原子力分野での安全対策の開発、3)原子力が軍事目的に使用されないための
保障措置(Safeguards)の実施、4)上記の活動を通じて一般公衆が原子力を理解する基礎作りに分類できる。
IAEAによる保障措置は、「核兵器の不拡散に関する条約」(
NPT)の促進にある。NPTにより、IAEAは、1968年に原子力の平和目的利用が核兵器または他の
核爆発装置に利用されることのないよう、検証する仕事を求められ現在も継続して実施している。
<関連タイトル>
IAEAによる国際基本安全基準等の策定(BSSとINES) (13-01-01-02)
IAEAの保障措置 (13-01-01-05)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
<参考文献>
(1) 20 YEARS INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY 1957-1977
(2) 国際原子力機関季報(IAEA機関誌)第29巻第3号、IAEA設立30周年記念号、「これからの10年:IAEAの将来をきずく挑戦、ハンス・ブリックス事務局長